シンガポールの政府系投資会社GICの2023年3月末時点の運用利回り(米ドル建て、運用期間20年)は、物価変動の影響を除く実質ベースで年4.6%だった。世界経済の不確実性が高まる中、ポートフォリオ(資産の構成)を多様化していることが奏功し、15年3月末時点の4.9%以来8年ぶりの高水準となった。投資先としてはインフラ分野を重視。サステナビリティー(持続可能性)関連への投資も強化している。
GICの2023年3月末時点の運用利回りは4.6%で8年ぶりの高水準だった=シンガポール中心部(NNA撮影)
26日に公表した年次報告書によると、主要業績指標となる運用期間20年の実質運用利回りは23年3月末時点で、前年同月末から0.4ポイント上昇。04年に100米ドルを投資していた場合、現在は380米ドルとなる計算だ。
同利回りは新型コロナウイルス禍の影響で20年3月末に2.7%の低水準を記録したものの、21年3月末に4.3%まで急回復。22年3月末は前年同月末から0.1ポイント低下したが、23年3月末にはコロナ禍後の最高水準を記録した。
23年3月末時点の名目運用利回り(運用期間20年)は年6.9%で、前年同月末の7.0%から0.1ポイント低下した。運用期間10年では5.1%、同5年では3.7%だった。単年度の運用利回りは公表していない。
GICは「22年は世界経済にとって困難な年だった。インフレ加速による中央銀行の金融引き締め、ロシアのウクライナ侵攻、米中関係の悪化などが金融分野の緊張を高め、実体経済における信用状況を大きく逼迫(ひっぱく)させた」と指摘。ただ自社の多様化したポートフォリオや慎重な投資姿勢により、22年にかけて起きた市場調整の影響を和らげることができたと説明した。
■アジアの比重低下
GICの23年3月末時点の資産構成比は、債券・現金が全体の34%と最大。ただ前年同月末の37%からは低下した。公開株は、先進国で14%から13%に低下。新興国では16%から17%に増加した。
未公開株は17%、物価連動債は6%でそれぞれ横ばい。不動産は10%から13%に上昇した。
国・地域別では、米国が前年同月末から1ポイント拡大し、38%で最大だった。アジア地域(日本を除く)は25%から23%、日本は7%から6%にそれぞれ低下し、引き続きアジア全体の比重が相対的に下がった。
一方、ユーロ圏が8%から9%に上昇。中東・アフリカ・その他欧州諸国は5%、英国、ラテンアメリカがそれぞれ4%で、いずれも横ばいだった。
■長期で持続可能な価値創出に期待
世界経済の先行きが不透明な中、GICはインフラへの投資に注力している。参入障壁が高く、一定の運用益が見込め、長期的な収益が見込まれるためだ。不安定な経済環境下でも安定資産として機能。重点投資分野の一つとなっている。
サステナビリティーへの投資も強化している。GICは22年に調査や方針立案能力を向上し、投資チームの脱炭素化への取り組みを支援するため、「サステナビリティーオフィス」を開設した。
公開株部門では気候変動の緩和や適応といったテーマに沿った「気候変動機会ポートフォリオ」分野を設定。未公開株部門では、初期段階のエネルギー移行機会へのGICの関与を深めるための「サステナビリティー・ソリューションズ・グループ」を設置した。固定資産・マルチアセット部門にも、サステナビリティー関連に投資する「トランジション・アンド・サステナブルファイナンス・グループ」を設置した。
GIC未公開株部門のチョー・ヨンチーン最高投資責任者(CIO)は「当社は環境経済における野心的で革新的な企業に投資する。こうした企業が(炭素排出量を実質ゼロにする)『ネットゼロ』への移行を可能にするソリューションを拡張するとともに、GICのポートフォリオに長期的で持続可能な価値を生み出すだろう」と述べた。
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同利回りは新型コロナウイルス禍の影響で20年3月末に2.7%の低水準を記録したものの、21年3月末に4.3%まで急回復。22年3月末は前年同月末から0.1ポイント低下したが、23年3月末にはコロナ禍後の最高水準を記録した。
23年3月末時点の名目運用利回り(運用期間20年)は年6.9%で、前年同月末の7.0%から0.1ポイント低下した。運用期間10年では5.1%、同5年では3.7%だった。単年度の運用利回りは公表していない。
GICは「22年は世界経済にとって困難な年だった。インフレ加速による中央銀行の金融引き締め、ロシアのウクライナ侵攻、米中関係の悪化などが金融分野の緊張を高め、実体経済における信用状況を大きく逼迫(ひっぱく)させた」と指摘。ただ自社の多様化したポートフォリオや慎重な投資姿勢により、22年にかけて起きた市場調整の影響を和らげることができたと説明した。
■アジアの比重低下
GICの23年3月末時点の資産構成比は、債券・現金が全体の34%と最大。ただ前年同月末の37%からは低下した。公開株は、先進国で14%から13%に低下。新興国では16%から17%に増加した。
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国・地域別では、米国が前年同月末から1ポイント拡大し、38%で最大だった。アジア地域(日本を除く)は25%から23%、日本は7%から6%にそれぞれ低下し、引き続きアジア全体の比重が相対的に下がった。
一方、ユーロ圏が8%から9%に上昇。中東・アフリカ・その他欧州諸国は5%、英国、ラテンアメリカがそれぞれ4%で、いずれも横ばいだった。
■長期で持続可能な価値創出に期待
世界経済の先行きが不透明な中、GICはインフラへの投資に注力している。参入障壁が高く、一定の運用益が見込め、長期的な収益が見込まれるためだ。不安定な経済環境下でも安定資産として機能。重点投資分野の一つとなっている。
サステナビリティーへの投資も強化している。GICは22年に調査や方針立案能力を向上し、投資チームの脱炭素化への取り組みを支援するため、「サステナビリティーオフィス」を開設した。
公開株部門では気候変動の緩和や適応といったテーマに沿った「気候変動機会ポートフォリオ」分野を設定。未公開株部門では、初期段階のエネルギー移行機会へのGICの関与を深めるための「サステナビリティー・ソリューションズ・グループ」を設置した。固定資産・マルチアセット部門にも、サステナビリティー関連に投資する「トランジション・アンド・サステナブルファイナンス・グループ」を設置した。
GIC未公開株部門のチョー・ヨンチーン最高投資責任者(CIO)は「当社は環境経済における野心的で革新的な企業に投資する。こうした企業が(炭素排出量を実質ゼロにする)『ネットゼロ』への移行を可能にするソリューションを拡張するとともに、GICのポートフォリオに長期的で持続可能な価値を生み出すだろう」と述べた。"
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