中国国家統計局は18日、2023年第3四半期(7~9月)の実質国内総生産(GDP、速報値)の成長率が前年同期比4.9%だったと発表した。成長率は23年第2四半期(4~6月)の6.3%から鈍化した。ただ、前年の新型コロナウイルス流行の影響を排除すれば、実質的には持ち直したといえる水準。旅行・外出増加などを背景とした消費拡大が成長をけん引した。
第3四半期のGDPは31兆9,992億元(約656兆円)。産業別は、第1次産業が前年同期比4.2%成長の2兆5,958億元、第2次産業が4.6%成長の12兆2,978億元、第3次産業が5.2%成長の17兆1,056億元。
第2四半期の前年同期比と比較すると、第1次産業の成長率は0.5ポイント拡大し、第2次産業は0.6ポイント、第3次産業は2.2ポイントそれぞれ鈍化した。規模が大きい第2次産業と第3次産業の成長率が鈍っており、第3四半期の中国経済は数値上では減速感が目立った。
ただ第2四半期の高い成長率の背景には、新型コロナの影響で前年同期の数値が低かったことによるベース効果がある。昨年の中国経済は終始、新型コロナの影響を受けたが、第2四半期は上海がロックダウンに陥るなど特に強い打撃を受けていた。
昨年の新型コロナの影響を排除した数値では、第3四半期の中国経済はむしろ回復傾向を示した。国家統計局の盛来運・副局長によると、21年同期の数値を基にした2年間の年平均成長率は、第3四半期が4.4%となり、第2四半期の3.3%から1.1ポイント拡大した。前四半期比の成長率を見ても、第3四半期は1.3%で、第2四半期から0.8ポイント上向いた。
岡三証券の久保和貴シニアエコノミスト(同社上海代表処の首席代表)は第3四半期の成長率に関して、「おおむね予想通りの数値だった」と述べた。
■消費拡大の寄与度が100%近く
第3四半期はこれまで以上に消費主導の成長となった。支出分類別の成長率への寄与度を見ると、最終消費支出が94.8%、総資本形成が22.3%、純輸出がマイナス17.1%。最終消費支出の寄与度は1~3月の66.6%、1~6月の77.2%を大きく上回った。力強さに欠ける設備投資、主要国の景気悪化を背景とする外需低迷を消費拡大が補った形だ。
消費拡大の背景にはベース効果があるものの、小売売上高の伸びが夏場に入り拡大していることから見ても、消費を取り巻く状況は改善に向かっているとみられる。
久保氏は、旅行を含む外出が増えていることを消費拡大の要因に挙げた。ハイテク企業が発表する人々の外出の多さを示す指数を見ると、今夏は非常に高い水準を記録し、9月末から始まった秋の大型連休の序盤には過去最高水準になったと説明。外出の増加が飲食などのサービス消費や化粧品、アパレル品などの財消費を押し上げたとみている。
旅行の増加は、旅行を楽しめる都市部富裕層の所得を観光を主産業とする地方に移転させる効果があり、地方の景気拡大につながるとも付け加えた。
政府が「新エネルギー車(NEV)」やスマート家電といった新産業分野の消費を促したことも効果を発揮したと指摘。各都市は足元で、こうした製品の購入に使える振興券を発給するなどの措置を積極化していた。
■通年目標達成へ
国家統計局によると、23年1~9月のGDPは前年同期比5.2%成長の91兆3,027億元となった。1~6月の5.5%からは鈍化したものの、5%台を維持した。
支出分類別の成長率への寄与度は、最終消費支出が83.2%、総資本形成が29.8%、純輸出がマイナス13.0%となった。
今年の第4四半期(10~12月)は第2四半期に次いで大きなベース効果を見込め、比較的高い成長率を期待できる。こうした状況を踏まえると、今年通年の成長率が前年比5%を大きく割り込むことは考えにくく、政府が3月に設定した成長率目標「5%前後」は達成できる可能性が高まった。
久保氏も、「通年の成長率は5%をやや上回る結果になるだろう」とし、政府目標は達成できる可能性が高いと見通した。第4四半期は消費が引き続き好調を示すほか、米国経済の回復を背景に外需が回復する可能性があるとみている。
盛氏によると、第4四半期の前年同期比の成長率が4.4%以上となれば、通年目標を達成できるという。
■不動産リスクに引き続き注意
ただ、中国経済に不安要素がないわけではない。特に2年前から続く不動産不況には引き続き注意が必要だ。
久保氏は、中国の不動産デベロッパーは引き続きデフォルト(債務不履行)のリスクにさらされていると指摘。中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)に続き、別の大手が経営危機に陥る可能性もあるとみている。
政府や中国人民銀行(中央銀行)は8月下旬から住宅購入規制や住宅ローンの利用規制を大幅に緩和して住宅需要の掘り起こしを図った。ただ、久保氏は「1日ごとの住宅販売統計を見ていると、効果は期待したほどではない」と指摘。住宅価格の先高観が消失した現状下では、居住用以外の購入需要はあまり見込めず、不動産業界の需要低迷は続くとの見方を示した。
久保氏は、不動産業界の生産額はGDPの2割を占めるとし、同業界の不振がGDPに与える影響は小さくないとみている。
