世界的にイスラム教徒(ムスリム)人口の増加が見込まれる中、ハラル(イスラム教の戒律で許されたもの)市場は旺盛な成長を続けている。日本企業の間では、マレーシアのハラル市場を足掛かりに、さらなる海外展開を狙う動きがあるという。マレーシアの首都クアラルンプールで17日から開催されているハラル製品見本市(MIHAS)には、マレーシア市場をはじめ世界各国のハラル市場での事業拡大を狙う企業・団体が一堂に会している。日本企業も数多く出展し、今後のハラル市場での事業展開の機会を模索する。
福井が紹介するのり製品=18日、クアラルンプール(NNA撮影)
日本の農林水産省輸出・国際局の小山実国際専門官は18日、「Halal Food in Japan(日本のハラル食品)」と題し、MIHASのポケットトークで登壇。インバウンド(訪日旅行)を通じた輸出拡大の可能性について講演した。小山氏は、東京五輪・パラリンピックや大阪・関西万博などを契機に国内でのハラルへの認知が高まりつつあると説明した。
ムスリム観光客の増加に合わせて、礼拝室を設置したり、ハラル対応メニューを導入したりする飲食店が増えている現状を紹介。こうした観光体験を通じて日本食の魅力が海外にも伝わり、日本国内外での市場拡大につながると期待されていると説明した。
中でもマレーシアのハラル市場は、日本にとって最も重要な拠点の一つと指摘。「国内総生産(GDP)や人口の増加によって成長が見込まれる同市場には、日本企業の参入も相次いでおり、輸出拡大の有望な足掛かりとなっている」と説明した。
日本貿易振興機構(ジェトロ)クアラルンプール事務所は今回の展示会で日本パビリオンを出展し、マレーシアのムスリム市場で事業拡大を目指す企業などと共同出展している。
■希少性の高いハラルかつお節
かつお節やだしの加工・製造販売などを手がける小林食品(静岡県焼津市)は、ジェトロの共同出展者としてハラル関連の展示会に初参加している。同社は数カ月前に日本ハラル協会からのハラル認証を受けたばかりで、今回のMIHASを通じてマレーシアの卸売業者やディストリビューターとの接点を探り、今後の市場展開につなげたい考えだ。
同社は既に台湾やアメリカなど海外市場に進出している一方で、国内展開と並行して高まる海外の日本食需要に大きな商機を見いだしている。今回のハラル認証取得についても、マレーシアをはじめ各国の企業から「ハラル認証はあるのか」と問われることが多く、改めてハラル対応製品の需要の大きさを実感したことがハラル認証へのきっかけになったという。
ジェトロの共同出展者としてブースを構える小林食品=18日、クアラルンプール(NNA撮影)
小林食品の製造部の渡邊真佑氏によると、日本のかつお節メーカーでハラル認証を取得しているのは同社を含めわずか2社にとどまる。この希少性を追い風に、「かつお節と共に日本食文化の魅力を世界へ伝えていきたい」と意気込んだ。
首都圏スランゴール州でハラル食品材料の研究開発(R&D)や製造を手がける企業に勤めるマレーシア人の女性は、自社が開発中のスープ用プレミックス粉に使用する材料であるかつお節やエビなど、海鮮ベース原料の供給者を探しにMIHASを訪れたという。地場企業でも類似の商品を見つけることはできるものの、求める品質基準には達していないと説明。今回、日本パビリオンのブースに立ち寄り、商品を試したところ、「求める味」を発見できたと満足げな表情を見せた。
■海外進出に伴うハラル認証取得
国内メーカーの海外進出に伴い、ハラル認証を取得する企業も増えている。シーフードメーカーの福井(三重県桑名市)は、国内外の取引先から強い要望を受け、昨年11月ごろに認証取得を決断。今年3~4月ごろにハラル認証を取得した。今回、同社にとって初めてとなる展示会に出展し、認証を受けた焼きのりや味付けのりを中心に、マレーシアでのHoReCa(ホレカ、ホテル・レストラン・ケータリング向けサービス)市場での業務用展開拡大を目指す。
また、若い世代やグローバル市場を意識し、一部商品のパッケージをかわいらしく、誰からも親しみやすいデザインに一新したことも注目を集めた。福井の海外事業部の四釜樹音氏は、「初日からエジプトや東南アジア諸国の来場者がブースに立ち寄り、のりの試食を通じて商品の魅力をアピールすることができた」と手応えを示す。「会期中の4日間でのりそのものの良さを伝えていければ」と意気込みを示した。
MIHASは、17~20日の日程でクアラルンプールの展示場「マレーシア国際貿易・展示センター(MITEC)」で開催されている。第21回を迎える今回の展示会では、会期中の4日間で成約額45億リンギ(約1,580億円)の達成を目指すほか、世界80の国・地域から来場者数4万5,000人を見込んでいる。
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日本貿易振興機構(ジェトロ)クアラルンプール事務所は今回の展示会で日本パビリオンを出展し、マレーシアのムスリム市場で事業拡大を目指す企業などと共同出展している。
■希少性の高いハラルかつお節
かつお節やだしの加工・製造販売などを手がける小林食品(静岡県焼津市)は、ジェトロの共同出展者としてハラル関連の展示会に初参加している。同社は数カ月前に日本ハラル協会からのハラル認証を受けたばかりで、今回のMIHASを通じてマレーシアの卸売業者やディストリビューターとの接点を探り、今後の市場展開につなげたい考えだ。
同社は既に台湾やアメリカなど海外市場に進出している一方で、国内展開と並行して高まる海外の日本食需要に大きな商機を見いだしている。今回のハラル認証取得についても、マレーシアをはじめ各国の企業から「ハラル認証はあるのか」と問われることが多く、改めてハラル対応製品の需要の大きさを実感したことがハラル認証へのきっかけになったという。
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ジェトロの共同出展者としてブースを構える小林食品=18日、クアラルンプール(NNA撮影)[/caption]
小林食品の製造部の渡邊真佑氏によると、日本のかつお節メーカーでハラル認証を取得しているのは同社を含めわずか2社にとどまる。この希少性を追い風に、「かつお節と共に日本食文化の魅力を世界へ伝えていきたい」と意気込んだ。
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■海外進出に伴うハラル認証取得
国内メーカーの海外進出に伴い、ハラル認証を取得する企業も増えている。シーフードメーカーの福井(三重県桑名市)は、国内外の取引先から強い要望を受け、昨年11月ごろに認証取得を決断。今年3~4月ごろにハラル認証を取得した。今回、同社にとって初めてとなる展示会に出展し、認証を受けた焼きのりや味付けのりを中心に、マレーシアでのHoReCa(ホレカ、ホテル・レストラン・ケータリング向けサービス)市場での業務用展開拡大を目指す。
また、若い世代やグローバル市場を意識し、一部商品のパッケージをかわいらしく、誰からも親しみやすいデザインに一新したことも注目を集めた。福井の海外事業部の四釜樹音氏は、「初日からエジプトや東南アジア諸国の来場者がブースに立ち寄り、のりの試食を通じて商品の魅力をアピールすることができた」と手応えを示す。「会期中の4日間でのりそのものの良さを伝えていければ」と意気込みを示した。
MIHASは、17~20日の日程でクアラルンプールの展示場「マレーシア国際貿易・展示センター(MITEC)」で開催されている。第21回を迎える今回の展示会では、会期中の4日間で成約額45億リンギ(約1,580億円)の達成を目指すほか、世界80の国・地域から来場者数4万5,000人を見込んでいる。"
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