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テレワーク、アジアでも浸透シンガポール6割、働き方改革で

NNAが中国を除くアジア太平洋地域の日系企業駐在員らを対象に実施した調査で、テレワークを一部導入しているとの回答が3割近くに上った。シンガポールやオーストラリアでは6割を超え、その他の国・地域もおおむね2桁台になった。新型コロナウイルス禍を機に、アジアの企業の間で勤務体系を見直す動きが広がったとみられる。テレワーク導入の理由は「働き方改革の一環として」との回答が最も多かった。
調査は4月21日から27日にかけて、アジア太平洋16カ国・地域の日系企業駐在員らを対象に実施した。有効回答数は492件。
工場を除く職場での現在の勤務体系を尋ねた質問で「出社とテレワークを組み合わせたハイブリッド勤務」との回答率はシンガポールが64.5%、オーストラリアが63.9%と突出して高かった。それ以外のアジアの国・地域は「基本は全員出社」が過半を占めたが、ハイブリッド勤務の割合は韓国41.2%、インド31.0%、マレーシア25.9%、香港22.5%、インドネシア20.9%、回答数の少ないミャンマーを除くと最も低いベトナムでも10.0%と、一定の浸透がうかがえた。
ハイブリッド勤務または「出社必須な日を除いて基本はテレワーク」との回答(合計142件)について、その理由(複数回答)を尋ねたところ、「働き方改革の一環として」が114件で最も多かった。以下、「人材定着・採用活動等で有利になるため」も68件に上り、職場環境の改善に向けた取り組みの一環として導入が進んでいることが分かった。
コロナ禍を経た業務体制の見直しとして導入した施策(複数回答)を尋ねた質問でも、「恒久的なテレワークの導入(部署限定、週1日だけなど部分導入含む)」が、有効回答数の約3割となる154件に上った。

マスクを外した人の姿が普通になってきたシンガポールの中心部=2日(NNA撮影)

同質問では、「商談や社内会議でのオンラインツールの積極的活用」との回答が396件と最も多かった。次いで「社内書類手続きのデジタル化」が158件と、業務のデジタル化が進んだことも、テレワークの導入を後押ししているとみられる。
このほか、「海外出張の管理強化(コストや必要性、現地のビザ関連規制の確認徹底など)」も105件あり、国・地域別では韓国、インドネシアで2番目、タイ、シンガポールで3番目に多かった。コロナ禍を機に出張の必要性を見直す動きが少なからずあるようで、「コロナ禍で出張をせずに業務が回ったため、規制緩和後も出張しないことがベースとなっており日本側の理解を得難い」(シンガポール/金融・保険・証券)といった声もあった。


■コロナの事業への影響薄れる

調査では、事業活動で今も新型コロナによるマイナスの影響を感じているかどうかについても尋ねた。全体では「あまり感じていない」が44.5%を占め最も多かった。以下「少し感じている」(29.9%)、「全く感じていない」(9.3%)、「非常に感じている」(8.5%)、「どちらともいえない」(3.9%)、「プラスの影響の方が大きい」(3.3%)、「もともと影響はなかった」(0.6%)の順だった。
「あまり感じていない」との回答は香港以外のほとんどの国・地域で最も多かった。インドネシア、フィリピン、インドでは5割を超え、台湾、韓国、タイ、ベトナム、シンガポール、オーストラリアも4割台と、コロナの影響が薄れているとする見方が色濃く出た。
マイナスの影響を「あまり感じてない」と答えた人では「社内でもめったに感染者が出なくなった。電子部品不足が回復し、客先からの注文数も安定化している」(タイ/小売り・卸売り)や、「ミーティングや渡航の制限はなくなり、コロナ対策がボトルネックではなくなった」(インドネシア/公的機関)と、感染者数の減少や各種制限の撤廃・緩和を受けた事業の正常化を実感する声が目立った。
「金利上昇などで世界的に消費が落ち込んでいる影響で生産はダウンしているが、コロナの影響ではない」(フィリピン/その他の製造業)と、景気は完全に回復していないものの原因はコロナ以外だとする声や、「セミナー活動や新規商談をコロナ以前と同様に実施できており、事業活動へのマイナスの影響はほぼ感じていない。一方、顧客によってはコロナによる業績の悪化などから解約につながるケースもあり、影響がゼロとはいえない」(台湾/サービス)と間接的な影響を指摘する声もあった。
一方、香港は「少し感じている」が40.0%で最多だったほか、「非常に感じている」も17.5%に上った。台湾やマレーシア、ミャンマーも10%以上が「非常に感じている」と回答した。香港では「中国本土への出張がまだ厳しい点」(その他の製造業)、「中国経済の回復が遅いから」(石油・化学・エネルギー)と、中国に起因する影響を理由に挙げる向きもあった。
ほかにマイナスの影響が比較的強く残るとする具体的な理由では「建設業に属しているため、回復にタイムラグがある。回復傾向に向かってはいるが、スピードは緩やかでかつ資材高騰の影響もある。受注競争が激しく採算も悪化している」(タイ/建設・不動産)と業界特有の事情や、「コロナを起因とした部品不足が今も尾を引いているため」(フィリピン/四輪・二輪車・部品)、「半導体入手難が継続しているため」(タイ/電機・電子・半導体)と、サプライチェーン(供給網)がまだ正常化に至っていないとの意見もあった。
■インド売上高、楽観的な見方強く
現地拠点の今年上半期(1~6月)の売上高について、コロナ禍前の2019年同期と比較してどの程度になるかの見通しを尋ねた質問では、国・地域によってばらつきが出た。
インドでは「大きく上回る」が37.9%を占め最多だった。マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピンなどでは「多少上回る」が最も多く、インドと東南アジア、オーストラリアで比較的楽観的な見方が強く出た。
売上高の増加を見込む声では「経済活動の完全復活」(インド/石油・化学・エネルギー)、「市場における需要の戻り」(インド/四輪・二輪車・部品)とコロナ禍からの脱却を実感する声のほか、「販売数量は微増だが、この数年で販売単価が大きく上昇したため」(オーストラリア/食品・飲料)、「そもそも2019年の業績が悪かった。原材料の値上げなどで販売単価が上がっている。自動車の電動化が進んでいることでビジネス機会が増加」(タイ/卸売り・小売り)とコロナ以外の要因を挙げる回答も少なくなかった。
ベトナムは東南アジアで唯一、今年上半期の売上高が19年同期と「同程度」になるとの回答が最も多かった。同様に東アジアは慎重な見方が優勢で、韓国は「同程度」が47.1%と半数近くを占めたほか、香港、台湾では「多少下回る」との回答が最多だった。

