シンガポールの政労使で構成する全国賃金評議会(NWC)は、12月1日から来年11月30日までの期間に適用する賃金ガイドラインを発表した。企業に対し、低所得労働者には現行と同水準の5.5~7.5%の昇給を実施するよう勧告。労働者が生活費の高騰に対応できるよう、企業へ働きかける。低所得層の給与を段階的に引き上げる「賃金改善モデル(PWM)」の新たな計画も示した。
全国賃金評議会は低所得労働者の賃金を5.5~7.5%昇給するよう求めている=シンガポール中心部(NNA撮影)
全国賃金評議会は勧告書で、月額賃金が2,500Sドル(約27万6,000円)以下の低賃金所得者について、業績が好調で事業見通しを楽観視している企業には5.5~7.5%の中間から上限の割合での昇給、あるいは85~105Sドルの高い方の昇給を求めた。業績は好調だが事業見通しが不透明な企業の場合は同範囲の下限から中間、業績が不振な企業は同範囲の下限での昇給を勧告した。
生活費の高騰で苦しむ従業員のために一時金を支払うことも提言した。具体的な金額は示していないが、労働組合がある企業では労使の合意によって行うことを求めた。
勧告書では賃金制度についても言及。不確実な経済見通しの下、企業の事業予測に応じて賃金上昇が組み込まれ、業績と労働者の貢献を反映した変動報酬を含む柔軟な賃金制度の導入を引き続き雇用主に働きかけた。
全国賃金評議会は、賃金の上昇が持続可能であり続けるには生産性の向上が担保されなければならないと指摘。労使に事業変革と従業員の研修の重要性を訴えている。
その上で、経済の不確実性を考慮すると、こうした取り組みは緊急であると強調。変化する環境に適応して新たな事業機会をつかむために、労使双方が機敏性とレジリエンス(強靭=きょうじん=性)を持つことが求められると説明した。
■事務・運転手の賃金改善へ
勧告書では、低所得層の給与を段階的に引き上げる「賃金改善モデル(PWM)」に基づき、低所得の事務職と運転手の最低賃金を引き上げる計画も発表。月額最低賃金の引き上げを24年7月1日から26年6月30日までの間に1年ごとに2段階に分けて昇給する日程を示した。
最も昇給率が高いのは事務アシスタントで32%、運転手は25%の昇給となる。全国賃金評議会によると、この計画はフルタイムで働く事務職と運転手の低賃金層計6万4,000人に適用され、うち5万2,000人が24年7月からの昇給実施が見込まれている。
人材開発省は10月31日に勧告を認めるとの声明を発表。「低賃金労働者の賃金を上昇させることは、事業の持続可能性と労働賃金の増加とのバランスをとる必要があるが、所得格差を縮小するための継続的な取り組みを強化することにつながる」と評価した。
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■事務・運転手の賃金改善へ
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