日本企業が中国ペット市場の開拓に乗り出している。上海市で5日始まった輸入拡大を目的とした大型見本市「第7回中国国際輸入博覧会(輸入博)」では、日本貿易振興機構(ジェトロ)がペットをテーマに日本企業を集めたブースを出展。中国の犬猫などのペット数は急速に伸びており、市場の成長余地は大きい。中国でもペットの高齢化が今後進むと予想される中、日本が強みとするペットのヘルスケア関連サービスやペットフードなどを売り込む。
ジェトロが「第7回中国国際輸入博覧会(輸入博)」でペットをテーマに日本企業を集めたブースを出展し、日本54社が参加した。日本が強みとするペットのヘルスケア関連サービスやペットフードなどを売り込んだ=6日、上海市
ジェトロのブースには日本54社が参加。400平方メートルの会場にペット用品・アパレルなど計850SKU(最小管理単位)を出品した。商品にはQRコードを付け、電子商取引(EC)を通じて購入できるようにした。
ジェトロブースには複数のペットフード企業が出展。ペットフードを中国に輸出するには中国税関総署の許可が必要。日本産の輸出は現時点で認められておらず、日本各社は東南アジアでの生産品や中国現地生産品を販売している。
ジェトロは今回のブース出展を通じて、日本製品の質の高さをアピールし、日本産ペットフードの輸出を中国に認めてもらうことも狙っている。
日本の農林水産省によると、日本が23年に輸出したペットフードは約79億円で、13年から約13倍に急伸。このうち韓国など東アジアの国・地域が全体の約96%を占めた。業界では中国への輸出が可能になれば、ペットフードの輸出額が年間200億円まで拡大するとの見方もあるという。
健康補助食品や動物用食品などの製造販売を手がけるモノリス(埼玉県新座市)は、ペット用サプリメントも中国に輸出できないことから、中国本土外に販路を持つ中国のバイヤーとの提携を模索するため出展。免疫機能を維持できる日本産冬虫夏草を使ったサプリメントや日本産納豆を粉末状にしたサプリメントなどを出品した。
■ヘルスケアサービス売り込み
ヘルスケアサービスを売り込む日本企業もある。
昨年11月に設立したスタートアップのバディクラウド(Buddy Cloud、東京都中央区)は、ペットの尿を検査することで健康状態を把握できるサービスを紹介した。検査キットの試験紙にペットの尿を浸し、写真に撮ってアプリにアップロードすると、検査結果と解説を確認できる仕組み。ペットの健康上の異常を早期に発見できるといったメリットがあり、日本では今年8月にサービスの提供を始めた。
バディクラウドの藤井峻最高経営責任者(CEO)によると、日本は法律の壁があり、サービスは情報提供にとどまる。そこで今後は海外に進出し、現地の動物病院と提携して、検査結果を踏まえたオンライン診療の提供やペット関連の保険・用品販売などにもサービス範囲を広げる方針。将来的には「アジアのペット総合オンラインプラットフォーム」となる青写真を描く。
藤井氏は「ペットの一生を通じて利用できるソリューションを提供できるようにしたい」と意気込んだ。来年から中国を含む東アジアや東南アジアで事業を展開することを模索している。
バディクラウド(Buddy Cloud)の藤井峻CEO(右)は、中国を含む海外に進出し、「アジアのペット総合オンラインプラットフォーム」となる青写真を描く=6日、上海市
■「中国ニーズに合致」
ペットに関する日本の製品・サービスは中国で受け入れられる余地が大きそうだ。
ジェトロ上海事務所の高山博副所長によると、中国では新型コロナウイルス流行時にペットを飼う人が急激に増え、現在は年齢の若い犬猫が目立つ。日本の犬猫の平均年齢が7歳程度なのに対し、中国は3~4歳。中国でペットの年齢が今後上がるにつれ、高齢化に対応する日本の製品・サービスのノウハウが中国のニーズに合致するとの見方だ。
