大手総合人材サービス会社のアデコ(東京都千代田区)は2024~28年度の5年間で、アジアから「特定技能1号試験」に合格した約2,500人を運転手として日本に招致し、全国の運輸会社に橋渡しする目標を28日明らかにした。アデコは今後、市場全体のシェアの約1割を取り込み、深刻な人手不足を背景に国内需要の急成長が予想される外国人運転手の紹介分野で業界トップを目指す。【飛世良範、堀江恵】
アデコが募集した自動車運送業特定技能1号評価試験の受験者ら=5月28日、ジャカルタ特別州(アデコ提供)
日本政府は24~28年度の5年間に約2万4,500人の外国人運転手が特定技能1号の在留資格で、国内で就労すると見込んでいる。アデコが目標とするプロドライバーの紹介規模はその1割を上回る。
同社は世界で60を超える国・地域で事業を展開するスイスに本社がある人材サービス企業の日本法人。22年10月に外国人が日本で就労できる在留資格である特定技能の人材の紹介業に進出した。政府が24年末に対象職種をトラック、タクシー、バスなどの自動車運送業分野に拡大したことを受け、インドネシアを中心に中国やタイ、カンボジアを含むアジア諸国からの運転手の国内招致に力を入れている。
これまでも介護や製造業、外食、宿泊などの業界に多くの人材を送った実績がある。昨年末に解禁された新規4分野の中で、自動車運送業は海外からの受け入れ規模が最も大きい。
■自動車運送業を最重点分野に
トラック運転手の残業規制強化で大幅な人手不足が表面化した「2024年問題」などを背景に、今後一段と海外への求人の動きが加速することは必至。同社は自動車運送業分野を「ブルーオーシャン(競争相手が非常に少ない未開拓市場)という意味で注力したい」(笠井啓臣外国人雇用推進部部長)として、最重点分野の1つに掲げる。
アデコが提携するアジア各地の送り出し機関が現地の自動車免許を保有する日本への渡航希望者に対し、1年~1年半かけて日本語の教育をする。語学力をつけた日本での就労希望者の中から、アデコが日本の運輸会社の条件に合う候補者を厳選して紹介。運輸会社側がオンラインで面接し、採用内定を決める流れになっている。
既に日本国内で運転免許を取得した日本在住の特定技能、技能実習の外国人材を国内の運輸会社に紹介し、採用されたケースはある。しかし、海外から直接人材を呼び込む事業は今後本格化し、人員規模は急拡大するとみている。

■年内にも国内で勤務
今年5月には日本の公的団体がインドネシアの首都ジャカルタ特別州で「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」を実施。アデコが募集した日本での就労希望者のうち、タクシー分野で3人、トラック分野で27人が合格した。合格率はタクシーが30%、トラックは54%だった。計30人の合格者は日本語試験も合格済みだ。
このほか、一部中国などからの希望者を含め、国内の運輸会社に内定し、入国査証(ビザ)を取得した十数名が11月上旬にも来日する見通し。国内の運転免許への切り替え試験やタクシー、バス分野ではさらに2種試験に合格する必要があるが、早ければ今年中にも日本国内で勤務するトラックなどの外国人運転手が誕生する見込みだ。
同社が人材供給国として注力するインドネシアは約2億8,000万人と人口が多く、特に若年人口の人口全体に占める割合や失業率が高い。さらに「車が左側通行、右ハンドルと日本と同じ交通ルール、自動車の仕様となっている」(笹川悠太外国人雇用推進部マネジャー)のも同国に期待する理由になっている。
現在日本への特定技能人材の最大の供給先になっているベトナムに比べ、インドネシアは平均月収が約8割とされる。同国の年収が比較的低い水準にとどまっていることも、日本での就労希望者の増加を下支えするとみている。
自動車運送業特定技能1号評価試験(筆記試験)の試験会場=5月28日、ジャカルタ特別州(アデコ提供)
<メモ>特定技能 日本国内の深刻化する労働力不足に対処するため、2019年に即戦力となる外国人労働者を受け入れるために創設された在留資格を指す。最長5年働ける「1号」は当初の工業製品製造業、介護、建設、農業、外食など12分野に加え、24年末に自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野が加えられた。配偶者や子どもの帯同が認められ、条件を満たせば永住も可能な「2号」は24年末の新規4分野などを除く11分野に限られる。今後は「2号」の対象が4分野にも拡大されることが期待される。出入国在留管理庁によると、25年5月末の特定技能在留外国人数(1、2号含む)は約32万4,000人。政府は24~28年度の5年間で82万人を上限に受け入れる方針を掲げる。
