アジア就職を成功させるのは言うほど簡単ではありません。語学やビザの問題がありますし、満足のいく待遇を受けるためには職歴ををいかに重ねるかもポイントです。そんな中素晴らしいキャリアを実現した方たちにその軌跡を伺います。
今回は香港にて外資の金融系IT企業で働く鈴木さんにお話をうかがいました。
鈴木康士さん
アメリカの金融系IT会社でエネルギー取引及びリスク管理ソリューションのAPAC(アジア太平洋地域)担当として働く
1今はアメリカの金融系IT会社で働いていますが、これまでのご経歴を簡単に教えて下さい。
日本の大学卒業後、東京で財閥系のIT企業に入社しました。この会社はアメリカ・ボストンにあるハードウェア会社の日本総代理店になっていて、入社後の3年間は海外資材担当として営業部で働きました。日々、繰り広げられるボストンとのやりとりは、日本にいながら海外と接点を持てる仕事ということで、充実していましたね。その後、異動となり国内エンタテインメントの事業部で働くことになりました。ここに長く在籍するうちに、このままだと「海外で仕事をしたい」という夢が実現しなくなりそうだと思い、転職活動を少しずつはじめました。ただ2002年にITバブルが崩壊。転職市場が冷え込んだことに加え、自分がいたIT企業も大手繊維企業のIT子会社との合併があり、合併先の事業部にて再度、希望に近い仕事につけることになり、さらに3年間働きました。
2何をきっかけに香港に来たんですか?
香港に来たきっかけは、仕事ではなく、MBAです。2007年に香港科技大学のMBAプログラムに唯一の日本人として入学しました。中国やタイなどアジアの経済成長が注目される中、香港やシンガポールのMBAが注目され始めた最初のころです。アメリカやヨーロッパには多くの有力校がありますが、差別化という面でアジアのプログラムを目指すようになりました。もちろん、海外で働く夢がありましたので、MBAを終えたあとは、少なくともすぐは日本に戻らないキャリアを模索しました。
MBAのクラスメートとの写真。鈴木さん提供。
3MBA卒業後の仕事探しはどうしましたか?
このあたりは自分のブログにも書いたのですが、結構大変でしたね。結局、130社以上企業に応募したことになります。より多様性のある環境で働きたいという希望を叶えるため、日系企業以外への応募を積極的にしましたが、なかなか上手くいかなかった。その後、忸怩たる思いもありつつ「日本人であること」を表に出して就職活動を行う中、アメリカ系のヘッドハンティング会社から紹介された電通系のシステムインテグレーターであるISID香港法人の話に興味を持ちました。なぜかというと、日系企業でありながら、日本からの駐在員は0、社長は香港人、日本人はマイノリティという環境が魅力で、多様性のある環境で働きたいという自分の希望に沿うものでした。入社後はセールスとして成果を出し、毎年年収も上げてもらい、6年ほど働いた後、円満に転職しました。
4次の転職先はどう探したんですか?
LinkedInに登録したところ、今のアメリカの金融系IT会社の採用担当から直接メールが来たんですね。日本ではそこまでポピュラーではないかもしれませんが、香港ではLinkedInではとても人気があります。登録して、更新しておくと企業の人事担当者やエージェントから連絡がくることは良くあります。
5今の職場の雰囲気はどうですか?
香港オフィスには約120名の社員がいますが、私が担当している業務はアジア全域におけるエネルギー取引の効率化やリスク管理のソリューションを提供するというものです。この事業のアジアでの担当は私しかいないため、かなり責任があります。主たるエリアでは日本、韓国、オーストラリア、フィリピン、シンガポールなどが担当地域になり、毎月、1週間程度は海外に出るようなスケジュールになります。フランス人上司がいますが、担当は私だけですので、フレキシブルに仕事ができるという良い面もあります。
6グローバル企業で働く上で変わったことはなんですか?
時差を考えて働くようになりました。ヨーロッパならサマータイムだと香港の午後3時ごろにはヨーロッパオフィスの人たちと会話ができる一方、アメリカのメンバーは香港の夜にならないと働いてくれません。笑 時差への意識が芽生えました。
あと、痛感しているのは直接交わすコミュニケーションの重要性です。アメリカやヨーロッパで働く社員でも一度でも直接会ったり、ビデオ会議で顔を見たことある人は献身的に私を助けてくれます。FacetoFaceによって、サポートのクオリティが変わるんですね。世界中に仲間がいる職場だからこそ、なるべくFacetoFaceの機会を作るように努めています。
7海外で働く上で欠かせないツールは有りますか?
Skype for Businessですね。電話番号と紐付いているので、どこからでも外線電話をかけることができます。また、オフィス内のチャットツールとして使っているほか、画面共有もできるので、打合せを効率化できています。
8今後のキャリアプランはどう考えていますか?
