1. 概要
中国の進出日系企業において勤務する従業員の社歴が長くなり、企業から定年に関するご質問もいただくようになっています。本レポートでは次の点について紹介していきます。
① 定年年齢の確認
② 労働関係の終了
③ 定年後の雇用若しくは契約関係
④ 社会保険等
⑤ 他
2. 本文
① 定年年齢の確認
中国の定年年齢は現在、男性 60 歳、女性は幹部が 55 歳、一般従業員が 50 歳となっていますが、近年では高齢化社会の進展に伴い、年齢の引き上げが検討されており、第十四期5か年計画(20212021~25 年 1の中では段階的に引き上げる方針が示されました。女性の定年年齢の統一(幹部一般ともに50 歳とする)と男女ともに定年年齢の引き上げが検討されています。江蘇省では2022 年に《江蘇省企業従業員基本養老保険実施方法》*2 が発表され、既に定年延長が実施されています。
こうした社会背景も踏まえた上で、企業としては各従業員の定年退職年齢を正確に把握することが重要です。また、女性従業員に対しては幹部であるか、一般従業員であるかを企業と従業員がともに確認する必要があり、労働契約書を締結する際に契約書上に明記されていることが望ましいとされています。
② 労働関係の終了
労働契約法第四十四条では労働契約を終了する要件の一つとして、(二)労働者が基本養老保険を享受するという条項が定められており、定年退職を迎えた従業員と企業の労働契約は終了します。この際、経済補償金を支給する必要はありません。
③ 定年後の雇用若しくは契約関係
定年を迎える前までの企業と従業員の契約は、労働契約法に基づく労働契約になります。法定で定められた各種事項を踏まえた上での契約関係となりますが、定年を迎えた従業員が、本人も希望し、企業としても本人の継続就業を希望する場合には、労働契約とは異なる、「労務契約」を結び雇用を継続することが可能です。労務契約は労働契約法ではなく民法と契約法に基づいており、労働契約と比べて柔軟に勤務体制や報酬等を定めることが可能です。
例えば、知識と経験を引き続き活かしてもらいたいが、体力的に以前と同様の条件では勤務が難しい、或いは本人がフルタイムでの勤務を望まない等の状況がある場合、月水金の週3日の勤務、または時短勤務を提案し、協議の上で契約を結ぶことも可能であり、また、定年退職前の業務内容や責任範囲をお互いに見直し、新たな内容と報酬での再雇用も可能となります。
④ 社会保険等
労働契約では法定義務とされる社会保険、住宅積立金への加入、また、契約解除時の離職補償(経済補償金)も任意となり、従業員との協議の上で設定するかどうかを決めることとなります。また、労災保険については、広東省では2021 年に労災保険の加入を可能とする規定が実施されており 3、定年退職年齢に達した従業員も加入が可、同じく協議の上で加入するか否かを決めることとなります。
⑤ その他
中国の定年年齢に関しては現在引上げが検討されており、数年のうちに変更される可能性があります。従業員の方の視点に立って見れば、自分が定年退職を迎えた翌年に、同じ会社で同じような仕事をしている同僚が、同じく定年を迎える年齢であったのに法令の変更により定年が延長されるというようなことも起こりうる現状です。このような状況を踏まえた上で、定年を間近に迎えた従業員に対しては、現在の定年退職の制度について事前によく説明を行う必要があります。
また、従業員の方々の正確な定年退職の時期を把握した上で、再雇用を行うのかどうか、行うとすればどのような基準で行うのかについても事前に検討が必要です。国の制度が変更される中で、会社としてどのように運営すれば労務上のトラブルを最小限にとどめられるかがポイントとなります。
また、企業も従業員も再雇用を希望している場合でも、健康上の問題等で契約を締結した時点とその後の就業条件が急変してしまう可能性もあります。再雇用契約を締結する際には、そういった問題が発生した場合にはどうするかという点に関しても合わせて考慮しておく必要があります。
3. 関連規定等
*1 「中華人民共和国国民経済・社会発展第十四次5カ年計画と2035年までの長期目標」
*2 https://chinajob.mohrss.gov.cn/c/2022 01 30/340897.shtml
*3 《退職年齢に達した労働者など特定人員の労災保険参加に関する弁法(試行)》
広東省人力資源と社会保障庁 広東省財政庁 国家税務総局広東省税務局 2021 年4月1日施行
(2023年12月作成)
※各地の運用状況が異なる場合があります。実際の状況につきましては各所在地にて再度ご確認ください。
※本レポートにつきましては、有料顧問顧客様のみに送付させていただいており、本メール受取人様限りとさせて頂きます。
※このレポートはNAC名南のお客様への情報提供サービスの一環であり、この情報のみで、人事・労務の判断、意思決定を行う事は避けてください。弊社はこの情報内容に基づく意思決定に対して一切の責任を負いません。
※レポートで触れている事実、解釈は全てレポート執筆時点のものになり、将来時点の事実、解釈を保証するものではありません。
※レポートにある主観的意見はあくまでも筆者個人の意見又は主観であり、所属する団体を代表するものではありません。
