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日本真珠に本土バイヤー殺到国際取引ハブ、4年ぶり対面商談

アジア最大規模の宝石・宝飾品の国際見本市「香港国際珠宝展(ジュエリーショー)」と「香港国際鑽石、宝石、珍珠展(ダイヤモンド・ジェム&パールショー)」が1日、香港で開幕し、真珠を販売する日本企業70社が4年ぶりに出展した。真珠は日本が世界に誇る輸出品目で、中国本土では特に人気が高い。各社のブースには開場直後から本土のバイヤーが多数詰めかけ大盛況となった。業界は、真珠輸出のさらなる拡大を期待する。【天野友紀子、蘇子善】

ジャパン・パール・パビリオンは、開幕直後から大混雑した=1日、湾仔(NNA撮影)

ダイヤモンド・ジェム&パールショーで日本の真珠業者が香港を訪れるのは2019年3月以来4年ぶり。会場は香港島・湾仔の香港コンベンション&エキシビションセンター(HKCEC)。70社は、日本貿易振興機構(ジェトロ)と日本真珠輸出組合(JPEA、神戸市)が共同で設けた「ジャパン・パール・パビリオン」に出展した。
■その場で現金購入
初日の1日は午前10時半の開場直後からパビリオン内の大部分のブースに人だかりができた。そこかしこから普通語(北京語を基礎とする中国の共通語)が聞こえてきた。
ジェトロ香港事務所の山崎裕介・市場開拓部部長によると、同見本市ではバイヤーが真珠の現物を見極め、その場で現金購入するのが常だ。初日の午前中に各ブースを回って品定めし、午後に目当ての品の交渉をして購入していくバイヤーが多いという。
「いい品は初日のうちに売れてしまう」(業界関係者)という危機感と、本土のバイヤーが香港を訪れるのも4年ぶりであるためか、多くのバイヤーがせわしなく複数のブースを行き来していた。日本の真珠を目当てに中国浙江省から買い付けに来たという女性に話を聞くと「どれだけ買うかは商品(真珠の質や値段)次第。見て回らなきゃいけないからもういい?」と、足早に立ち去られた。

真珠を品定めする女性バイヤー=1日、湾仔(NNA撮影)

覚田真珠(三重県伊勢市)の社長でJPEAの理事長を務める覚田譲治氏はNNAに対し、4年前の前回に比べ「バイヤーが前のめりだ」とコメント。栄光真珠(津市)の大神直高社長(JPEA理事)は、バイヤーの数も多いと指摘した上で「しばらく対面で買い付けできていなかったからではないか」と話した。
■コロナで一時は輸出激減
真珠は日本の主要な輸出海産物だ。売買の拠点は香港で、21年には日本の真珠輸出額の73%を香港が占めた。
日本の真珠輸出額は19年まで5年連続で300億円を超えていたが、新型コロナウイルスの流行で見本市が開催されなくなったことなどから、20年に前年比76.9%減の76億円へと激減した。その後、それまでの見本市で信頼関係が築かれていた本土のバイヤーと日本企業との間で交流サイト(SNS)を通じた取引が徐々に勃興。輸出額は21年に170億8,000万円、22年には237億5,300万円へと回復した。
覚田氏によると、SNS「微信(ウィーチャット)」などでの取引が増え、この1年は中国のバイヤーが日本に来ることも可能になったため、販売はほぼコロナ前の状態に回復している。だがそれでも同氏は、見本市は業界にとって重要な存在だと指摘する。実際に商品を見てもらえば「商談が決まりやすい」ほか、バイヤーとの出会いの場であり、信頼関係を築く場でもあるからだ。
日本政府は真珠を「輸出重点品目」の一つに指定し、25年に輸出額379億円を目指している。コロナ流行初期は苦境を強いられた真珠業界だが、昨年以降は各国で水際対策が徐々に廃止され、香港での大規模見本市もやっと再開にこぎ着けたことから、輸出拡大に期待をかけている。
■完全正常化アピール
今回の見本市は、香港政府がコロナ対策のマスク着用義務を廃止した初日と開幕日が重なった。
開幕式では、卓永興・政務副長官ら約30人の登壇者全員がノーマスクで登場し乾杯。卓氏は「この見本市は香港に国際市場が戻ってきた象徴となる」とあいさつし、香港の完全正常化をアピールした。
ジュエリーショーとダイヤモンド・ジェム&パールショーは5日まで。合わせて36カ国・地域から2,500社以上が出展、70カ国・地域からバイヤーが訪れるという。

