中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁は7日、政策金利と預金準備率(中央銀行が金融機関から強制的に預かる預金の割合)をともに引き下げると表明した。金融政策を適度に緩和することで、企業や個人が資金を借りやすくする。消費や投資を促すために資金供給を増やす措置も盛り込んだ。経済見通しに不透明感がある中、金融面での支援を手厚くして経済の底上げを狙う。
中国の金融当局のトップ3人が開いた会見で発表した。潘氏が示した支援策は10項目で、潤沢な流動性の維持や各種政策ツールの金利引き下げ、消費や投資を促すための金融政策ツールの創設の3分野が対象。
預金準備率は15日に0.5ポイント下げる。引き下げによって、金融市場に1兆元(約19兆8,000億円)の資金を供給できる見通し。澎湃新聞によると、金融機関の預金準備率の平均は6.2%に下落する。預金準備率の制度を見直し、自動車ローンとファイナンスリースを手がける企業に課している預金準備率は5ポイント下げ、現行の5%から0%とする。
預金準備率が下がると、金融機関は貸し出しに回せる資金が増える。金融機関が実体経済への貸し出しを増やすことで経済活動を活発化させ、景気の上向きにつなげたい考えだ。
政策金利は0.1ポイント引き下げる。リバースレポ(中央銀行が債券を担保に提供した市中銀行に行う融資)の7日物金利を現行の1.5%から1.4%に下げることで、市中銀行の貸出金利の目安となる貸出基礎金利(ローンプライムレート、LPR)も0.1ポイント下落する。7日物の金利引き下げは8日に適用する。
その他の金融政策ツールの金利も7日に0.25ポイント引き下げ、農業・零細企業・民間企業支援向けの再貸出制度(中央銀行が商業銀行に低金利で資金を貸し出し、商業銀行が資金を元手として対象に貸し出す制度)の1年物は1.5%、担保付き補完貸し出し(PSL)は2.0%にそれぞれ下がる。
住宅の公的積立金「住房公積金」は8日に1戸目購入の5年物以上の貸出金利を現行の2.85%から2.6%に下げる。いまだ低迷する住宅市場のてこ入れを図る。
■消費・投資促進に措置
消費や投資の促進に向けた資金提供も増やす。ハイテクイノベーションや技術改良向けの再貸出制度の枠を3,000億元積み増して、計8,000億元とする。枠拡大によって、消費財の買い替え補助金策と設備更新促進策の効果を高める狙いだ。
農業・零細企業・民間企業支援向け再貸出制度の枠も3,000億元増額し、3兆元に拡大する。銀行が同分野への貸し出しを増やすよう促す。
今回はサービス消費と高齢者サービス向けの再貸出制度を創設することも決めた。再貸し出しの枠は5,000億元。政府はサービス消費と高齢者向けサービスの市場発展に注力する姿勢を示しており、巨額の資金供給で発展を後押しする。
昨年10月に創設した株価の下支えを支援する金融政策ツールの改良を施す。上場企業とその大株主が自社株を買い増すための再貸出制度(3,000億元)と機関投資家向けの「証券・ファンド・保険スワップファシリティー(保有する株式などの資産を担保に国債や中銀手形など流動性の高い資産と交換できる制度、SFISF)」(5,000億元)の運用枠を合併し、計8,000億元をどちらのツールにも使えるようにする。株価を下支えすることで、市民の消費拡大などにつなげる。
ハイテクイノベーション企業が低コストで債券を発行し、資金を調達できる措置も実施する。
■援護射撃強化
潘氏は「適度に緩和した金融政策を実施し、財政政策とのシナジー効果を強めて経済の高品質な発展を推進する」と述べた。各種の再貸出制度によって、商業銀行は年間最大200億元の資金コストを削減でき、銀行による貸し出しの意欲が上がるとみている。
人民銀は昨年9月にも預金準備率の引き下げを含む金融緩和策を発表していた。近年の景気低迷を受けて人民銀は粘り強く金融緩和策を実施しているが、昨年からは物価上昇率の鈍化が一段と鮮明化するなど緩和策の効果が限定的な状態。ただトランプ米政権による関税政策を受けた外需の不透明感が高まる中、中国中央政府は内需拡大に力を入れるスタンスを強めており、人民銀は経済押し上げに向けて金融面から援護射撃を続ける考えだ。
会見では、国家金融監督管理総局の李雲沢局長が今後打ち出す措置として、新しい不動産発展モデルに合う貸出制度の投入や保険資金の長期投資に関する試験範囲の拡大、零細企業・民間企業向け貸し出し支援策の投入、産業高度化を目的とした合併・買収(M&A)向け貸し出しの管理弁法の改正など8項目を列挙。中国証券監督管理委員会(証監会)の呉清主席も株式をはじめとする資本市場の発展に力を入れる方針を示した。
今回の一連の措置は先月25日に開かれた習近平総書記(国家主席)が主宰する中国共産党の中央政治局会議での内容を踏まえたもの。会議では「苦境に立たされている企業を支援するために複数の対策を講じる」との方針を決め、融資面での支援を強化することなどを盛り込んでいた。
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預金準備率が下がると、金融機関は貸し出しに回せる資金が増える。金融機関が実体経済への貸し出しを増やすことで経済活動を活発化させ、景気の上向きにつなげたい考えだ。
政策金利は0.1ポイント引き下げる。リバースレポ(中央銀行が債券を担保に提供した市中銀行に行う融資)の7日物金利を現行の1.5%から1.4%に下げることで、市中銀行の貸出金利の目安となる貸出基礎金利(ローンプライムレート、LPR)も0.1ポイント下落する。7日物の金利引き下げは8日に適用する。
その他の金融政策ツールの金利も7日に0.25ポイント引き下げ、農業・零細企業・民間企業支援向けの再貸出制度(中央銀行が商業銀行に低金利で資金を貸し出し、商業銀行が資金を元手として対象に貸し出す制度)の1年物は1.5%、担保付き補完貸し出し(PSL)は2.0%にそれぞれ下がる。
住宅の公的積立金「住房公積金」は8日に1戸目購入の5年物以上の貸出金利を現行の2.85%から2.6%に下げる。いまだ低迷する住宅市場のてこ入れを図る。
■消費・投資促進に措置
消費や投資の促進に向けた資金提供も増やす。ハイテクイノベーションや技術改良向けの再貸出制度の枠を3,000億元積み増して、計8,000億元とする。枠拡大によって、消費財の買い替え補助金策と設備更新促進策の効果を高める狙いだ。
農業・零細企業・民間企業支援向け再貸出制度の枠も3,000億元増額し、3兆元に拡大する。銀行が同分野への貸し出しを増やすよう促す。
今回はサービス消費と高齢者サービス向けの再貸出制度を創設することも決めた。再貸し出しの枠は5,000億元。政府はサービス消費と高齢者向けサービスの市場発展に注力する姿勢を示しており、巨額の資金供給で発展を後押しする。
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■援護射撃強化
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人民銀は昨年9月にも預金準備率の引き下げを含む金融緩和策を発表していた。近年の景気低迷を受けて人民銀は粘り強く金融緩和策を実施しているが、昨年からは物価上昇率の鈍化が一段と鮮明化するなど緩和策の効果が限定的な状態。ただトランプ米政権による関税政策を受けた外需の不透明感が高まる中、中国中央政府は内需拡大に力を入れるスタンスを強めており、人民銀は経済押し上げに向けて金融面から援護射撃を続ける考えだ。
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