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小売売上高の伸び率がコロナ後最小、6月経済

中国国家統計局が15日に発表した2024年6月の主要経済指標のうち、小売売上高は前年同月比2.0%増だった。伸び率は新型コロナウイルス対策撤廃後の最低を更新した。かねて懸念されていた消費の弱さが改めて浮き彫りとなった。消費者の財布のひもは依然堅く、今後の消費を巡る状況も楽観できない。
6月の小売売上高は4兆732億元(約87兆円)。伸び率は昨年11月の10.1%をピークに縮小傾向にあり、6月は4月の2.3%を下回って23年1月以降で最低となった。中国政府は22年末にコロナ対策を撤廃しており、経済正常化後の最小を更新した格好だ。
中国の消費は23年に入ってから同年中頃まで好調だった。コロナ対策撤廃を契機に外出が増えたためで、外出関連用品の需要が拡大したほか、旅行の増加が飲食消費などを大きく押し上げた。だが、その後は再び勢いを失った。小売売上高の伸び率は23年終盤に高水準を記録したが、主な要因は前年同期に外出禁止令が多発していたことによるベース効果(比較対象の数値の高低により増減率が実態以上に大きくなる効果)だった。
足元の状況も芳しくない。自動車業界などで価格競争が激化していることや、消費者物価指数(CPI)の上昇率が低水準で推移していることを踏まえると、消費者の財布のひもは依然堅いと言え、対消費者事業を展開する企業が収益を伸ばしにくい状況は今後も続きそうだ。
■自動車、4カ月連続のマイナス
小売売上高の内訳は、全体の約9割を占める商品小売りが1.5%増の3兆6,123億元、飲食が5.4%増の4,609億元だった。商品小売りの伸び率は5月から2.1ポイント縮小した一方、飲食の伸び率は0.4ポイント拡大した。
商品小売りの内訳を見ると、1割以上を占める自動車類が6.2%減と低迷した。4カ月連続のマイナス。自動車メーカーは各社とも、価格競争にさらされる中で薄利多売の戦略を取っているが、6月の国内自動車販売台数は前年同月比マイナスとなり、販売量を増やすことも難しくなっている。
化粧品類は14.6%減。建材・内装材料類は4.4%減で、不動産不況の影響を受けている。
一方、食糧・食用油・食品類は10.8%増、たばこ・酒類は5.2%増と堅調だった。
地域別の小売売上高は、都市部が1.7%増の3兆5,141億元、農村部が3.8%増の5,591億元だった。
1~6月の小売売上高は前年同期比3.7%増の23兆5,969億元だった。オンラインでの小売額は9.8%増の7兆991億元。うち商品は8.8%増の5兆9,596億元で、小売売上高全体の25.3%を占めた。
■鉱工業生産額5.3%増に鈍化
鉱工業生産額(一定規模以上の企業対象、付加価値ベース)の伸びも鈍った。6月は前年同月比5.3%増で、伸び率は5月から0.3ポイント縮小した。2カ月連続の縮小。
鉱工業生産額は昨年終わりから今年初頭にかけて大きく伸びた。昨春から盛り上がった在庫調整の波が一段落し、再び生産拡大局面を迎えたためだ。だが、足元の状況に鑑みると、生産拡大局面の持続性にはやや不安が残る。
6月の3大業種別の生産額を見ると、主力の「製造業」が5.5%増で、伸び率は5月から0.5ポイント縮小した。「採掘業」は4.4%増、「電力、熱、ガス、水の生産・供給業」は4.8%増だった。
より細かい業種分類では、41業種のうち35業種が増加。鉄道・船舶・航空宇宙・その他運輸設備製造業が13.1%増と大幅に伸びた。コンピューター・通信・その他電子設備製造業(11.3%増)、非鉄金属精錬・圧延加工業(10.2%増)も好調だった。
一方、非金属鉱物製品業は0.4%減った。農副食品加工業(0.9%増)、鉄金属精錬・圧延加工業(3.3%増)は小幅な伸びにとどまった。
企業の種類別では、国有企業が3.0%増、株式制企業が5.9%増、外資企業は2.9%増だった。
生産量は619品目のうち369品目が増えた。
主要品目の生産量は◇発電設備:38.2%増◇集積回路(IC):12.8%増◇工業用ロボット:12.4%増◇携帯電話機:7.6%増◇板ガラス:6.2%増◇エチレン:3.3%増◇化学繊維:3.0%増◇自動車:1.8%増(うち「新エネルギー車=NEV」は37.0%増)◇太陽電池:0.1%減◇セメント:10.7%減——などとなった。セメント業は不動産不況の影響を受けて、以前より業況が悪い。
