マレーシアの新車市場で首位を独走する国民車メーカー、プロドゥアは1日、自社開発した初の電気自動車(EV)「QV—E(キュービー)」を発売した。マレーシアの自動車メーカーが国内で設計・開発から生産まで手がけた初の国産EV。現在の月産能力は500台だが、来年第3四半期(7~9月)までに6倍の3,000台に増強する計画だ。
プロドゥアは、投資貿易産業省庁舎でEV「QV—E」の発売を発表した。アンワル・イブラヒム首相(右から2人目)、ザフルル・アブドゥル・アジズ投資貿易産業相(左から2人目)らが出席した=1日、クアラルンプール(NNA撮影)
モデル名のQV—Eは、「Quest for Visionary Electric Vehicle(先見性のあるEVの探求)」に由来する。スポーティーさを兼ね備えたハッチバック「スポーツバック」で、車体サイズはプロドゥアの小型車「マイヴィ」とほぼ同等。全長と全幅はマイヴィをわずかに上回るが、全高は13ミリメートル低くなっている。
プロドゥアは、マレーシア政府が2023年9月に発表した30年までの産業政策「新産業マスタープラン(NIMP)2030」で国内のEVエコシステム構築のけん引役に指名されたことを受け、マレーシア・プトラ大学(UPM)やクアラルンプール大学(UniKL)といった国内の大学と協力し、国産EVの設計・開発に着手した。
総額8億リンギ(約300億円)を投じ、2年4カ月かけて設計・開発から生産まで手がけた。プロドゥアにはダイハツ工業が出資しているが、EVの開発には関わっていない。プラットフォームは、オーストリアのマグナ・シュタイヤーと共同開発した。
プロドゥアが発売したEV「QV—E」。ボディーカラーは2色ある=1日、クアラルンプール(NNA撮影)
52.5キロワットのリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池や、子どもやペットの置き去り事故を防止するための「子ども置き去り検知システム(CPD)」を含む安全装置を搭載する。航続距離は欧州の測定基準「NEDC」で最長445キロメートル。
車体の小売価格は8万リンギ(保険料除く)で、政府が目指していた10万リンギを下回る。中間層以上をメインターゲットとし、セカンドカー(2台目の自家用車)としての需要や買い替え需要を狙う。
国内で初めてバッテリーのレンタルサービス「バッテリー・アズ・ア・サービス(BaaS)」を導入する。プロドゥアの広報担当者によると、契約期間は9年で、レンタル料は月額275リンギ(税抜き)。契約期間中に不具合が生じた場合や駆動時間が70%まで低下した場合は、無料でバッテリーを交換する。消費者のバッテリーに対する懸念を軽減し、EVの購入を促進したい考えだ。
■30年までに現地調達率70%目指す
QV—Eは、プロドゥアが首都圏スランゴール州ラワンに構える工場で生産する。プロドゥアは先月、子会社を通じて、地場自動車関連コングロマリット(複合企業)タンチョン・モーター・ホールディングスの傘下企業と、EV生産事業での協力に関する意向表明書(LOI)を締結。タンチョンは、プロドゥアに電着塗装(EDコーティング)・塗装サービスを提供するとともに、組み立てラインの一部を貸し出す。
現時点で地場ベンダー52社から部品の供給を受けており、30年までに70社に増やす計画。部品の現地調達率は来年初めまでに50%超、30年までに70%に引き上げることを目指す。
プロドゥアのザイナル・アビディン・アフマド社長兼最高経営責任者(CEO)によると、同社の部品の現地調達額は、1993年の会社設立から現在までに累計1,160億リンギ。今年は年初から現在までで110億リンギに上る。
国民車メーカーでは、国内新車市場でシェア2位のプロトン・ホールディングスが、先行して自社ブランドのEV「e.MAS(イーマス)」シリーズを投入している。しかし、プロトンの株主である中国の自動車大手、浙江吉利控股集団が設計・開発から生産まで協力しているため、「国民車メーカーのEV」ではあるが、「国産EV」とは見なされていない。プロドゥアがBaaSを導入している一方で、プロトンは導入していないことも大きな違いだ。
スピーチするプロドゥアのザイナル社長兼CEO=1日、クアラルンプール(NNA撮影)
