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ニューデリーで「京友禅サリー」展示販売会

京都工芸染匠協同組合(京都市)はこのほど、インドの首都ニューデリーで京友禅サリー展示販売会を開催した。絹の生地に筆で絵を描くように染色していく伝統技術「京友禅」は着物離れから職人が減っており、継承者を育てる上で、生地の使用量が近い「サリー」に活路を見出した。会場には同組合の正規会員である染匠工房10社が参加し、計14点の作品を紹介した。

ニューデリーで開かれた京友禅サリーの展示販売会。京都工芸染匠協同組合に所属する10社、計14作品が並んだ=13日(NNA撮影)

インド人女性の伝統衣装、サリーは幅が1.1メートル、長さが5.5メートルもある一枚の布で、体に巻きつけて着用する。一方、着物の反物(小幅)は幅が30~40センチメートル、長さが12メートルあり、布の面積としてはサリーとおおよそ似ている。
京都工芸染匠協同組合の竹鼻進理事長はNNAに対し、「生活スタイルの変化に伴い着物離れが進むなか、伝統産業の保護と担い手の育成を目指し、昨年度から本格的に京友禅サリーの製作に取り組み始めた」と話す。同組合が立ち上げた「サリー・プロダクト開発・海外市場開拓プロジェクト」は京都府の補助金対象事業にも選定されている。
会場に陳列された京友禅サリーはあくまで、日本の図案や色彩を採用し、「日本の伝統美を打ち出した作品となる」(竹鼻氏)。ただ、課題も少なくなかった。染色面積が近いとはいえ、幅は反物の3倍以上ある。欧州から広幅の機械を取り寄せ、生地を作成。筆やはけは手持ちで対応できたが、それ以外は既存の道具を改良した。
染色についても、平面的な構成の着物に対し、腰に巻き付けながら、途中で幾層にも折り畳みドレープを作り、端の部分は肩から1.5メートルほど垂らすという立体的な着方のサリーとでは、柄の見せ場が違ってくる。竹鼻氏は2年半近く試行錯誤を重ねてきたという。
小売り希望価格は柄(手染め)の分量や技術にもよるが、70万~90万円を想定し、富裕層に照準を定めている。展示会での評判は上々で、ニューデリーの会場では「試着すると思っていた以上に柄が美しく見える」「サリーより生地は厚いが、重たく感じない」「日本では古典的な柄や色も、インドではモダンに映る」といった声があった。
ニューデリーと同時開催となった東京の展示会では、インド人女性の間で青地に雪の柄を施した一枚が人気で、竹鼻氏は「気候が異なるインドでは雪へのあこがれがあるようだった」と話す。また、昨年末に展示会を開いた南部ベンガルール(バンガロール)では、柄のモチーフが江戸時代の画家、伊藤若冲のものかと尋ねる来場者もおり、日本への造詣が深いと竹鼻氏が舌を巻く場面もあったという。
■生産枚数、過去50年で99%減
京友禅の生産枚数は1970年に年1,600万枚とピークを迎えたが、その後、「壊滅的な下降曲線をたどる」(竹鼻氏)。現在の生産枚数は70年比で0.8%程度。激減する枚数を販売価格の引き上げで補完し、職人の生業を維持してきたが、枚数が減れば仕事がないに等しく、育てるべき若手が飛び込める余地もない、というのが実情だ。竹鼻氏によると、現役の職人も70歳以上が75%を占め、高齢化が進んでいる。
インドの展示会は、日本企業のインド進出を支援するコンサルティング会社、EIJ(京都市)が企画し、現地在住の坂田マルハン美穂氏が京友禅プロモーターとして運営する。EIJの柴田洋佐(ようすけ)社長は「買う人が減ると、つくる人が減る。これは京友禅に限らず、日本の伝統工芸が直面している課題だ」と話す。会場には、京友禅サリーのほかに、飾りうちわや和紙を使ったノートなど京都の工芸品も展示された。

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ニューデリーと同時開催となった東京の展示会では、インド人女性の間で青地に雪の柄を施した一枚が人気で、竹鼻氏は「気候が異なるインドでは雪へのあこがれがあるようだった」と話す。また、昨年末に展示会を開いた南部ベンガルール(バンガロール)では、柄のモチーフが江戸時代の画家、伊藤若冲のものかと尋ねる来場者もおり、日本への造詣が深いと竹鼻氏が舌を巻く場面もあったという。
■生産枚数、過去50年で99%減
京友禅の生産枚数は1970年に年1,600万枚とピークを迎えたが、その後、「壊滅的な下降曲線をたどる」(竹鼻氏)。現在の生産枚数は70年比で0.8%程度。激減する枚数を販売価格の引き上げで補完し、職人の生業を維持してきたが、枚数が減れば仕事がないに等しく、育てるべき若手が飛び込める余地もない、というのが実情だ。竹鼻氏によると、現役の職人も70歳以上が75%を占め、高齢化が進んでいる。
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