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3分野を扱う技術支援拠点開設クラレ、域内で顧客需要に対応

化学メーカー大手クラレは、シンガポールの完全子会社クラレ・アジアパシフィックを通じて、同国で技術支援拠点を開所した。アジア市場での需要拡大が見込まれる3分野の製品をカバーし、材料の評価や解析など顧客のニーズに対応したソリューションを提供する。シンガポールでは接着剤などに使われる樹脂を生産しており、来年には食品包装材向けなどの樹脂工場も稼働する予定だ。域内の顧客の課題解決や新市場・新用途の開拓を推進し、アジア市場でのさらなる事業拡大、プレゼンス向上を図る。

新テクニカルセンターの開所式に出席したクラレの取締役常務執行役員、渡邊氏(左から3人目)ら=1日、シンガポール西部(NNA撮影)

新技術支援拠点「クラレ・アジアパシフィック・テクニカルセンター」は西部サイエンス・パークの産業団地「ザ・ガレン」内にあり、1日に開所式を実施した。クラレの主力製品のうち、接着剤などに使われる「ポバール樹脂」、食品包装材などに使用される「エバール樹脂」、「活性炭」という3分野をカバーする。従業員数は約10人。3分野を扱うテクニカルセンターを海外で本格展開するのは今回が初となる。
材料の評価や解析、応用技術の検討に必要な機器を備え、域内の顧客のニーズに対応して迅速かつ専門的なソリューションを提供する。製品の実演や顧客との共同開発を通じ、新たな価値を創出するオープンイノベーションの場としても機能する。
先進的な研究機関が集まるサイエンス・パーク内という立地を生かして他の企業や研究機関とも連携することで、市場開発の加速やグローバル人材の獲得を図る。
1日の開所式に出席したクラレの取締役常務執行役員・ビニルアセテート樹脂カンパニー長、渡邊知行氏は、「新テクニカルセンターの開設は、製品だけでなく幅広い試験・技術サービスを顧客に提供する上で重要なマイルストーンになる。顧客との共創展開の場を提供し、域内市場の発展につなげたい」と話した。
ポバールはクラレグループの中核製品の一つ。日本、シンガポール、ドイツ、米国に生産拠点がある。水溶性、接着性、乳化性、耐油性、耐薬品性などの特性を持ち、紙加工剤、接着剤、塩ビ重合安定剤のほか、自動車のフロントガラス用中間膜原料など幅広い用途で使用される。
エバールは、クラレが1972年に世界で初めて工業化に成功した独自ポリマーの商品名だ。プラスチックの中でも最高レベルのガスバリア性(気密性)を持ち、内容物の変質・劣化を防ぐ性質から食品用容器・包装材として幅広く使われている。人工腎臓や自動車燃料タンクなど用途は広がりをみせている。
活性炭は食品精製や有機不純物除去、水処理などに使われ、アジア地域での需要拡大が見込まれている。
クラレ・アジアパシフィックの前身でポバール生産を手がけたポバール・アジアは96年、クラレと日本合成化学工業が合弁で設立。その後はクラレがポバール・アジアの全株式を取得して完全子会社化し、2008年にクラレ・アジアパシフィックを設立した。
同社は現在、シンガポールで年産能力4万トンのポバールの生産プラントを持つ。24年には同国でエバール生産プラントの起工式を実施しており、26年に稼働する予定だ。設備としては年産3万6,000トン規模となる。うち第1期として同1万8,000トンを立ち上げ、その後は需給バランスをみながら第2期の1万8,000トンを増強する計画だ。これによりシンガポールはポバールとエバールの両方を生産する拠点となる。
クラレの渡邊氏は今のタイミングでテクニカルセンターを設置することについて、「シンガポールで新工場を立ち上げる前に開設し、早めに顧客に製品を知ってもらいたいという狙いがある」と説明。シンガポールにテクニカルセンターを置く理由として、化学コンプレックスの集積地であることや、クラレが早くから現地に進出していること、政府の支援、優秀な人材が集まりやすい点などを挙げた。

新テクニカルセンターは材料の評価や解析、応用技術の検討に必要な機器を備える=1日、シンガポール西部(NNA撮影)
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先進的な研究機関が集まるサイエンス・パーク内という立地を生かして他の企業や研究機関とも連携することで、市場開発の加速やグローバル人材の獲得を図る。
1日の開所式に出席したクラレの取締役常務執行役員・ビニルアセテート樹脂カンパニー長、渡邊知行氏は、「新テクニカルセンターの開設は、製品だけでなく幅広い試験・技術サービスを顧客に提供する上で重要なマイルストーンになる。顧客との共創展開の場を提供し、域内市場の発展につなげたい」と話した。
ポバールはクラレグループの中核製品の一つ。日本、シンガポール、ドイツ、米国に生産拠点がある。水溶性、接着性、乳化性、耐油性、耐薬品性などの特性を持ち、紙加工剤、接着剤、塩ビ重合安定剤のほか、自動車のフロントガラス用中間膜原料など幅広い用途で使用される。
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クラレ・アジアパシフィックの前身でポバール生産を手がけたポバール・アジアは96年、クラレと日本合成化学工業が合弁で設立。その後はクラレがポバール・アジアの全株式を取得して完全子会社化し、2008年にクラレ・アジアパシフィックを設立した。
同社は現在、シンガポールで年産能力4万トンのポバールの生産プラントを持つ。24年には同国でエバール生産プラントの起工式を実施しており、26年に稼働する予定だ。設備としては年産3万6,000トン規模となる。うち第1期として同1万8,000トンを立ち上げ、その後は需給バランスをみながら第2期の1万8,000トンを増強する計画だ。これによりシンガポールはポバールとエバールの両方を生産する拠点となる。
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