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《安全》【コロナ禍1年】日系の4割が業績悪化ビジネス制限続く、在宅が日常に

【前編】韓国で新型コロナウイルスの感染が確認され、その影響が出始めてから1年が過ぎた。日系企業でも「非対面」需要拡大の波に乗って業績を伸ばした企業もあるが、ほとんどが未曽有の事態にためらい、手探りの経営で何とか乗り切ったというのが正直なところだろう。NNAがこのほど実施したコロナアンケートの第3弾(有効回答40社)でも、その苦心の跡が浮き彫りになった。きょうと明日の2日間に分けて詳細を報告する。

新型コロナの流行で国際便の運航がほぼ停止し、閑古鳥が鳴く仁川国際空港。ワクチン接種の開始は間近だが、往来再開への道のりは長い=2021年1月28日、韓国・仁川(NNA撮影)

韓国で「原因不明のウイルス性肺炎」の感染者が初めて確認された2020年1月10日以来、新型コロナは現在に至るまで猛威を振るい続けている。
韓国の昨年の実質国内総生産(GDP)伸び率(前年比、速報値)はマイナス1.0%とコロナ禍で「善戦」したとの評価もあるが、体力のない中小企業や自営業者の倒産が相次いだほか、大手でも無給休業の実施や希望退職の募集で急場をしのぐ姿が目立った。
韓国市場で事業展開する日系企業にとっては、日韓関係の悪化が続く中、新型コロナによる営業活動の制限や消費低迷が追い打ちとなる厳しい1年となった。また、移動制限によるビジネス往来の停止は業務への影響だけでなく、安易に帰国できない駐在員のストレスにもなっている。
■ほとんどの日系で影響依然
アジア最大の売り場面積を誇ったカジュアル衣料品ブランド「ユニクロ」の明洞中央店の閉店(韓国の繁華街・明洞の現地ルポを近く掲載予定)に象徴されるように、日系企業の多くが韓国政府の厳格なコロナ感染防止策や消費の冷え込みの影響を受けた。
コロナによる事業への影響度合いについての設問でも、「ある程度出ている」と「深刻に出ている」を合わせると90.0%に達し、昨年5月に実施した前回調査時(88.9%)を若干上回った。「出ていない」は1割にとどまった。具体的には、「減益」(36.1%)と「赤字」(8.3%)を合わせて、回答者の4割強が業績の悪化を挙げた。数字で見ると、「50%以上の減益」が全体の25.0%を占めた。
業績以外の影響としては、前回同様に「(対面を避けるため)営業活動がままならない」という意見が最も多い。また、「物流の混乱や需要の乱高下」のほか、「日韓の移動が困難なため人事異動がストップした」「帰国の制限が仕事のモチベーションに影響している」といった回答も寄せられた。
■時差出勤と在宅の併用主流に
テレワークの実施については明確な変化があった。「現在も実施している」は前回の18.1%から今回は80.0%に跳ね上がった一方、「一度も実施していない」は前回の30.6%から12.5%に半減した。感染防止を徹底する韓国政府の勧告もあり、テレワークは今や定着した感がある。
テレワークを導入している企業の多くが、感染状況に応じてローテーションでの在宅勤務や時差出勤を併用して運営しているようだ。また、「場所を選ばすリモートワークを奨励」や「サテライトオフィスを2カ所設けた」という企業もみられた。
テレワークをいつまで続けるかについては各社各様で、警戒レベルの段階では「1.5段階」(25.0%)を終了の目安としている企業が最も多く、「コロナが終息するまで」は9.4%となった。一方、前回は皆無に近かった「コロナに関係なく継続予定」が12.5%に上ったことは、1年にわたって「ウィズコロナ」と向き合う中でいや応なしに迫られた変化の象徴的な例だろう。
■防疫措置はおおむね高評価
韓国政府の一連の防疫措置については、「評価する」が72.5%で、「高く評価する」の7.5%を合わせると、全体の8割が肯定的な評価を下した。その理由については、最近の取り組みとして「PCR検査の無料化や臨時施設(簡易検査所)の迅速な整備」「警戒レベルの適用基準と内容が明確」「5人以上の私的な集まり禁止や店舗の営業規制、強制力のある規制の実施」などのほか、「他国に比べ感染者を低く抑えながら、GDPの減少幅も小さい」「経済への影響を最低限にとどめている」といった経済面での評価もあった。
ただ、前回は肯定的評価がほぼ100%に達していたのに対し、今回は「どちらとも言えない」が17.5%で、わずかだが「評価しない」との回答もあった。「規制が厳格過ぎる」や「宗教がらみのクラスター(感染者集団)など、同じことを繰り返している」「ワクチンの供給策では主要国に後れを取った」などがその理由だ。
アンケートの後編では、日系企業の今後の見通しや残された課題などについてみていく。
※NNA韓国版では「新型コロナ発生から1年」と題して、2月中に関連記事を不定期で掲載していきます。どうぞご期待ください。

