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欧州2社、EV販売で先行モーターショー、3年ぶりに開幕

ベトナム自動車業界の祭典ベトナム・モーターショーが26日、南部ホーチミン市で開幕した。出展したのは日本と欧州の14ブランドで、前回2019年より1ブランド少ない。アウディやメルセデス・ベンツなど「脱二酸化炭素(CO2)」で市場の主導権を奪還したい欧州の高級車メーカーは、電気自動車(EV)の新型車を出展し、今後の市場攻略の主役に押し出した。一方、日本メーカーでEVを出展したのは全動力源に備えを張るトヨタ自動車と同社の高級車ブランド、レクサスの2ブランドにとどまり、ベトナム市場に対する日・欧メーカーの姿勢の違いがくっきり表れた。

3年ぶり開催となったベトナム・モーターショーの初日には多くの報道関係者が訪れた=26日、ホーチミン市7区


ベトナム・モーターショーはベトナム自動車工業会(VAMA)とベトナム自動車輸入業者協会(VIVA)などで組織する運営団体の主催。新型コロナウイルスの感染が広がった20年、21年と2年連続で中止され、3年ぶりの開催となった今回は、初の年間新車販売台数50万台達成を目指すベトナム自動車業界にとって、消費者に「ポストコロナ」を印象付け、内需拡大につなげる重要イベントとなった。
会場は同市7区のサイゴン展示会議センター(SECC)で、30日までの期間中、20万人以上の来場が見込まれている。
■ビンファスト参加見送り
今回のモーターショーで最も話題を集めたのは、前回19年モーターショーに初出展した地場メーカーのビンファストが参加しなかったことだ。
同社は今年夏以降、ガソリンなどの内燃機関車の生産を打ち切り、北部ハイフォン市の自動車生産工場を全てEV仕様に転換。米国や欧州各国に相次ぎ地域統括本社を設立し、まずは充電設備などのインフラが整った先進国市場で販売台数を稼ぐ戦略を鮮明にしている。
ただ、乗用車では唯一のベトナムブランドである同社が地元で3年ぶりに開催されたモーターショーへの参加を見送ったのは異例の事態で、「自国市場を軽視している表れだ」「国内販売が想定以上に苦戦している可能性がある」などさまざまな臆測を呼んでいる。
国内シェアで日本勢に匹敵する韓国・現代自動車もベトナム・モーターショーには参加していない。同社はVAMAに加盟しておらず、「政府に対する政策要望活動などでも業界団体を通じてではなく、独自の活動を重視している」(日系メーカー幹部)という。米フォード・モーターとスズキも直前になって参加を見送った。
■メルセデスとアウディが発売
ビンファスト不在のモーターショーで、EVに前のめりの姿勢を見せたのは欧州の高級車ブランドだ。

アウディのEV「e—tron(イートロン)」


今回出展した欧州系9ブランドのうち、アウディ(ドイツ)、メルセデス・ベンツ(同)、MG(英国)の3社がEVの新型車を展示し、アウディとメルセデスはベトナムでの販売開始を宣言した。
アウディが発表したEVは「e—tron(イートロン)50SUVクアトロ」。19年のモーターショーでEV「e—tron(イートロン)」のコンセプトカーを発表していたが、新型コロナウイルスの影響を受けて発売を延期しており、今回が正式なEVの販売開始となった。販売価格は付加価値税(VAT)込みで29億7,000万ドン(約11万9,500米ドル、1,770万円)からで、即日納車が可能という。
アウディの担当者によれば、アウディは25~26年までに新たに販売代理店20~25店舗を展開し、EV利用者の充電環境を整備する方針だ。
メルセデスはセダン型EV「EQS」2車種をモーターショー後に発売する。モーター1つ搭載で最大出力245キロワット、1回の充電で625~783キロメートル走行可能な「EQS450+」は48億3,900万ドン、モーターを2つ搭載し最大出力385キロワット、1回の充電で581~692キロメートル走行可能な「EQS5804MATIC」は59億5,900万ドンで販売する。
ベトナムのモーターショーに初出展した英MGはEV2車種「MGマーベルR」「MG4」を発表。ベトナムでは充電インフラの整備が不十分であることから、販売時期は未定としている。
■トヨタもEV初お披露目
ベトナムで販売台数首位のトヨタ自動車は、ベトナム初お披露目となるEV「bZ4X」のほか、新型ハイブリッド車(HV)「カムリ・ハイブリッド」、小型多目的車(MPV)「ヴェロズ・クロス」など7車種を展示した。

