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韓国スタバが独走態勢へ遠隔オーダーなど際立つ独自戦略

韓国のコーヒーチェーン市場で圧倒的なシェアを誇るスターバックス。世界の店舗で初めてモバイルオーダーを導入するなど、独自のマーケティング戦略で高成長を続けている。コーヒー消費量が高い韓国で、ブランド力を武器に独走態勢が一段と強固となりそうだ。

教保文庫の光化門店内にオープンした協業型店舗=19日、ソウル市(NNA撮影)

韓国スタバは、1999年に1号店としてソウル市の梨花女子大学前店をオープンして以降、2022年4月時点で全国1,639店まで店舗を増やしている。とりわけソウル市内の店舗数は約590店(9月時点)と、東京の382店を大きく上回るなど、世界の都市で最も店舗数が多いとされる。
調査会社のオープンサーベイが、韓国のコーヒーショップで「最も利用した店」(店内利用客)を調査した結果、38.5%がスタバと回答。近くの個人コーヒー専門店(17.5%)やフランチャイズのトゥーサムプレイス(9.2%)を大きく引き離した。
韓国は、成人1人が1年間に飲むコーヒーの量(KB金融経営研究所調べ、18年時点)は353杯と世界平均132杯の約3倍に達する。コーヒーショップ数も約8万7,000店と、人口当たり600人に1店舗ある計算で、舌が肥えた消費者も多いといわれる。そのコーヒー消費大国でスタバは長年高い人気を維持し続けてきた。
■米国の持ち分なし
韓国スタバの運営を手がけるのは新世界グループ傘下のSCKカンパニーだ。筆頭株主は株式67.5%を持つグループ系列の小売り大手Eマートで、米国本社の保有株を全て取得した昨年7月以降、米国資本は入っていない状況だ。
米国本社が持ち分を保有しない場合、法人名に「スターバックス」は使用できないことから、21年末にスターバックスコリアからSCKカンパニーに社名を変更した経緯がある。
店舗は全て直営店経営となる。フランチャイズチェーンだと500メートル以内に同じブランドの店舗を構えることができない規制があるが、直営店は対象外。需要が見込める繁華街には十数店を集中出店するなど、果敢な投資戦略で他社とのシェアを広げてきた。

■世界初の現地語表記
韓国特有のサービスも人気の秘訣(ひけつ)だ。14年には世界で初めてモバイル注文「サイレンオーダー」を開始。店舗を訪問する前から注文や決済が可能で、混雑した時の待ち時間を減らせる。新型コロナウイルス禍で非対面での注文が好まれる中、利用者はさらに拡大して国内累計オーダー数は2億件を超えた。
伝統の茶屋や工芸品店が立ち並ぶソウル市鍾路区の仁寺洞にある店舗は看板名をハングルで表記した。01年オープン当時は世界初のアルファベット以外の看板表記として注目を集めた。21年には韓国でスタバの愛称とされる「ピョルタバン(星茶房)」を店舗名に採用するなど、ユニークなアプローチも得意とする。
今年8月には書店最大手、教保文庫の光化門店内に協業店舗を出店した。同書店が選んだおすすめ本など、スタバ店舗内に置かれた本を飲食しながら楽しめるようにした。
これまでも書店内に出店する「ショップインショップ形式」の店舗はあったものの、期待したほどの相乗効果が見込めなかった。書店とカフェの協業型を新たな店舗スタイルとして構築したい考え。
■品質問題で逆風も
そんなスタバも今年は強い逆風を受けた。7月に、顧客に贈呈していた景品の「サマーキャリーバッグ」から発がん性物質のホルムアルデヒドが検出されたことが確認。4月には、紙ストローから「ガソリンの臭いがする」との苦情があり、調査に乗り出した結果、一部のメーカーでコーティング液の配合比率が誤って調整されたことが明らかになった。
相次ぐ品質問題に、韓国メディアは「進出から23年で最大の危機」と報じ、一部では消費者による不買運動の兆しもみられた。
ただ、その批判も次第に弱まり、9月時点では各店舗に老若男女問わず多くのお客が訪れている。独自のマーケティング戦略で築き上げた高いブランド力には、いまだ陰りはないようだ。

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韓国は、成人1人が1年間に飲むコーヒーの量(KB金融経営研究所調べ、18年時点)は353杯と世界平均132杯の約3倍に達する。コーヒーショップ数も約8万7,000店と、人口当たり600人に1店舗ある計算で、舌が肥えた消費者も多いといわれる。そのコーヒー消費大国でスタバは長年高い人気を維持し続けてきた。
■米国の持ち分なし
韓国スタバの運営を手がけるのは新世界グループ傘下のSCKカンパニーだ。筆頭株主は株式67.5%を持つグループ系列の小売り大手Eマートで、米国本社の保有株を全て取得した昨年7月以降、米国資本は入っていない状況だ。
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■世界初の現地語表記
韓国特有のサービスも人気の秘訣(ひけつ)だ。14年には世界で初めてモバイル注文「サイレンオーダー」を開始。店舗を訪問する前から注文や決済が可能で、混雑した時の待ち時間を減らせる。新型コロナウイルス禍で非対面での注文が好まれる中、利用者はさらに拡大して国内累計オーダー数は2億件を超えた。
伝統の茶屋や工芸品店が立ち並ぶソウル市鍾路区の仁寺洞にある店舗は看板名をハングルで表記した。01年オープン当時は世界初のアルファベット以外の看板表記として注目を集めた。21年には韓国でスタバの愛称とされる「ピョルタバン(星茶房)」を店舗名に採用するなど、ユニークなアプローチも得意とする。
今年8月には書店最大手、教保文庫の光化門店内に協業店舗を出店した。同書店が選んだおすすめ本など、スタバ店舗内に置かれた本を飲食しながら楽しめるようにした。
これまでも書店内に出店する「ショップインショップ形式」の店舗はあったものの、期待したほどの相乗効果が見込めなかった。書店とカフェの協業型を新たな店舗スタイルとして構築したい考え。
■品質問題で逆風も
そんなスタバも今年は強い逆風を受けた。7月に、顧客に贈呈していた景品の「サマーキャリーバッグ」から発がん性物質のホルムアルデヒドが検出されたことが確認。4月には、紙ストローから「ガソリンの臭いがする」との苦情があり、調査に乗り出した結果、一部のメーカーでコーティング液の配合比率が誤って調整されたことが明らかになった。
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