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韓国市場で事業展開する日系企業にとっては、日韓関係の悪化が続く中、新型コロナによる営業活動の制限や消費低迷が追い打ちとなる厳しい1年となった。また、移動制限によるビジネス往来の停止は業務への影響だけでなく、安易に帰国できない駐在員のストレスにもなっている。
■ほとんどの日系で影響依然
アジア最大の売り場面積を誇ったカジュアル衣料品ブランド「ユニクロ」の明洞中央店の閉店(韓国の繁華街・明洞の現地ルポを近く掲載予定)に象徴されるように、日系企業の多くが韓国政府の厳格なコロナ感染防止策や消費の冷え込みの影響を受けた。
コロナによる事業への影響度合いについての設問でも、「ある程度出ている」と「深刻に出ている」を合わせると90.0%に達し、昨年5月に実施した前回調査時(88.9%)を若干上回った。「出ていない」は1割にとどまった。具体的には、「減益」(36.1%)と「赤字」(8.3%)を合わせて、回答者の4割強が業績の悪化を挙げた。数字で見ると、「50%以上の減益」が全体の25.0%を占めた。
業績以外の影響としては、前回同様に「(対面を避けるため)営業活動がままならない」という意見が最も多い。また、「物流の混乱や需要の乱高下」のほか、「日韓の移動が困難なため人事異動がストップした」「帰国の制限が仕事のモチベーションに影響している」といった回答も寄せられた。
■時差出勤と在宅の併用主流に
テレワークの実施については明確な変化があった。「現在も実施している」は前回の18.1%から今回は80.0%に跳ね上がった一方、「一度も実施していない」は前回の30.6%から12.5%に半減した。感染防止を徹底する韓国政府の勧告もあり、テレワークは今や定着した感がある。
テレワークを導入している企業の多くが、感染状況に応じてローテーションでの在宅勤務や時差出勤を併用して運営しているようだ。また、「場所を選ばすリモートワークを奨励」や「サテライトオフィスを2カ所設けた」という企業もみられた。
テレワークをいつまで続けるかについては各社各様で、警戒レベルの段階では「1.5段階」(25.0%)を終了の目安としている企業が最も多く、「コロナが終息するまで」は9.4%となった。一方、前回は皆無に近かった「コロナに関係なく継続予定」が12.5%に上ったことは、1年にわたって「ウィズコロナ」と向き合う中でいや応なしに迫られた変化の象徴的な例だろう。
■防疫措置はおおむね高評価
韓国政府の一連の防疫措置については、「評価する」が72.5%で、「高く評価する」の7.5%を合わせると、全体の8割が肯定的な評価を下した。その理由については、最近の取り組みとして「PCR検査の無料化や臨時施設(簡易検査所)の迅速な整備」「警戒レベルの適用基準と内容が明確」「5人以上の私的な集まり禁止や店舗の営業規制、強制力のある規制の実施」などのほか、「他国に比べ感染者を低く抑えながら、GDPの減少幅も小さい」「経済への影響を最低限にとどめている」といった経済面での評価もあった。
ただ、前回は肯定的評価がほぼ100%に達していたのに対し、今回は「どちらとも言えない」が17.5%で、わずかだが「評価しない」との回答もあった。「規制が厳格過ぎる」や「宗教がらみのクラスター(感染者集団)など、同じことを繰り返している」「ワクチンの供給策では主要国に後れを取った」などがその理由だ。
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