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盛り上がる冬スポーツに商機ヨネックスはスノボに注力

中国でスキーやスノーボードを楽しむ人が増えている。業界団体によると、2023~24年シーズンにスキーをした人は2,000万人を大きく超えて過去最多になった。ウインタースポーツ市場が急成長する中、スポーツ用品大手のヨネックスは上海最大の屋内スキー場にコンセプト店をオープンし、スノーボードの販売に力を入れている。華北地域のスキー場で開かれた製品のPRイベントには日本のメーカー15社が参加し、販売拡大に向けた取り組みを繰り広げている。【吉野あかね】

上海市では世界最大の屋内スキー場がオープンした=2024年12月25日、上海市

中国では22年の北京冬季五輪をきっかけにウインタースポーツの人気が広がった。20代の中国人女性は「中国選手の活躍を見て、かっこいいから私もやってみたいと思った」と話す。
アミューズメント業界団体の中国遊芸機遊楽園協会(CAAPA)がまとめた「中国スキー産業白書」によると、中国で23年5月~24年4月にスキーをした人は前シーズン比16%増の2,308万人だった。
人気の中心は若者だ。市場調査会社の艾媒諮詢(IIメディアリサーチ)は、24年のウインタースポーツ愛好者(調査対象1,150人)を年齢層別で見ると、24~30歳は全体の52%を占め、31~40歳は33.4%だったと指摘。男女別では女性が7割以上を占めた。
冬季スポーツイベントの開催が広がるなど追い風が吹く中、日本企業が中国事業に力を入れている。ヨネックスは上海市で昨年9月に開業した世界最大の屋内スキー場「耀雪氷雪世界」に、主力販売店に委託する形でスノーボードのコンセプトショップを設けた。
ヨネックス中国法人スノーボード販売部の大塚幸博部長は「中国ではバドミントン用品メーカーとしての知名度が高い。バドミントン用品の加工技術で培ったものづくりの強みを生かした製品を中国の消費者に体感してもらい、ファンを増やしていくことが出店の狙い」と説明する。
中国で今後、屋内スキー場に同様のコンセプトショップを出店することも検討しているという。
中国ではゲレンデにボードのエッジを立てて滑る「カービング」の人気が高く、カービング向けモデルの「SYMARC(シマーク)」と「THRUST(スラスト)」の販売が好調だ。来季はシマークシリーズから「SYMARC MG(シマークマグ)」も投入し、商品の品ぞろえを増やして販売拡大を図る。
大塚氏は「中国のスノーボード市場は立ち上がったばかりで、まだまだ成長余地のある市場」と期待を示す。流行の移り変わりは早く、はやりを敏感に捉えていち早く対応していくことが大切だと感じている。

ヨネックスは中国の屋内スキー場内にコンセプトショップを出店し、スノーボードのファン獲得を狙う=上海市

■機能と品質、日本企業に強み
日本ブランドの製品をPRする取り組みも広がっている。
北京冬季五輪のスキー競技会場になった河北省張家口市の崇礼雲頂スキー場では昨年12月、日本のスポーツ用品ブランド15社を集めたイベントが開かれた。日本ブランドのスキー・スノーボード用品やウエアを見ようと、開催中の3日間に延べ1,000人以上が訪れたという。
イベントを企画した日本貿易振興機構(ジェトロ)上海事務所電子商取引(EC)市場開発部の田中正義部長は「中国のウインタースポーツ市場は今後も間違いなく伸びていく。伸びる市場を狙って進出する中国企業は多く、早い段階で日本ブランドを売り込んでいきたい」と狙いを語る。

北京冬季五輪のスキー競技会場となったスキー場で、日本のスキーやスノボ用品をPRするイベントが開かれた=2024年12月、河北省張家口市(ジェトロ提供)

