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「宝石のまち甲府」をアピール宝飾見本市、観光誘致の呼び水に

宝石・宝飾品の見本市「バンコク宝石・宝飾品フェア2022」が先週、タイの首都バンコク近郊で開催された。昨年、甲府市とタイ商務省が交わした宝石・宝飾品産業の振興に関する協力覚書に基づき、同市の支援の下、山梨県水晶宝飾協同組合と日本貿易振興機構(ジェトロ)が連携して出展。世界中から集まったバイヤーなどに、「宝石のまち甲府」をアピールした。日本ならではの付加価値の高い宝飾品の加工技術をインバウンド需要の呼び水にしたい意向だ。

MITSUMEさんのアート作品を前に出展ブースのコンセプトについて語るジェトロ山梨貿易情報センターの濱田哲一所長=9日、タイ・ノンタブリ県(NNA撮影)

タイ商務省国際貿易振興局(DITP)と甲府市は昨年7月、宝石・宝飾品産業の促進に関する協力覚書を締結。ともに宝飾品の加工・製造が盛んなタイと甲府市が手を結び、宝飾品産業に関する情報交換やビジネスネットワークの拡大、展示会の開催などで協力することを取り決めた。その具体的な動きとして、DITPなどが主催する「バンコク宝石・宝飾品フェア2022」に、「宝石のまち甲府」をアピールする展示ブースを設けた。
甲府市は、宝石・宝飾品市場の縮小が見込まれる日本国内にとどまらず、海外での認知度向上を目指している。一方で、甲府市内の加工業者が手がけてきたのは、海外有名ブランドなどの相手先ブランドによる生産(OEM)が中心で、甲府が前面に出てアピールすることには慣れていない。加工技術にはたけていても、世界に売り出すためのマーケティングが課題となっている。
そうした中、今回の出展ブースのコンセプトを担当したのはジェトロ山梨貿易情報センターの濱田哲一所長だ。きらびやかな出展ブースが軒を連ねる会場で、より多くの来場者の関心を引くにはどうすればよいか。アニメなどのコンテンツ輸出に携わったことのある濱田所長が白羽の矢を立てたのが、海外でも広く活躍し、タイで開かれるアジア最大級の日本イベント「ジャパンエキスポタイランド」にも招待されたことのある世界的に活躍しているアーティストのMITSUME(みつめ)さんとのコラボだ。謎めいた笑みを浮かべた和服姿の女性に、「甲府」の文字やジュエリー、さらには富士山などのデザインを配した壁一面のアート作品はインパクト十分。作品の前で交流サイト(SNS)用に写真撮影する来場者も少なくなかった。

来場者と取引交渉する甲府市からの出展者=9日、タイ・ノンタブリ県(NNA撮影)

濱田氏は、「甲府の宝石加工技術は高く、外国人にも十分に魅力的な製品だ。貴石の産地であるタイにおいては価格競争力では劣後し、タイなどの加工技術も年々上がっている。他にはない付加価値で、世界的な宝石のまちとして認知度を上げていきたい」と意気込んだ。
山梨県水晶宝飾協同組合の小松一仁理事は、「宝石・宝飾品を呼び水に、甲府の魅力的な産品を国際的にアピールすることで、旅行客のインバウンド誘致につなげたい」と話す。「ワイン」「日本酒」「シャインマスカットやモモなどのフルーツ」「富士山」など、魅力的な産品・スポットが豊富な甲府。「宝石のまち」としても海外に広く認知してもらうことで、甲府を訪れる外国人の旅行需要を喚起したい意向だ。
■3年ぶり実開催で盛況

精緻な加工が施されたさまざまな宝飾品が会場を彩った=9日、タイ・ノンタブリ県(NNA撮影)

バンコク宝石・宝飾品フェア2022は、DITPとタイ宝石・宝飾品機関(GIT)の共催により、今月7~11日に首都バンコク北郊ノンタブリ県の展示会場「インパクト」で開催された。日本や南アジア、米国、欧州、中東などの外国企業・団体168者を含む1,020者が出展。開催期間中に1万5,000人余りが訪れた。新型コロナウイルス感染症の影響で過去2年はオンラインでの開催だった。久しぶりの実開催とあって、出展者、来場者とも多く、5日間の売上高は、目標額の30億バーツ(約118億円)を上回ったとみられている。
タイの宝石・宝飾品産業の売り上げ規模は約2,000億バーツで、国内産業全体の9位を占める。昨年の輸出額は前年比29.8%増の1,950億バーツで、商務省は今年の輸出額目標を2,340億バーツに設定している。3年ぶりの実開催となった今回の見本市を産業振興および輸出促進につなげたい意向を示している。
■客層にも変化
ジェトロが商談支援を行った複数の甲府市からの出展企業に話を聞くと、3年ぶりの実開催でバイヤーにも変化がみられるという。これまでアジアの宝石・宝飾品の見本市で中心的な役割を果たしてきたのは香港でのイベントだった。売買に対する関税、消費税の免税措置が適用され、世界中のバイヤーを集める代表的な国際見本市として機能してきたが、「香港の中国化」によって見本市の「変容」が懸念されるという。ある出展者は「香港の見本市は免税措置が不透明で、今後の集客力にも不安が残る。将来に備え、タイ・バンコクのほか、シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ、中国・海南島で開かれる見本市に出展することにした」と話した。
また、新型コロナ前に香港で開かれていた見本市とは客層も大きく変わっているという。以前は中国本土からのバイヤーが大口客だったが、中国政府による海外への渡航制限が続いていることに加え、習近平主席が公務員などに対して「ぜいたく禁止令」を課したことで中国人バイヤーはほとんどみないという。代わって、これまではあまりなじみのなかったアフリカや中東、中央アジアなどの国のバイヤーと商談する機会が増えたと口をそろえる。中国で贈答用の宝飾品の需要が減る一方で、世界的なインフレへの懸念から価値が目減りしにくい宝飾品を買い求めるケースが増えているとみられる。
3年ぶりの実開催となったバンコク宝石・宝飾品フェアには、世界的なインフレやコロナ禍、「香港の中国化」などの影響が色濃くにじんでいた。

