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【アジア本NOW】『韓国文学の中心にあるもの』

ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心にNNA編集スタッフがセレクト。今号は、韓国文学ブームをけん引する人気翻訳家が手がけたブックガイド。

◆名作は傷痕から生まれた
ここ数年、日本で人気が広がる韓国文学。ブームのきっかけを作った『82年生まれ、キム・ジヨン』など、話題作を数多く手がける翻訳家・斎藤真理子さんが韓国文学の案内書を出版した。
ブームが起きた2010年後半を起点に植民地支配から解放された1945年までさかのぼりながら、それぞれの時代を象徴する作品を章ごとに紹介。社会的背景や歴史の解説に加えて日本との対比も入れ、韓国文学の底流を探る。
各章のテーマは、女性差別に怒りの声を上げた「#MeToo運動」、多数の若者が犠牲になった旅客船セウォル号沈没事故、格差社会を生んだアジア通貨危機、光州事件をはじめとした民主化運動、国土を分断した朝鮮戦争など。「韓国は重い歴史をくぐりぬけてきた」と前書きで記すように、紹介される作品もずしりとした量感だ。
軍事独裁政権により表現の自由が奪われ、文学作品にも厳しい検閲があった。規制をくぐり抜けるため文学界では詩が盛んに書かれたといい、民主化運動の犠牲者を弔った詩を通じて当時の状況を生々しく伝える。
寡作の作家、チョ・セヒが1978年に発表した『こびとが打ち上げた小さなボール』も同様。都市開発が生んだ経済的ひずみと、専制がもたらした暴力はびこる社会を投影したベストセラー小説だが、発禁を免れるためにファンタジー風の筆致を用いた。
2016年に邦訳が発売されたが、主人公「こびと」一家の正しく生きても報われない姿に「人ごととは思えない」との声が多数届いたというエピソードも興味深い。
斎藤氏が紹介する文学作品を通じて、読者は韓国の歴史に刻まれた傷の多さを知る。作家たちは傷痕と向き合い、書くことで修復を促進してきたとの解説に、その生命力が読者を引きつけるのだと納得した。
韓国文化に精通した著者の知見と情報量は圧倒的で、文学や歴史に興味がある人もない人も新しい気付きが得られるだろう。
◇  ◇  ◇  ◇  ◇
『韓国文学の中心にあるもの』
2022年7月16日
斎藤真理子(著)
イースト・プレス 1,650円 電子版あり
──────────────────────────────
■その他のBOOK LIST
※紹介文は版元から引用(原文ママ)

『高所得時代の中国経済を読み解く』
2022年12月27日
丸川知雄、徐一睿、穆尭芊(編)
東京大学出版会 4,290円
いまや世界経済を牽引する経済大国となり、1人あたりのGDPも1万ドルを超える中国。名実ともに経済大国となった中国経済を、あらゆる角度から分析し、その現状・課題・未来を見通す最新の論考。
◇  ◇  ◇  ◇  ◇

『台湾はおばちゃんで回ってる?!』
2022年12月8日
近藤弥生子(著)
大和書房 858円 電子版あり
スルー能力が高くてストレートな物言い。多様性に富んでいて同調圧力がない。食を大切にし、困ったらみんなで助け合う。(中略)「細かいことを気にせずやりながら考えよう」、そんなふうに思わせてくれる、台湾での暮らしを綴ったエッセイ。
◇  ◇  ◇  ◇  ◇

『人類学者がのぞいた北朝鮮 苦難と微笑の国』
2022年9月26日
鄭炳浩(著)、金敬黙、徐淑美(訳)
青土社 3,520円 電子版あり
高圧的な官僚、マスゲームの子どもたち、地方の闇市場で活躍する主婦、平壌の観光客向けホテルで働く教育ママ、空腹で国境をさまようコッチェビ、故郷を恋しがる脱北者——。韓国の文化人類学者が、現地の経験から得た豊富なエピソードと分析から、知られざる北朝鮮の実態を描き出す。
◇  ◇  ◇  ◇  ◇

『インド外交の流儀 先行き不透明な世界に向けた戦略』
2022年11月25日
S・ジャイシャンカル(著)、笠井亮平(訳)
白水社 3,630円
本書は、台頭著しいインドがどのような外交を展開していくのか、そして変貌する世界の中でどのような役割を果たしていくのかについての見取図を示したものである。(中略)国益を冷徹に追求するとともに国際的地位の向上をめざし、国際社会との調和を図っていくというインド外交の要諦が明確に論じられている。
◇  ◇  ◇  ◇  ◇