慎重な見方としては、世界経済の減速や景気後退を懸念する声が一定数あったほか、「コロナ特需が終了し、電子業界市況の潮目が変わり始めている」(香港/電機・電子・半導体)、「コロナ後の需要増から一転し需要急減となっている」(ベトナム/機械・機械部品)などと反動が出ているとの指摘もあった。
<アンケートの概要>
有効回答492件のうち、業種の内訳は製造業が40.2%、非製造業が52.4%、残りが公的機関などだった。国・地域別の内訳はタイ89件、ベトナム60件、インドネシア43件、香港40件、フィリピン39件、台湾37件、オーストラリア36件、シンガポール31件、インド29件、マレーシア27件、韓国17件、ミャンマー6件など。日本からの回答も32件あった。
※中国は諸事情により、今回の調査の対象から外しました。ご了承ください。

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調査は4月21日から27日にかけて、アジア太平洋16カ国・地域の日系企業駐在員らを対象に実施した。有効回答数は492件。
工場を除く職場での現在の勤務体系を尋ねた質問で「出社とテレワークを組み合わせたハイブリッド勤務」との回答率はシンガポールが64.5%、オーストラリアが63.9%と突出して高かった。それ以外のアジアの国・地域は「基本は全員出社」が過半を占めたが、ハイブリッド勤務の割合は韓国41.2%、インド31.0%、マレーシア25.9%、香港22.5%、インドネシア20.9%、回答数の少ないミャンマーを除くと最も低いベトナムでも10.0%と、一定の浸透がうかがえた。
ハイブリッド勤務または「出社必須な日を除いて基本はテレワーク」との回答(合計142件)について、その理由(複数回答)を尋ねたところ、「働き方改革の一環として」が114件で最も多かった。以下、「人材定着・採用活動等で有利になるため」も68件に上り、職場環境の改善に向けた取り組みの一環として導入が進んでいることが分かった。
コロナ禍を経た業務体制の見直しとして導入した施策(複数回答)を尋ねた質問でも、「恒久的なテレワークの導入(部署限定、週1日だけなど部分導入含む)」が、有効回答数の約3割となる154件に上った。
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同質問では、「商談や社内会議でのオンラインツールの積極的活用」との回答が396件と最も多かった。次いで「社内書類手続きのデジタル化」が158件と、業務のデジタル化が進んだことも、テレワークの導入を後押ししているとみられる。
このほか、「海外出張の管理強化(コストや必要性、現地のビザ関連規制の確認徹底など)」も105件あり、国・地域別では韓国、インドネシアで2番目、タイ、シンガポールで3番目に多かった。コロナ禍を機に出張の必要性を見直す動きが少なからずあるようで、「コロナ禍で出張をせずに業務が回ったため、規制緩和後も出張しないことがベースとなっており日本側の理解を得難い」(シンガポール/金融・保険・証券)といった声もあった。


