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関電、住友ゴムの工場に再エネ屋根置き太陽光発電で世界最大級

関西電力のタイ法人、関西エナジーソリューションズタイランド(K—EST)は21日、住友ゴム工業のタイ工場に屋根置き太陽光発電システムと、ガスコージェネレーション(熱電併給)システムを設置すると発表した。出力は太陽光が22メガワット、コージェネが13メガワットとなり、単一の事業所が設置する屋根置きの太陽光発電システムの規模としては世界で最大級。同工場では年間3万8,000トンの二酸化炭素(CO2)削減が見込めるという。

K—ESTは住友ゴム工業のタイ工場に屋根置き太陽光パネル4万枚と、コージェネレーションシステムを導入する=タイ・ラヨーン県(パネル設置後の予想図、K—EST提供)

K—ESTが太陽光発電とコージェネシステムを設置したのは、住友ゴムの子会社、スミトモラバータイランドが東部ラヨーン県で運営する工場で、乗用車や農業・産業車両、二輪車のタイヤを生産している。同工場では太陽光パネルを約4万枚と、出力6.6メガワットのコージェネシステムを2台設置。生成された電力と蒸気の全量を、工場で利用しているエネルギーの代替として供給する。
発電システムは、設計から運用までをK—ESTがワンストップで実施する「オンサイトサービス」。企業は設置費用を負担する必要がなく、サービス料金をK—ESTに支払う。K—ESTの矢木秀典ゼネラル・マネジャーによると、メンテナンスは日系のパートナー企業が手がける。年内にも着工予定で、24年度にはシステムが稼働する見通し。スミトモラバータイランドのプロジェクトは日本の環境省の「二国間クレジット制度(JCM)」資金支援事業にも採択された。
同プロジェクトでは、関西電力が再生可能エネルギーで発電された電力の調達を証明する「再生可能エネルギー証書(I—REC)」(グリーン電力証書)の取得も請け負った。I—RECの取得により、同工場で使用する電気エネルギーをゼロカーボン化するという。K—ESTによると、「スミトモラバータイランドの工場に供給するI—RECは、タイ国内のゴムの木を製材して残る枝や根などの廃材を主燃料とするバイオマス発電由来の再エネ価値」であり、「住友ゴムが掲げる『持続可能な天然ゴム方針』にも貢献する」と説明する。タイのバイオマス発電では、もみ殻やサトウキビの残渣(ざんさ)が使用されることが多く、ゴムの木の廃材が使われることは珍しい。
■相次ぐ大型受注、I—RECも
関西電力は18年にタイに現地法人を設立。これまでタイでは太陽光発電を約70メガワット、コージェネを約20メガワット分受注している。21年にはアルミニウム圧延日本最大手のUACJのラヨーン工場に太陽光パネルを4万枚設置。出力は18メガワットとなり、屋根置きの太陽光発電としては当時の世界最大級となった。年間のCO2排出削減量は、同工場の排出量の6%に当たる1万4,000トンを見込む。また、帝人フロンティア(大阪市)のグループ企業、テイジン(タイランド)が中部アユタヤ県で運営するポリエステル繊維工場では、コージェネ設備を導入。21年9月に稼働した。こちらのプロジェクトもJCMに採用されており、年間1万8,000トンのCO2削減が見込める。
このほか、21年にはソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS、神奈川県厚木市)の生産拠点ソニーデバイステクノロジー(タイランド)にも屋根置き太陽光パネルを設置。太陽光発電による年間1万8,000トンのCO2削減に加え、I—RECの調達・供給を通じて、同工場で使用する電気エネルギーのゼロカーボン化を実現した。
関西電力は21年にベトナムの現地法人、関西エナジーソリューションズ(ベトナム=K—ESV)を設立。同国でも多数のオンサイトサービスを受注しており、一部はJCMに採用されている。
タイでは、18~37年の電力開発計画(PDP2018)に続く新電力開発計画(PDP2022)が昨年に発表されるとみられていたが、現時点では明らかにされていない。それでも、電源に占める再生可能エネルギーの割合が拡充されることは確実で、今後も企業によるCO2削減の需要が弱まることはない。矢木氏は、「太陽光パネルの設置だけでなく、コージェネや高効率チラー、ボイラーによる熱供給など複合的なソリューション」に加え、「効率的な運用のノウハウ」を武器として、受注を目指していくと説明。タイでの累積の発電容量を、まずは100メガワットにしていく目標を示した。

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■相次ぐ大型受注、I—RECも
関西電力は18年にタイに現地法人を設立。これまでタイでは太陽光発電を約70メガワット、コージェネを約20メガワット分受注している。21年にはアルミニウム圧延日本最大手のUACJのラヨーン工場に太陽光パネルを4万枚設置。出力は18メガワットとなり、屋根置きの太陽光発電としては当時の世界最大級となった。年間のCO2排出削減量は、同工場の排出量の6%に当たる1万4,000トンを見込む。また、帝人フロンティア(大阪市)のグループ企業、テイジン(タイランド)が中部アユタヤ県で運営するポリエステル繊維工場では、コージェネ設備を導入。21年9月に稼働した。こちらのプロジェクトもJCMに採用されており、年間1万8,000トンのCO2削減が見込める。
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