開幕式では登壇者らがノーマスクで乾杯。香港の正常化をアピールした=1日、湾仔(NNA撮影)
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■その場で現金購入
初日の1日は午前10時半の開場直後からパビリオン内の大部分のブースに人だかりができた。そこかしこから普通語(北京語を基礎とする中国の共通語)が聞こえてきた。
ジェトロ香港事務所の山崎裕介・市場開拓部部長によると、同見本市ではバイヤーが真珠の現物を見極め、その場で現金購入するのが常だ。初日の午前中に各ブースを回って品定めし、午後に目当ての品の交渉をして購入していくバイヤーが多いという。
「いい品は初日のうちに売れてしまう」(業界関係者)という危機感と、本土のバイヤーが香港を訪れるのも4年ぶりであるためか、多くのバイヤーがせわしなく複数のブースを行き来していた。日本の真珠を目当てに中国浙江省から買い付けに来たという女性に話を聞くと「どれだけ買うかは商品(真珠の質や値段)次第。見て回らなきゃいけないからもういい?」と、足早に立ち去られた。
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覚田真珠(三重県伊勢市)の社長でJPEAの理事長を務める覚田譲治氏はNNAに対し、4年前の前回に比べ「バイヤーが前のめりだ」とコメント。栄光真珠(津市)の大神直高社長(JPEA理事)は、バイヤーの数も多いと指摘した上で「しばらく対面で買い付けできていなかったからではないか」と話した。
■コロナで一時は輸出激減
真珠は日本の主要な輸出海産物だ。売買の拠点は香港で、21年には日本の真珠輸出額の73%を香港が占めた。
日本の真珠輸出額は19年まで5年連続で300億円を超えていたが、新型コロナウイルスの流行で見本市が開催されなくなったことなどから、20年に前年比76.9%減の76億円へと激減した。その後、それまでの見本市で信頼関係が築かれていた本土のバイヤーと日本企業との間で交流サイト(SNS)を通じた取引が徐々に勃興。輸出額は21年に170億8,000万円、22年には237億5,300万円へと回復した。
覚田氏によると、SNS「微信(ウィーチャット)」などでの取引が増え、この1年は中国のバイヤーが日本に来ることも可能になったため、販売はほぼコロナ前の状態に回復している。だがそれでも同氏は、見本市は業界にとって重要な存在だと指摘する。実際に商品を見てもらえば「商談が決まりやすい」ほか、バイヤーとの出会いの場であり、信頼関係を築く場でもあるからだ。
日本政府は真珠を「輸出重点品目」の一つに指定し、25年に輸出額379億円を目指している。コロナ流行初期は苦境を強いられた真珠業界だが、昨年以降は各国で水際対策が徐々に廃止され、香港での大規模見本市もやっと再開にこぎ着けたことから、輸出拡大に期待をかけている。
■完全正常化アピール
今回の見本市は、香港政府がコロナ対策のマスク着用義務を廃止した初日と開幕日が重なった。
開幕式では、卓永興・政務副長官ら約30人の登壇者全員がノーマスクで登場し乾杯。卓氏は「この見本市は香港に国際市場が戻ってきた象徴となる」とあいさつし、香港の完全正常化をアピールした。
ジュエリーショーとダイヤモンド・ジェム&パールショーは5日まで。合わせて36カ国・地域から2,500社以上が出展、70カ国・地域からバイヤーが訪れるという。
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