シンガポール人が中国で創業した半導体メーカーのエスプレッシフ・システムズ(Espressif Systems)が、モノのインターネット(IoT)向け半導体チップ市場で存在感を高めている。一般消費者向け製品や産業用アプリケーションで使用される高性能、低消費電力の製品を投入し、世界的に知られる多国籍企業となった。今後も革新的な製品を開発して市場をリードする考えだ。【Celine Chen】
中国で創業した半導体メーカー、エスプレッシフ・システムズのテオ・スウィーアンCEO(同社提供)
エスプレッシフは、シンガポール人のエンジニア、テオ・スウィーアン最高経営責任者(CEO)が2008年に上海で設立。ファブレス(工場なし)の半導体メーカーとして、現在は中国、シンガポール、チェコ、インド、ブラジルにオフィスと研究所を置く。
タブレット端末やセットトップボックス(STB)、アクションカメラ、ウエアラブル機器、スマート家電、ドローン(小型無人機)など幅広い消費者製品や産業用アプリケーションで使用されるチップを製造している。監視カメラ、入退室管理システム、センサーネットワークといった高度なセキュリティーソリューションの基盤にも使われている。
同社は、世界中の法人顧客やDIY技術愛好者の注目を集めた2つの画期的な半導体製品で有名になった。一つ目は14年に発売したコスト効率の高いマイクロチップ「ESP8266」で、モバイル端末、ウエアラブル機器、IoTアプリケーションで使用されている。
16年には新たなマイクロチップ「ESP32」を発売することで知名度をさらに高めた。Wi—Fi(ワイファイ)などの無線通信技術を統合したマイクロコントローラーユニット(MCU)で、幅広いアプリケーションで使用できる製品だ。効率的な電力制御により、動作温度範囲がマイナス40度からプラス125度の環境でも機能する。
さまざまな市場セグメント向けに設計したモジュール、開発ボードの売れ行きも好調だ。製品と新たなソリューションの拡充で急成長を遂げ、IoT向け半導体市場をリードする存在となった。9月にはIoTチップの出荷目標である10億個を達成した。
テオCEOはNNAに対し、「人工知能(AI)の出現で、安全で高速な無線接続を必要とする製品の開発に拍車がかかっている。当社の目標はハードウエア、ソフトウエア、クラウドに関するあらゆるものを提供するワンストップソリューションのプロバイダーになることだ」と明らかにした。
エスプレッシフ・システムズの主力マイクロチップ「ESP32」(同社ウェブサイトより)
■開発者を巻き込んだビジネス
エスプレッシフはIoTチップの開発を加速させるため、数百万人のユーザーに開発コードへのアクセスを開放している。その結果、6月までにソフト開発共有サイト「ギットハブ(GitHub)」で開発者によって作成されたESP8266とESP32のオープンソースプロジェクトは9万2,000件を超えた。
エスプレッシフの開発キットや、パートナーである中国のM5スタック(M5Stack)社と共同開発したキットは、日本の開発者コミュニティーでも高く評価され、オフラインの電子部品店で販売されている。日本の多くの有名企業も顧客に抱える。
テオ氏は「開発者やメーカー、技術愛好家から成るグローバルコミュニティーとの交流は、当社のIoTソリューションの継続的な改善だけでなく、将来的にパートナーがどのような製品を求めているかを把握する機会を与えてくれる」と語った。
エスプレッシフは開発者を巻き込んだビジネスモデルの適用に成功したことで、多くの顧客を小規模チームで直接サポートする体制を維持しつつ、研究開発に集中できるようになった。実際に収益の大半を直接販売が占める。
創業初期から利益を上げており、19年には上海証券取引所に上場した。23年1~6月期の売上高は前年同期比9%の6億6,700万人民元(約137億円)。マクロ経済要因で消費者市場は縮小したが、非消費者分野でのデジタル化の加速を受けて新規顧客が増えた。
現在の従業員数は600人以上で、世界中から集まったエンジニアが働いている。うち77%以上が研究開発センター8カ所で勤務し、最先端の低消費電力無線通信とモノの人工知能(AIoT)ソリューションの開発に注力している。