しばらくは今の会社で働きます。アジアで1人しかいないエネルギーソリューションの部署を2名、3名とチームにしていきたいんですよ。エネルギーソリューションは伸びる分野です。この分野を極めて行きたいですね。
9最後に海外で働きたい人にアドバイスをお願いします。
マーケットの小さい香港で働くだけでは満足のいく給与を得ることは難しいでしょう。ただ、アジア全体を見るポジションを得られるのが香港です。これなら日本以上の給与を得ることも可能です。香港やシンガポールは低税率です。家は高くて、狭い一方で、通勤は楽です。経済成長が続くアジアは、みんなが儲かりやすい環境でもあります。日系企業でも良いですが、非日系企業を選ぶという選択肢にも挑戦してみてください。タフな環境下ですが、結果を出す人には柔軟性と高い給与で応えてくれます。日系企業で修行を積んでから、非日系に転職することもありでしょう。海外で働くと、年齢制限などは日本よりは大分緩くなります。行動できる人にはチャンスの場も多いです。
NNA jobwire編集室
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鈴木康士さん
アメリカの金融系IT会社でエネルギー取引及びリスク管理ソリューションのAPAC(アジア太平洋地域)担当として働く
1今はアメリカの金融系IT会社で働いていますが、これまでのご経歴を簡単に教えて下さい。
日本の大学卒業後、東京で財閥系のIT企業に入社しました。この会社はアメリカ・ボストンにあるハードウェア会社の日本総代理店になっていて、入社後の3年間は海外資材担当として営業部で働きました。日々、繰り広げられるボストンとのやりとりは、日本にいながら海外と接点を持てる仕事ということで、充実していましたね。その後、異動となり国内エンタテインメントの事業部で働くことになりました。ここに長く在籍するうちに、このままだと「海外で仕事をしたい」という夢が実現しなくなりそうだと思い、転職活動を少しずつはじめました。ただ2002年にITバブルが崩壊。転職市場が冷え込んだことに加え、自分がいたIT企業も大手繊維企業のIT子会社との合併があり、合併先の事業部にて再度、希望に近い仕事につけることになり、さらに3年間働きました。
2何をきっかけに香港に来たんですか?
香港に来たきっかけは、仕事ではなく、MBAです。2007年に香港科技大学のMBAプログラムに唯一の日本人として入学しました。中国やタイなどアジアの経済成長が注目される中、香港やシンガポールのMBAが注目され始めた最初のころです。アメリカやヨーロッパには多くの有力校がありますが、差別化という面でアジアのプログラムを目指すようになりました。もちろん、海外で働く夢がありましたので、MBAを終えたあとは、少なくともすぐは日本に戻らないキャリアを模索しました。
MBAのクラスメートとの写真。鈴木さん提供。
3MBA卒業後の仕事探しはどうしましたか?
このあたりは自分のブログにも書いたのですが、結構大変でしたね。結局、130社以上企業に応募したことになります。より多様性のある環境で働きたいという希望を叶えるため、日系企業以外への応募を積極的にしましたが、なかなか上手くいかなかった。その後、忸怩たる思いもありつつ「日本人であること」を表に出して就職活動を行う中、アメリカ系のヘッドハンティング会社から紹介された電通系のシステムインテグレーターであるISID香港法人の話に興味を持ちました。なぜかというと、日系企業でありながら、日本からの駐在員は0、社長は香港人、日本人はマイノリティという環境が魅力で、多様性のある環境で働きたいという自分の希望に沿うものでした。入社後はセールスとして成果を出し、毎年年収も上げてもらい、6年ほど働いた後、円満に転職しました。
4次の転職先はどう探したんですか?
LinkedInに登録したところ、今のアメリカの金融系IT会社の採用担当から直接メールが来たんですね。日本ではそこまでポピュラーではないかもしれませんが、香港ではLinkedInではとても人気があります。登録して、更新しておくと企業の人事担当者やエージェントから連絡がくることは良くあります。
5今の職場の雰囲気はどうですか?
香港オフィスには約120名の社員がいますが、私が担当している業務はアジア全域におけるエネルギー取引の効率化やリスク管理のソリューションを提供するというものです。この事業のアジアでの担当は私しかいないため、かなり責任があります。主たるエリアでは日本、韓国、オーストラリア、フィリピン、シンガポールなどが担当地域になり、毎月、1週間程度は海外に出るようなスケジュールになります。フランス人上司がいますが、担当は私だけですので、フレキシブルに仕事ができるという良い面もあります。
6グローバル企業で働く上で変わったことはなんですか?
時差を考えて働くようになりました。ヨーロッパならサマータイムだと香港の午後3時ごろにはヨーロッパオフィスの人たちと会話ができる一方、アメリカのメンバーは香港の夜にならないと働いてくれません。笑 時差への意識が芽生えました。
あと、痛感しているのは直接交わすコミュニケーションの重要性です。アメリカやヨーロッパで働く社員でも一度でも直接会ったり、ビデオ会議で顔を見たことある人は献身的に私を助けてくれます。FacetoFaceによって、サポートのクオリティが変わるんですね。世界中に仲間がいる職場だからこそ、なるべくFacetoFaceの機会を作るように努めています。
7海外で働く上で欠かせないツールは有りますか?
Skype for Businessですね。電話番号と紐付いているので、どこからでも外線電話をかけることができます。また、オフィス内のチャットツールとして使っているほか、画面共有もできるので、打合せを効率化できています。
8今後のキャリアプランはどう考えていますか?
しばらくは今の会社で働きます。アジアで1人しかいないエネルギーソリューションの部署を2名、3名とチームにしていきたいんですよ。エネルギーソリューションは伸びる分野です。この分野を極めて行きたいですね。
9最後に海外で働きたい人にアドバイスをお願いします。
マーケットの小さい香港で働くだけでは満足のいく給与を得ることは難しいでしょう。ただ、アジア全体を見るポジションを得られるのが香港です。これなら日本以上の給与を得ることも可能です。香港やシンガポールは低税率です。家は高くて、狭い一方で、通勤は楽です。経済成長が続くアジアは、みんなが儲かりやすい環境でもあります。日系企業でも良いですが、非日系企業を選ぶという選択肢にも挑戦してみてください。タフな環境下ですが、結果を出す人には柔軟性と高い給与で応えてくれます。日系企業で修行を積んでから、非日系に転職することもありでしょう。海外で働くと、年齢制限などは日本よりは大分緩くなります。行動できる人にはチャンスの場も多いです。
NNA jobwire編集室
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