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最低賃金引き上げは必要、ジャカルタ州知事

「ジャカルタ特別州の最低賃金の引き上げ率を5.1%にすることはコモンセンス(常識・良識)だ」。訪日していたインドネシア・ジャカルタ特別州のアニス知事は東京都内で11日、「州知事としての実績と今後の展望」と題した講演会で、最低賃金に関するNNAの質問に対してこのような認識を示した。2022年の最低賃金の引き上げ率は当初、前年比0.85%に決定していたが、アニス氏はその後これを5.1%とする判断を下し、企業経営団体との間で訴訟問題に発展。アニス氏の5年間の任期は10月までだが、24年の次期大統領選に出馬する候補とされ、対応が注目されている。[2377100_1.jpg]
ジャカルタ特別州の最低賃金はコロナ禍前の19年までは毎年、前年比8%程度の引き上げで推移してきた。同州政府は21年11月、中央政府の規定に従い、22年の最低賃金の引き上げ率をいったんは過去最低水準の0.85%(月額445万3,936ルピア=約4万1,000円)としたが、アニス氏はその後、5.1%への引き上げを決定した。しかし、インドネシア経営者協会(Apindo)ジャカルタ支部が今年1月、行政裁判所にアニス知事を提訴し、7月に勝訴。行政裁の判決は、アニス知事に最低賃金の引き上げ幅を3.6%にすることを命じる内容だった。同州はこれを不服として上訴する方針を示していた。
アニス氏の説明によると、最低賃金はこれまで、物価上昇率と経済成長率を合算して決められていた。22年は本来ならば1.6%と3.5%をそれぞれ合算して5.1%となるはずだった。日系メーカーの中には、5.1%を基準として給与を引き上げたケースもある。
最低賃金の引き上げ要求は大統領選を見据えたものではないか、とのNNAの質問に対して「コロナ禍で市民の生活は苦しくなっている。(中央政府の0.85%という)最低賃金の新たな算出法には、政治家としてではなく、一市民としても納得できないものがある」と答えた。
大統領選出馬に関しては、10月の知事の任期が終わった後に判断する話だとした上で、「私はどの政党にも所属していないので、私自身で決めることはできない」と答えた。
アニス氏はまた、在任中の5年間で、民族や宗教間の融和にも取り組んだことを強調。ジャカルタでは治安が大幅に改善されたという。
■MRT整備、日本以外とも協力
講演会でアニス氏は、ジャカルタの公共交通機関の整備を中心に話した。排ガスを出さない歩行者や自転車のための歩道整備が第一優先で、次いで公共交通機関の整備に注力したというアニス氏。異なる事業者間の調整・統合を州当局が行うことによって公共交通の3時間乗り放題の新たな運賃体系を実現したほか、歩道や公園を整備することで、市民が公共交通を使い交通渋滞が改善できたことをデジタル地図世界大手のTomTom(トムトム)の調査資料を使って解説した。トムトムによれば、17年に世界で4番目にひどかったジャカルタの道路の混雑度は、21年は世界46位に改善した。
都市高速鉄道(MRT)の整備についてアニス氏は10日、国際協力機構(JICA)とも協議したが、「日本のMRT事業は軌道など品質は良いが時間がかかる。230キロのMRTを整備するのに、日本だけに頼っていたら永久に終わらない」として、欧州など日本以外の国とも協力関係を結ぶ方針を示した。
■30年に全車両を電気バスに
このほかアニス氏は、ジャカルタの路線バスを8年後の30年までにすべて電気バスに置き換えると発言した。現在は40台が導入されているだけだという。

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アニス氏の説明によると、最低賃金はこれまで、物価上昇率と経済成長率を合算して決められていた。22年は本来ならば1.6%と3.5%をそれぞれ合算して5.1%となるはずだった。日系メーカーの中には、5.1%を基準として給与を引き上げたケースもある。
最低賃金の引き上げ要求は大統領選を見据えたものではないか、とのNNAの質問に対して「コロナ禍で市民の生活は苦しくなっている。(中央政府の0.85%という)最低賃金の新たな算出法には、政治家としてではなく、一市民としても納得できないものがある」と答えた。
大統領選出馬に関しては、10月の知事の任期が終わった後に判断する話だとした上で、「私はどの政党にも所属していないので、私自身で決めることはできない」と答えた。
アニス氏はまた、在任中の5年間で、民族や宗教間の融和にも取り組んだことを強調。ジャカルタでは治安が大幅に改善されたという。
■MRT整備、日本以外とも協力
講演会でアニス氏は、ジャカルタの公共交通機関の整備を中心に話した。排ガスを出さない歩行者や自転車のための歩道整備が第一優先で、次いで公共交通機関の整備に注力したというアニス氏。異なる事業者間の調整・統合を州当局が行うことによって公共交通の3時間乗り放題の新たな運賃体系を実現したほか、歩道や公園を整備することで、市民が公共交通を使い交通渋滞が改善できたことをデジタル地図世界大手のTomTom(トムトム)の調査資料を使って解説した。トムトムによれば、17年に世界で4番目にひどかったジャカルタの道路の混雑度は、21年は世界46位に改善した。
都市高速鉄道(MRT)の整備についてアニス氏は10日、国際協力機構(JICA)とも協議したが、「日本のMRT事業は軌道など品質は良いが時間がかかる。230キロのMRTを整備するのに、日本だけに頼っていたら永久に終わらない」として、欧州など日本以外の国とも協力関係を結ぶ方針を示した。
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