トヨタのEV「bZ4X」

同社関係者によると、ベトナムで初めてとなるEVを展示したのは、政府が早期のEVへのシフトを後押しする中で「トヨタとしてあらゆる動力源で消費者の需要に応えていく」姿勢を強調するのが狙い。充電施設などのインフラ整備が遅れる中での市場投入は時期尚早とみており、環境対応車としてまずはHVのラインアップを増やしていく方針だ。
トヨタの現地法人トヨタ・ベトナム(TMV)の上田裕之社長はモーターショーの会場で、現在はインドネシアから輸入しているヴェロズ・クロスと兄弟車種の「アバンザ・プレミオ」を今年12月からベトナムでの組み立て生産に切り替え、来年から国内販売することを明らかにした。一定の販売台数が見込める車種の現地生産を増やすことで、北部にある工場の稼働率を改善し、部品の現地調達率を引き上げるのが目的だ。
■ホンダは「走り」を前面に
ホンダは、セダン「シビック」のスポーツモデル「シビック・タイプR」の新型などを出展した。7月に日本で発表されたばかりの新型で、東南アジア諸国連合(ASEAN)では初披露。ベトナムでは26日から予約販売を開始し、来年4月からの顧客への引き渡しを開始する予定。
四輪車の各主力車種に加え、排気量500~1100ccの大型バイクも多数展示した。べトナム・モーターショーでの大型バイク出展は同社にとって初めてとなる。
ホンダの現地法人ホンダ・ベトナム(HVN)の三原大樹社長はNNAに対し、トヨタや欧州の複数メーカーがEVを出展した中、今回は見送る判断を下したと説明。「ベトナムにおいては四輪車がまさに『モータリゼーション』を迎えたという状況であり、われわれとしては今回のモーターショーでは純粋な『走り』の部分をテーマに展示した」と説明した。

ホンダのセダン「シビック」のスポーツモデル「シビック・タイプR」

三菱自動車の小型スポーツタイプ多目的車(SUV)「XFC」のコンセプトモデル

■三菱、戦略車「XFC」展示
三菱自動車は、先週にベトナムで初披露した新型小型スポーツタイプ多目的車(SUV)「XFC」のコンセプトモデル「XFC CONCEPT(コンセプト)」などを出展した。東南アジア各国でシェア拡大を目指す新たな戦略車として、23年4月から順次販売する。
韓国・起亜の「セルトス」や現代自動車の「クレタ」などが競合相手になると見ており、競合車を念頭に置いた価格帯で販売することを検討している。このほか、主力車種である中型SUV「パジェロスポーツ」、同「アウトランダー」、小型MPV「エクスパンダー」なども展示した。
日本メーカーではこのほかSUBARU(スバル)も出展し、スポーツセダン「WRX」、スポーツワゴン「WRXワゴン」の新モデルや、SUV「フォレスター」の23年モデルを披露した。正規代理店であるモーター・イメージ・ベトナム(MIV)による出展で、日本本社からの参加はなかった。
MIVによると、スバルのターゲットは、安全性と走行性能を重視する中~高所得者層の子どもがいる家族。ベトナムではターゲットとなる層がまだ少ないと説明する一方で、今後の経済発展とともに利用者が増えることを期待しているようだ。販売台数は公表していない。ベトナム市場でのEVへの対応については、「まだ充電設備などが整備されていない」として、当面の投入予定はないと説明した。

