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伊藤忠、ロッテと脱炭素推進アンモニア・水素分野で協業

伊藤忠商事(東京都港区)は22日、韓国化学大手のロッテケミカルとアンモニア・水素分野での協業に関する覚書を交わしたと発表した。次世代燃料として注目を集めるアンモニアの取引や生産設備への投資、水素事業での協力などで幅広く協力していく。両社は今回の提携を機に、日韓両政府も力を入れる脱炭素燃料の早期導入の推進を目指す。

7月21日に開かれた覚書締結式の様子。握手する伊藤忠商事の田中正哉エネルギー・化学品カンパニープレジデント(左)とロッテケミカルの黃鎮求(ファン・ジング)基礎素材事業代表=東京(伊藤忠商事提供)

伊藤忠商事とロッテケミカルは今後、◇アンモニア取引◇日本と韓国市場を対象にしたアンモニアインフラの活用調査◇日韓両国を対象にしたアンモニア市場調査◇クリーンアンモニア生産設備に対する共同投資調査◇水素分野での協業可能性調査——の5分野を中心に、協力関係を広げていく。
アンモニアは化学向けや肥料用としての利用が主だが、近年は水素を低コストで運べる水素キャリアとして注目されている。さらに、燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないため、石炭などと一緒に燃焼することでCO2排出を削減できる次世代燃料としての活用も進められている。
伊藤忠の関係者はNNAに対し、「ロッテケミカルは、アジア有数のアンモニアトレーダーであるロッテ精密化学を持つ。今年から来年にかけて、バリューチェーンの構築に向けた大枠をまとめていく」と話した。
伊藤忠は、中期経営計画の基本方針に「持続可能な開発目標(SDGs)」への貢献を掲げており、安定的なアンモニアサプライチェーン(調達・供給網)の構築を目指している。今年5月にはカナダで、製造過程で出すCO2を抑えたブルーアンモニアの販売事業への参画を発表した。
ロッテケミカルは昨年7月に発表した成長戦略で、水素やアンモニアなどエコ燃料への投資を拡大する方針を明らかにしていた。2030年までに11兆ウォン(約1兆1,400億円)を投じ、年間120万トンの水素生産設備を建設するほか、海外からのクリーンアンモニア導入やアンモニアの混合燃料としての活用を拡大するとしている。

ロッテケミカルは今年5月にアンモニアや水素などエコ燃料事業への投資を軸とする2030年までの成長戦略を発表した=韓国(同社提供)

■日韓両国で進むアンモニア投資
日韓両国では現在、アンモニアを次世代燃料として活用する取り組みが積極的に推進されている。
東京電力ホールディングスと中部電力の共同出資会社であるJERAは今年5月、石炭火力発電の燃料としてアンモニアを混ぜて使用する実証試験を23年に開始すると発表した。従来の計画から1年前倒して実施し、発電燃料としてのアンモニア利用の早期実現を目指す。
日本政府は50年の炭素中立(カーボンニュートラル)実現に向けた成長戦略において、アンモニアの国内需要は30年に300万トン、50年には3,000万トンに達すると予測している。
一方、韓国政府はアンモニア需要の拡大に対応するため、30年までにアンモニアを燃料とするエコ船舶を開発する目標を掲げ、向こう10年間で約2,500億ウォンを投じると発表した。
地場電力最大手の韓国電力公社は4月に、ロッテケミカル、ポスコホールディングスと相次いでアンモニア事業での業務提携を結んだ。アンモニアおよび水素発電の技術開発や、韓国内外での供給網の確保に向けて協力していく構えだ。

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伊藤忠は、中期経営計画の基本方針に「持続可能な開発目標(SDGs)」への貢献を掲げており、安定的なアンモニアサプライチェーン(調達・供給網)の構築を目指している。今年5月にはカナダで、製造過程で出すCO2を抑えたブルーアンモニアの販売事業への参画を発表した。
ロッテケミカルは昨年7月に発表した成長戦略で、水素やアンモニアなどエコ燃料への投資を拡大する方針を明らかにしていた。2030年までに11兆ウォン(約1兆1,400億円)を投じ、年間120万トンの水素生産設備を建設するほか、海外からのクリーンアンモニア導入やアンモニアの混合燃料としての活用を拡大するとしている。[caption id="attachment_5530" align="aligncenter" width="612"]ロッテケミカルは今年5月にアンモニアや水素などエコ燃料事業への投資を軸とする2030年までの成長戦略を発表した=韓国(同社提供)[/caption]
■日韓両国で進むアンモニア投資
日韓両国では現在、アンモニアを次世代燃料として活用する取り組みが積極的に推進されている。
東京電力ホールディングスと中部電力の共同出資会社であるJERAは今年5月、石炭火力発電の燃料としてアンモニアを混ぜて使用する実証試験を23年に開始すると発表した。従来の計画から1年前倒して実施し、発電燃料としてのアンモニア利用の早期実現を目指す。
日本政府は50年の炭素中立(カーボンニュートラル)実現に向けた成長戦略において、アンモニアの国内需要は30年に300万トン、50年には3,000万トンに達すると予測している。
一方、韓国政府はアンモニア需要の拡大に対応するため、30年までにアンモニアを燃料とするエコ船舶を開発する目標を掲げ、向こう10年間で約2,500億ウォンを投じると発表した。
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