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【台湾新創】翻訳音声を「同時」出力VM—Fi、福岡で実証実験

台湾の声麦無線(VM—Fi)は、セミナーや講演会向けの人工知能(AI)音声翻訳システムを手がける。売りは独自の技術で実現した処理速度とコストの低さ。中でも処理速度は、同時通訳のようなスピード感を実現している。14日からは九州電力グループのQTnetと共同で、福岡県の博多駅総合案内所で観光案内サービス向けの実証実験を開始する。【山田愛実】

彭徳新執行長が率いるVM—Fiは、同時通訳に近いスピード感の音声翻訳システムを開発した=台北(NNA撮影)

実証実験の対象となるのはVM—FiのリアルタイムAI音声翻訳システム「スマート・トランスレーションウインドー」。利用者と案内所スタッフの間に設置した半透明ディスプレーに、双方の会話をリアルタイムで翻訳し、字幕化して映し出すというものだ。
スマート・トランスレーションウインドーは日本語、中国語、英語、韓国語に対応するが、実証実験では日本語と英語を使用。期間は11月13日までで、即時翻訳・字幕の有効性とリアルタイムAI音声翻訳システムに最適な通信環境をそれぞれ検証する。
VM—Fiは、案内所では感染症の予防対策と外国語による対面コミュニケーションの両立が求められると指摘。「同システムの導入で、インバウンド利用者だけでなく聴覚に障害がある人にも快適なコミュニケーションと感染予防をサポートし、ユニバーサルサービスの実現に貢献する」と強調した。
■アプリで翻訳音声を配信
VM—Fiはセミナーや講演会、観光ガイド、授業など向けに音声翻訳システムのレンタルサービスを提供している。米クアルコムなどと共同で開発したデバイス(12センチ×14.5センチ×4.5センチ)を用いる。マイクとデバイスを通して入力した音声をクラウド上でAIが翻訳し、VM—Fiのスマートフォンアプリに翻訳音声を配信。翻訳音声をスマホを通じて聞くことが可能になる。こちらも日本語、中国語、英語、韓国語に対応している。
デバイスから半径50メートル内の聞き手はWi—Fi(ワイファイ)を使用して翻訳音声を受け取ることができる。デバイスは充電式で、電源に接続しない場合も12時間の連続稼働が可能だ。
特徴は音声の同時連続処理。通常の翻訳システムは入力音声をある程度読み取ってから処理し、さらに出力音声を生成するが、VM—Fiの音声翻訳システムでは入力音声と出力音声を同時に絶え間なく処理する。彭徳新執行長は、「同様の技術は他にない」と強調する。さらに第5世代(5G)移動通信システムを使用することで、処理速度を5倍に上げることができる。
実際にVM—Fiによる音声翻訳を体験してみた。テレビのニュース映像に使用すると、元の音声に少し遅れつつも重なる形で翻訳が流れ、まるで同時通訳のようなスピード感に驚く。
費用は規模や時間によって異なり、50人規模のイベントで4時間であればセッティング込みで30万円(税別、日本での価格)。彭氏によると、同サービスの価格は、通訳ブースなどの設置にかかるコストも含めた一般の同時通訳サービスの35~50%にとどまる。翻訳精度は一般の同時通訳サービスが80%とすると70%とわずかに落ちるものの、コスト面の優位性は大きいとみている。
■大阪万博への参加目指す
彭氏は、米ゲーム大手エレクトロニック・アーツ(EA)で約20年にわたりローカライゼーションを手がけてきた経歴を持つ。台湾向けから始まり、最終的には23カ国・地域向けを手がけたという。
その際に感じたのが「翻訳サービスは時間とコストの面で課題が多い」という点。これらを解決するべく、20年にVM—Fiを設立した。
今後は日本市場の開拓を目指す。2021年は台湾での売上高が100%を占めたが、今年日本での売上高比率を15%に上げ、23年には日本法人を設立し、25年大阪・関西万博でのサービス提供を皮切りに日本での展開を加速する考えだ。既に日本の商社と代理店契約の話し合いを進めているという。
直近では10月に開催された「京都スマートシティエキスポ」の講演会で同音声翻訳システムが採用された。
彭氏によると、日本の翻訳・通訳市場の規模は約3,000億円。ただ一般の同時通訳サービスは料金が比較的高いことから、彭氏は「手が出せない企業も多いはず」と予想する。こうした企業も含めれば、潜在市場は大きいとみている。
VM—Fiは長期的に日本での売上高比率を90%まで高めたい考え。24年には欧州での展開を進め、売上高比率を5%とする目標を掲げている。