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ベトナム・モーターショーはベトナム自動車工業会(VAMA)とベトナム自動車輸入業者協会(VIVA)などで組織する運営団体の主催。新型コロナウイルスの感染が広がった20年、21年と2年連続で中止され、3年ぶりの開催となった今回は、初の年間新車販売台数50万台達成を目指すベトナム自動車業界にとって、消費者に「ポストコロナ」を印象付け、内需拡大につなげる重要イベントとなった。
会場は同市7区のサイゴン展示会議センター(SECC)で、30日までの期間中、20万人以上の来場が見込まれている。
■ビンファスト参加見送り
今回のモーターショーで最も話題を集めたのは、前回19年モーターショーに初出展した地場メーカーのビンファストが参加しなかったことだ。
同社は今年夏以降、ガソリンなどの内燃機関車の生産を打ち切り、北部ハイフォン市の自動車生産工場を全てEV仕様に転換。米国や欧州各国に相次ぎ地域統括本社を設立し、まずは充電設備などのインフラが整った先進国市場で販売台数を稼ぐ戦略を鮮明にしている。
ただ、乗用車では唯一のベトナムブランドである同社が地元で3年ぶりに開催されたモーターショーへの参加を見送ったのは異例の事態で、「自国市場を軽視している表れだ」「国内販売が想定以上に苦戦している可能性がある」などさまざまな臆測を呼んでいる。
国内シェアで日本勢に匹敵する韓国・現代自動車もベトナム・モーターショーには参加していない。同社はVAMAに加盟しておらず、「政府に対する政策要望活動などでも業界団体を通じてではなく、独自の活動を重視している」(日系メーカー幹部)という。米フォード・モーターとスズキも直前になって参加を見送った。
■メルセデスとアウディが発売
ビンファスト不在のモーターショーで、EVに前のめりの姿勢を見せたのは欧州の高級車ブランドだ。
[caption id="attachment_9771" align="aligncenter" width="620"]アウディのEV「e—tron(イートロン)」[/caption] 
今回出展した欧州系9ブランドのうち、アウディ(ドイツ)、メルセデス・ベンツ(同)、MG(英国)の3社がEVの新型車を展示し、アウディとメルセデスはベトナムでの販売開始を宣言した。
アウディが発表したEVは「e—tron(イートロン)50SUVクアトロ」。19年のモーターショーでEV「e—tron(イートロン)」のコンセプトカーを発表していたが、新型コロナウイルスの影響を受けて発売を延期しており、今回が正式なEVの販売開始となった。販売価格は付加価値税(VAT)込みで29億7,000万ドン(約11万9,500米ドル、1,770万円)からで、即日納車が可能という。
アウディの担当者によれば、アウディは25~26年までに新たに販売代理店20~25店舗を展開し、EV利用者の充電環境を整備する方針だ。
メルセデスはセダン型EV「EQS」2車種をモーターショー後に発売する。モーター1つ搭載で最大出力245キロワット、1回の充電で625~783キロメートル走行可能な「EQS450+」は48億3,900万ドン、モーターを2つ搭載し最大出力385キロワット、1回の充電で581~692キロメートル走行可能な「EQS5804MATIC」は59億5,900万ドンで販売する。
ベトナムのモーターショーに初出展した英MGはEV2車種「MGマーベルR」「MG4」を発表。ベトナムでは充電インフラの整備が不十分であることから、販売時期は未定としている。
■トヨタもEV初お披露目
ベトナムで販売台数首位のトヨタ自動車は、ベトナム初お披露目となるEV「bZ4X」のほか、新型ハイブリッド車(HV)「カムリ・ハイブリッド」、小型多目的車(MPV)「ヴェロズ・クロス」など7車種を展示した。
[caption id="attachment_9768" align="aligncenter" width="620"]トヨタのEV「bZ4X」[/caption]
同社関係者によると、ベトナムで初めてとなるEVを展示したのは、政府が早期のEVへのシフトを後押しする中で「トヨタとしてあらゆる動力源で消費者の需要に応えていく」姿勢を強調するのが狙い。充電施設などのインフラ整備が遅れる中での市場投入は時期尚早とみており、環境対応車としてまずはHVのラインアップを増やしていく方針だ。
トヨタの現地法人トヨタ・ベトナム(TMV)の上田裕之社長はモーターショーの会場で、現在はインドネシアから輸入しているヴェロズ・クロスと兄弟車種の「アバンザ・プレミオ」を今年12月からベトナムでの組み立て生産に切り替え、来年から国内販売することを明らかにした。一定の販売台数が見込める車種の現地生産を増やすことで、北部にある工場の稼働率を改善し、部品の現地調達率を引き上げるのが目的だ。
