シンガポールの労働市場に陰りが出ている。2022年7~9月期の雇用統計によると、人員整理数は前四半期から倍増し、失業率も2カ月ぶりに2%台となった。雇用増加数は過去最高水準を記録したが、新型コロナウイルス禍で減少した外国人労働者の欠員補充が続いているためで、国民や永住権(PR)保持者の新規雇用の伸びは鈍化している。今後はインフレ加速に伴う世界経済の低迷が、国内の労働市場に悪影響を及ぼす見通しだ。
シンガポールの7~9月期の雇用統計で、労働市場に陰りが出ていることが明らかになった=シンガポール中心部(NNA撮影)
人材開発省が28日に発表した雇用統計(速報値)で、7~9月期の人員整理対象者は1,600人となり、830人と過去最低水準だった4~6月期の約2倍に増えた。コロナ禍前の18~19年の四半期平均値(2,680人)は下回った。
業種別の人員整理数は、サービス業が前四半期比1.8倍の1,100人、製造業が2.9倍の500人でそれぞれ大幅に拡大した。建設業は4~6月期に50人だったが、7~9月期はゼロだった。
サービス業では、企業の事業・組織再編に伴う人員整理が多かった。製造業は生産ライン停止の影響が目立った。インフレ加速や地政学的な緊張の高まりなども人員整理の背景にある。
9月末時点の失業率(外国人を含む全体、季節調整済み)は2.0%。6年ぶりの低水準を記録した8月末時点の1.9%を上回り、2カ月ぶりに2%台となった。国民と永住権(PR)保持者は8月末時点の2.7%から2.9%、国民は2.8%から3.1%へとそれぞれ悪化した。
7~9月期の雇用増加数(前四半期比、外国人メイドを除く)は7万5,600人で、統計の公開を始めた1991年以来、最も高い水準となった。業種別ではサービス業(3万3,000人)、建設業(3万500人)の増加が目立った。製造業(1万2,100人)の増加数は前四半期から低下した。
雇用増加数の大半は外国人が占めた。人材開発省によると、特に建設業、製造業で増加し、コロナ禍前の水準に戻りつつある。
国民・永住権保持者も増加したが、前四半期に比べて伸びが鈍化した。情報通信や専門サービス、金融サービスは堅調だが、事務&支援サービスの雇用が鈍った。
■売り手市場も賃上げに慎重
7~9月期の雇用統計では、労働市場の需給が逼迫(ひっぱく)する中、企業が賃上げに慎重になっていることも浮き彫りとなった。世界経済の不透明感が増していることが背景にある。
向こう3カ月で新規採用を検討している企業の比率は9月に69.3%となり、5四半期連続で上昇した。一方、向こう3カ月で賃金を引き上げると回答した企業は27.1%で、2四半期連続で低下した。
人材開発省は「インフレ加速などを受けて今後数カ月で世界経済を取り巻く環境が悪化する恐れがあり、国内の労働市場にも悪影響を与える。企業の採用意欲は高まっているが、観光業が好調な一方、製造業は低迷するなど業種によって雇用状況に差が出る」と予測した。
object(WP_Post)#9817 (24) {
["ID"]=>
int(9846)
["post_author"]=>
string(1) "3"
["post_date"]=>
string(19) "2022-10-31 00:00:00"
["post_date_gmt"]=>
string(19) "2022-10-30 15:00:00"
["post_content"]=>
string(4228) "シンガポールの労働市場に陰りが出ている。2022年7~9月期の雇用統計によると、人員整理数は前四半期から倍増し、失業率も2カ月ぶりに2%台となった。雇用増加数は過去最高水準を記録したが、新型コロナウイルス禍で減少した外国人労働者の欠員補充が続いているためで、国民や永住権(PR)保持者の新規雇用の伸びは鈍化している。今後はインフレ加速に伴う世界経済の低迷が、国内の労働市場に悪影響を及ぼす見通しだ。[caption id="attachment_9848" align="aligncenter" width="620"]シンガポールの7~9月期の雇用統計で、労働市場に陰りが出ていることが明らかになった=シンガポール中心部(NNA撮影)[/caption]
人材開発省が28日に発表した雇用統計(速報値)で、7~9月期の人員整理対象者は1,600人となり、830人と過去最低水準だった4~6月期の約2倍に増えた。コロナ禍前の18~19年の四半期平均値(2,680人)は下回った。
