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軽自動車が中古市場で存在感女性に人気、レジャーで需要増も

高級・大型志向の加速で韓国での販売不振が続く軽自動車だが、中古車市場ではむしろ人気の車種だ。今年上半期に最も売れた中古車は起亜の軽自動車「モーニング」だったほか、上位5車種中3車種を軽自動車が占めた。軽自動車は小回りが利き安く購入できることから女性に根強い人気を得ている。大型車を好む国民性や韓国GMの「スパーク」の生産終了で選択肢が狭まる軽自動車だが、その存在感はまだまだ健在だ。【清水岳志】

中古車市場で高い人気を誇る起亜「モーニング」=韓国・ソウル(NNA撮影)

韓国では、排気量1000cc未満の車種を日本と同じように「軽自動車」と呼ぶ。取得税が安い上に、公共の駐車場の利用料や高速道路の通行料が半額になるなどの特恵があることから、かつては初めて車を購入する人を中心に売り上げを伸ばした。
しかし、2017年に7万437台を記録した起亜の「モーニング」の新車販売は、19年に5万364台、22年には2万9,380台と3万台を下回る水準まで落ちこんだ。韓国GMの「スパーク」は同社の前身である大宇自動車時代の1998年に「マティス」という名称で発売され、かつては新車販売をけん引する存在だった。だが、17年に4万7,244台だった販売台数は毎年減少し、22年は1万963台にとどまった。スパークは今年で生産終了となり、マティスから数えて25年の歴史に幕を下ろした。
それとは裏腹に、中古車市場では軽自動車に根強い人気がある。自動車情報を提供するカーイズユーデータ研究所によると、2023年上半期に取引された中古車では「モーニング(11~15年式)」が2万2,704台で、最も多く売れた。さらに、「スパーク(11~17年式)」(2万426台)と、起亜のボックスカー「レイ(11~17年式)」(1万4,456台)もそれぞれ、4位と5位にランクイン。上位5モデルのうち3モデルは軽自動車だった。
■中古の軽は女性に人気
新車では販売不振の軽自動車が中古車市場で存在感を見せている背景の1つに、女性の購入者が多い点が挙げられる。韓国の自動車市場ではスポーツタイプ多目的車(SUV)を中心に大型・高級志向が高まる一方、小回りが利いて運転しやすく燃費が比較的良い軽自動車を求める女性が増えている。
今年上半期の中古車市場で、30~60代の女性による取引が最も多かったモデルは起亜のモーニングだった。20代でも、現代自動車のセダン「アバンテ」に次いでモーニングを購入する女性が多かった。中古車取引業者のKカーでは、22年の女性の購入件数は前年比17.3%増となった。
新車価格が値上がり傾向にある点も、中古の軽自動車の購入増加につながったとの見方もある。モーニングの価格は、昨年発売された23年式が1,175万ウォン(約130万8,300円)からだったのに対し、このほどマイナーチェンジされた24年式は1,315万ウォンからと、140万ウォン高くなった。
オプション価格を考慮すると、予算を少し上乗せすればセダンの「K3」(1,800万ウォン台から)に手が届く。女性や初めて車を購入する人は、比較的安く買える中古の軽自動車をあえて選ぶケースが多いようだ。
■レジャー需要で好調のモデルも
一方で、起亜の「レイ」は、モーニングやスパークとは対照的に新車販売が増加傾向にある。17年は2万521台だったが、22年には4万4,566台が売れた。ボックスカータイプのレイは軽自動車ながら室内空間が広いため、SUVのように高い収納力を求める消費者から支持されている。
とりわけ、新型コロナウイルス過で「3密(密接・密集・密閉)」を避けられるレジャーとして流行した「車中泊」でレイの収納力に注目が集まり、21年の新車販売は前年比26.0%、22年は同23.9%、それぞれ増加した。今年も1~8月までで前年同期比16.8%増となっている。
現代自が21年に発売した国内の軽自動車初のSUVタイプ「キャスパー」もレジャー人気を追い風に販売が好調だ。22年はレイを上回る4万8,002台を販売した。今年は1~8月に2万8,376台と前年同期(3万860台)をやや下回るものの、2年目の勢いを維持している。

軽自動車の販売が落ち込む中で登場し、消費者から好評を得ている現代自「キャスパー」=韓国・ソウル(NNA撮影)

■韓国でも「軽EV」に注目
起亜は9月21日、レイの電気自動車(EV)モデルを発売した。レイEVモデルは11年にも発売されたが、航続距離が139キロメートルと短く18年に販売を終了。新型のリン酸鉄リチウムイオン電池(LFPバッテリー)を採用した今回は、フル充電で205キロの走行が可能になった。補助金を受ければ2,000万ウォン台で購入できる点も魅力だ。起亜によると、レイEVの予約販売は今年の販売目標(4,000台)を上回る6,000台に達した。

