第311回
橋本さん:みらい先生、こんにちは。希望していた海外勤務がようやく決まりました。今後3年間はタイで勤務することになります。ところで、私には日本国内に不動産賃貸収入があり確定申告を毎年行っていたのですが、今後はどのようにしたらいいのでしょうか。
みらい:念願の海外勤務おめでとうございます。まず、海外勤務期間が1年以上の予定で出国すると、出国の日の翌日から税務上「非居住者」となります。非居住者であっても日本で生じた所得がある場合には、日本の所得税が課税されるため、確定申告が必要となる場合があります。申告が必要になる例としては不動産所得が当てはまります。
橋本さん:なるほど。不動産所得は非居住者になっても確定申告が必要なのですね。そういえば以前海外赴任をされた先輩が、「確定申告書を代わりに提出してくれる代理人を決めないといけない」と言っていたのを思い出しました。
みらい:「納税管理人」のことですね。橋本さんの代わりに申告書の提出、税務署からの書類の授受、納税の手続き代行を行う方を決めていただく必要があります。そして、出国の日までに「納税管理人の届出書」を税務署に提出しなければなりません。
橋本さん:e-taxを通じて確定申告を電子申告で行えば問題なさそうですが、そういうわけではないのですね。
みらい: 代理人を立てずに電子申告されるのも良いのですが、現在の制度上では納税管理人を選んだ方がいいでしょう。もし届出を出さずに出国してしまうと、1月1日から出国日までと、出国日の翌日からその年の12月31日までの期間の収入をそれぞれ分けて、確定申告をしなければならなくなってしまいます。
橋本さん:それはかなり面倒ですね。
みらい:しかも、出国日までの期間分に対する確定申告書は、出国日が申告・納付期限となるので、提出を忘れてしまうと、加算税、延滞税の対象となってしまいます。 手間だけでなく、金銭的な負担も強いられる場合もあるので、出国日までに忘れずに納税管理人の届出書を提出してください。
橋本さん:わかりました。他に不動産所得の申告に関して何か留意しておくべきことはありますか。
みらい: これまでと変わる点とすれば、不動産賃料の支払いを受ける際に源泉徴収がされる場合があることです。不動産の借り主が個人であり、かつ、その借り主自身またはその借り主の親族の居住のためである場合を除いて、借り主は賃借料を支払う際に20.42%の税率で所得税を源泉徴収しなければなりません。
橋本さん:えっ、その分家賃収入が減ってしまうのでしょうか。
みらい:毎月の家賃収入の手取り額はいったん減りますが、源泉徴収された所得税は前払いのようなもので、所得税の確定申告をすることで精算される仕組みです。
橋本さん:なるほど。毎月の給料から天引きされている源泉所得税が年末調整の段階で年税額が算定され精算されるのと似ていますね。本日はいろいろとありがとうございました。
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橋本さん:みらい先生、こんにちは。希望していた海外勤務がようやく決まりました。今後3年間はタイで勤務することになります。ところで、私には日本国内に不動産賃貸収入があり確定申告を毎年行っていたのですが、今後はどのようにしたらいいのでしょうか。
みらい:念願の海外勤務おめでとうございます。まず、海外勤務期間が1年以上の予定で出国すると、出国の日の翌日から税務上「非居住者」となります。非居住者であっても日本で生じた所得がある場合には、日本の所得税が課税されるため、確定申告が必要となる場合があります。申告が必要になる例としては不動産所得が当てはまります。
橋本さん:なるほど。不動産所得は非居住者になっても確定申告が必要なのですね。そういえば以前海外赴任をされた先輩が、「確定申告書を代わりに提出してくれる代理人を決めないといけない」と言っていたのを思い出しました。
みらい:「納税管理人」のことですね。橋本さんの代わりに申告書の提出、税務署からの書類の授受、納税の手続き代行を行う方を決めていただく必要があります。そして、出国の日までに「納税管理人の届出書」を税務署に提出しなければなりません。
橋本さん:e-taxを通じて確定申告を電子申告で行えば問題なさそうですが、そういうわけではないのですね。
みらい: 代理人を立てずに電子申告されるのも良いのですが、現在の制度上では納税管理人を選んだ方がいいでしょう。もし届出を出さずに出国してしまうと、1月1日から出国日までと、出国日の翌日からその年の12月31日までの期間の収入をそれぞれ分けて、確定申告をしなければならなくなってしまいます。
橋本さん:それはかなり面倒ですね。
みらい:しかも、出国日までの期間分に対する確定申告書は、出国日が申告・納付期限となるので、提出を忘れてしまうと、加算税、延滞税の対象となってしまいます。 手間だけでなく、金銭的な負担も強いられる場合もあるので、出国日までに忘れずに納税管理人の届出書を提出してください。
橋本さん:わかりました。他に不動産所得の申告に関して何か留意しておくべきことはありますか。
みらい: これまでと変わる点とすれば、不動産賃料の支払いを受ける際に源泉徴収がされる場合があることです。不動産の借り主が個人であり、かつ、その借り主自身またはその借り主の親族の居住のためである場合を除いて、借り主は賃借料を支払う際に20.42%の税率で所得税を源泉徴収しなければなりません。
橋本さん:えっ、その分家賃収入が減ってしまうのでしょうか。
みらい:毎月の家賃収入の手取り額はいったん減りますが、源泉徴収された所得税は前払いのようなもので、所得税の確定申告をすることで精算される仕組みです。
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