■コロナの事業への影響薄れる

調査では、事業活動で今も新型コロナによるマイナスの影響を感じているかどうかについても尋ねた。全体では「あまり感じていない」が44.5%を占め最も多かった。以下「少し感じている」(29.9%)、「全く感じていない」(9.3%)、「非常に感じている」(8.5%)、「どちらともいえない」(3.9%)、「プラスの影響の方が大きい」(3.3%)、「もともと影響はなかった」(0.6%)の順だった。
「あまり感じていない」との回答は香港以外のほとんどの国・地域で最も多かった。インドネシア、フィリピン、インドでは5割を超え、台湾、韓国、タイ、ベトナム、シンガポール、オーストラリアも4割台と、コロナの影響が薄れているとする見方が色濃く出た。
マイナスの影響を「あまり感じてない」と答えた人では「社内でもめったに感染者が出なくなった。電子部品不足が回復し、客先からの注文数も安定化している」(タイ/小売り・卸売り)や、「ミーティングや渡航の制限はなくなり、コロナ対策がボトルネックではなくなった」(インドネシア/公的機関)と、感染者数の減少や各種制限の撤廃・緩和を受けた事業の正常化を実感する声が目立った。
「金利上昇などで世界的に消費が落ち込んでいる影響で生産はダウンしているが、コロナの影響ではない」(フィリピン/その他の製造業)と、景気は完全に回復していないものの原因はコロナ以外だとする声や、「セミナー活動や新規商談をコロナ以前と同様に実施できており、事業活動へのマイナスの影響はほぼ感じていない。一方、顧客によってはコロナによる業績の悪化などから解約につながるケースもあり、影響がゼロとはいえない」(台湾/サービス)と間接的な影響を指摘する声もあった。
一方、香港は「少し感じている」が40.0%で最多だったほか、「非常に感じている」も17.5%に上った。台湾やマレーシア、ミャンマーも10%以上が「非常に感じている」と回答した。香港では「中国本土への出張がまだ厳しい点」(その他の製造業)、「中国経済の回復が遅いから」(石油・化学・エネルギー)と、中国に起因する影響を理由に挙げる向きもあった。
ほかにマイナスの影響が比較的強く残るとする具体的な理由では「建設業に属しているため、回復にタイムラグがある。回復傾向に向かってはいるが、スピードは緩やかでかつ資材高騰の影響もある。受注競争が激しく採算も悪化している」(タイ/建設・不動産)と業界特有の事情や、「コロナを起因とした部品不足が今も尾を引いているため」(フィリピン/四輪・二輪車・部品)、「半導体入手難が継続しているため」(タイ/電機・電子・半導体)と、サプライチェーン(供給網)がまだ正常化に至っていないとの意見もあった。
■インド売上高、楽観的な見方強く
現地拠点の今年上半期(1~6月)の売上高について、コロナ禍前の2019年同期と比較してどの程度になるかの見通しを尋ねた質問では、国・地域によってばらつきが出た。
インドでは「大きく上回る」が37.9%を占め最多だった。マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピンなどでは「多少上回る」が最も多く、インドと東南アジア、オーストラリアで比較的楽観的な見方が強く出た。
売上高の増加を見込む声では「経済活動の完全復活」(インド/石油・化学・エネルギー)、「市場における需要の戻り」(インド/四輪・二輪車・部品)とコロナ禍からの脱却を実感する声のほか、「販売数量は微増だが、この数年で販売単価が大きく上昇したため」(オーストラリア/食品・飲料)、「そもそも2019年の業績が悪かった。原材料の値上げなどで販売単価が上がっている。自動車の電動化が進んでいることでビジネス機会が増加」(タイ/卸売り・小売り)とコロナ以外の要因を挙げる回答も少なくなかった。
ベトナムは東南アジアで唯一、今年上半期の売上高が19年同期と「同程度」になるとの回答が最も多かった。同様に東アジアは慎重な見方が優勢で、韓国は「同程度」が47.1%と半数近くを占めたほか、香港、台湾では「多少下回る」との回答が最多だった。

慎重な見方としては、世界経済の減速や景気後退を懸念する声が一定数あったほか、「コロナ特需が終了し、電子業界市況の潮目が変わり始めている」(香港/電機・電子・半導体)、「コロナ後の需要増から一転し需要急減となっている」(ベトナム/機械・機械部品)などと反動が出ているとの指摘もあった。
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有効回答492件のうち、業種の内訳は製造業が40.2%、非製造業が52.4%、残りが公的機関などだった。国・地域別の内訳はタイ89件、ベトナム60件、インドネシア43件、香港40件、フィリピン39件、台湾37件、オーストラリア36件、シンガポール31件、インド29件、マレーシア27件、韓国17件、ミャンマー6件など。日本からの回答も32件あった。
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