「SWANS(スワンズ)」ブランドのゴーグルを手がける山本光学(大阪府東大阪市)は、換気で曇りを解消できるスノーゴーグルをアピールした。同社スポーツ事業部海外営業部の杉田亮マネージャーは、「日本製のゴーグルは独自の機能や品質面で中国製品と一線を画している」と説明。日本からの輸入品のため販売価格は日本の1.5倍だが、リピーターも多く「値段が高くても良い物であれば売れる」と自信を見せる。
山本光学は中国の代理店を通じて19年ごろから中国市場に参入。中国でブランド認知度が高まるのに伴い販売も伸び、売上高は19年当時から2倍以上になったという。
杉田氏は「中国はスキー場の数、スキー人口で日本を上回った。ウインター用品の市場は今後も伸びてくる」とみて、日本の有名選手や中国のインフルエンサーを起用したブランドプロモーションを企画していく考えだ。
■インフラ整備進む
中国政府は人気が高まる冬季のスポーツや観光など「氷雪経済」を成長させ、30年までに1兆5,000億元(約32兆2,700億円)にする目標を掲げる。インフラ整備も急ピッチで進み、国内スキー場の数は23年末に935カ所と、22年末から50カ所以上増えた。
既存スキー場はコースの新設や店舗の拡充などサービスを強化して誘客を図っている。崇礼太舞スキー場(張家口市)は林の中を滑走できるツリーランのコースを4本増設。吉林北大湖スキー場(吉林省吉林市)は、コースを前シーズンの47本から64本に拡大した。
中国の屋内スキー場は南部の都市を中心に開発が進み、24年4月末時点の総数は59カ所と世界最多の規模になった。
成長市場を狙って中国企業の新規参入も相次ぐ。中国工業情報省によると、スキー・スノボ関連用品を手がける企業の数は、15年の約300社から23年には900社前後に増えた。業界企業の売上高は15年の50億元未満から23年に約220億元に拡大した。
ジェトロの田中氏は「価格が安く供給量が多い中国製品が脅威であることは間違いない」とした上で、「日系メーカーはユーザー目線に立って開発した製品の品質が評価されている」と指摘。着心地や装着感を重視したものづくりをするブランドが「中国の消費者にも深く刺さっている」と語る。
艾媒諮詢は、ウインター用品や氷雪観光、氷雪文化といった関連市場を含めたウインタースポーツ市場の規模が29年に1兆5,593億元になり、19年の3倍以上に伸びると予測している。ウインタースポーツ市場の裾野は一段と広がりそうだ。