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甲府市は、宝石・宝飾品市場の縮小が見込まれる日本国内にとどまらず、海外での認知度向上を目指している。一方で、甲府市内の加工業者が手がけてきたのは、海外有名ブランドなどの相手先ブランドによる生産(OEM)が中心で、甲府が前面に出てアピールすることには慣れていない。加工技術にはたけていても、世界に売り出すためのマーケティングが課題となっている。
そうした中、今回の出展ブースのコンセプトを担当したのはジェトロ山梨貿易情報センターの濱田哲一所長だ。きらびやかな出展ブースが軒を連ねる会場で、より多くの来場者の関心を引くにはどうすればよいか。アニメなどのコンテンツ輸出に携わったことのある濱田所長が白羽の矢を立てたのが、海外でも広く活躍し、タイで開かれるアジア最大級の日本イベント「ジャパンエキスポタイランド」にも招待されたことのある世界的に活躍しているアーティストのMITSUME(みつめ)さんとのコラボだ。謎めいた笑みを浮かべた和服姿の女性に、「甲府」の文字やジュエリー、さらには富士山などのデザインを配した壁一面のアート作品はインパクト十分。作品の前で交流サイト(SNS)用に写真撮影する来場者も少なくなかった。
[caption id="attachment_6418" align="aligncenter" width="620"]来場者と取引交渉する甲府市からの出展者=9日、タイ・ノンタブリ県(NNA撮影)[/caption]
濱田氏は、「甲府の宝石加工技術は高く、外国人にも十分に魅力的な製品だ。貴石の産地であるタイにおいては価格競争力では劣後し、タイなどの加工技術も年々上がっている。他にはない付加価値で、世界的な宝石のまちとして認知度を上げていきたい」と意気込んだ。
山梨県水晶宝飾協同組合の小松一仁理事は、「宝石・宝飾品を呼び水に、甲府の魅力的な産品を国際的にアピールすることで、旅行客のインバウンド誘致につなげたい」と話す。「ワイン」「日本酒」「シャインマスカットやモモなどのフルーツ」「富士山」など、魅力的な産品・スポットが豊富な甲府。「宝石のまち」としても海外に広く認知してもらうことで、甲府を訪れる外国人の旅行需要を喚起したい意向だ。
■3年ぶり実開催で盛況
[caption id="attachment_6419" align="aligncenter" width="620"]精緻な加工が施されたさまざまな宝飾品が会場を彩った=9日、タイ・ノンタブリ県(NNA撮影)[/caption]
バンコク宝石・宝飾品フェア2022は、DITPとタイ宝石・宝飾品機関(GIT)の共催により、今月7~11日に首都バンコク北郊ノンタブリ県の展示会場「インパクト」で開催された。日本や南アジア、米国、欧州、中東などの外国企業・団体168者を含む1,020者が出展。開催期間中に1万5,000人余りが訪れた。新型コロナウイルス感染症の影響で過去2年はオンラインでの開催だった。久しぶりの実開催とあって、出展者、来場者とも多く、5日間の売上高は、目標額の30億バーツ(約118億円)を上回ったとみられている。
タイの宝石・宝飾品産業の売り上げ規模は約2,000億バーツで、国内産業全体の9位を占める。昨年の輸出額は前年比29.8%増の1,950億バーツで、商務省は今年の輸出額目標を2,340億バーツに設定している。3年ぶりの実開催となった今回の見本市を産業振興および輸出促進につなげたい意向を示している。
■客層にも変化
ジェトロが商談支援を行った複数の甲府市からの出展企業に話を聞くと、3年ぶりの実開催でバイヤーにも変化がみられるという。これまでアジアの宝石・宝飾品の見本市で中心的な役割を果たしてきたのは香港でのイベントだった。売買に対する関税、消費税の免税措置が適用され、世界中のバイヤーを集める代表的な国際見本市として機能してきたが、「香港の中国化」によって見本市の「変容」が懸念されるという。ある出展者は「香港の見本市は免税措置が不透明で、今後の集客力にも不安が残る。将来に備え、タイ・バンコクのほか、シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ、中国・海南島で開かれる見本市に出展することにした」と話した。
また、新型コロナ前に香港で開かれていた見本市とは客層も大きく変わっているという。以前は中国本土からのバイヤーが大口客だったが、中国政府による海外への渡航制限が続いていることに加え、習近平主席が公務員などに対して「ぜいたく禁止令」を課したことで中国人バイヤーはほとんどみないという。代わって、これまではあまりなじみのなかったアフリカや中東、中央アジアなどの国のバイヤーと商談する機会が増えたと口をそろえる。中国で贈答用の宝飾品の需要が減る一方で、世界的なインフレへの懸念から価値が目減りしにくい宝飾品を買い求めるケースが増えているとみられる。
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