業種別の人員整理数は、サービス業が前四半期比1.8倍の1,100人、製造業が2.9倍の500人でそれぞれ大幅に拡大した。建設業は4~6月期に50人だったが、7~9月期はゼロだった。
サービス業では、企業の事業・組織再編に伴う人員整理が多かった。製造業は生産ライン停止の影響が目立った。インフレ加速や地政学的な緊張の高まりなども人員整理の背景にある。
9月末時点の失業率(外国人を含む全体、季節調整済み)は2.0%。6年ぶりの低水準を記録した8月末時点の1.9%を上回り、2カ月ぶりに2%台となった。国民と永住権(PR)保持者は8月末時点の2.7%から2.9%、国民は2.8%から3.1%へとそれぞれ悪化した。
7~9月期の雇用増加数(前四半期比、外国人メイドを除く)は7万5,600人で、統計の公開を始めた1991年以来、最も高い水準となった。業種別ではサービス業(3万3,000人)、建設業(3万500人)の増加が目立った。製造業(1万2,100人)の増加数は前四半期から低下した。
雇用増加数の大半は外国人が占めた。人材開発省によると、特に建設業、製造業で増加し、コロナ禍前の水準に戻りつつある。
国民・永住権保持者も増加したが、前四半期に比べて伸びが鈍化した。情報通信や専門サービス、金融サービスは堅調だが、事務&支援サービスの雇用が鈍った。
■売り手市場も賃上げに慎重
7~9月期の雇用統計では、労働市場の需給が逼迫(ひっぱく)する中、企業が賃上げに慎重になっていることも浮き彫りとなった。世界経済の不透明感が増していることが背景にある。
向こう3カ月で新規採用を検討している企業の比率は9月に69.3%となり、5四半期連続で上昇した。一方、向こう3カ月で賃金を引き上げると回答した企業は27.1%で、2四半期連続で低下した。
人材開発省は「インフレ加速などを受けて今後数カ月で世界経済を取り巻く環境が悪化する恐れがあり、国内の労働市場にも悪影響を与える。企業の採用意欲は高まっているが、観光業が好調な一方、製造業は低迷するなど業種によって雇用状況に差が出る」と予測した。
"
["post_title"]=>
string(78) "労働市場に陰り、7~9月期雇用増加数が過去最高水準も"
["post_excerpt"]=>
string(0) ""
["post_status"]=>
string(7) "publish"
["comment_status"]=>
string(4) "open"
["ping_status"]=>
string(4) "open"
["post_password"]=>
string(0) ""
["post_name"]=>
string(198) "%e5%8a%b4%e5%83%8d%e5%b8%82%e5%a0%b4%e3%81%ab%e9%99%b0%e3%82%8a%e3%80%81%ef%bc%97%ef%bd%9e%ef%bc%99%e6%9c%88%e6%9c%9f%e9%9b%87%e7%94%a8%e5%a2%97%e5%8a%a0%e6%95%b0%e3%81%8c%e9%81%8e%e5%8e%bb%e6%9c%80"
["to_ping"]=>
string(0) ""
["pinged"]=>
string(0) ""
["post_modified"]=>
string(19) "2022-10-31 04:00:10"
["post_modified_gmt"]=>
string(19) "2022-10-30 19:00:10"
["post_content_filtered"]=>
string(0) ""
["post_parent"]=>
int(0)
["guid"]=>
string(33) "https://nnaglobalnavi.com/?p=9846"
["menu_order"]=>
int(0)
["post_type"]=>
string(4) "post"
["post_mime_type"]=>
string(0) ""
["comment_count"]=>
string(1) "0"
["filter"]=>
string(3) "raw"
}
- 国・地域別
-
シンガポール情報
- 内容別
-
ビジネス全般人事労務