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【アジア・ユニークビジネス列伝】「ペットボトルでバス乗車」「おりの中のティータイム」

それを売るのか、そんなサービスがあるのか。アジアでは思いもよらない商品やサービスに出会う。現地ならではのユニークなビジネスから今回は、使用済みペットボトルを運賃代わりに乗車できる公共バスと、動物園のおりの中に開店したカフェを紹介する。
【インドネシア】公共バスの乗車料金、ペットボトルで払う

スロボヨバスは、独メルセデス・ベンツ製(20台)とスウェーデン商用車大手スカニア製(8台)のカスタマイズで、バリアフリーデザインとなっている=インドネシア・東ジャワ州スラバヤ市(NNA撮影)

インドネシアの東ジャワ州スラバヤ市に、運賃を支払う代わりに使用済みペットボトルを渡すことで乗車できる公共バスがある。公共交通機関を活用して廃プラスチックを集め、リサイクル促進や環境意識の向上につながるとして導入された。開始から5年を経て、専用アプリを用いた乗車が可能になるなど利便性を高めながら、市民の足として定着している。
名称は「スロボヨバス」。ジャワ語でスラバヤを意味する「スロボヨ」が由来で、2018年4月に運行を開始。新しいリサイクル制度として注目を集めた。
指定のバスターミナルや資源ごみを買い取る「ごみ銀行」など市内12カ所で、スロボヨバス用のペットボトル回収を受け付ける。市民が指定量を引き渡すと、運賃代わりとなるポイントが専用アプリから付与される。
1ポイントで2時間の乗車が可能。1ポイント得るためのペットボトルの量は、1~1.5リットルのボトルで3本、500~600ミリリットルで5本。500ミリリットル以下のプラスチック製カップの場合は10個。
以前は、バス内でペットボトルを直接引き渡すことでも乗車できたが「車内で臭いがする」「確認作業の時間が長い」といった声を受け、22年5月に廃止となった。また、バスを運行するスラバヤ市運輸局によると、以前は紙の乗車カードを利用していたが、22年1月から現在の専用アプリによる乗車を導入した。
21年8月からはペットボトルとの交換に加え、ICチップ付き電子マネーカードや「OVO(オボ)」などのキャッシュレス決済による乗車も可能となった。運賃は大人5,000ルピア(約48円)、学生2,500ルピアに設定。市運輸局によると、現金は係員が着服する可能性もあり、正確に徴収するためにもキャッシュレス決済のみを導入したという。
利用者のアウリア・ララサティさんは「自分も含め周りの友人たちもマイボトルやタンブラーを持ち歩いており、ペットボトルをそこまで消費しない。電子マネーなどで支払えることで気軽に乗りやすくなったと思う」と話した。
■回収後は歳入に、日常の利用進む
市民から集めたペットボトルは、リサイクル業者が参加する入札にかけて地方政府の歳入としている。
今年1~4月のスロボヨバスの1日平均乗客数は約5,000人と、18年の約1,900人から増加。電子マネー決済の導入もあり、22年は前年比74%増の約161万人と過去最多を記録した。体験的に乗車する傾向から、日常的な利用へと変わってきた。
18年の運行開始イベントで乗車した主婦のカリナ・ラフマワティさん(45)は、5年間利用を続けている。「この5年で乗車カードはアプリになり、バスの中の容器交換がなくなるなど、いくつかの変化があり、年々快適になっていると感じる。これからもペットボトルでためたポイントで乗車を続ける」と話した。【上村夏美】

バスターミナルなど市内12カ所の施設にペットボトルを持ち込むと、係員から専用アプリを通して乗車用のポイントがもらえる=インドネシア・東ジャワ州スラバヤ市(NNA撮影)

バス内には係員が常駐。乗車の際は専用アプリのQRコードをスキャンしてもらい、ペットボトルでためたポイントを使うか、電子マネーカードなどから料金を支払う=インドネシア・東ジャワ州スラバヤ市(NNA撮影)

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【台湾】おりで味わうティータイム、チンパンジー舎がカフェに

高雄市の寿山動物園に、チンパンジー舎を改造したカフェがオープンした(同動物園提供)