ザイナル氏は、プロドゥアの2025年の新車販売について、35万9,000台を超え、過去最高を記録するとの見通しを示した。24年の販売台数は前年比8.4%増の35万8,102台で、市場シェアは43.8%だった。
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プロドゥアは、マレーシア政府が2023年9月に発表した30年までの産業政策「新産業マスタープラン(NIMP)2030」で国内のEVエコシステム構築のけん引役に指名されたことを受け、マレーシア・プトラ大学(UPM)やクアラルンプール大学(UniKL)といった国内の大学と協力し、国産EVの設計・開発に着手した。
総額8億リンギ(約300億円)を投じ、2年4カ月かけて設計・開発から生産まで手がけた。プロドゥアにはダイハツ工業が出資しているが、EVの開発には関わっていない。プラットフォームは、オーストリアのマグナ・シュタイヤーと共同開発した。
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プロドゥアが発売したEV「QV—E」。ボディーカラーは2色ある=1日、クアラルンプール(NNA撮影)[/caption]
52.5キロワットのリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池や、子どもやペットの置き去り事故を防止するための「子ども置き去り検知システム(CPD)」を含む安全装置を搭載する。航続距離は欧州の測定基準「NEDC」で最長445キロメートル。
車体の小売価格は8万リンギ(保険料除く)で、政府が目指していた10万リンギを下回る。中間層以上をメインターゲットとし、セカンドカー(2台目の自家用車)としての需要や買い替え需要を狙う。
国内で初めてバッテリーのレンタルサービス「バッテリー・アズ・ア・サービス(BaaS)」を導入する。プロドゥアの広報担当者によると、契約期間は9年で、レンタル料は月額275リンギ(税抜き)。契約期間中に不具合が生じた場合や駆動時間が70%まで低下した場合は、無料でバッテリーを交換する。消費者のバッテリーに対する懸念を軽減し、EVの購入を促進したい考えだ。
■30年までに現地調達率70%目指す
QV—Eは、プロドゥアが首都圏スランゴール州ラワンに構える工場で生産する。プロドゥアは先月、子会社を通じて、地場自動車関連コングロマリット(複合企業)タンチョン・モーター・ホールディングスの傘下企業と、EV生産事業での協力に関する意向表明書(LOI)を締結。タンチョンは、プロドゥアに電着塗装(EDコーティング)・塗装サービスを提供するとともに、組み立てラインの一部を貸し出す。
現時点で地場ベンダー52社から部品の供給を受けており、30年までに70社に増やす計画。部品の現地調達率は来年初めまでに50%超、30年までに70%に引き上げることを目指す。
プロドゥアのザイナル・アビディン・アフマド社長兼最高経営責任者(CEO)によると、同社の部品の現地調達額は、1993年の会社設立から現在までに累計1,160億リンギ。今年は年初から現在までで110億リンギに上る。
国民車メーカーでは、国内新車市場でシェア2位のプロトン・ホールディングスが、先行して自社ブランドのEV「e.MAS(イーマス)」シリーズを投入している。しかし、プロトンの株主である中国の自動車大手、浙江吉利控股集団が設計・開発から生産まで協力しているため、「国民車メーカーのEV」ではあるが、「国産EV」とは見なされていない。プロドゥアがBaaSを導入している一方で、プロトンは導入していないことも大きな違いだ。[caption id="attachment_30259" align="aligncenter" width="620"]
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ザイナル氏は、プロドゥアの2025年の新車販売について、35万9,000台を超え、過去最高を記録するとの見通しを示した。24年の販売台数は前年比8.4%増の35万8,102台で、市場シェアは43.8%だった。"
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