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香港日清、最高益水準目指すデフレで底力、北上消費影響せず

日清食品ホールディングスの香港上場子会社、日清食品(香港日清)は今期、過去最高益を記録した2023年12月期の業績水準を目指す。中国本土ではデフレ傾向が続く中で内陸部を中心に需要が拡大。本土への消費流出が深刻化する香港でも、低価格な即席麺は堅調な伸びを見せている。合併・買収(M&A)した海外メーカーも活用し、プレミアム感とお得感の両軸で消費者を取り込む構えだ。【菅原真央】

25年の戦略について語った香港日清の安藤清隆CEO=2日、尖沙咀(NNA撮影)

香港・本土事業を統括する香港日清の安藤清隆・董事長兼最高経営責任者(CEO)が2日に記者会見を開き、25年の経営戦略を語った。
25年第1四半期(1~3月)連結決算は、純利益が前年同期比6.7%減の1億1,000万HKドル(約20億1,700万円)だった。売上高は11.3%増の10億7,200万HKドル。
市場別の売上高は、香港およびその他アジア(本土を除く)が15.2%増。即席麺事業が全地域で堅調に推移し、韓国とオーストラリアの非即席麺事業も寄与した。本土は9.1%増。内陸部での販売が拡大し、売上高が継続的に上昇した。
23年同期との比較では、営業利益、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)などが上回っているとして「最高の状態に近い」(安藤氏)と評価。25年通期は過去最高益を記録した23年の水準を目標としていると明かした。
本土市場では、デフレ圧力が強まる中、即席麺の価値が見直されていると指摘。内陸部では電気自動車(EV)や半導体などの工場ができ、人がシフトしていることで四川省や湖南省などを中心に販売が伸びていると説明した。特に割安感のある「カップヌードルビッグ」の売り上げが好調で、主力の「カップヌードル」と合わせて内陸部の営業体制を強化していく方針を示した。
一方、広東省など華南地区は家電を中心とした工場の縮小が続いていたものの、中央政府が耐久消費財の買い替え支援策の強化を打ち出したことがプラスに働いている。雇用が生まれることで即席麺業界の追い風になるとみている。
香港では市民が隣接する広東省深センなどへ出かけて消費する「北上消費」が常態化しているが、食品や消費財で影響が出るのは単価の高いものであり、価格差の小さい即席麺業界への影響は小さいとの認識を示した。ただ小売価格は下落傾向にあるとして、5食入りの「出前一丁マカロニ・ファミリーパック」を発売するなど価格を落とさずにお得感を出したり、北海道産小麦粉を使用したカップヌードルや出前一丁などプレミアム感のある商品を投入したりしている。
■M&Aは引き続き推進
香港日清は近年、M&Aを積極化している。昨年は6月に韓国菓子メーカーのケミフード、9月にオーストラリアの冷凍ギョーザメーカーのABCペーストリーの買収を相次ぎ発表した。
安藤氏は、買収後1年目は社内の整理、2年目(26年度)から本格的な成長が始まるとした上で「即席麺をどう一緒に販売していくか、シナジー(相乗効果)をどう生み出すかに取り組んでいる」と説明。北上消費のために域内で消費を抑える層が外食の代わりに家で冷凍食品を食べるようになっているとして、ABCペーストリーの製品をハイエンド商品として香港に導入する計画を明らかにした。
また、経済がスローダウンしている時期はM&Aのチャンスだとみて、即席麺やその周辺事業をターゲットに「海外だけでなく、香港、本土でも機会があれば取り組んでいきたい」と表明した。
■初音ミクとコラボ
同社は例年、日本のコンテンツとのコラボレーション商品を展開している。今年は香港・マカオ限定で、バーチャルアイドル「初音ミク」とコラボした北海道産小麦粉使用のカップヌードルを5月に発売した。
日本を訪れる香港市民が増える中、以前から販売している北海道産小麦粉使用の袋麺「北海道一丁」が好評だったことから、北海道への根強い人気を確信し新たなプレミアム商品として投入した。好調であれば、本土にも販売を拡大する計画だ。

出前一丁マカロニ(左後)と、初音ミクとコラボした北海道カップヌードル(右)=2日、尖沙咀(NNA撮影)
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25年第1四半期(1~3月)連結決算は、純利益が前年同期比6.7%減の1億1,000万HKドル(約20億1,700万円)だった。売上高は11.3%増の10億7,200万HKドル。
市場別の売上高は、香港およびその他アジア(本土を除く)が15.2%増。即席麺事業が全地域で堅調に推移し、韓国とオーストラリアの非即席麺事業も寄与した。本土は9.1%増。内陸部での販売が拡大し、売上高が継続的に上昇した。
23年同期との比較では、営業利益、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)などが上回っているとして「最高の状態に近い」(安藤氏)と評価。25年通期は過去最高益を記録した23年の水準を目標としていると明かした。
本土市場では、デフレ圧力が強まる中、即席麺の価値が見直されていると指摘。内陸部では電気自動車(EV)や半導体などの工場ができ、人がシフトしていることで四川省や湖南省などを中心に販売が伸びていると説明した。特に割安感のある「カップヌードルビッグ」の売り上げが好調で、主力の「カップヌードル」と合わせて内陸部の営業体制を強化していく方針を示した。
一方、広東省など華南地区は家電を中心とした工場の縮小が続いていたものの、中央政府が耐久消費財の買い替え支援策の強化を打ち出したことがプラスに働いている。雇用が生まれることで即席麺業界の追い風になるとみている。
香港では市民が隣接する広東省深センなどへ出かけて消費する「北上消費」が常態化しているが、食品や消費財で影響が出るのは単価の高いものであり、価格差の小さい即席麺業界への影響は小さいとの認識を示した。ただ小売価格は下落傾向にあるとして、5食入りの「出前一丁マカロニ・ファミリーパック」を発売するなど価格を落とさずにお得感を出したり、北海道産小麦粉を使用したカップヌードルや出前一丁などプレミアム感のある商品を投入したりしている。
■M&Aは引き続き推進
香港日清は近年、M&Aを積極化している。昨年は6月に韓国菓子メーカーのケミフード、9月にオーストラリアの冷凍ギョーザメーカーのABCペーストリーの買収を相次ぎ発表した。
安藤氏は、買収後1年目は社内の整理、2年目(26年度)から本格的な成長が始まるとした上で「即席麺をどう一緒に販売していくか、シナジー(相乗効果)をどう生み出すかに取り組んでいる」と説明。北上消費のために域内で消費を抑える層が外食の代わりに家で冷凍食品を食べるようになっているとして、ABCペーストリーの製品をハイエンド商品として香港に導入する計画を明らかにした。
また、経済がスローダウンしている時期はM&Aのチャンスだとみて、即席麺やその周辺事業をターゲットに「海外だけでなく、香港、本土でも機会があれば取り組んでいきたい」と表明した。
■初音ミクとコラボ
同社は例年、日本のコンテンツとのコラボレーション商品を展開している。今年は香港・マカオ限定で、バーチャルアイドル「初音ミク」とコラボした北海道産小麦粉使用のカップヌードルを5月に発売した。
日本を訪れる香港市民が増える中、以前から販売している北海道産小麦粉使用の袋麺「北海道一丁」が好評だったことから、北海道への根強い人気を確信し新たなプレミアム商品として投入した。好調であれば、本土にも販売を拡大する計画だ。
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