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同社は世界で60を超える国・地域で事業を展開するスイスに本社がある人材サービス企業の日本法人。22年10月に外国人が日本で就労できる在留資格である特定技能の人材の紹介業に進出した。政府が24年末に対象職種をトラック、タクシー、バスなどの自動車運送業分野に拡大したことを受け、インドネシアを中心に中国やタイ、カンボジアを含むアジア諸国からの運転手の国内招致に力を入れている。
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■自動車運送業を最重点分野に
トラック運転手の残業規制強化で大幅な人手不足が表面化した「2024年問題」などを背景に、今後一段と海外への求人の動きが加速することは必至。同社は自動車運送業分野を「ブルーオーシャン(競争相手が非常に少ない未開拓市場)という意味で注力したい」(笠井啓臣外国人雇用推進部部長)として、最重点分野の1つに掲げる。
アデコが提携するアジア各地の送り出し機関が現地の自動車免許を保有する日本への渡航希望者に対し、1年~1年半かけて日本語の教育をする。語学力をつけた日本での就労希望者の中から、アデコが日本の運輸会社の条件に合う候補者を厳選して紹介。運輸会社側がオンラインで面接し、採用内定を決める流れになっている。
既に日本国内で運転免許を取得した日本在住の特定技能、技能実習の外国人材を国内の運輸会社に紹介し、採用されたケースはある。しかし、海外から直接人材を呼び込む事業は今後本格化し、人員規模は急拡大するとみている。

■年内にも国内で勤務
今年5月には日本の公的団体がインドネシアの首都ジャカルタ特別州で「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」を実施。アデコが募集した日本での就労希望者のうち、タクシー分野で3人、トラック分野で27人が合格した。合格率はタクシーが30%、トラックは54%だった。計30人の合格者は日本語試験も合格済みだ。
このほか、一部中国などからの希望者を含め、国内の運輸会社に内定し、入国査証(ビザ)を取得した十数名が11月上旬にも来日する見通し。国内の運転免許への切り替え試験やタクシー、バス分野ではさらに2種試験に合格する必要があるが、早ければ今年中にも日本国内で勤務するトラックなどの外国人運転手が誕生する見込みだ。
同社が人材供給国として注力するインドネシアは約2億8,000万人と人口が多く、特に若年人口の人口全体に占める割合や失業率が高い。さらに「車が左側通行、右ハンドルと日本と同じ交通ルール、自動車の仕様となっている」(笹川悠太外国人雇用推進部マネジャー)のも同国に期待する理由になっている。
現在日本への特定技能人材の最大の供給先になっているベトナムに比べ、インドネシアは平均月収が約8割とされる。同国の年収が比較的低い水準にとどまっていることも、日本での就労希望者の増加を下支えするとみている。
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自動車運送業特定技能1号評価試験(筆記試験)の試験会場=5月28日、ジャカルタ特別州(アデコ提供)[/caption]
<メモ>特定技能 日本国内の深刻化する労働力不足に対処するため、2019年に即戦力となる外国人労働者を受け入れるために創設された在留資格を指す。最長5年働ける「1号」は当初の工業製品製造業、介護、建設、農業、外食など12分野に加え、24年末に自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野が加えられた。配偶者や子どもの帯同が認められ、条件を満たせば永住も可能な「2号」は24年末の新規4分野などを除く11分野に限られる。今後は「2号」の対象が4分野にも拡大されることが期待される。出入国在留管理庁によると、25年5月末の特定技能在留外国人数(1、2号含む)は約32万4,000人。政府は24~28年度の5年間で82万人を上限に受け入れる方針を掲げる。"
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