※本レポートについての知的財産権その他一切の権利は、NAC名南グループに帰属します。
※本レポートに掲載の内容の無断複製・転載を禁じます。
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① 定年年齢の確認
② 労働関係の終了
③ 定年後の雇用若しくは契約関係
④ 社会保険等
⑤ 他
2. 本文
① 定年年齢の確認
中国の定年年齢は現在、男性 60 歳、女性は幹部が 55 歳、一般従業員が 50 歳となっていますが、近年では高齢化社会の進展に伴い、年齢の引き上げが検討されており、第十四期5か年計画(20212021~25 年 1の中では段階的に引き上げる方針が示されました。女性の定年年齢の統一(幹部一般ともに50 歳とする)と男女ともに定年年齢の引き上げが検討されています。江蘇省では2022 年に《江蘇省企業従業員基本養老保険実施方法》*2 が発表され、既に定年延長が実施されています。
こうした社会背景も踏まえた上で、企業としては各従業員の定年退職年齢を正確に把握することが重要です。また、女性従業員に対しては幹部であるか、一般従業員であるかを企業と従業員がともに確認する必要があり、労働契約書を締結する際に契約書上に明記されていることが望ましいとされています。
② 労働関係の終了
労働契約法第四十四条では労働契約を終了する要件の一つとして、(二)労働者が基本養老保険を享受するという条項が定められており、定年退職を迎えた従業員と企業の労働契約は終了します。この際、経済補償金を支給する必要はありません。
③ 定年後の雇用若しくは契約関係
定年を迎える前までの企業と従業員の契約は、労働契約法に基づく労働契約になります。法定で定められた各種事項を踏まえた上での契約関係となりますが、定年を迎えた従業員が、本人も希望し、企業としても本人の継続就業を希望する場合には、労働契約とは異なる、「労務契約」を結び雇用を継続することが可能です。労務契約は労働契約法ではなく民法と契約法に基づいており、労働契約と比べて柔軟に勤務体制や報酬等を定めることが可能です。
例えば、知識と経験を引き続き活かしてもらいたいが、体力的に以前と同様の条件では勤務が難しい、或いは本人がフルタイムでの勤務を望まない等の状況がある場合、月水金の週3日の勤務、または時短勤務を提案し、協議の上で契約を結ぶことも可能であり、また、定年退職前の業務内容や責任範囲をお互いに見直し、新たな内容と報酬での再雇用も可能となります。
④ 社会保険等
労働契約では法定義務とされる社会保険、住宅積立金への加入、また、契約解除時の離職補償(経済補償金)も任意となり、従業員との協議の上で設定するかどうかを決めることとなります。また、労災保険については、広東省では2021 年に労災保険の加入を可能とする規定が実施されており 3、定年退職年齢に達した従業員も加入が可、同じく協議の上で加入するか否かを決めることとなります。
⑤ その他
中国の定年年齢に関しては現在引上げが検討されており、数年のうちに変更される可能性があります。従業員の方の視点に立って見れば、自分が定年退職を迎えた翌年に、同じ会社で同じような仕事をしている同僚が、同じく定年を迎える年齢であったのに法令の変更により定年が延長されるというようなことも起こりうる現状です。このような状況を踏まえた上で、定年を間近に迎えた従業員に対しては、現在の定年退職の制度について事前によく説明を行う必要があります。
また、従業員の方々の正確な定年退職の時期を把握した上で、再雇用を行うのかどうか、行うとすればどのような基準で行うのかについても事前に検討が必要です。国の制度が変更される中で、会社としてどのように運営すれば労務上のトラブルを最小限にとどめられるかがポイントとなります。
また、企業も従業員も再雇用を希望している場合でも、健康上の問題等で契約を締結した時点とその後の就業条件が急変してしまう可能性もあります。再雇用契約を締結する際には、そういった問題が発生した場合にはどうするかという点に関しても合わせて考慮しておく必要があります。
3. 関連規定等
*1 「中華人民共和国国民経済・社会発展第十四次5カ年計画と2035年までの長期目標」
*2 https://chinajob.mohrss.gov.cn/c/2022 01 30/340897.shtml
*3 《退職年齢に達した労働者など特定人員の労災保険参加に関する弁法(試行)》
広東省人力資源と社会保障庁 広東省財政庁 国家税務総局広東省税務局 2021 年4月1日施行
(2023年12月作成)
※各地の運用状況が異なる場合があります。実際の状況につきましては各所在地にて再度ご確認ください。
※本レポートにつきましては、有料顧問顧客様のみに送付させていただいており、本メール受取人様限りとさせて頂きます。
※このレポートはNAC名南のお客様への情報提供サービスの一環であり、この情報のみで、人事・労務の判断、意思決定を行う事は避けてください。弊社はこの情報内容に基づく意思決定に対して一切の責任を負いません。
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