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越で好調、タイに新工場建設現代自、印・東南ア深耕(上)

販売台数で世界3位を誇る韓国完成車大手、現代自動車グループが、東南アジア諸国連合(ASEAN)とインドでの存在感を高めようとしている。タイとマレーシアでは各国政府が提供する奨励策を活用して組立工場を設立する。北米と欧州市場が好調な中、中国市場での販売が急減していることが背景にある。ただ、ベトナムを除く東南アジア各国では、日本車や中国製電気自動車(EV)との競争を強いられており、厳しい状況が続いている。
韓国メディアによると、中国自動車大手の北京汽車(北京市)と現代自の合弁、北京現代汽車の中国での販売台数は2016年の114万台をピークに急落。販売が低迷する中、現代自は23年には重慶市の完成車工場を売却するなど、中国の生産能力の削減に乗り出した。マレーシアのアペックス証券のアナリスト、ケニス・レオン氏は「現代自は中国事業のリストラを急いで東南アジアに経営資源を集中しようとしている」と分析する。
ところが、東南アジアでは先駆けて進出した日系メーカーがシェアを独占。EV市場では中国勢の躍進が目立つ。現代自は、タイやマレーシアでは各国政府の奨励策を活用した新工場設立による現地生産、さらには、ASEAN自由貿易地域(AFTA)協定の税制優遇措置を生かして域内で車両を調達しながら販売を伸ばそうとしている。
■販売、生産好調なベトナム
東南アジアの中で現代自が比較的善戦しているとみられるのがベトナムだ。
現代自はベトナムでは、地場の複合企業タインコン・グループとの合弁会社ヒュンダイ・タインコン・マニュファクチャリング・ベトナム(HTMV)を通じて、北部ニンビン省で11年に建設した第1工場と22年11月に本格稼働した第2工場を運営しており、計18万台の年産能力を持つ。当時の発表によれば、投資額は第1工場が8,000万米ドル(約120億円)、第2工場が1億8,000万米ドル。
タインコン・グループと合弁で設立したヒュンダイ・タインコン・ベトナム(HTC)が販売を担っており、23年はベトナム国内で6万7,450台を販売。トヨタ(レクサス除く)の5万7,414台を抜いてトップだった。24年1~10月は4万8,546台を販売した。
23年の現代自車の販売をモデル別で見ると、小型セダン「アクセント」が1万7,452台、スポーツタイプ多目的車(SUV)「クレタ」が1万719台、小型ハッチバック「グランドi10」が7,944台の順となった。
ベトナムでは輸出にも力を入れつつある。10月にタイに110台の「パリセード」を輸出した。パリセードは23年9月からベトナムで生産・販売されているSUVの最上級モデルで、部品の現地調達率は40%超。厳しい技術要件とAFTA協定の税制優遇措置を享受できる条件を満たしているため、国際市場での競争に優位性があると期待されている。
24年から25年にかけて4,000台余りを周辺諸国に輸出する計画で、今後パリセードに加えてBセグメントの各車種をミャンマー、フィリピン、インドネシアなどに輸出する計画だ。
現代自傘下の起亜は、地場の自動車組み立て生産大手チュオンハイ自動車(Thaco)を通じて、軽自動車「モーニング」やSUV「ソレント」などを生産している。23年の起亜の販売台数はトヨタに次ぐ4万773台だった。
チュオンハイ・グループ(THACO)は今年、起亜のインド子会社キア・インディアに対し、同社が発売する高級多目的車(MPV)「カーニバル」の新車種の塗装済み車体と部品を出荷した。

ベトナムでは現代自の車両をよく見かける=12月11日、ベトナム・ホーチミン(NNA撮影)

■タイで現地生産へ
一方、タイでは、双日が8割出資していたヒュンダイ・モーター(タイランド)にタイでの販売を委託していたが、タイ法人、ヒュンダイ・モビリティー(タイランド)を設立し、23年4月から自社販売に切り替えた。
23年は5,550台を販売。小型MPV「スターゲイザー」のクロスオーバー型「スターゲイザーX(クロス)」をインドネシアから輸入するなどラインアップを強化したことで前年比で18.4%増と健闘したものの、24年に入ってからは大苦戦。1~10月は前年同期比28.9%減の3,215台と、通年でも昨年を下回るのは確実だ。
ヒュンダイ・モビリティー(タイランド)は26年に首都バンコク東郊のサムットプラカン県で、バッテリー式電気自動車(BEV)の組み立て生産を開始するとしているものの、トーンダウンしている感は否めない。
タイのBEV市場は比亜迪(BYD)をはじめとする中国勢が先行し、BEV市場自体の伸びが鈍化していることもあり、投資額は10億バーツ(約45億円)と少なく、地場のトンブリ・オートモーティブ・アセンブリー・プラント(TAAP)に組み立てを委託する形だ。年間の生産台数は5,000台にとどまる。同社はBEV向けバッテリーの組み立ても、TAAP傘下のトンブリ・エナジー・ストレージ・マニュファクチャリングに委託する考えだ。