起亜が12年ぶりにラインアップに加えた「レイ」のEVモデルには予約が殺到している=韓国(同社提供)

現代自は現在、キャスパーのEVモデルを開発中だ。キャスパーを生産する光州市との共同出資会社・光州グローバルモーターズ(GGM)の工場にEV生産ラインを構築し、24年夏の発売を目指している。
日本では、日産自動車が22年6月に発売した軽のEV「サクラ」が累計受注5万台を超え、22年度の日本国内EV販売の約4割を占めるなど好評だ。サクラのような存在になれば、レイEVやキャスパーEVは韓国のEV普及に大きく貢献するモデルになる可能性がある。

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しかし、2017年に7万437台を記録した起亜の「モーニング」の新車販売は、19年に5万364台、22年には2万9,380台と3万台を下回る水準まで落ちこんだ。韓国GMの「スパーク」は同社の前身である大宇自動車時代の1998年に「マティス」という名称で発売され、かつては新車販売をけん引する存在だった。だが、17年に4万7,244台だった販売台数は毎年減少し、22年は1万963台にとどまった。スパークは今年で生産終了となり、マティスから数えて25年の歴史に幕を下ろした。
それとは裏腹に、中古車市場では軽自動車に根強い人気がある。自動車情報を提供するカーイズユーデータ研究所によると、2023年上半期に取引された中古車では「モーニング(11~15年式)」が2万2,704台で、最も多く売れた。さらに、「スパーク(11~17年式)」(2万426台)と、起亜のボックスカー「レイ(11~17年式)」(1万4,456台)もそれぞれ、4位と5位にランクイン。上位5モデルのうち3モデルは軽自動車だった。
■中古の軽は女性に人気
新車では販売不振の軽自動車が中古車市場で存在感を見せている背景の1つに、女性の購入者が多い点が挙げられる。韓国の自動車市場ではスポーツタイプ多目的車(SUV)を中心に大型・高級志向が高まる一方、小回りが利いて運転しやすく燃費が比較的良い軽自動車を求める女性が増えている。
今年上半期の中古車市場で、30~60代の女性による取引が最も多かったモデルは起亜のモーニングだった。20代でも、現代自動車のセダン「アバンテ」に次いでモーニングを購入する女性が多かった。中古車取引業者のKカーでは、22年の女性の購入件数は前年比17.3%増となった。
新車価格が値上がり傾向にある点も、中古の軽自動車の購入増加につながったとの見方もある。モーニングの価格は、昨年発売された23年式が1,175万ウォン(約130万8,300円)からだったのに対し、このほどマイナーチェンジされた24年式は1,315万ウォンからと、140万ウォン高くなった。
オプション価格を考慮すると、予算を少し上乗せすればセダンの「K3」(1,800万ウォン台から)に手が届く。女性や初めて車を購入する人は、比較的安く買える中古の軽自動車をあえて選ぶケースが多いようだ。
■レジャー需要で好調のモデルも
一方で、起亜の「レイ」は、モーニングやスパークとは対照的に新車販売が増加傾向にある。17年は2万521台だったが、22年には4万4,566台が売れた。ボックスカータイプのレイは軽自動車ながら室内空間が広いため、SUVのように高い収納力を求める消費者から支持されている。
とりわけ、新型コロナウイルス過で「3密(密接・密集・密閉)」を避けられるレジャーとして流行した「車中泊」でレイの収納力に注目が集まり、21年の新車販売は前年比26.0%、22年は同23.9%、それぞれ増加した。今年も1~8月までで前年同期比16.8%増となっている。
現代自が21年に発売した国内の軽自動車初のSUVタイプ「キャスパー」もレジャー人気を追い風に販売が好調だ。22年はレイを上回る4万8,002台を販売した。今年は1~8月に2万8,376台と前年同期(3万860台)をやや下回るものの、2年目の勢いを維持している。[caption id="attachment_16071" align="aligncenter" width="620"]軽自動車の販売が落ち込む中で登場し、消費者から好評を得ている現代自「キャスパー」=韓国・ソウル(NNA撮影)[/caption]
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起亜は9月21日、レイの電気自動車(EV)モデルを発売した。レイEVモデルは11年にも発売されたが、航続距離が139キロメートルと短く18年に販売を終了。新型のリン酸鉄リチウムイオン電池(LFPバッテリー)を採用した今回は、フル充電で205キロの走行が可能になった。補助金を受ければ2,000万ウォン台で購入できる点も魅力だ。起亜によると、レイEVの予約販売は今年の販売目標(4,000台)を上回る6,000台に達した。
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