14日から博多駅総合案内所で観光案内サービス向けの実証実験を開始する(VM—Fi提供)
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スマート・トランスレーションウインドーは日本語、中国語、英語、韓国語に対応するが、実証実験では日本語と英語を使用。期間は11月13日までで、即時翻訳・字幕の有効性とリアルタイムAI音声翻訳システムに最適な通信環境をそれぞれ検証する。
VM—Fiは、案内所では感染症の予防対策と外国語による対面コミュニケーションの両立が求められると指摘。「同システムの導入で、インバウンド利用者だけでなく聴覚に障害がある人にも快適なコミュニケーションと感染予防をサポートし、ユニバーサルサービスの実現に貢献する」と強調した。
■アプリで翻訳音声を配信
VM—Fiはセミナーや講演会、観光ガイド、授業など向けに音声翻訳システムのレンタルサービスを提供している。米クアルコムなどと共同で開発したデバイス(12センチ×14.5センチ×4.5センチ)を用いる。マイクとデバイスを通して入力した音声をクラウド上でAIが翻訳し、VM—Fiのスマートフォンアプリに翻訳音声を配信。翻訳音声をスマホを通じて聞くことが可能になる。こちらも日本語、中国語、英語、韓国語に対応している。
デバイスから半径50メートル内の聞き手はWi—Fi(ワイファイ)を使用して翻訳音声を受け取ることができる。デバイスは充電式で、電源に接続しない場合も12時間の連続稼働が可能だ。
特徴は音声の同時連続処理。通常の翻訳システムは入力音声をある程度読み取ってから処理し、さらに出力音声を生成するが、VM—Fiの音声翻訳システムでは入力音声と出力音声を同時に絶え間なく処理する。彭徳新執行長は、「同様の技術は他にない」と強調する。さらに第5世代(5G)移動通信システムを使用することで、処理速度を5倍に上げることができる。
実際にVM—Fiによる音声翻訳を体験してみた。テレビのニュース映像に使用すると、元の音声に少し遅れつつも重なる形で翻訳が流れ、まるで同時通訳のようなスピード感に驚く。
費用は規模や時間によって異なり、50人規模のイベントで4時間であればセッティング込みで30万円(税別、日本での価格)。彭氏によると、同サービスの価格は、通訳ブースなどの設置にかかるコストも含めた一般の同時通訳サービスの35~50%にとどまる。翻訳精度は一般の同時通訳サービスが80%とすると70%とわずかに落ちるものの、コスト面の優位性は大きいとみている。
■大阪万博への参加目指す
彭氏は、米ゲーム大手エレクトロニック・アーツ(EA)で約20年にわたりローカライゼーションを手がけてきた経歴を持つ。台湾向けから始まり、最終的には23カ国・地域向けを手がけたという。
その際に感じたのが「翻訳サービスは時間とコストの面で課題が多い」という点。これらを解決するべく、20年にVM—Fiを設立した。
今後は日本市場の開拓を目指す。2021年は台湾での売上高が100%を占めたが、今年日本での売上高比率を15%に上げ、23年には日本法人を設立し、25年大阪・関西万博でのサービス提供を皮切りに日本での展開を加速する考えだ。既に日本の商社と代理店契約の話し合いを進めているという。
直近では10月に開催された「京都スマートシティエキスポ」の講演会で同音声翻訳システムが採用された。
彭氏によると、日本の翻訳・通訳市場の規模は約3,000億円。ただ一般の同時通訳サービスは料金が比較的高いことから、彭氏は「手が出せない企業も多いはず」と予想する。こうした企業も含めれば、潜在市場は大きいとみている。
VM—Fiは長期的に日本での売上高比率を90%まで高めたい考え。24年には欧州での展開を進め、売上高比率を5%とする目標を掲げている。
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