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特定技能、10万人迫る前年比85%増、全体の6割弱に

外国人の就労拡大のための在留資格「特定技能1号」で日本に滞在するベトナム人が6月末時点で9万7,000人余りに達し、1年前から85%増加した。同資格で日本に在留する外国人全体に占めるベトナム人の比率は56%で、出身国・地域別で最大だった。産業分野別では食料品製造や産業機械、電気電子などが6万人余りを占め、日本のものづくりで特定技能のベトナム人労働者の役割が高まっていることが浮き彫りになった。
特定技能資格は日本国内の人手不足解消を目的に2019年4月に導入された。政府は導入5年で最大約34万5,000人の受け入れを想定していた。出入国在留管理庁の統計によれば、4年3カ月たった今年6月末時点での在留者は17万3,000人と半数にとどまるが、コロナ後の入国規制の緩和に伴い足元の在留者は急増している。
人材派遣などのウィルグループ傘下のウィルオブ・ワーク(東京都新宿区)の相川一人ファクトリーアウトソーシング事業部長は「特定技能のベトナム人は順調に増えている」と話す。円安の進行でベトナム人労働者の本国への仕送り額は目減りしているが、現時点では日本での所得はまだ魅力的だという。
ベトナム人のシェアは前年から4ポイント低下し、56%となった。相川氏は原因として、コロナ禍で技能実習生の入国が大幅に制限された影響を挙げる。特定技能1号のベトナム人のうち、技能実習の修了者が75%を占める。3年以上の実習期間修了後は特定技能資格の取得に必要な試験が免除されるためだ。ただ、入国制限が始まった20年前半に実習を開始したベトナム人は極端に少ないため、今年3年目を迎える実習生が減ったことがシェア低下につながった。
ベトナム人に次いで1号の在留者が多いのはインドネシア人の2万5,000人、フィリピン人の1万8,000人で、それぞれ前年の2.7倍と2倍に急増した。
■食品製造、最多の3.8万人
全部で12ある産業分野別では、「飲食料品製造業」に就労する特定技能1号のベトナム人は前年比74%増の3万8,000人で最多だった。同分野の特定技能1号のうちベトナム人は71%を占める。求められる日本語能力が比較的高くない菓子パンや総菜などの製造現場をベトナム人労働者が支えている構図がうかがえる。
次いでベトナム人が多いのは「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」で、96%増の2万3,000人となり、同分野全体の65%を占めた。続く建設は1万3,000人で、前年から2.1倍に増えた。建設業全体に占めるベトナム人の割合は68%だった。
■永住可能「2号」の対象も拡大
相川氏は、今後もベトナム人の就労は増えると予想している。ベトナム人の受け入れ態勢が整っている職場は「先輩が新たに入国した後輩に仕事を教える」サイクルができ上がっており、帰国後に日本で再び就業することを望む元実習生も多いという。
特定技能の外国人の人材紹介を手がける同社は、幅広い業種で事業の拡大を見込む。ベトナム側の送り出し機関などと協力し、日本での就業にかかる手続き費用などの本人負担を軽減させることに力を入れているという。
今後は、熟練労働者として永住や家族の帯同が可能になる在留資格「特定技能2号」によるベトナム人在留者の増加が見込まれる。従来は建設と造船・舶用工業の2分野のみで資格の取得が可能だったが、その他の9分野でも8月31日から2号の取得ができるようになった。ただし、飲食料品製造業や外食分野での2号の取得は職場での指導経験が求められており、受け入れ企業としてもベトナム人労働者のキャリアプランに合わせた育成が必要となる。
6月末時点での2号資格の保有者は建設分野での12人にとどまる。うち7人が中国人で、5人がベトナム人だった。
特定技能を受け入れる産業分野の拡大も予想される。国土交通省は、タクシーやバス、トラックの運転手確保に向けて特定技能の対象に「自動車運送業」を追加する検討を進めているとされる。資格取得に求める日本語能力や、自動車の「二種免許」制度との整合性などが制度設計の焦点になるとみられる。