■ホンダは「走り」を前面に
ホンダは、セダン「シビック」のスポーツモデル「シビック・タイプR」の新型などを出展した。7月に日本で発表されたばかりの新型で、東南アジア諸国連合(ASEAN)では初披露。ベトナムでは26日から予約販売を開始し、来年4月からの顧客への引き渡しを開始する予定。
四輪車の各主力車種に加え、排気量500~1100ccの大型バイクも多数展示した。べトナム・モーターショーでの大型バイク出展は同社にとって初めてとなる。
ホンダの現地法人ホンダ・ベトナム(HVN)の三原大樹社長はNNAに対し、トヨタや欧州の複数メーカーがEVを出展した中、今回は見送る判断を下したと説明。「ベトナムにおいては四輪車がまさに『モータリゼーション』を迎えたという状況であり、われわれとしては今回のモーターショーでは純粋な『走り』の部分をテーマに展示した」と説明した。
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■三菱、戦略車「XFC」展示
三菱自動車は、先週にベトナムで初披露した新型小型スポーツタイプ多目的車(SUV)「XFC」のコンセプトモデル「XFC CONCEPT(コンセプト)」などを出展した。東南アジア各国でシェア拡大を目指す新たな戦略車として、23年4月から順次販売する。
韓国・起亜の「セルトス」や現代自動車の「クレタ」などが競合相手になると見ており、競合車を念頭に置いた価格帯で販売することを検討している。このほか、主力車種である中型SUV「パジェロスポーツ」、同「アウトランダー」、小型MPV「エクスパンダー」なども展示した。
日本メーカーではこのほかSUBARU(スバル)も出展し、スポーツセダン「WRX」、スポーツワゴン「WRXワゴン」の新モデルや、SUV「フォレスター」の23年モデルを披露した。正規代理店であるモーター・イメージ・ベトナム(MIV)による出展で、日本本社からの参加はなかった。
MIVによると、スバルのターゲットは、安全性と走行性能を重視する中~高所得者層の子どもがいる家族。ベトナムではターゲットとなる層がまだ少ないと説明する一方で、今後の経済発展とともに利用者が増えることを期待しているようだ。販売台数は公表していない。ベトナム市場でのEVへの対応については、「まだ充電設備などが整備されていない」として、当面の投入予定はないと説明した。" ["post_title"]=> string(81) "欧州2社、EV販売で先行モーターショー、3年ぶりに開幕" ["post_excerpt"]=> string(0) "" ["post_status"]=> string(7) "publish" ["comment_status"]=> string(4) "open" ["ping_status"]=> string(4) "open" ["post_password"]=> string(0) "" ["post_name"]=> string(198) "%e6%ac%a7%e5%b7%9e%ef%bc%92%e7%a4%be%e3%80%81%ef%bd%85%ef%bd%96%e8%b2%a9%e5%a3%b2%e3%81%a7%e5%85%88%e8%a1%8c%e3%83%a2%e3%83%bc%e3%82%bf%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%bc%e3%80%81%ef%bc%93%e5%b9%b4" ["to_ping"]=> string(0) "" ["pinged"]=> string(0) "" ["post_modified"]=> string(19) "2022-10-27 04:00:05" ["post_modified_gmt"]=> string(19) "2022-10-26 19:00:05" ["post_content_filtered"]=> string(0) "" ["post_parent"]=> int(0) ["guid"]=> string(33) "https://nnaglobalnavi.com/?p=9766" ["menu_order"]=> int(0) ["post_type"]=> string(4) "post" ["post_mime_type"]=> string(0) "" ["comment_count"]=> string(1) "0" ["filter"]=> string(3) "raw" }
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