鉄鋼・金属関連は◇非鉄金属10種:7.5%増◇鋼材:3.2%増◇粗鋼:0.2%増◇銑鉄:3.3%減——だった。
6月の鉱工業生産額は季節調整を経た前月比で0.42%増となった。
1~6月の鉱工業生産額は前年同期比6.0%増。
■固定資産投資3.9%増に縮小
1~6月の固定資産投資(農村を除く)は3.9%増の24兆5,391億元だった。伸び率は1~3月の4.5%から月を追うごとに縮小している。国家統計局は固定資産投資や不動産関連の統計について、単月の数値を発表せず、年初からの累計値を月ごとに発表する形式を採っている。
民間企業は0.1%増だったのに対し、国有企業は6.8%増だった。国有企業が民間企業の投資意欲の低さを補う状態が続いている。
内外企業別では、中国本土企業が3.8%増、港澳台企業が5.1%増だったのに対し、外資企業は15.8%減だった。減少率は1~5月から0.4ポイント拡大した。中国では昨年から外資企業の直接投資の縮小が際立っている。
産業別では、第1次産業が3.1%増、第2次産業が12.6%増だった一方、第3次産業は0.2%減だった。
第2次産業では、製造業の投資が9.5%増と引き続き高水準を記録した。政府が製造業の設備更新を強く促していることが背景にある。鉄道・船舶・航空宇宙・その他運輸設備製造業が28.2%、食品製造業が27.0%と大幅に増えた。
第3次産業に分類されるインフラ投資は5.4%増で、伸び率は0.3ポイント鈍化した。
6月の固定資産投資は季節調整を経た前月比で0.21%増だった。
■不動産業界の低迷続く
1~6月の不動産開発投資は10.1%減の5兆2,529億元だった。減少率は1~5月と同じ。不動産開発投資は22年通年が前年比10.0%減、23年通年が前年比9.6%減で、この2年間減り続けている。この間の不動産開発投資の減少は中国経済の大きな足かせになっており、早期の底打ちが期待されるが、いまだその兆しは出ていない。
不動産開発投資のうち住宅投資は10.4%減の3兆9,883億元だった。新規着工面積は23.7%減で、住宅は23.6%減。
不動産販売面積は前年同期比19.0%減、うち住宅は21.9%減だった。不動産販売額は25.0%減、うち住宅は26.9%減。6月末時点の新築住宅の在庫面積は前年同月末比で23.5%増えた。
住宅販売額の減少率は1~5月から4.6ポイント縮小し、在庫面積の増加率は5月末から1.1ポイント縮小した。中国人民銀行(中央銀行)が5月に発表した住宅ローンの最低頭金比率引き下げなどの住宅購入促進策が一定の効果を出したが、市況を劇的に変えるには至っていない。
■失業率は5.0%のまま
5月の全国都市部調査失業率は5.0%で、前月から横ばい。前年同月比では0.2ポイント下がった。1~6月は5.1%で、前年同期から0.2ポイント下がった。

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中国の消費は23年に入ってから同年中頃まで好調だった。コロナ対策撤廃を契機に外出が増えたためで、外出関連用品の需要が拡大したほか、旅行の増加が飲食消費などを大きく押し上げた。だが、その後は再び勢いを失った。小売売上高の伸び率は23年終盤に高水準を記録したが、主な要因は前年同期に外出禁止令が多発していたことによるベース効果(比較対象の数値の高低により増減率が実態以上に大きくなる効果)だった。
足元の状況も芳しくない。自動車業界などで価格競争が激化していることや、消費者物価指数(CPI)の上昇率が低水準で推移していることを踏まえると、消費者の財布のひもは依然堅いと言え、対消費者事業を展開する企業が収益を伸ばしにくい状況は今後も続きそうだ。
■自動車、4カ月連続のマイナス
小売売上高の内訳は、全体の約9割を占める商品小売りが1.5%増の3兆6,123億元、飲食が5.4%増の4,609億元だった。商品小売りの伸び率は5月から2.1ポイント縮小した一方、飲食の伸び率は0.4ポイント拡大した。
商品小売りの内訳を見ると、1割以上を占める自動車類が6.2%減と低迷した。4カ月連続のマイナス。自動車メーカーは各社とも、価格競争にさらされる中で薄利多売の戦略を取っているが、6月の国内自動車販売台数は前年同月比マイナスとなり、販売量を増やすことも難しくなっている。
