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車関連16社決算、11社が増収23年通期、四輪市場縮小も二輪好調

インドネシア証券取引所(IDX)に上場する自動車・車部品メーカー18社のうち16社が2日までに2023年通期連結決算を発表した。16社中11社が増収、10社が増益・黒字化だった。四輪車の新車市場が縮小する一方で、二輪車市場が約2割伸長したことを受け、二輪車向け部品を供給するサプライヤーの業績が好調だった。好業績を収めた企業の中には電動車用部品の生産に備える動きがある一方、24年中に電気バスなどの組み立て生産の本格化を目指す企業もある。
最大手の複合企業アストラ・インターナショナルの自動車部門は、売上高が前年比5.9%増の128兆2,500億ルピア(約1兆2,190億円)、純利益は18.1%増の11兆4,170億ルピアだった。
アストラが四輪事業で合弁を組むトヨタ自動車、ダイハツ工業、いすゞ自動車などの新車販売台数は前年比2%減の56万1,000台(市場シェアは56%)だったが、二輪事業ではアストラ・ホンダ・モーター(AHM)の販売台数が、22.1%増の488万1,000台と好調だった。AHMの市場シェアは78%だった。
AHMの好業績を受け、同社に部品を供給するアストラ系列の自動車部品最大手アストラ・オートパーツは増収増益を確保した。売上高のうちAHMとの取引が10.5%増の4兆970億ルピアで全体の22%を占めた。一方、ダイハツ工業のインドネシア現地法人アストラ・ダイハツ・モーター(ADM)との取引額は10.5%減の1兆5,062億ルピアに縮小した。


複合企業トリプトラ・グループ傘下で二輪用を中心に金属部品を製造するダルマ・ポリメタルは、売上高が41.9%増の5兆5,412億ルピア、純利益は55.2%増の6,118億ルピアと、2桁の増収増益だった。売上高の約45%を占めるAHM向けの取引が26%増だったほか、四輪車部門が59%増収と大きく伸長。四輪部門の売上高構成比率は33%と、前年から4ポイント拡大した。
四輪部門が伸びた要因として、ダルマ・ポリメタルは23年1月に自動車向け電気材料や電子部品の製造・販売を手がける黒田グループ(東京都品川区)の子会社トリミトラ・チトラハスタの株式72.75%を2,169億ルピアで取得し、連結化したことが挙げられる。
日系メーカー以外との取引では、韓国の現代自動車向けのサスペンションメンバーなどの新製品を生産した。また、ワイヤハーネス製造を手がける韓国・京信との合弁会社ダルマ・キュンシン・インドネシアが、現代自向けにも供給している。同社の23年の売上高は前年比27%減の3,482億ルピアと減収だったが、ダルマ・ポリメタルは今年、電気自動車(EV)向けの部品生産を強化していく方針で、ダルマ・キュンシン・インドネシアはEV用ワイヤハーネスの供給源として期待される。
また子会社ダルマ・コントロールケーブル・インドネシアが、今年上半期(1~6月)中にバッテリーパックやバッテリーマネジメントシステムなどの工場を完成させる計画などが進行している。
■VKTR、電気バス販売は前年割れ
昨年6月に上場した、複合企業バクリー・アンド・ブラザーズの子会社で自動車部品や電気バスの組み立て生産を手がけるVKTRテクノロギ・モビリタスが公表した初の通期決算は、売上高が0.9%減、純利益は89.1%減だった。売上高の9割を占め、日系商用メーカーを主要顧客とする部品製造・加工事業が3%増となる一方、電気バスの売り上げは22%減だった。電気バスの販売台数は23台と、前年の30台から減少した。
VKTRは、電気バスの販売減の主因について、公共バス向けなど企業・政府間取引(BtoG)の遅れが影響していると説明した。ただ、電気バスの受注残や主要顧客との関係は引き続き堅調だと主張。第4四半期(10~12月)には初めて企業向けに電気バスを販売したという。
VKTRは24年の見通しに関して、中ジャワ州マゲランに建設している、電気バス・トラック工場を9月にも稼働させるとしている。部品を輸入して現地で組み立てる完全ノックダウン(CKD)方式で、フル稼働後の年産能力は3,000台。電気バスの国産化率(TKDN)は40%、トラクターヘッドとリジッドトラック(単車)は30%以上となる見込み。また、フォークリフトと鉱業用トラックの完成車(CBU)も扱い、製品ラインアップの拡充を図る。
また、財閥リッポー・グループで、エンジンのスパーク(点火)プラグを生産するマルチ・プリマ・スジャトラの23年の業績は、2桁の減収減益と悪化した。22年の主要顧客の1社だったアストラ・オートパーツからの売り上げが計上されておらず、取引先に変化があったもようだ。
このほか、自動車販売大手インドモービル・スクセス・インターナショナルが、昨年2月から販売を開始した中国の電動バイク大手「YADEA」ブランドの電動バイクと電動自転車の通期の売上高は、1,149億ルピアだった。インドモービル全体の売上高構成比率では0.4%にとどまっている。
一方、インドモービルが2桁の増収増益と好調だった要因としては、ボルボ・トラックやボルボ建設機械(VCE)の売り上げがそれぞれ72%増、37%増と大きく伸びたことが挙げられる。売上高全体に占める両ブランドの割合はそれぞれ9.4%(前年比3.3ポイント増)、9.0%(同1.6ポイント増)となった。