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人気の中心は若者だ。市場調査会社の艾媒諮詢(IIメディアリサーチ)は、24年のウインタースポーツ愛好者(調査対象1,150人)を年齢層別で見ると、24~30歳は全体の52%を占め、31~40歳は33.4%だったと指摘。男女別では女性が7割以上を占めた。
冬季スポーツイベントの開催が広がるなど追い風が吹く中、日本企業が中国事業に力を入れている。ヨネックスは上海市で昨年9月に開業した世界最大の屋内スキー場「耀雪氷雪世界」に、主力販売店に委託する形でスノーボードのコンセプトショップを設けた。
ヨネックス中国法人スノーボード販売部の大塚幸博部長は「中国ではバドミントン用品メーカーとしての知名度が高い。バドミントン用品の加工技術で培ったものづくりの強みを生かした製品を中国の消費者に体感してもらい、ファンを増やしていくことが出店の狙い」と説明する。
中国で今後、屋内スキー場に同様のコンセプトショップを出店することも検討しているという。
中国ではゲレンデにボードのエッジを立てて滑る「カービング」の人気が高く、カービング向けモデルの「SYMARC(シマーク)」と「THRUST(スラスト)」の販売が好調だ。来季はシマークシリーズから「SYMARC MG(シマークマグ)」も投入し、商品の品ぞろえを増やして販売拡大を図る。
大塚氏は「中国のスノーボード市場は立ち上がったばかりで、まだまだ成長余地のある市場」と期待を示す。流行の移り変わりは早く、はやりを敏感に捉えていち早く対応していくことが大切だと感じている。[caption id="attachment_24257" align="aligncenter" width="620"]ヨネックスは中国の屋内スキー場内にコンセプトショップを出店し、スノーボードのファン獲得を狙う=上海市[/caption]
■機能と品質、日本企業に強み
日本ブランドの製品をPRする取り組みも広がっている。
北京冬季五輪のスキー競技会場になった河北省張家口市の崇礼雲頂スキー場では昨年12月、日本のスポーツ用品ブランド15社を集めたイベントが開かれた。日本ブランドのスキー・スノーボード用品やウエアを見ようと、開催中の3日間に延べ1,000人以上が訪れたという。
イベントを企画した日本貿易振興機構(ジェトロ)上海事務所電子商取引(EC)市場開発部の田中正義部長は「中国のウインタースポーツ市場は今後も間違いなく伸びていく。伸びる市場を狙って進出する中国企業は多く、早い段階で日本ブランドを売り込んでいきたい」と狙いを語る。
[caption id="attachment_24258" align="aligncenter" width="620"]北京冬季五輪のスキー競技会場となったスキー場で、日本のスキーやスノボ用品をPRするイベントが開かれた=2024年12月、河北省張家口市(ジェトロ提供)[/caption]
「SWANS(スワンズ)」ブランドのゴーグルを手がける山本光学(大阪府東大阪市)は、換気で曇りを解消できるスノーゴーグルをアピールした。同社スポーツ事業部海外営業部の杉田亮マネージャーは、「日本製のゴーグルは独自の機能や品質面で中国製品と一線を画している」と説明。日本からの輸入品のため販売価格は日本の1.5倍だが、リピーターも多く「値段が高くても良い物であれば売れる」と自信を見せる。
山本光学は中国の代理店を通じて19年ごろから中国市場に参入。中国でブランド認知度が高まるのに伴い販売も伸び、売上高は19年当時から2倍以上になったという。
杉田氏は「中国はスキー場の数、スキー人口で日本を上回った。ウインター用品の市場は今後も伸びてくる」とみて、日本の有名選手や中国のインフルエンサーを起用したブランドプロモーションを企画していく考えだ。
■インフラ整備進む
中国政府は人気が高まる冬季のスポーツや観光など「氷雪経済」を成長させ、30年までに1兆5,000億元(約32兆2,700億円)にする目標を掲げる。インフラ整備も急ピッチで進み、国内スキー場の数は23年末に935カ所と、22年末から50カ所以上増えた。
既存スキー場はコースの新設や店舗の拡充などサービスを強化して誘客を図っている。崇礼太舞スキー場(張家口市)は林の中を滑走できるツリーランのコースを4本増設。吉林北大湖スキー場(吉林省吉林市)は、コースを前シーズンの47本から64本に拡大した。
中国の屋内スキー場は南部の都市を中心に開発が進み、24年4月末時点の総数は59カ所と世界最多の規模になった。
成長市場を狙って中国企業の新規参入も相次ぐ。中国工業情報省によると、スキー・スノボ関連用品を手がける企業の数は、15年の約300社から23年には900社前後に増えた。業界企業の売上高は15年の50億元未満から23年に約220億元に拡大した。
ジェトロの田中氏は「価格が安く供給量が多い中国製品が脅威であることは間違いない」とした上で、「日系メーカーはユーザー目線に立って開発した製品の品質が評価されている」と指摘。着心地や装着感を重視したものづくりをするブランドが「中国の消費者にも深く刺さっている」と語る。
艾媒諮詢は、ウインター用品や氷雪観光、氷雪文化といった関連市場を含めたウインタースポーツ市場の規模が29年に1兆5,593億元になり、19年の3倍以上に伸びると予測している。ウインタースポーツ市場の裾野は一段と広がりそうだ。
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