日本政府が2022年10月に新型コロナウイルス感染症に関連した水際対策を緩和して以降、日本国内の各観光地への誘致活動が活発化している。22年12月から23年1月にかけて、茨城や栃木、新潟、福岡の各県がタイで知事によるトップセールスを展開。訪日のリピート率の高いタイ人旅行者に対して、新たな魅力を発見できる機会をアピールした。滞在日数が限られる旅行者を呼び込む鍵は、地方空港への国際線の就航とタイ人インフルエンサーの発信力の活用だ。
第14回FITフェアでは、人気俳優のクリストさん(右から4人目)らに日本の魅力を語ってもらうなど、タイのインフルエンサーを積極的に起用した=1月27日、タイ・バンコク(NNA撮影)
日本政府が22年10月に1日当たりの入国者数の上限撤廃、査証(ビザ)取得の免除、個人旅行の再開を決めて以降、誘客のためにタイを訪れる自治体の首長が増えている。12月には茨城県と栃木県、23年1月には新潟県、福岡県の各県知事がそれぞれタイでトップセールスを行い、それぞれの食や観光スポットなどをアピールした。
日本を訪れるタイ人旅行者の特徴の一つに、リピート率の高さが挙げられる。既に過去に日本を訪れたことがあり、2度目、3度目の日本旅行を検討する例が多い。最初の訪日では、東京や大阪、京都、北海道、富士山などの定番観光地を訪れ、「定番コースとは異なる、これまで訪れたことのない場所に行ってみたい」と考えるタイ人も多い。
一方、受け入れ先である日本としても、地方を活性化するとともに、コロナ禍前にみられた観光地が旅行者でごった返す「オーバーツーリズム」を回避するためにも、観光客の目的地の分散化が望まれる。
そうした中、タイ人旅行者を地方に呼び込むための鍵の一つは、タイから日本の観光目的地までの移動時間の短縮だ。日本政府観光局(JNTO)の訪日外国人消費動向調査によると、タイ人旅行者の日本での滞在日数は4~6日が最多。いかに魅力的な観光地であっても、日本の主要空港からの移動時間が長ければ旅行者からは敬遠され、目的地での滞在日数も短くならざるを得ない。
■タイサマー航空、新潟にチャーター便
そこで日本の地方自治体が力を入れるのが、タイから各地方空港へのチャーター便の運航だ。1月にタイを訪れた新潟県の花角英世知事は、タイ中国合弁のタイ・サマー航空の幹部と会談。3月以降に新潟とタイを結ぶチャーター便運航の路線を開設することが決まった。首都バンコクのドンムアン空港から台湾・台北を経由し、新潟空港を結ぶ週2便の定期チャーター便となる。花角知事は、新潟空港へのチャーター便の運航が、新潟県のみならず、東北・北海道や中央日本四県(山梨・静岡・長野・新潟)などの広域的な観光振興につながることに期待を示す。
タイ・エアアジアがバンコク~福岡便の運航を開始するなど、タイと日本の地方空港を結ぶ航空路線が増えつつある=2022年10月、福岡(NNA撮影)
一方、茨城県の大井川和彦知事も、茨城空港へのチャーター便の実現に意欲をみせる。新型コロナウイルス感染症が流行する前の19年、タイから茨城県を訪れたツアー数が台湾に次いで2番目に多かった同県。東京から電車で1時間程度と比較的アクセスの良い茨城県だが、チャーター便の実現がタイ人旅行者をさらに呼び込む鍵とみている。
コロナ禍が収束しつつあることを受けて、タイと日本の地方空港を結ぶ航空路線も増え始めている。昨年10月には、タイ・マレーシア合弁のタイ格安航空会社(LCC)タイ・エアアジアがバンコクと福岡を結ぶ便の運航を開始した、12月下旬にはタイ国際航空とLCCのタイ・エアアジアXがそれぞれ札幌便を、日本のLCCのピーチ・アビエーションが大阪とバンコクを結ぶ路線の運航を開始した。今月17日にはベトナムのLCCベトジェット航空傘下のタイ・ベトジェットエアが大阪とタイ北部のチェンマイを結ぶ路線に新規就航する。
JNTOバンコク事務所の土居佳以所長は、NNAに対し、「空港のある都市からのアクセスの良さ、利便性は重要な要素だ。全体の滞在日数がそれほど長くないこともあり、移動に長時間をかけることは好まれない。チャーター便などでダイレクトにつないだほうが、移動の利便性が高まり、来てもらえるチャンスは高まる、一方、チャーター便を企画する旅行会社から必ず聞かれることは、地元からどのような支援制度があるか。機動的にチャーター誘致の支援措置を打ち出せると有利になる」と指摘する。
■自慢したくなる旅行目的地
土居所長が、タイ人旅行者を呼び込むためのもう一つの鍵として挙げるのが、ブログや動画サイトを通じて日本の情報を発信するブロガーやインフルエンサーなどの活用だ。タイでは、日本の観光情報を伝えるタイ語の民間メディアも多く、個人サイトも日本の情報を流しており、定番以外の行き先についての情報も容易に手に入る。
街中やネット上に広告があふれている現在、単にきれいな情報発信を一方的に行うだけでは消費者の心に印象を残しにくい。一方で、自分が親しみを感じ、信頼しているインフルエンサーが発信している情報であれば、消費者は積極的に吸収する可能性が高いとみる。
また、タイ人消費者の会員制交流サイト(SNS)利用率は高く、友人や家族の口コミが有効な情報源だ。友人の投稿に刺激を受け、周囲の人がまだ行ったことのないところに自分が行った写真をアップして自慢したい欲求も働く。SNSや口コミサイトなどで情報を広げてもらうため、訪日してくれたタイ人旅行者に、人に伝えたくなるような「映える写真」を撮影してもらったりするといった口コミ拡散活動が有効と指摘する。