台湾の南部・高雄市の寿山動物園はこのほど、チンパンジー舎を改造したカフェ「光室カヒ(カ=口へんに加、ヒ=口へんに非)」をオープンした。チンパンジー舎のおりを活用しており、利用者はおりの中にいる気分が味わえる。
陳其邁・高雄市長は開幕式典で「(利用者は)動物の気持ちをより理解することができ、動物保護の意識も養うことができる」とアピールした。
光室カヒの運営会社によると、カフェは「光と影」を重視して設計。訪れる時間によって異なる雰囲気を楽しめるという。
寿山動物園は2021年8月から動物福祉の向上を目的とした大規模な改装を実施。そのうちの最後のプロジェクトとして光室カヒが開店した。
寿山動物園は夏休み期間中、毎週土曜と日曜の開園時間を午後6時30分まで延長。12歳以下は入園無料としている。

濃厚なめんたいこホワイトソースのパスタ、タイ風で甘酸っぱい味付けのフライドチキンライス、フレッシュミルクティーなど豊富な食事メニュー(公式フェイスブックより)

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※アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2023年9月号<https://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。

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指定のバスターミナルや資源ごみを買い取る「ごみ銀行」など市内12カ所で、スロボヨバス用のペットボトル回収を受け付ける。市民が指定量を引き渡すと、運賃代わりとなるポイントが専用アプリから付与される。
1ポイントで2時間の乗車が可能。1ポイント得るためのペットボトルの量は、1~1.5リットルのボトルで3本、500~600ミリリットルで5本。500ミリリットル以下のプラスチック製カップの場合は10個。
以前は、バス内でペットボトルを直接引き渡すことでも乗車できたが「車内で臭いがする」「確認作業の時間が長い」といった声を受け、22年5月に廃止となった。また、バスを運行するスラバヤ市運輸局によると、以前は紙の乗車カードを利用していたが、22年1月から現在の専用アプリによる乗車を導入した。
21年8月からはペットボトルとの交換に加え、ICチップ付き電子マネーカードや「OVO(オボ)」などのキャッシュレス決済による乗車も可能となった。運賃は大人5,000ルピア(約48円)、学生2,500ルピアに設定。市運輸局によると、現金は係員が着服する可能性もあり、正確に徴収するためにもキャッシュレス決済のみを導入したという。
利用者のアウリア・ララサティさんは「自分も含め周りの友人たちもマイボトルやタンブラーを持ち歩いており、ペットボトルをそこまで消費しない。電子マネーなどで支払えることで気軽に乗りやすくなったと思う」と話した。
■回収後は歳入に、日常の利用進む
市民から集めたペットボトルは、リサイクル業者が参加する入札にかけて地方政府の歳入としている。
今年1~4月のスロボヨバスの1日平均乗客数は約5,000人と、18年の約1,900人から増加。電子マネー決済の導入もあり、22年は前年比74%増の約161万人と過去最多を記録した。体験的に乗車する傾向から、日常的な利用へと変わってきた。
18年の運行開始イベントで乗車した主婦のカリナ・ラフマワティさん(45)は、5年間利用を続けている。「この5年で乗車カードはアプリになり、バスの中の容器交換がなくなるなど、いくつかの変化があり、年々快適になっていると感じる。これからもペットボトルでためたポイントで乗車を続ける」と話した。【上村夏美】
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【台湾】おりで味わうティータイム、チンパンジー舎がカフェに
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台湾の南部・高雄市の寿山動物園はこのほど、チンパンジー舎を改造したカフェ「光室カヒ(カ=口へんに加、ヒ=口へんに非)」をオープンした。チンパンジー舎のおりを活用しており、利用者はおりの中にいる気分が味わえる。
陳其邁・高雄市長は開幕式典で「(利用者は)動物の気持ちをより理解することができ、動物保護の意識も養うことができる」とアピールした。
光室カヒの運営会社によると、カフェは「光と影」を重視して設計。訪れる時間によって異なる雰囲気を楽しめるという。
寿山動物園は2021年8月から動物福祉の向上を目的とした大規模な改装を実施。そのうちの最後のプロジェクトとして光室カヒが開店した。
寿山動物園は夏休み期間中、毎週土曜と日曜の開園時間を午後6時30分まで延長。12歳以下は入園無料としている。
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