中国ペット用品市場のパイ獲得を巡って国内外企業の参入が増え、競争は激化している。一方で犬を例に挙げれば、中国は日本と同様に室内で小型犬を飼う人が多く、日本に関連する製品・サービスが豊富にあることを踏まえると、高山氏は「日本製品は中国での需要に合う」とみている。日本製品が持つ「安心・安全」のイメージも追い風だ。
モノリス代表取締役の茂呂陵宏氏は「中国でもペットの高齢化が進めば、健康を維持するためにもサプリメントの引き合いが高まるだろう」との見方を示した。
高山氏は「日本で犬猫などのペット数が頭打ちになる中、中国は急速に伸びており、市場規模は大きい。ペットの高齢化などの分野で先行する技術、ノウハウを持つ日本の製品が中国で受け入れられる余地は大きい」と強調。関連する日本企業の中国進出を後押しする考えだ。
実際、中国のペット市場は大きい。中国のペット関連団体によると、中国の2023年時点のペット数は犬が5,175万匹、猫が6,980万匹で、ともに前年から増加。中でも猫は20年から2,100万匹以上増えた。飼い主は若年化が進み、1980年代生まれと90年代生まれが全体の80%を占めた。
市場調査会社の艾媒諮詢(IIメディアリサーチ)が23年に発表した調査報告によると、ペット、ペット用品、ペットフードなどの売買を含む国内ペット市場は22年に前年比25%増の4,936億元(約10兆6,000億円)。23年に約1兆9,000億円の規模だったとされる日本市場とは5倍以上の開きがある。中国市場は今後も伸び続け、艾媒諮詢は25年に8,114億元へと成長するとみている。
■ニシキゴイも売り込み
ジェトロブースでは、全日本錦鯉振興会がニシキゴイを売り込んだ。実物は展示せず、オンラインで人工知能(AI)を使った品評システムの紹介や日本産の高級な餌を展示した。
中国は昨年11月、日本からのニシキゴイの輸入を事実上停止。中国側が日本からの輸出に必要な検疫施設の許可を更新していないことが要因だった。ただ今年9月に中国側が輸入を受け入れる方針に転換したことが分かり、月内にも輸出が再開される見通しだ。
ニシキゴイの2022年の輸出額は63億円で、このうち中国向けが全体の19%を占め国・地域別で最大だった。
全日本錦鯉振興会の吉田俊一副理事長は、国内の養殖場6カ所が検疫施設として認められたことについて「喜ばしいことだ。今後、従来輸出が認められていた18カ所全てが再開し、輸出できる養殖場が20カ所以上になることを期待したい」と述べた。年内の輸出数は2万~3万匹になる見通し。
日本観賞魚振興事業協同組合は日本産のメダカをPRした。国内市場が頭打ちとなる中で海外に販路を求める。00年以降に改良メダカが数多く登場し、現在までに熱帯魚のような品種を含め1,000以上の品種が作出されているという。
輸入博は今年で7回目の開催。129カ国・地域の3,496社が出展し、前回(3,486社)を上回った。会期は10日まで。
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ジェトロは今回のブース出展を通じて、日本製品の質の高さをアピールし、日本産ペットフードの輸出を中国に認めてもらうことも狙っている。
日本の農林水産省によると、日本が23年に輸出したペットフードは約79億円で、13年から約13倍に急伸。このうち韓国など東アジアの国・地域が全体の約96%を占めた。業界では中国への輸出が可能になれば、ペットフードの輸出額が年間200億円まで拡大するとの見方もあるという。
健康補助食品や動物用食品などの製造販売を手がけるモノリス(埼玉県新座市)は、ペット用サプリメントも中国に輸出できないことから、中国本土外に販路を持つ中国のバイヤーとの提携を模索するため出展。免疫機能を維持できる日本産冬虫夏草を使ったサプリメントや日本産納豆を粉末状にしたサプリメントなどを出品した。
■ヘルスケアサービス売り込み
ヘルスケアサービスを売り込む日本企業もある。
昨年11月に設立したスタートアップのバディクラウド(Buddy Cloud、東京都中央区)は、ペットの尿を検査することで健康状態を把握できるサービスを紹介した。検査キットの試験紙にペットの尿を浸し、写真に撮ってアプリにアップロードすると、検査結果と解説を確認できる仕組み。ペットの健康上の異常を早期に発見できるといったメリットがあり、日本では今年8月にサービスの提供を始めた。
