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日系企業の72%「黒字」予想前年比で10P上昇、ジェトロ調査

インドの日系企業の約72%が2022年の営業利益で「黒字」を見込んでいることが分かった。前年比で10ポイント以上上昇した。向こう1~2年の事業の方向性として「拡大」と答えた企業も7割を超え、調査対象の国・地域別で最も高く、景気回復と成長への期待が浮かび上がった。日本貿易振興機構(ジェトロ)が発表した「2022年度アジア・オセアニア海外進出日系企業実態調査」で明らかになった。
日系企業を対象に調査を実施。4,392社から回答を得た。インドは273社が回答し、内訳は製造業(136社)、非製造業(137社)がそれぞれ50%ずつだった。
インドは、22年の営業利益見通しで「黒字」と答えた企業が71.9%と、21年の61.5%から大幅に拡大した。
ジェトロのインド・ニューデリー事務所の調査担当部長、広木拓氏は、自動車産業の好調と内需の早期回復を理由に挙げた。広木氏はNNAに対し、「世界全体で不調だった自動車産業が、インドでは好調だったことが特徴といえる。また、他国と比べて、内需が新型コロナウイルスによる打撃から早期にV字回復したことに加え、国内の生産体制が正常化してきたことも要因として考えられる」と指摘した。
インドの生産体制の正常化に関しては、昨年は世界的な半導体不足の影響を受けたが、今年は在庫量を増やし、現地調達化などを進めたことで、世界の中では相対的に早く回復したとの見方を示す。
■拡大する機能、6割超が「販売」
一方、向こう1~2年の事業展開の方向性について、「拡大」と答えた企業は72.5%と、調査対象となった20カ国・地域の中で最も高かった。「現状維持」は24.5%、「縮小」「第三国(地域)へ移転・撤退」はそれぞれ1.5%だった。21年調査では「拡大」が70.1%、「現状維持」が25.9%、「縮小」が2.5%、「第三国(地域)への移転・撤退」が1.4%だった。
「拡大」の理由(複数回答)については、「成長性、潜在力の高さ」「現地市場での購買力増加に伴う売上増加」「競合他社と比較した際の優位性の確立」が上位を占めた。「優位性の確立」とは具体的に製品の高品質化や新製品の開発、新拠点の設置、ブランド力の向上(販促や広告・宣伝の強化)、製品・サービスの安定的な供給などを想定している。
「拡大」する機能については、62.7%が「販売機能」と答えた。これに「生産機能(高付加価値品)」が33.5%、「生産機能(汎用品)」が24.9%で続いた。
■経営上の問題点は「賃金上昇」
インドは、「市場規模・成長性」への評価が最も高かった。「現在の市場規模」への期待(71.6%)を含めた「成長性」への評価は88.3%に上った。主要業種別では、「輸送機器部品」の73.7%が「現在の市場規模」に期待を寄せ、「成長性」としての評価は9割近くに達した。事業拡大の意向を示す企業としても輸送機器関連は多く、「高付加価値部品の現地化や、電動化などの推進に伴う新規ニーズへの対応といった背景があるとみられる」(広木氏)。
インドは調査を通じて、回復・拡大機運の高まりが表面化した一方で、「賃金」と「調達コスト」の上昇を課題に抱える。経営上の問題点(複数回答)を尋ねたところ、「従業員の賃金上昇」(77.2%)、「調達コストの上昇」(76.1%)が上位を占め、これに続く「通関等諸手続きが煩雑」(63.0%)とは10ポイント以上の開きがあった。
調査対象国・地域の平均を見ると、「従業員の賃金上昇」が70.9%、「調達コストの上昇」が69.0%となっており、インドはこれを大きく上回っている。
インドの22年のベース給与に対する昇給率見通しは前年比8.9%(製造業9.2%、非製造業8.6%)だった。23年については8.7%(9.1%、8.3%)を見込んでいる。22年、23年ともインドはパキスタン、スリランカに次いで高かった。


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インドの生産体制の正常化に関しては、昨年は世界的な半導体不足の影響を受けたが、今年は在庫量を増やし、現地調達化などを進めたことで、世界の中では相対的に早く回復したとの見方を示す。
■拡大する機能、6割超が「販売」
一方、向こう1~2年の事業展開の方向性について、「拡大」と答えた企業は72.5%と、調査対象となった20カ国・地域の中で最も高かった。「現状維持」は24.5%、「縮小」「第三国(地域)へ移転・撤退」はそれぞれ1.5%だった。21年調査では「拡大」が70.1%、「現状維持」が25.9%、「縮小」が2.5%、「第三国(地域)への移転・撤退」が1.4%だった。
「拡大」の理由(複数回答)については、「成長性、潜在力の高さ」「現地市場での購買力増加に伴う売上増加」「競合他社と比較した際の優位性の確立」が上位を占めた。「優位性の確立」とは具体的に製品の高品質化や新製品の開発、新拠点の設置、ブランド力の向上(販促や広告・宣伝の強化)、製品・サービスの安定的な供給などを想定している。
「拡大」する機能については、62.7%が「販売機能」と答えた。これに「生産機能(高付加価値品)」が33.5%、「生産機能(汎用品)」が24.9%で続いた。
■経営上の問題点は「賃金上昇」
インドは、「市場規模・成長性」への評価が最も高かった。「現在の市場規模」への期待(71.6%)を含めた「成長性」への評価は88.3%に上った。主要業種別では、「輸送機器部品」の73.7%が「現在の市場規模」に期待を寄せ、「成長性」としての評価は9割近くに達した。事業拡大の意向を示す企業としても輸送機器関連は多く、「高付加価値部品の現地化や、電動化などの推進に伴う新規ニーズへの対応といった背景があるとみられる」(広木氏)。
インドは調査を通じて、回復・拡大機運の高まりが表面化した一方で、「賃金」と「調達コスト」の上昇を課題に抱える。経営上の問題点(複数回答)を尋ねたところ、「従業員の賃金上昇」(77.2%)、「調達コストの上昇」(76.1%)が上位を占め、これに続く「通関等諸手続きが煩雑」(63.0%)とは10ポイント以上の開きがあった。
調査対象国・地域の平均を見ると、「従業員の賃金上昇」が70.9%、「調達コストの上昇」が69.0%となっており、インドはこれを大きく上回っている。
インドの22年のベース給与に対する昇給率見通しは前年比8.9%(製造業9.2%、非製造業8.6%)だった。23年については8.7%(9.1%、8.3%)を見込んでいる。22年、23年ともインドはパキスタン、スリランカに次いで高かった。

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