『JK、インドで常識ぶっ壊される』
2021年12月27日
熊谷はるか(著)
河出書房新社 1,540円 電子版あり
普通の女子高生が、突然インドへ引っ越すことに。豊かな人が車を走らせる横で、1台のバイクに4人乗りする家族。スラムでの出会い。格差社会の光と影を描く女子高生視線のインド滞在記。
※特集「アジア本NOW」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2023年2月号<https://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。

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ブームが起きた2010年後半を起点に植民地支配から解放された1945年までさかのぼりながら、それぞれの時代を象徴する作品を章ごとに紹介。社会的背景や歴史の解説に加えて日本との対比も入れ、韓国文学の底流を探る。
各章のテーマは、女性差別に怒りの声を上げた「#MeToo運動」、多数の若者が犠牲になった旅客船セウォル号沈没事故、格差社会を生んだアジア通貨危機、光州事件をはじめとした民主化運動、国土を分断した朝鮮戦争など。「韓国は重い歴史をくぐりぬけてきた」と前書きで記すように、紹介される作品もずしりとした量感だ。
軍事独裁政権により表現の自由が奪われ、文学作品にも厳しい検閲があった。規制をくぐり抜けるため文学界では詩が盛んに書かれたといい、民主化運動の犠牲者を弔った詩を通じて当時の状況を生々しく伝える。
寡作の作家、チョ・セヒが1978年に発表した『こびとが打ち上げた小さなボール』も同様。都市開発が生んだ経済的ひずみと、専制がもたらした暴力はびこる社会を投影したベストセラー小説だが、発禁を免れるためにファンタジー風の筆致を用いた。
2016年に邦訳が発売されたが、主人公「こびと」一家の正しく生きても報われない姿に「人ごととは思えない」との声が多数届いたというエピソードも興味深い。
斎藤氏が紹介する文学作品を通じて、読者は韓国の歴史に刻まれた傷の多さを知る。作家たちは傷痕と向き合い、書くことで修復を促進してきたとの解説に、その生命力が読者を引きつけるのだと納得した。
韓国文化に精通した著者の知見と情報量は圧倒的で、文学や歴史に興味がある人もない人も新しい気付きが得られるだろう。
◇  ◇  ◇  ◇  ◇
『韓国文学の中心にあるもの』
2022年7月16日
斎藤真理子(著)
イースト・プレス 1,650円 電子版あり
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■その他のBOOK LIST
※紹介文は版元から引用(原文ママ)

『高所得時代の中国経済を読み解く』
2022年12月27日
丸川知雄、徐一睿、穆尭芊(編)
東京大学出版会 4,290円
いまや世界経済を牽引する経済大国となり、1人あたりのGDPも1万ドルを超える中国。名実ともに経済大国となった中国経済を、あらゆる角度から分析し、その現状・課題・未来を見通す最新の論考。
◇  ◇  ◇  ◇  ◇

『台湾はおばちゃんで回ってる?!』
2022年12月8日
近藤弥生子(著)
大和書房 858円 電子版あり
スルー能力が高くてストレートな物言い。多様性に富んでいて同調圧力がない。食を大切にし、困ったらみんなで助け合う。(中略)「細かいことを気にせずやりながら考えよう」、そんなふうに思わせてくれる、台湾での暮らしを綴ったエッセイ。
◇  ◇  ◇  ◇  ◇

『人類学者がのぞいた北朝鮮 苦難と微笑の国』
2022年9月26日
鄭炳浩(著)、金敬黙、徐淑美(訳)
青土社 3,520円 電子版あり
高圧的な官僚、マスゲームの子どもたち、地方の闇市場で活躍する主婦、平壌の観光客向けホテルで働く教育ママ、空腹で国境をさまようコッチェビ、故郷を恋しがる脱北者——。韓国の文化人類学者が、現地の経験から得た豊富なエピソードと分析から、知られざる北朝鮮の実態を描き出す。
◇  ◇  ◇  ◇  ◇

『インド外交の流儀 先行き不透明な世界に向けた戦略』
2022年11月25日
S・ジャイシャンカル(著)、笠井亮平(訳)
白水社 3,630円
本書は、台頭著しいインドがどのような外交を展開していくのか、そして変貌する世界の中でどのような役割を果たしていくのかについての見取図を示したものである。(中略)国益を冷徹に追求するとともに国際的地位の向上をめざし、国際社会との調和を図っていくというインド外交の要諦が明確に論じられている。
◇  ◇  ◇  ◇  ◇

『JK、インドで常識ぶっ壊される』
2021年12月27日
熊谷はるか(著)
河出書房新社 1,540円 電子版あり
普通の女子高生が、突然インドへ引っ越すことに。豊かな人が車を走らせる横で、1台のバイクに4人乗りする家族。スラムでの出会い。格差社会の光と影を描く女子高生視線のインド滞在記。
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