政府の有識者会議は、人権侵害などで批判を受けている技能実習制度を廃止し、新たな制度を創設する方針を打ち出している。新制度は、外国人が長期に就労できるよう特定技能と職種をそろえて円滑な移行を目指すとされる。新たな制度が定める入国要件や手続き、待遇の枠組みなどが、特定技能の在留者数の伸びを左右することになるとみられる。

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人材派遣などのウィルグループ傘下のウィルオブ・ワーク(東京都新宿区)の相川一人ファクトリーアウトソーシング事業部長は「特定技能のベトナム人は順調に増えている」と話す。円安の進行でベトナム人労働者の本国への仕送り額は目減りしているが、現時点では日本での所得はまだ魅力的だという。
ベトナム人のシェアは前年から4ポイント低下し、56%となった。相川氏は原因として、コロナ禍で技能実習生の入国が大幅に制限された影響を挙げる。特定技能1号のベトナム人のうち、技能実習の修了者が75%を占める。3年以上の実習期間修了後は特定技能資格の取得に必要な試験が免除されるためだ。ただ、入国制限が始まった20年前半に実習を開始したベトナム人は極端に少ないため、今年3年目を迎える実習生が減ったことがシェア低下につながった。
ベトナム人に次いで1号の在留者が多いのはインドネシア人の2万5,000人、フィリピン人の1万8,000人で、それぞれ前年の2.7倍と2倍に急増した。
■食品製造、最多の3.8万人
全部で12ある産業分野別では、「飲食料品製造業」に就労する特定技能1号のベトナム人は前年比74%増の3万8,000人で最多だった。同分野の特定技能1号のうちベトナム人は71%を占める。求められる日本語能力が比較的高くない菓子パンや総菜などの製造現場をベトナム人労働者が支えている構図がうかがえる。
次いでベトナム人が多いのは「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」で、96%増の2万3,000人となり、同分野全体の65%を占めた。続く建設は1万3,000人で、前年から2.1倍に増えた。建設業全体に占めるベトナム人の割合は68%だった。
■永住可能「2号」の対象も拡大
相川氏は、今後もベトナム人の就労は増えると予想している。ベトナム人の受け入れ態勢が整っている職場は「先輩が新たに入国した後輩に仕事を教える」サイクルができ上がっており、帰国後に日本で再び就業することを望む元実習生も多いという。
特定技能の外国人の人材紹介を手がける同社は、幅広い業種で事業の拡大を見込む。ベトナム側の送り出し機関などと協力し、日本での就業にかかる手続き費用などの本人負担を軽減させることに力を入れているという。
今後は、熟練労働者として永住や家族の帯同が可能になる在留資格「特定技能2号」によるベトナム人在留者の増加が見込まれる。従来は建設と造船・舶用工業の2分野のみで資格の取得が可能だったが、その他の9分野でも8月31日から2号の取得ができるようになった。ただし、飲食料品製造業や外食分野での2号の取得は職場での指導経験が求められており、受け入れ企業としてもベトナム人労働者のキャリアプランに合わせた育成が必要となる。
6月末時点での2号資格の保有者は建設分野での12人にとどまる。うち7人が中国人で、5人がベトナム人だった。
特定技能を受け入れる産業分野の拡大も予想される。国土交通省は、タクシーやバス、トラックの運転手確保に向けて特定技能の対象に「自動車運送業」を追加する検討を進めているとされる。資格取得に求める日本語能力や、自動車の「二種免許」制度との整合性などが制度設計の焦点になるとみられる。
政府の有識者会議は、人権侵害などで批判を受けている技能実習制度を廃止し、新たな制度を創設する方針を打ち出している。新制度は、外国人が長期に就労できるよう特定技能と職種をそろえて円滑な移行を目指すとされる。新たな制度が定める入国要件や手続き、待遇の枠組みなどが、特定技能の在留者数の伸びを左右することになるとみられる。
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