VKTRテクノロギ・モビリタスは2月27日、国内初となる商用EV専用の組み立て生産施設の着工式を実施した(同社提供)
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AHMの好業績を受け、同社に部品を供給するアストラ系列の自動車部品最大手アストラ・オートパーツは増収増益を確保した。売上高のうちAHMとの取引が10.5%増の4兆970億ルピアで全体の22%を占めた。一方、ダイハツ工業のインドネシア現地法人アストラ・ダイハツ・モーター(ADM)との取引額は10.5%減の1兆5,062億ルピアに縮小した。


複合企業トリプトラ・グループ傘下で二輪用を中心に金属部品を製造するダルマ・ポリメタルは、売上高が41.9%増の5兆5,412億ルピア、純利益は55.2%増の6,118億ルピアと、2桁の増収増益だった。売上高の約45%を占めるAHM向けの取引が26%増だったほか、四輪車部門が59%増収と大きく伸長。四輪部門の売上高構成比率は33%と、前年から4ポイント拡大した。
四輪部門が伸びた要因として、ダルマ・ポリメタルは23年1月に自動車向け電気材料や電子部品の製造・販売を手がける黒田グループ(東京都品川区)の子会社トリミトラ・チトラハスタの株式72.75%を2,169億ルピアで取得し、連結化したことが挙げられる。
日系メーカー以外との取引では、韓国の現代自動車向けのサスペンションメンバーなどの新製品を生産した。また、ワイヤハーネス製造を手がける韓国・京信との合弁会社ダルマ・キュンシン・インドネシアが、現代自向けにも供給している。同社の23年の売上高は前年比27%減の3,482億ルピアと減収だったが、ダルマ・ポリメタルは今年、電気自動車(EV)向けの部品生産を強化していく方針で、ダルマ・キュンシン・インドネシアはEV用ワイヤハーネスの供給源として期待される。
また子会社ダルマ・コントロールケーブル・インドネシアが、今年上半期(1~6月)中にバッテリーパックやバッテリーマネジメントシステムなどの工場を完成させる計画などが進行している。
■VKTR、電気バス販売は前年割れ
昨年6月に上場した、複合企業バクリー・アンド・ブラザーズの子会社で自動車部品や電気バスの組み立て生産を手がけるVKTRテクノロギ・モビリタスが公表した初の通期決算は、売上高が0.9%減、純利益は89.1%減だった。売上高の9割を占め、日系商用メーカーを主要顧客とする部品製造・加工事業が3%増となる一方、電気バスの売り上げは22%減だった。電気バスの販売台数は23台と、前年の30台から減少した。
VKTRは、電気バスの販売減の主因について、公共バス向けなど企業・政府間取引(BtoG)の遅れが影響していると説明した。ただ、電気バスの受注残や主要顧客との関係は引き続き堅調だと主張。第4四半期(10~12月)には初めて企業向けに電気バスを販売したという。
VKTRは24年の見通しに関して、中ジャワ州マゲランに建設している、電気バス・トラック工場を9月にも稼働させるとしている。部品を輸入して現地で組み立てる完全ノックダウン(CKD)方式で、フル稼働後の年産能力は3,000台。電気バスの国産化率(TKDN)は40%、トラクターヘッドとリジッドトラック(単車)は30%以上となる見込み。また、フォークリフトと鉱業用トラックの完成車(CBU)も扱い、製品ラインアップの拡充を図る。
また、財閥リッポー・グループで、エンジンのスパーク(点火)プラグを生産するマルチ・プリマ・スジャトラの23年の業績は、2桁の減収減益と悪化した。22年の主要顧客の1社だったアストラ・オートパーツからの売り上げが計上されておらず、取引先に変化があったもようだ。
このほか、自動車販売大手インドモービル・スクセス・インターナショナルが、昨年2月から販売を開始した中国の電動バイク大手「YADEA」ブランドの電動バイクと電動自転車の通期の売上高は、1,149億ルピアだった。インドモービル全体の売上高構成比率では0.4%にとどまっている。
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