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【日本の税務】社会保障協定について

第297回
江口さん:みらいさん、こんにちは。弊社では、フィンランド現地法人への社員の出向を考えています。日本の社会保険に加入している場合でも、フィンランドの社会保障制度へ加入する必要があるのでしょうか?
みらい:まず、日本から海外に派遣される者に対する社会保険の取り扱いからご説明しましょう。日本から海外の現地法人に赴任する場合、赴任先の国の社会保障制度に加入する必要があります。しかし、健康保険や将来の年金受給の観点から、海外赴任中も引き続き日本の社会保険に加入しているケースがあります。そのため、結果的に日本と海外の社会保障制度に二重加入することとなり、保険料も二重で負担しなくてはならないことがあります。また、年金を受給するためには、一定の期間社会保障制度に加入していなければならない場合があり、保険料の掛け捨てといったことが起こります。そこで、こうした問題を解消するため、日本はいくつかの国々と二国間で「社会保障協定」を締結しています。フィンランドとの間でもこの協定を結んでいます。
江口さん:「社会保障協定」ですか?具体的にどういったものなのか教えてください。
みらい:はい。わかりました。社会保障協定を締結している国同士では、原則、就労する国の社会保障制度のみに加入することになります。たとえば、日本の企業から協定相手国の現地法人に派遣された場合には、相手国の社会保障制度のみに加入することになります。ただし、5年を超えない見込みで協定相手国に派遣される場合には、例外規定が適用され、引き続き日本の社会保障制度のみに加入し、相手国の社会保障制度加入が免除されます。年金については、年金を受けるために必要とされる加入期間は、日本と相手国との年金加入期間が相互に通算されることになります。なお、相手国の社会保障制度加入が免除されるためには、日本の社会保障制度に加入していることを証明する「適用証明書」の交付を受ける必要がありますので、会社から年金事務所へ「適用証明書交付申請書」を提出してください。審査の結果、申請が認められた場合には、「適用証明書」が交付されます。
江口さん:今回、フィンランドへの出向は5年間の予定なので、申請が認められれば、日本の社会保障制度に引き続き加入し、フィンランドの社会保障制度加入は免除されるということですね。
みらい:そのとおりです。フィンランドについては、年金・雇用保険は日本で加入していれば、フィンランドで適用除外可能となり、年金加入期間の通算も行われます。
江口さん:もし、当初の予定の5年を超えて出向することになった場合は、どのようになりますか?
みらい:延長申請を行い、両国の合意を得ることができれば、引き続き相手国の社会保障制度加入が免除されます。合意が得られなかった場合には、日本の社会保険の資格は喪失し、相手国の社会保障制度のみへの加入となりますが、「厚生年金特例加入制度」により、任意で日本の厚生年金に加入することができます。
江口さん:そうなのですね。ところで、フィンランド以外に社会保障協定が締結されている国はどこでしょうか。
みらい:協定の発効状況は(図表1)のとおりです。
江口さん:わかりました。ありがとうございました。
筆者:みらいコンサルティンググループ/提供:NNA(先行連載)

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江口さん:「社会保障協定」ですか?具体的にどういったものなのか教えてください。
みらい:はい。わかりました。社会保障協定を締結している国同士では、原則、就労する国の社会保障制度のみに加入することになります。たとえば、日本の企業から協定相手国の現地法人に派遣された場合には、相手国の社会保障制度のみに加入することになります。ただし、5年を超えない見込みで協定相手国に派遣される場合には、例外規定が適用され、引き続き日本の社会保障制度のみに加入し、相手国の社会保障制度加入が免除されます。年金については、年金を受けるために必要とされる加入期間は、日本と相手国との年金加入期間が相互に通算されることになります。なお、相手国の社会保障制度加入が免除されるためには、日本の社会保障制度に加入していることを証明する「適用証明書」の交付を受ける必要がありますので、会社から年金事務所へ「適用証明書交付申請書」を提出してください。審査の結果、申請が認められた場合には、「適用証明書」が交付されます。
江口さん:今回、フィンランドへの出向は5年間の予定なので、申請が認められれば、日本の社会保障制度に引き続き加入し、フィンランドの社会保障制度加入は免除されるということですね。
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江口さん:もし、当初の予定の5年を超えて出向することになった場合は、どのようになりますか?
みらい:延長申請を行い、両国の合意を得ることができれば、引き続き相手国の社会保障制度加入が免除されます。合意が得られなかった場合には、日本の社会保険の資格は喪失し、相手国の社会保障制度のみへの加入となりますが、「厚生年金特例加入制度」により、任意で日本の厚生年金に加入することができます。
江口さん:そうなのですね。ところで、フィンランド以外に社会保障協定が締結されている国はどこでしょうか。
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