さらに、不動産不況はさまざまな形で他業界に悪影響を与えるとも指摘。住宅購入の減少は家具や家電といった関連製品の需要を圧迫し、不動産開発投資の減少は建材などの需要を下押しするほか、建設作業員の雇用減少を招くと強調した。
中でも建設作業員の雇用減少は地方経済の重しになる恐れがあるとの考え。建設作業員はブルーカラーの中では賃金水準が高く、地方住民の所得を下支えしてきた側面があることを理由に挙げた。
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ただ第2四半期の高い成長率の背景には、新型コロナの影響で前年同期の数値が低かったことによるベース効果がある。昨年の中国経済は終始、新型コロナの影響を受けたが、第2四半期は上海がロックダウンに陥るなど特に強い打撃を受けていた。
昨年の新型コロナの影響を排除した数値では、第3四半期の中国経済はむしろ回復傾向を示した。国家統計局の盛来運・副局長によると、21年同期の数値を基にした2年間の年平均成長率は、第3四半期が4.4%となり、第2四半期の3.3%から1.1ポイント拡大した。前四半期比の成長率を見ても、第3四半期は1.3%で、第2四半期から0.8ポイント上向いた。
岡三証券の久保和貴シニアエコノミスト(同社上海代表処の首席代表)は第3四半期の成長率に関して、「おおむね予想通りの数値だった」と述べた。
■消費拡大の寄与度が100%近く
第3四半期はこれまで以上に消費主導の成長となった。支出分類別の成長率への寄与度を見ると、最終消費支出が94.8%、総資本形成が22.3%、純輸出がマイナス17.1%。最終消費支出の寄与度は1~3月の66.6%、1~6月の77.2%を大きく上回った。力強さに欠ける設備投資、主要国の景気悪化を背景とする外需低迷を消費拡大が補った形だ。
消費拡大の背景にはベース効果があるものの、小売売上高の伸びが夏場に入り拡大していることから見ても、消費を取り巻く状況は改善に向かっているとみられる。
久保氏は、旅行を含む外出が増えていることを消費拡大の要因に挙げた。ハイテク企業が発表する人々の外出の多さを示す指数を見ると、今夏は非常に高い水準を記録し、9月末から始まった秋の大型連休の序盤には過去最高水準になったと説明。外出の増加が飲食などのサービス消費や化粧品、アパレル品などの財消費を押し上げたとみている。
旅行の増加は、旅行を楽しめる都市部富裕層の所得を観光を主産業とする地方に移転させる効果があり、地方の景気拡大につながるとも付け加えた。
政府が「新エネルギー車(NEV)」やスマート家電といった新産業分野の消費を促したことも効果を発揮したと指摘。各都市は足元で、こうした製品の購入に使える振興券を発給するなどの措置を積極化していた。
■通年目標達成へ
国家統計局によると、23年1~9月のGDPは前年同期比5.2%成長の91兆3,027億元となった。1~6月の5.5%からは鈍化したものの、5%台を維持した。
支出分類別の成長率への寄与度は、最終消費支出が83.2%、総資本形成が29.8%、純輸出がマイナス13.0%となった。
今年の第4四半期(10~12月)は第2四半期に次いで大きなベース効果を見込め、比較的高い成長率を期待できる。こうした状況を踏まえると、今年通年の成長率が前年比5%を大きく割り込むことは考えにくく、政府が3月に設定した成長率目標「5%前後」は達成できる可能性が高まった。
久保氏も、「通年の成長率は5%をやや上回る結果になるだろう」とし、政府目標は達成できる可能性が高いと見通した。第4四半期は消費が引き続き好調を示すほか、米国経済の回復を背景に外需が回復する可能性があるとみている。
盛氏によると、第4四半期の前年同期比の成長率が4.4%以上となれば、通年目標を達成できるという。
■不動産リスクに引き続き注意
ただ、中国経済に不安要素がないわけではない。特に2年前から続く不動産不況には引き続き注意が必要だ。
久保氏は、中国の不動産デベロッパーは引き続きデフォルト(債務不履行)のリスクにさらされていると指摘。中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)に続き、別の大手が経営危機に陥る可能性もあるとみている。
政府や中国人民銀行(中央銀行)は8月下旬から住宅購入規制や住宅ローンの利用規制を大幅に緩和して住宅需要の掘り起こしを図った。ただ、久保氏は「1日ごとの住宅販売統計を見ていると、効果は期待したほどではない」と指摘。住宅価格の先高観が消失した現状下では、居住用以外の購入需要はあまり見込めず、不動産業界の需要低迷は続くとの見方を示した。
久保氏は、不動産業界の生産額はGDPの2割を占めるとし、同業界の不振がGDPに与える影響は小さくないとみている。
さらに、不動産不況はさまざまな形で他業界に悪影響を与えるとも指摘。住宅購入の減少は家具や家電といった関連製品の需要を圧迫し、不動産開発投資の減少は建材などの需要を下押しするほか、建設作業員の雇用減少を招くと強調した。
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