<プロフィル>
テオ・スウィーアン(Teo Swee Ann)氏:
エスプレッシフ・システムズの創業者でCEOを務める。シンガポール国立大学(NUS)で電気工学の修士号を取得。これまでの功績が認められ、今年7月に開催された「シンガポール・ビジネス・アワード」では「年間最優秀海外エグゼクティブ賞」を受賞した。
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エスプレッシフは、シンガポール人のエンジニア、テオ・スウィーアン最高経営責任者(CEO)が2008年に上海で設立。ファブレス(工場なし)の半導体メーカーとして、現在は中国、シンガポール、チェコ、インド、ブラジルにオフィスと研究所を置く。
タブレット端末やセットトップボックス(STB)、アクションカメラ、ウエアラブル機器、スマート家電、ドローン(小型無人機)など幅広い消費者製品や産業用アプリケーションで使用されるチップを製造している。監視カメラ、入退室管理システム、センサーネットワークといった高度なセキュリティーソリューションの基盤にも使われている。
同社は、世界中の法人顧客やDIY技術愛好者の注目を集めた2つの画期的な半導体製品で有名になった。一つ目は14年に発売したコスト効率の高いマイクロチップ「ESP8266」で、モバイル端末、ウエアラブル機器、IoTアプリケーションで使用されている。
16年には新たなマイクロチップ「ESP32」を発売することで知名度をさらに高めた。Wi—Fi(ワイファイ)などの無線通信技術を統合したマイクロコントローラーユニット(MCU)で、幅広いアプリケーションで使用できる製品だ。効率的な電力制御により、動作温度範囲がマイナス40度からプラス125度の環境でも機能する。
さまざまな市場セグメント向けに設計したモジュール、開発ボードの売れ行きも好調だ。製品と新たなソリューションの拡充で急成長を遂げ、IoT向け半導体市場をリードする存在となった。9月にはIoTチップの出荷目標である10億個を達成した。
テオCEOはNNAに対し、「人工知能(AI)の出現で、安全で高速な無線接続を必要とする製品の開発に拍車がかかっている。当社の目標はハードウエア、ソフトウエア、クラウドに関するあらゆるものを提供するワンストップソリューションのプロバイダーになることだ」と明らかにした。
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■開発者を巻き込んだビジネス
エスプレッシフはIoTチップの開発を加速させるため、数百万人のユーザーに開発コードへのアクセスを開放している。その結果、6月までにソフト開発共有サイト「ギットハブ(GitHub)」で開発者によって作成されたESP8266とESP32のオープンソースプロジェクトは9万2,000件を超えた。
エスプレッシフの開発キットや、パートナーである中国のM5スタック(M5Stack)社と共同開発したキットは、日本の開発者コミュニティーでも高く評価され、オフラインの電子部品店で販売されている。日本の多くの有名企業も顧客に抱える。
テオ氏は「開発者やメーカー、技術愛好家から成るグローバルコミュニティーとの交流は、当社のIoTソリューションの継続的な改善だけでなく、将来的にパートナーがどのような製品を求めているかを把握する機会を与えてくれる」と語った。
エスプレッシフは開発者を巻き込んだビジネスモデルの適用に成功したことで、多くの顧客を小規模チームで直接サポートする体制を維持しつつ、研究開発に集中できるようになった。実際に収益の大半を直接販売が占める。
創業初期から利益を上げており、19年には上海証券取引所に上場した。23年1~6月期の売上高は前年同期比9%の6億6,700万人民元(約137億円)。マクロ経済要因で消費者市場は縮小したが、非消費者分野でのデジタル化の加速を受けて新規顧客が増えた。
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