先月27~29日には、JNTOバンコク事務所の主催で、タイからの個人の訪日旅行者誘致を目的とした旅行フェア「ビジットジャパンFITフェア#14(第14回FITフェア)」がバンコクで開かれた。日本からは各都道府県の観光関連団体や鉄道会社、宿泊施設などが出展。3年ぶりの開催ということもあり、会場はタイ人らの熱気であふれ、改めてタイ人消費者の訪日旅行の人気を感じさせた。
土居所長は「多様な目的地を提案することで、タイ人旅行者が日本を訪れる度に、季節ごとの新しい発見があるような行き先だと思ってもらえるようプロモーションをしていきたい」と意気込む。
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日本を訪れるタイ人旅行者の特徴の一つに、リピート率の高さが挙げられる。既に過去に日本を訪れたことがあり、2度目、3度目の日本旅行を検討する例が多い。最初の訪日では、東京や大阪、京都、北海道、富士山などの定番観光地を訪れ、「定番コースとは異なる、これまで訪れたことのない場所に行ってみたい」と考えるタイ人も多い。
一方、受け入れ先である日本としても、地方を活性化するとともに、コロナ禍前にみられた観光地が旅行者でごった返す「オーバーツーリズム」を回避するためにも、観光客の目的地の分散化が望まれる。
そうした中、タイ人旅行者を地方に呼び込むための鍵の一つは、タイから日本の観光目的地までの移動時間の短縮だ。日本政府観光局(JNTO)の訪日外国人消費動向調査によると、タイ人旅行者の日本での滞在日数は4~6日が最多。いかに魅力的な観光地であっても、日本の主要空港からの移動時間が長ければ旅行者からは敬遠され、目的地での滞在日数も短くならざるを得ない。
■タイサマー航空、新潟にチャーター便
そこで日本の地方自治体が力を入れるのが、タイから各地方空港へのチャーター便の運航だ。1月にタイを訪れた新潟県の花角英世知事は、タイ中国合弁のタイ・サマー航空の幹部と会談。3月以降に新潟とタイを結ぶチャーター便運航の路線を開設することが決まった。首都バンコクのドンムアン空港から台湾・台北を経由し、新潟空港を結ぶ週2便の定期チャーター便となる。花角知事は、新潟空港へのチャーター便の運航が、新潟県のみならず、東北・北海道や中央日本四県(山梨・静岡・長野・新潟)などの広域的な観光振興につながることに期待を示す。
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一方、茨城県の大井川和彦知事も、茨城空港へのチャーター便の実現に意欲をみせる。新型コロナウイルス感染症が流行する前の19年、タイから茨城県を訪れたツアー数が台湾に次いで2番目に多かった同県。東京から電車で1時間程度と比較的アクセスの良い茨城県だが、チャーター便の実現がタイ人旅行者をさらに呼び込む鍵とみている。
コロナ禍が収束しつつあることを受けて、タイと日本の地方空港を結ぶ航空路線も増え始めている。昨年10月には、タイ・マレーシア合弁のタイ格安航空会社(LCC)タイ・エアアジアがバンコクと福岡を結ぶ便の運航を開始した、12月下旬にはタイ国際航空とLCCのタイ・エアアジアXがそれぞれ札幌便を、日本のLCCのピーチ・アビエーションが大阪とバンコクを結ぶ路線の運航を開始した。今月17日にはベトナムのLCCベトジェット航空傘下のタイ・ベトジェットエアが大阪とタイ北部のチェンマイを結ぶ路線に新規就航する。
JNTOバンコク事務所の土居佳以所長は、NNAに対し、「空港のある都市からのアクセスの良さ、利便性は重要な要素だ。全体の滞在日数がそれほど長くないこともあり、移動に長時間をかけることは好まれない。チャーター便などでダイレクトにつないだほうが、移動の利便性が高まり、来てもらえるチャンスは高まる、一方、チャーター便を企画する旅行会社から必ず聞かれることは、地元からどのような支援制度があるか。機動的にチャーター誘致の支援措置を打ち出せると有利になる」と指摘する。
■自慢したくなる旅行目的地
土居所長が、タイ人旅行者を呼び込むためのもう一つの鍵として挙げるのが、ブログや動画サイトを通じて日本の情報を発信するブロガーやインフルエンサーなどの活用だ。タイでは、日本の観光情報を伝えるタイ語の民間メディアも多く、個人サイトも日本の情報を流しており、定番以外の行き先についての情報も容易に手に入る。
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また、タイ人消費者の会員制交流サイト(SNS)利用率は高く、友人や家族の口コミが有効な情報源だ。友人の投稿に刺激を受け、周囲の人がまだ行ったことのないところに自分が行った写真をアップして自慢したい欲求も働く。SNSや口コミサイトなどで情報を広げてもらうため、訪日してくれたタイ人旅行者に、人に伝えたくなるような「映える写真」を撮影してもらったりするといった口コミ拡散活動が有効と指摘する。
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