国営ベトナム電力グループ(EVN)は10日、電気料金の平均小売価格を4.8%引き上げた。新たな平均価格は1キロワット時当たり2,204.0655ドン(約12.3円。付加価値税除く)となった。改定は2024年10月以来7カ月ぶり。発電コストの上昇に対応するとともに、電力インフラ投資に必要となる財源を値上げにより確保する狙いだ。政府が掲げる2桁の経済成長に向けて電力の安定供給は欠かせないとしてEVNは改定に理解を求めているが、米トランプ政権による関税政策により景気の先行きへの不透明感が高まっている中で、電力価格の上昇は企業にとってさらなる負担増を迫ることになる。
新たな平均小売価格は、商工省が9日に発出した決定1279号(1279/QD—BCT)で規定した。平均価格の上昇率は前回と同じ。決定1279号は平均価格の改定に伴い、家庭用や事業用といった用途別の電気料金も4.8%前後引き上げた。
家庭用の電気料金は従来、月の使用量に応じて1キロワット時当たり1,893~3,302ドンだったが、10日以降は1,984~3,460ドンとなる。月々の値上がり幅は4,550~6万5,050ドン。月間使用量別で全体の33%を占め最も多い101~200キロワット時の世帯では月2万150ドンの負担増となる。
事業用の電気料金は用途や時間帯、電圧によって異なる。工業用はこれまで通常時間帯は1キロワット時当たり1,728~1,896ドンだったが、10日以降は1,811~1,987ドンとなった。EVNによれば、198万社以上に上る製造業の契約者の電気料金は月平均67万7,000ドン上昇する見込みだ。
EVNのグエン・クオック・ズン営業部長は9日、電気料金の改定を発表した会議で「今年の消費者物価指数(CPI)の押し上げ効果は約0.09%」と説明。貧困世帯の電気料金には月30キロワット時相当の公的支援が提供されているため影響は限定的だとして、値上げに理解を求めた。

■今年の電力需要、12%増
EVNは、25年の8%成長、26~31%の年率2桁成長という国家目標の実現に向けて電力は「根幹中の根幹」として安定供給のための値上げの必要性を強調した。
ボー・クアン・ラム副社長によれば、25年の商用電力の必要量は前年を12.2%上回り、増加分は336億キロワット時に上る。
一方で、電源構成のうち発電コストが低い水力発電は総出力の約25%にとどまる。残り75%はコストが比較的高い化石燃料や再生可能エネルギーによる発電で、足元でドン安が進行していることも燃料輸入の負担を大きくしている。発電コストは電力生産コストの約83%を占めるという。
■「生産コストの上昇に直結」
消費者保護協会のブイ・タイン・トゥイ副会長は「現状では電気料金の引き上げは不可避だ」と述べた。法令上は前回改定の3カ月後から引き上げが認められるが、24年10月の前回改定から6カ月以上経過しているとして、今回の値上げに理解を示した。
一方で、ホーチミン市食品協会のグエン・ダン・ヒエン副会長はトイチェー電子版に、「電力値上げは製品価格に直接的に影響する。企業には大きなプレッシャーだ」と懸念を示し、加盟企業にエアコンの設定を26~27度に弱めることや、扇風機の併用などの節電策を促す考えを示した。
木製家具業界のイベントなどを運営するBIFA貿易サービスのズオン・ティ・トゥー・チン社長は 「木工産業は多くの機械を使用するため、電力消費量が非常に多い。電気料金の引き上げは生産コストの上昇に直結し、価格競争力を低下させる」と苦言を呈した。

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新たな平均小売価格は、商工省が9日に発出した決定1279号(1279/QD—BCT)で規定した。平均価格の上昇率は前回と同じ。決定1279号は平均価格の改定に伴い、家庭用や事業用といった用途別の電気料金も4.8%前後引き上げた。
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■今年の電力需要、12%増
EVNは、25年の8%成長、26~31%の年率2桁成長という国家目標の実現に向けて電力は「根幹中の根幹」として安定供給のための値上げの必要性を強調した。
ボー・クアン・ラム副社長によれば、25年の商用電力の必要量は前年を12.2%上回り、増加分は336億キロワット時に上る。
一方で、電源構成のうち発電コストが低い水力発電は総出力の約25%にとどまる。残り75%はコストが比較的高い化石燃料や再生可能エネルギーによる発電で、足元でドン安が進行していることも燃料輸入の負担を大きくしている。発電コストは電力生産コストの約83%を占めるという。
■「生産コストの上昇に直結」
消費者保護協会のブイ・タイン・トゥイ副会長は「現状では電気料金の引き上げは不可避だ」と述べた。法令上は前回改定の3カ月後から引き上げが認められるが、24年10月の前回改定から6カ月以上経過しているとして、今回の値上げに理解を示した。
一方で、ホーチミン市食品協会のグエン・ダン・ヒエン副会長はトイチェー電子版に、「電力値上げは製品価格に直接的に影響する。企業には大きなプレッシャーだ」と懸念を示し、加盟企業にエアコンの設定を26~27度に弱めることや、扇風機の併用などの節電策を促す考えを示した。
木製家具業界のイベントなどを運営するBIFA貿易サービスのズオン・ティ・トゥー・チン社長は 「木工産業は多くの機械を使用するため、電力消費量が非常に多い。電気料金の引き上げは生産コストの上昇に直結し、価格競争力を低下させる」と苦言を呈した。
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