化粧品類は14.6%減。建材・内装材料類は4.4%減で、不動産不況の影響を受けている。
一方、食糧・食用油・食品類は10.8%増、たばこ・酒類は5.2%増と堅調だった。
地域別の小売売上高は、都市部が1.7%増の3兆5,141億元、農村部が3.8%増の5,591億元だった。
1~6月の小売売上高は前年同期比3.7%増の23兆5,969億元だった。オンラインでの小売額は9.8%増の7兆991億元。うち商品は8.8%増の5兆9,596億元で、小売売上高全体の25.3%を占めた。
■鉱工業生産額5.3%増に鈍化
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鉱工業生産額は昨年終わりから今年初頭にかけて大きく伸びた。昨春から盛り上がった在庫調整の波が一段落し、再び生産拡大局面を迎えたためだ。だが、足元の状況に鑑みると、生産拡大局面の持続性にはやや不安が残る。
6月の3大業種別の生産額を見ると、主力の「製造業」が5.5%増で、伸び率は5月から0.5ポイント縮小した。「採掘業」は4.4%増、「電力、熱、ガス、水の生産・供給業」は4.8%増だった。
より細かい業種分類では、41業種のうち35業種が増加。鉄道・船舶・航空宇宙・その他運輸設備製造業が13.1%増と大幅に伸びた。コンピューター・通信・その他電子設備製造業(11.3%増)、非鉄金属精錬・圧延加工業(10.2%増)も好調だった。
一方、非金属鉱物製品業は0.4%減った。農副食品加工業(0.9%増)、鉄金属精錬・圧延加工業(3.3%増)は小幅な伸びにとどまった。
企業の種類別では、国有企業が3.0%増、株式制企業が5.9%増、外資企業は2.9%増だった。
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主要品目の生産量は◇発電設備:38.2%増◇集積回路(IC):12.8%増◇工業用ロボット:12.4%増◇携帯電話機:7.6%増◇板ガラス:6.2%増◇エチレン:3.3%増◇化学繊維:3.0%増◇自動車:1.8%増(うち「新エネルギー車=NEV」は37.0%増)◇太陽電池:0.1%減◇セメント:10.7%減——などとなった。セメント業は不動産不況の影響を受けて、以前より業況が悪い。
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6月の鉱工業生産額は季節調整を経た前月比で0.42%増となった。
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■固定資産投資3.9%増に縮小
1~6月の固定資産投資(農村を除く)は3.9%増の24兆5,391億元だった。伸び率は1~3月の4.5%から月を追うごとに縮小している。国家統計局は固定資産投資や不動産関連の統計について、単月の数値を発表せず、年初からの累計値を月ごとに発表する形式を採っている。
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内外企業別では、中国本土企業が3.8%増、港澳台企業が5.1%増だったのに対し、外資企業は15.8%減だった。減少率は1~5月から0.4ポイント拡大した。中国では昨年から外資企業の直接投資の縮小が際立っている。
産業別では、第1次産業が3.1%増、第2次産業が12.6%増だった一方、第3次産業は0.2%減だった。
第2次産業では、製造業の投資が9.5%増と引き続き高水準を記録した。政府が製造業の設備更新を強く促していることが背景にある。鉄道・船舶・航空宇宙・その他運輸設備製造業が28.2%、食品製造業が27.0%と大幅に増えた。
第3次産業に分類されるインフラ投資は5.4%増で、伸び率は0.3ポイント鈍化した。
6月の固定資産投資は季節調整を経た前月比で0.21%増だった。
■不動産業界の低迷続く
1~6月の不動産開発投資は10.1%減の5兆2,529億元だった。減少率は1~5月と同じ。不動産開発投資は22年通年が前年比10.0%減、23年通年が前年比9.6%減で、この2年間減り続けている。この間の不動産開発投資の減少は中国経済の大きな足かせになっており、早期の底打ちが期待されるが、いまだその兆しは出ていない。
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