タイの電気自動車(EV)市場で、中国系に続いて世界的なメーカーも参入の動きが具体化してきた。米国のテスラは7日にタイで2車種の予約を開始した。国内では11月にトヨタ自動車がバッテリー式電気自動車(BEV)を初めて発売したほか、韓国の現代自動車もEVの投入を検討しているとされる。東南アジアのEVのハブを目指すタイで、世界大手と中国系が競争を繰り広げる様相を呈してきた。
テスラは7日、タイで「モデル3」と「モデルY」の予約を開始した。写真は首都バンコクのモール「サイアム・パラゴン」に設置された期間限定店(NNA撮影)
テスラがタイで発売したのはセダン「モデル3」とスポーツタイプ多目的車(SUV)「モデルY」。価格は「モデル3」が175万9,000~230万9,000バーツ(約693万~909万円)で、1回の充電による航続距離は559キロメートル。「モデルY」は195万9,000~250万9,000バーツで、航続距離は510キロとなる。タイの財務省物品税局によるEV向け補助金を適用後の価格とされる。
テスラは7日、首都バンコク中心部の高級ショッピングモール「サイアム・パラゴン」に期間限定のショールームをオープンしており、来年3月までに正式な店舗をオープンする予定。来年1~3月に100台以上を納車することを目指している。来年2月には専用の充電ステーションを設置していく予定で、その後に10カ所まで拡充する方針。15分の充電で275キロを走れる見込みという。テスラの関係者によると、予約は同社のウェブサイトで受け付けており、現状では家族向けの需要が大きい「モデルY」が人気という。
タイでは長城汽車(GWM)タイランドが6月にEV「欧拉(ORA)・グッドキャットGT」を発売し、価格は128万6,000バーツ。中国の比亜迪(BYD)は11月にSUV「ATTO3(アットスリー、中国名:元プラス)」を発売した。標準モデルの価格は109万9,900バーツとしている。トヨタが同月に発売した中型SUVのEV「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」は183万6,000バーツとなる。BYDの「ATTO3」は予約開始から1カ月で7,000台以上の予約を受け付けた。トヨタの「bZ4X」も予約開始から1日で3,300台以上の予約があり、受け付けを締め切るなど、消費者のEVへの反応は良好だ。
このほか中国メーカーの動向としては、新興企業の愛馳汽車(AIWAYS)がタイ企業のフェニックスEVと戦略提携協定を交わした。フェニックスEVは今後5年で、愛馳汽車からEVを含む「新エネルギー車(NEV)」を約15万台購入し、販売する計画。また、浙江合衆新能源汽車(合衆汽車)のタイ法人ナタオート(タイランド)は、タイのバンチャン・ゼネラル・アセンブリー(BGAC)と契約し、2024年にEVの組み立てを開始する。
世界的なメーカーでは、現代自動車がEVのタイ市場への投入を検討しているとされる。また、EMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手の鴻海精密工業とタイ国営石油PTTは合弁でEVメーカー「ホライズン・プラス」を立ち上げており、タイ東部チョンブリ県のロジャナ工業団地で工場を着工した。投資額は約370億バーツで、2024年の操業開始を目指している。
■各社はEVシフトに対応
タイでは今年1~10月にBEVが約7,552台販売されており(トラック・バスを含む)、21年通年の2,128台を大きく上回るペースで拡大している。今年1~10月の新車販売数は約70万台にのぼっており、全体に占めるBEVの割合は大きいとはいえないものの、今後数年にわたって急拡大するのは確実な情勢となっている。
タイで販売されるEVは現状では輸入が多く、サプライヤーへの影響は限定的といえる。それでも、車部品最大手のアーピコ・ハイテックは10月にベトナムの自動車メーカー、ビンファストからEV向けのドアやプラスチック部品の生産と供給を受注したと発表するなど、動きが出てきていることは間違いない。ある日系の部品メーカーの幹部はNNAに「現状では急激に変化が起きているわけではないが、EVが増えることで一部の部品の受注が減る可能性が出てきている」と危機感を示す。また、複数のメーカーは今後に向けて、EV向けのラインアップを拡充していくことを本格的に検討していると口をそろえる。また自動車ローンを提供する銀行やノンバンクはEV向けの新商品の販売を開始するなど、周辺の業界でも「EVシフト」は徐々に強まっているといえそうだ。
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テスラは7日、首都バンコク中心部の高級ショッピングモール「サイアム・パラゴン」に期間限定のショールームをオープンしており、来年3月までに正式な店舗をオープンする予定。来年1~3月に100台以上を納車することを目指している。来年2月には専用の充電ステーションを設置していく予定で、その後に10カ所まで拡充する方針。15分の充電で275キロを走れる見込みという。テスラの関係者によると、予約は同社のウェブサイトで受け付けており、現状では家族向けの需要が大きい「モデルY」が人気という。
タイでは長城汽車(GWM)タイランドが6月にEV「欧拉(ORA)・グッドキャットGT」を発売し、価格は128万6,000バーツ。中国の比亜迪(BYD)は11月にSUV「ATTO3(アットスリー、中国名:元プラス)」を発売した。標準モデルの価格は109万9,900バーツとしている。トヨタが同月に発売した中型SUVのEV「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」は183万6,000バーツとなる。BYDの「ATTO3」は予約開始から1カ月で7,000台以上の予約を受け付けた。トヨタの「bZ4X」も予約開始から1日で3,300台以上の予約があり、受け付けを締め切るなど、消費者のEVへの反応は良好だ。
このほか中国メーカーの動向としては、新興企業の愛馳汽車(AIWAYS)がタイ企業のフェニックスEVと戦略提携協定を交わした。フェニックスEVは今後5年で、愛馳汽車からEVを含む「新エネルギー車(NEV)」を約15万台購入し、販売する計画。また、浙江合衆新能源汽車(合衆汽車)のタイ法人ナタオート(タイランド)は、タイのバンチャン・ゼネラル・アセンブリー(BGAC)と契約し、2024年にEVの組み立てを開始する。
世界的なメーカーでは、現代自動車がEVのタイ市場への投入を検討しているとされる。また、EMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手の鴻海精密工業とタイ国営石油PTTは合弁でEVメーカー「ホライズン・プラス」を立ち上げており、タイ東部チョンブリ県のロジャナ工業団地で工場を着工した。投資額は約370億バーツで、2024年の操業開始を目指している。
■各社はEVシフトに対応
タイでは今年1~10月にBEVが約7,552台販売されており(トラック・バスを含む)、21年通年の2,128台を大きく上回るペースで拡大している。今年1~10月の新車販売数は約70万台にのぼっており、全体に占めるBEVの割合は大きいとはいえないものの、今後数年にわたって急拡大するのは確実な情勢となっている。
タイで販売されるEVは現状では輸入が多く、サプライヤーへの影響は限定的といえる。それでも、車部品最大手のアーピコ・ハイテックは10月にベトナムの自動車メーカー、ビンファストからEV向けのドアやプラスチック部品の生産と供給を受注したと発表するなど、動きが出てきていることは間違いない。ある日系の部品メーカーの幹部はNNAに「現状では急激に変化が起きているわけではないが、EVが増えることで一部の部品の受注が減る可能性が出てきている」と危機感を示す。また、複数のメーカーは今後に向けて、EV向けのラインアップを拡充していくことを本格的に検討していると口をそろえる。また自動車ローンを提供する銀行やノンバンクはEV向けの新商品の販売を開始するなど、周辺の業界でも「EVシフト」は徐々に強まっているといえそうだ。
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