タイ政府の奨励策「EV3.5」では、EVメーカーは補助金などの恩恵を受ける代わりに、24~25年の輸入量に対して26年にタイで2倍の生産を義務付けている。バンコクポストによると、ヒュンダイ・モーター(タイランド)のワロップ社長は、現在韓国から輸入している「アイオニック5」「アイオニック6」の販売は25年には累計で1,500台に達するだろうとしている。
野村総合研究所(NRI)タイランドの山本肇プリンシパルは、現代自の投資計画に対するタイ投資委員会(BOI)の承認について「5,000台という生産規模で、どのように40%という国産化率を達成するのかが課題」と指摘した。
ヒュンダイ・モーター(タイランド)は巻き返しに向け、パリセードをベトナムから輸入し、販売を開始した。大型の高級SUVとして売り込むが、タイで販売が伸びるかどうかは未知数だ。パリセードのほかにも、クレタはインドネシア、SUV「サンタフェ」はマレーシアから、それぞれ輸入して販売している。
一方、起亜は好調だ。23年1月、タイに販売法人起亜セールス(タイランド)を設立。現代自同様、直接販売に乗り出した。それまでは、販売代理店だった地場のヨントラキット・キア・モーターズ(YKM)がカーニバルのガソリン車タイプをマレーシアから輸入販売するだけだったが、SUV「ソレント」のハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の輸入も始めた。
23年の販売台数は13.9%減の1,253台と不振だったものの、24年1~10月は69.7%増の1,483台と好調だ。
同社のアンディ・カン社長はNNAの取材に対し「中国から輸入している準中型SUVタイプのEV『EV5』がけん引している」と述べた。タイ人有名歌手を起用したキャンペーンが奏功しているようだ。カン氏はまた、タイでの現地生産については「依然として前向きに検討している」と述べた。
現代自はマレーシアにも年産2万台規模の組立工場を設立する計画だ。
■シンガポールでも現地生産
シンガポールでは、現地法人ヒュンダイモーターグループ・イノベーションセンター・シンガポールが23年11月、国内自動車業界初となるEV工場を開所。年産能力は3万台で、「アイオニック5」「アイオニック6」を生産し、現地で販売している。
(下)では、インドネシアやインドといったグローバルサウス(新興・途上国)での戦略を見ていく。

現代自はベトナムで生産したパリセードをタイで販売する=11月28日、タイ・バンコク近郊(NNA撮影)
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韓国メディアによると、中国自動車大手の北京汽車(北京市)と現代自の合弁、北京現代汽車の中国での販売台数は2016年の114万台をピークに急落。販売が低迷する中、現代自は23年には重慶市の完成車工場を売却するなど、中国の生産能力の削減に乗り出した。マレーシアのアペックス証券のアナリスト、ケニス・レオン氏は「現代自は中国事業のリストラを急いで東南アジアに経営資源を集中しようとしている」と分析する。
ところが、東南アジアでは先駆けて進出した日系メーカーがシェアを独占。EV市場では中国勢の躍進が目立つ。現代自は、タイやマレーシアでは各国政府の奨励策を活用した新工場設立による現地生産、さらには、ASEAN自由貿易地域(AFTA)協定の税制優遇措置を生かして域内で車両を調達しながら販売を伸ばそうとしている。
■販売、生産好調なベトナム
東南アジアの中で現代自が比較的善戦しているとみられるのがベトナムだ。
現代自はベトナムでは、地場の複合企業タインコン・グループとの合弁会社ヒュンダイ・タインコン・マニュファクチャリング・ベトナム(HTMV)を通じて、北部ニンビン省で11年に建設した第1工場と22年11月に本格稼働した第2工場を運営しており、計18万台の年産能力を持つ。当時の発表によれば、投資額は第1工場が8,000万米ドル(約120億円)、第2工場が1億8,000万米ドル。
タインコン・グループと合弁で設立したヒュンダイ・タインコン・ベトナム(HTC)が販売を担っており、23年はベトナム国内で6万7,450台を販売。トヨタ(レクサス除く)の5万7,414台を抜いてトップだった。24年1~10月は4万8,546台を販売した。
23年の現代自車の販売をモデル別で見ると、小型セダン「アクセント」が1万7,452台、スポーツタイプ多目的車(SUV)「クレタ」が1万719台、小型ハッチバック「グランドi10」が7,944台の順となった。
