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米鉄鋼関税、ベトナムに波紋関連株が売り、アルミ業界も懸念

トランプ米大統領が米国が輸入する全ての鉄鋼とアルミニウムに25%の関税を課すと表明したことを受けて、ベトナムの関連業界に動揺が広がっている。米国の新たな方針によるベトナムの鉄鋼・鉄鋼製品の対米輸出には部分的に追い風が吹くとの期待もある一方で、世界のサプライチェーン(供給網)を混乱させるとの懸念も根強く10日のベトナム株式市場では鉄鋼最大手ホアファット・グループなど関連銘柄が軒並み売られた。アルミニウム製品についても対米依存度も高く、関税による打撃は避けられないとの見方が出ている。
トランプ氏は9日に鉄鋼とアルミニウムへの25%の追加関税の課税方針を明らかにし、10日に大統領令に署名した。3月4日に発効する。
追加関税は第1次トランプ政権で導入されたが、課税を免除するなどの例外措置が幅広く認められていた。日本や欧米の一部諸国などの製品は例外扱いとされていたが、例外措置は全面的に停止される。アルミ製品への追加関税の税率は10%から引き上げられる。
■「ベトナム産のチャンスにも」
政府公式サイトによれば、ベトナム産鉄鋼とアルミは既に追加関税の対象となっている。日系企業の業界関係者はNNAに「ベトナムから輸出される鉄鋼は従来、関税を免除されていた韓国産やブラジル産と競争しなければならず苦戦していた」と指摘。例外がなくなることで販売環境は改善するが、ベトナム産鉄鋼の主力である亜鉛メッキ鋼板などに対して米商務省が昨年後半から反ダンピング(不当廉売)調査に乗り出しているため追い風は鋼管などに限られるとの見方を示した。
商工省の駐米代表であるドー・ゴック・フン氏は、今回の大統領令により例外扱いだった国からの輸入が減少する供給量を米国企業が穴埋めできない場合、「ベトナム産にとっては商機となりうる」とみる。
ただしフン氏は、米国以外の輸出先での競争激化や保護主義的な政策が他国に連鎖的に広がるリスクもあると懸念する。
税関総局によれば、ベトナムの鉄鋼・鉄鋼製品の24年の対米輸出額は前年比32%増の26億5,000万米ドル(約4,027億円)に上り、米国は主要市場だ。米鉄鋼協会によれば、米国のベトナムからの鉄鋼輸入はカナダ、ブラジル メキシコ、韓国に次いで5番目に規模が大きいとロイターは報じている。
トランプ氏の発言を受けて10日の株式市場では鉄鋼メーカーの業績に悪影響が出るとの見方から、関連銘柄の売りが広がった。ホアファットの終値は前日から4.7%、国営鉄鋼大手VNスチールは6.7%、鉄鋼大手ホアセン・グループは4.5%それぞれ下落した。

ベトナムアルミニウム協会のグエン・ミン・ケー会長もラオドン電子版に対して、米国がベトナム産アルミの主要な市場であるとして関税が上乗せされることへの懸念を表明するとともに、中国産が国内に流入する可能性に警鐘を鳴らした。
■関税標的のリスク高まる
第1次トランプ政権では、米国との貿易摩擦の激化を受けた中国からの工場移転の受け皿となり、ベトナムは漁夫の利を得た。第2次政権でも中国のアパレル電子商取引(EC)サイト「SHEIN(シーイン)」の運営事業者が対中関税の強化を警戒してサプライヤーにベトナムへの生産移管を促しているとの一部報道もあるが、第1次政権下よりも拡大した対ベトナム貿易赤字を標的にするリスクも高まっている。
通商代表部(USTR)代表候補のジェミソン・グリア氏は先週、上院財政委員会の指名承認公聴会で米国の貿易赤字について「米国の労働者や輸出業者、製造業にとって大きな問題だ」と指摘。貿易赤字が拡大している国としてベトナムを名指しした。24年の対ベトナム貿易赤字は1,230億米ドルで、前年を20%近く上回り過去最高だった。
商工省貿易政策部のゴ・チュン・カイン次長はサイゴンザイフォン電子版のインタビューで、中国からの生産移管の受け皿になることは米国への迂回(うかい)輸出の経由地とみなされる危険性もあると指摘。ベトナム国内で創出する付加価値を高めて迂回輸出とならないようにするとともに、「米国市場への過度な依存は避けるべきだ」として自由貿易協定(FTA)を結ぶ欧州連合(EU)などへの輸出を増やすよう企業に呼びかけた。24年のベトナムの輸出全体で米国向けは国別で29.5%を占めた。

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■「ベトナム産のチャンスにも」
政府公式サイトによれば、ベトナム産鉄鋼とアルミは既に追加関税の対象となっている。日系企業の業界関係者はNNAに「ベトナムから輸出される鉄鋼は従来、関税を免除されていた韓国産やブラジル産と競争しなければならず苦戦していた」と指摘。例外がなくなることで販売環境は改善するが、ベトナム産鉄鋼の主力である亜鉛メッキ鋼板などに対して米商務省が昨年後半から反ダンピング(不当廉売)調査に乗り出しているため追い風は鋼管などに限られるとの見方を示した。
商工省の駐米代表であるドー・ゴック・フン氏は、今回の大統領令により例外扱いだった国からの輸入が減少する供給量を米国企業が穴埋めできない場合、「ベトナム産にとっては商機となりうる」とみる。
ただしフン氏は、米国以外の輸出先での競争激化や保護主義的な政策が他国に連鎖的に広がるリスクもあると懸念する。
税関総局によれば、ベトナムの鉄鋼・鉄鋼製品の24年の対米輸出額は前年比32%増の26億5,000万米ドル(約4,027億円)に上り、米国は主要市場だ。米鉄鋼協会によれば、米国のベトナムからの鉄鋼輸入はカナダ、ブラジル メキシコ、韓国に次いで5番目に規模が大きいとロイターは報じている。
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ベトナムアルミニウム協会のグエン・ミン・ケー会長もラオドン電子版に対して、米国がベトナム産アルミの主要な市場であるとして関税が上乗せされることへの懸念を表明するとともに、中国産が国内に流入する可能性に警鐘を鳴らした。
■関税標的のリスク高まる
第1次トランプ政権では、米国との貿易摩擦の激化を受けた中国からの工場移転の受け皿となり、ベトナムは漁夫の利を得た。第2次政権でも中国のアパレル電子商取引(EC)サイト「SHEIN(シーイン)」の運営事業者が対中関税の強化を警戒してサプライヤーにベトナムへの生産移管を促しているとの一部報道もあるが、第1次政権下よりも拡大した対ベトナム貿易赤字を標的にするリスクも高まっている。
通商代表部(USTR)代表候補のジェミソン・グリア氏は先週、上院財政委員会の指名承認公聴会で米国の貿易赤字について「米国の労働者や輸出業者、製造業にとって大きな問題だ」と指摘。貿易赤字が拡大している国としてベトナムを名指しした。24年の対ベトナム貿易赤字は1,230億米ドルで、前年を20%近く上回り過去最高だった。
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