バディクラウドの藤井峻最高経営責任者(CEO)によると、日本は法律の壁があり、サービスは情報提供にとどまる。そこで今後は海外に進出し、現地の動物病院と提携して、検査結果を踏まえたオンライン診療の提供やペット関連の保険・用品販売などにもサービス範囲を広げる方針。将来的には「アジアのペット総合オンラインプラットフォーム」となる青写真を描く。
藤井氏は「ペットの一生を通じて利用できるソリューションを提供できるようにしたい」と意気込んだ。来年から中国を含む東アジアや東南アジアで事業を展開することを模索している。
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ジェトロ上海事務所の高山博副所長によると、中国では新型コロナウイルス流行時にペットを飼う人が急激に増え、現在は年齢の若い犬猫が目立つ。日本の犬猫の平均年齢が7歳程度なのに対し、中国は3~4歳。中国でペットの年齢が今後上がるにつれ、高齢化に対応する日本の製品・サービスのノウハウが中国のニーズに合致するとの見方だ。
中国ペット用品市場のパイ獲得を巡って国内外企業の参入が増え、競争は激化している。一方で犬を例に挙げれば、中国は日本と同様に室内で小型犬を飼う人が多く、日本に関連する製品・サービスが豊富にあることを踏まえると、高山氏は「日本製品は中国での需要に合う」とみている。日本製品が持つ「安心・安全」のイメージも追い風だ。
モノリス代表取締役の茂呂陵宏氏は「中国でもペットの高齢化が進めば、健康を維持するためにもサプリメントの引き合いが高まるだろう」との見方を示した。
高山氏は「日本で犬猫などのペット数が頭打ちになる中、中国は急速に伸びており、市場規模は大きい。ペットの高齢化などの分野で先行する技術、ノウハウを持つ日本の製品が中国で受け入れられる余地は大きい」と強調。関連する日本企業の中国進出を後押しする考えだ。
実際、中国のペット市場は大きい。中国のペット関連団体によると、中国の2023年時点のペット数は犬が5,175万匹、猫が6,980万匹で、ともに前年から増加。中でも猫は20年から2,100万匹以上増えた。飼い主は若年化が進み、1980年代生まれと90年代生まれが全体の80%を占めた。
市場調査会社の艾媒諮詢(IIメディアリサーチ)が23年に発表した調査報告によると、ペット、ペット用品、ペットフードなどの売買を含む国内ペット市場は22年に前年比25%増の4,936億元(約10兆6,000億円)。23年に約1兆9,000億円の規模だったとされる日本市場とは5倍以上の開きがある。中国市場は今後も伸び続け、艾媒諮詢は25年に8,114億元へと成長するとみている。
■ニシキゴイも売り込み
ジェトロブースでは、全日本錦鯉振興会がニシキゴイを売り込んだ。実物は展示せず、オンラインで人工知能(AI)を使った品評システムの紹介や日本産の高級な餌を展示した。
中国は昨年11月、日本からのニシキゴイの輸入を事実上停止。中国側が日本からの輸出に必要な検疫施設の許可を更新していないことが要因だった。ただ今年9月に中国側が輸入を受け入れる方針に転換したことが分かり、月内にも輸出が再開される見通しだ。
ニシキゴイの2022年の輸出額は63億円で、このうち中国向けが全体の19%を占め国・地域別で最大だった。
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日本観賞魚振興事業協同組合は日本産のメダカをPRした。国内市場が頭打ちとなる中で海外に販路を求める。00年以降に改良メダカが数多く登場し、現在までに熱帯魚のような品種を含め1,000以上の品種が作出されているという。
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