ベトナムでは輸出にも力を入れつつある。10月にタイに110台の「パリセード」を輸出した。パリセードは23年9月からベトナムで生産・販売されているSUVの最上級モデルで、部品の現地調達率は40%超。厳しい技術要件とAFTA協定の税制優遇措置を享受できる条件を満たしているため、国際市場での競争に優位性があると期待されている。
24年から25年にかけて4,000台余りを周辺諸国に輸出する計画で、今後パリセードに加えてBセグメントの各車種をミャンマー、フィリピン、インドネシアなどに輸出する計画だ。
現代自傘下の起亜は、地場の自動車組み立て生産大手チュオンハイ自動車(Thaco)を通じて、軽自動車「モーニング」やSUV「ソレント」などを生産している。23年の起亜の販売台数はトヨタに次ぐ4万773台だった。
チュオンハイ・グループ(THACO)は今年、起亜のインド子会社キア・インディアに対し、同社が発売する高級多目的車(MPV)「カーニバル」の新車種の塗装済み車体と部品を出荷した。
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■タイで現地生産へ
一方、タイでは、双日が8割出資していたヒュンダイ・モーター(タイランド)にタイでの販売を委託していたが、タイ法人、ヒュンダイ・モビリティー(タイランド)を設立し、23年4月から自社販売に切り替えた。
23年は5,550台を販売。小型MPV「スターゲイザー」のクロスオーバー型「スターゲイザーX(クロス)」をインドネシアから輸入するなどラインアップを強化したことで前年比で18.4%増と健闘したものの、24年に入ってからは大苦戦。1~10月は前年同期比28.9%減の3,215台と、通年でも昨年を下回るのは確実だ。
ヒュンダイ・モビリティー(タイランド)は26年に首都バンコク東郊のサムットプラカン県で、バッテリー式電気自動車(BEV)の組み立て生産を開始するとしているものの、トーンダウンしている感は否めない。
タイのBEV市場は比亜迪(BYD)をはじめとする中国勢が先行し、BEV市場自体の伸びが鈍化していることもあり、投資額は10億バーツ(約45億円)と少なく、地場のトンブリ・オートモーティブ・アセンブリー・プラント(TAAP)に組み立てを委託する形だ。年間の生産台数は5,000台にとどまる。同社はBEV向けバッテリーの組み立ても、TAAP傘下のトンブリ・エナジー・ストレージ・マニュファクチャリングに委託する考えだ。
タイ政府の奨励策「EV3.5」では、EVメーカーは補助金などの恩恵を受ける代わりに、24~25年の輸入量に対して26年にタイで2倍の生産を義務付けている。バンコクポストによると、ヒュンダイ・モーター(タイランド)のワロップ社長は、現在韓国から輸入している「アイオニック5」「アイオニック6」の販売は25年には累計で1,500台に達するだろうとしている。
野村総合研究所(NRI)タイランドの山本肇プリンシパルは、現代自の投資計画に対するタイ投資委員会(BOI)の承認について「5,000台という生産規模で、どのように40%という国産化率を達成するのかが課題」と指摘した。
ヒュンダイ・モーター(タイランド)は巻き返しに向け、パリセードをベトナムから輸入し、販売を開始した。大型の高級SUVとして売り込むが、タイで販売が伸びるかどうかは未知数だ。パリセードのほかにも、クレタはインドネシア、SUV「サンタフェ」はマレーシアから、それぞれ輸入して販売している。
一方、起亜は好調だ。23年1月、タイに販売法人起亜セールス(タイランド)を設立。現代自同様、直接販売に乗り出した。それまでは、販売代理店だった地場のヨントラキット・キア・モーターズ(YKM)がカーニバルのガソリン車タイプをマレーシアから輸入販売するだけだったが、SUV「ソレント」のハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の輸入も始めた。
23年の販売台数は13.9%減の1,253台と不振だったものの、24年1~10月は69.7%増の1,483台と好調だ。
同社のアンディ・カン社長はNNAの取材に対し「中国から輸入している準中型SUVタイプのEV『EV5』がけん引している」と述べた。タイ人有名歌手を起用したキャンペーンが奏功しているようだ。カン氏はまた、タイでの現地生産については「依然として前向きに検討している」と述べた。
現代自はマレーシアにも年産2万台規模の組立工場を設立する計画だ。
■シンガポールでも現地生産
シンガポールでは、現地法人ヒュンダイモーターグループ・イノベーションセンター・シンガポールが23年11月、国内自動車業界初となるEV工場を開所。年産能力は3万台で、「アイオニック5」「アイオニック6」を生産し、現地で販売している。
(下)では、インドネシアやインドといったグローバルサウス(新興・途上国)での戦略を見ていく。
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