沖縄県の鶏卵の輸出が増えている。食品貿易事業を手がけるエングループ沖縄(那覇市)がシンガポールと香港向けの出荷量を拡大していることが背景にある。同社によると、日本からシンガポールに輸出された鶏卵輸出量のうち沖縄からの出荷量の割合は2020年の約5割から21年には約6割まで拡大。昨年には県産鶏卵の海外での販売増に向けた新たな枠組み「畜産物輸出コンソーシアム」が立ち上がり、今後のさらなる輸出増に期待が寄せられている。【清水美雪】
たまご園では沖縄県産鶏卵を使ったメニューを提供している=シンガポール中心部(NNA撮影)
エングループ沖縄は、日本食店を展開するシンガポールのENホールディングスのグループ会社だ。ENホールディングスは同国で沖縄県産鶏卵を使ったメニューを提供するレストラン「たまご園(Tamago-EN)」を展開。香港ではグループ会社ENグループが同様にたまご園を出店している。
独自配合の飼料で育てた沖縄産のオリジナル卵を使用。2カ国・地域とも19年に進出し、現在はシンガポールで9店舗、香港で6店舗を構える。シンガポールでは店頭で県産鶏卵の販売も行っている。
日本養鶏協会(東京都中央区)の統計では、日本からシンガポールに輸出された鶏卵(殻付き)の出荷量は21年に前年比21%増の329トンとなった。
エングループ沖縄によると、日本産鶏卵の輸出量全体のうち沖縄地区税関からのシンガポール向け出荷量の割合は20年に47%、21年には57%まで伸びた。うちエングループ沖縄の出荷量が占める割合は20年、21年ともにほぼ100%だった。同社のシンガポール向け輸出量は21年に前年比46%増となった。
■香港向け出荷は2.2倍
香港は21年に日本からの鶏卵輸出量全体の98%を占め、国・地域別で最も多かった。日本から香港への同年の輸出量は前年比22%増の2万1,600トンとなった。
沖縄地区税関から香港向けの輸出量は20年の73トンから21年には164トンへと2.2倍に拡大。うちエングループ沖縄の出荷量が占める割合は20年に38%、21年は52%まで伸びた。同社の香港向け輸出量は21年に3倍に拡大した。
エングループ沖縄の担当者はNNAに対し、「沖縄産鶏卵のシンガポール、香港向けの出荷が増えた背景には、当社グループが2カ国・地域でたまご園を積極的に店舗展開しているからだろう」と指摘。県外で一時鳥インフルエンザが相次いだため、インフルエンザ未発生の沖縄産の鶏卵需要が増えた可能性もあると付け加えた。
シンガポール向け出荷については、「安全性が高く、生でも食べられる日本産の需要が高まっていた。19年にたまご園をオープンしたことで県産鶏卵の輸出量が拡大し、認知度向上につながった」と説明した。
■うま味成分多い商品開発
日本産鶏卵の輸出先には、2カ国・地域以外にマカオなどもあるが出荷量は非常に少ない。安全性の高い日本産鶏卵の人気が以前から高い香港と、シンガポールが主要輸出先となっている。
昨年には、沖縄県で県産鶏卵の輸出拡大に向けた新たな取り組みも始まった。エングループ沖縄と、養鶏場経営・鶏卵販売などを手がける琉球飼料(沖縄県浦添市)、瀬底養鶏場(同県南城市)の3社が畜産物輸出コンソーシアム(企業連合)を設立。県産鶏卵の輸出増を目的とした飼料開発、海外への物流構築、販売促進に取り組んでいる。
具体的には、たまご園向けにハーブなどを独自にブレンドした卵用鶏の飼料を開発し、飼料の栄養成分などを検査している。この飼料を与えて生産したオリジナル卵の栄養バランス、コク、うま味などの検査も実施し、栄養価が高く、うま味成分が多い鶏卵の供給を目指している。
琉球飼料の當山全隆取締役営業部長は「鶏卵輸出量が想像以上に伸びて驚いている。今後も品質向上、安心安全な鶏卵作りに励みながら生産体制を強化し、安定供給に努めたい」と語った。
沖縄産鶏卵の輸出拡大に取り組むエングループ沖縄のン・ハンヤン代表取締役(右)と琉球飼料の取締役営業部長の當山全隆氏(エングループ沖縄提供)
