1.アリペイ制限金額の引き上げ
2024年3月7日に、アリババ集団は、非居住者外国人に対するアリペイの支払いを、1回当りUS$1,000、年間累計額US$1万から、1回あたりUS$5,000、年間累計額US$5万に引き上げると発表しました。
これは、「支払いサービスのアップグレードと利便性の一層の改善に関する国務院弁公室の意見(国弁発[2024]10号)」に基づく措置の一環であり、また、「経常項目外為業務ガイド(匯発[2020]14号)」に定める、個人の年間換金(外貨⇒人民元)総量枠(US$5万)に合わせた形となっています。
2.規制緩和の背景となる状況
中国における電子マネー(アリペイ、ウィチャットペイ)は、中国内の銀行口座との連動が原則となっています。但し、「非居住者金融口座の税務状況調査管理弁法(国家税務総局・財政部・人民銀行・銀行業監督管理委員会・証券監督管理委員会・保険監督管理委員会公告2017年第14号)」の施行以降、非居住者個人の銀行口座開設は、極めて困難になっています。
上記第14号は、必ずしも非居住者の銀行口座開設を禁止するものではなく、非居住者に対しては、居住地国の納税番号(日本人の場合はマイナンバーなど)の届出を義務付けるものです。但し、実際には、14号施行以降、非居住者の中国内銀行口座開設は原則禁止され、現在、口座を開設・維持できるのは、中国内で居留許可を保有している外国人に制限されます。結果として、非居住者外国人は、銀行口座を中国の電子マネーに連動することができず、電子マネーを利用できない状況でした。これが、数年前から、国外のクレジットカード(必ずしも銀聯でなくてもよい)の連動が可能になったことから、利用が可能になりました。
とは言え、使用可能金額の不足に困るとの声が多かったため、今回の緩和は喜ばしいことと言えます。
尚、アリババ集団の発表による使用制限金額は、上記1の通りですが、利用者にヒアリングすると、人によって異なるものの、1日当たりUS$150~200程度で使用に制限がかかる事例が見受けられます。推測の域を出ませんが、1日当たりの使用制限が、この程度で設定されている可能性があります。これでは、現在の中国の物価を考慮すれば、全く以て不足です。この1日当たりの制限も、5倍程度になるのであれば、使い勝手は大きく改善します。ただし、非居住者が使用する場合は、ウィチャットペイ・アリペイ共に、個人間の振り替え(ラッキーマネーを含む)は認められません。
尚、上記14号では、電子マネーの一層の利便性確保だけではなく、高齢者、非居住者外国人を考慮した上で、現金決済、銀行カードの支払いに関する便利化の向上などの方針も織り込まれています。これにより、外国人は、電子マネーと現金、更に、ホテル等はクレジットカードという形で支払い方法を選択することが容易になり、今後、利便性が向上するものと期待されます。
水野コンサルタンシーグループ代表 水野真澄
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これは、「支払いサービスのアップグレードと利便性の一層の改善に関する国務院弁公室の意見(国弁発[2024]10号)」に基づく措置の一環であり、また、「経常項目外為業務ガイド(匯発[2020]14号)」に定める、個人の年間換金(外貨⇒人民元)総量枠(US$5万)に合わせた形となっています。
2.規制緩和の背景となる状況
中国における電子マネー(アリペイ、ウィチャットペイ)は、中国内の銀行口座との連動が原則となっています。但し、「非居住者金融口座の税務状況調査管理弁法(国家税務総局・財政部・人民銀行・銀行業監督管理委員会・証券監督管理委員会・保険監督管理委員会公告2017年第14号)」の施行以降、非居住者個人の銀行口座開設は、極めて困難になっています。
上記第14号は、必ずしも非居住者の銀行口座開設を禁止するものではなく、非居住者に対しては、居住地国の納税番号(日本人の場合はマイナンバーなど)の届出を義務付けるものです。但し、実際には、14号施行以降、非居住者の中国内銀行口座開設は原則禁止され、現在、口座を開設・維持できるのは、中国内で居留許可を保有している外国人に制限されます。結果として、非居住者外国人は、銀行口座を中国の電子マネーに連動することができず、電子マネーを利用できない状況でした。これが、数年前から、国外のクレジットカード(必ずしも銀聯でなくてもよい)の連動が可能になったことから、利用が可能になりました。
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