■加工品で輸出拡大狙う
ENホールディングスはこのほか、10月にシンガポールのチャンギ空港に併設する大型商業施設「ジュエル・チャンギ・エアポート」で飲食店3店を開業した。天ぷら専門店「まきの」、ラーメン専門店「極(Kiwami)」、和牛焼き肉店「和宴(Wa—En)」だ。3店とも一部のメニューで沖縄産鶏卵を使用する。
エングループ沖縄のン・ハンヤン代表取締役は今後の見通しについて、「鶏卵の輸出と同時に、加工品の開発も積極的に進めてさらなる輸出拡大に努めたい」と意気込みを語った。
たまご園の展開に伴い、シンガポールや香港での県産鶏卵の需要は今後もさらに増えると見込んでいる。飲食店での消費だけでなく、将来的には一般家庭でも県産鶏卵を食べてもらえるよう周知活動を進める意向だ。
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独自配合の飼料で育てた沖縄産のオリジナル卵を使用。2カ国・地域とも19年に進出し、現在はシンガポールで9店舗、香港で6店舗を構える。シンガポールでは店頭で県産鶏卵の販売も行っている。
日本養鶏協会(東京都中央区)の統計では、日本からシンガポールに輸出された鶏卵(殻付き)の出荷量は21年に前年比21%増の329トンとなった。
エングループ沖縄によると、日本産鶏卵の輸出量全体のうち沖縄地区税関からのシンガポール向け出荷量の割合は20年に47%、21年には57%まで伸びた。うちエングループ沖縄の出荷量が占める割合は20年、21年ともにほぼ100%だった。同社のシンガポール向け輸出量は21年に前年比46%増となった。
■香港向け出荷は2.2倍
香港は21年に日本からの鶏卵輸出量全体の98%を占め、国・地域別で最も多かった。日本から香港への同年の輸出量は前年比22%増の2万1,600トンとなった。
沖縄地区税関から香港向けの輸出量は20年の73トンから21年には164トンへと2.2倍に拡大。うちエングループ沖縄の出荷量が占める割合は20年に38%、21年は52%まで伸びた。同社の香港向け輸出量は21年に3倍に拡大した。
エングループ沖縄の担当者はNNAに対し、「沖縄産鶏卵のシンガポール、香港向けの出荷が増えた背景には、当社グループが2カ国・地域でたまご園を積極的に店舗展開しているからだろう」と指摘。県外で一時鳥インフルエンザが相次いだため、インフルエンザ未発生の沖縄産の鶏卵需要が増えた可能性もあると付け加えた。
シンガポール向け出荷については、「安全性が高く、生でも食べられる日本産の需要が高まっていた。19年にたまご園をオープンしたことで県産鶏卵の輸出量が拡大し、認知度向上につながった」と説明した。
■うま味成分多い商品開発
日本産鶏卵の輸出先には、2カ国・地域以外にマカオなどもあるが出荷量は非常に少ない。安全性の高い日本産鶏卵の人気が以前から高い香港と、シンガポールが主要輸出先となっている。
昨年には、沖縄県で県産鶏卵の輸出拡大に向けた新たな取り組みも始まった。エングループ沖縄と、養鶏場経営・鶏卵販売などを手がける琉球飼料(沖縄県浦添市)、瀬底養鶏場(同県南城市)の3社が畜産物輸出コンソーシアム(企業連合)を設立。県産鶏卵の輸出増を目的とした飼料開発、海外への物流構築、販売促進に取り組んでいる。
具体的には、たまご園向けにハーブなどを独自にブレンドした卵用鶏の飼料を開発し、飼料の栄養成分などを検査している。この飼料を与えて生産したオリジナル卵の栄養バランス、コク、うま味などの検査も実施し、栄養価が高く、うま味成分が多い鶏卵の供給を目指している。
琉球飼料の當山全隆取締役営業部長は「鶏卵輸出量が想像以上に伸びて驚いている。今後も品質向上、安心安全な鶏卵作りに励みながら生産体制を強化し、安定供給に努めたい」と語った。
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