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【日本の税務】海外派遣従業員の労災保険適用について

第303回

坂井さん:みらいさん、こんにちは。私の会社で、従業員に海外の現地法人へ出向してもらおうと考えています。勤務が国内であれば従業員が仕事でケガをしたら労災保険が使えますが、海外で勤務している場合にも同じように使えるのでしょうか。

みらい:労災保険は、本来、国内にある事業場に適用され、そこで就労する労働者が給付の対象となる制度です。そのため海外の事業場で就労する方は対象となりません。通常は、派遣先の国の災害補償制度の対象となりますが、外国の制度が必ずしも十分でない場合もあります。そのため、海外派遣者についても労災保険の給付が受けられる、労災保険の特別加入という制度があります。今回のように日本国内の事業場から、長期にわたって現地に派遣される場合は労災保険に特別加入することができます。

坂井さん:特別加入という制度があるのですね。特別加入すると、どんな場合に補償されるのでしょうか。

みらい:国内の労働者の場合と同様に、仕事中や通勤中のケガに労災保険が使えることになります。休日の観光中のケガなどは対象外です。

坂井さん:補償範囲は国内の場合と同じということですね。補償の内容や手続きの流れも教えてください。海外だと治療費が高額になることもあるかもしれないので心配です。

みらい:基本的には国内と同様です。病院において受けた治療について、必要な治療であれば無料で受けることができます。なお保険料については、特別加入を行う方の所得水準に合わせて、給付基礎日額を選択して申請することになります。この給付基礎日額とは、労災保険の給付額を算定する基礎となるものです。例えば、休業した際に支給される休業(補償)給付は給付基礎日額を基礎として支給されます。また、保険給付の請求手続きは基本的に国内の場合と同様に派遣元の事業主を通じて行います。その際に、業務災害の発生状況などに関する資料として派遣先の事業主の証明書を添付する必要があり、これらの書類が外国語で書かれている場合は、日本語に翻訳したものが必要になります。

坂井さん:保険の内容や請求についてもあらかじめ理解しておくと、何かあった時も安心ですね。日本での申請となるため、ケガをした場合は本社へ報告するよう従業員に伝えておきます。今後は国内の従業員にも海外での経験を積んでもらいたいと考えており、海外出張も増えそうです。海外出張者も労災保険の適用には特別加入が必要でしょうか。

みらい:海外出張者に関しては特別加入の制度ではなく、国内の事業場の労災保険により給付を受けられます。海外出張者とは、単に労働の提供の場が海外にあるに過ぎず、国内の事業場に所属し、その事業場の使用者の指揮に従って勤務する人のことです。例えば商談や打ち合わせ、市場調査や視察、現地での突発的なトラブル対処やアフターサービスの一環として現地へ赴く場合のほか、技術習得等のための場合も海外出張の例として挙げられます。

坂井さん:海外派遣と海外出張で取り扱いに違いがあるということですね。早速、社内で検討してみようと思います。どうもありがとうございました。

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みらい:労災保険は、本来、国内にある事業場に適用され、そこで就労する労働者が給付の対象となる制度です。そのため海外の事業場で就労する方は対象となりません。通常は、派遣先の国の災害補償制度の対象となりますが、外国の制度が必ずしも十分でない場合もあります。そのため、海外派遣者についても労災保険の給付が受けられる、労災保険の特別加入という制度があります。今回のように日本国内の事業場から、長期にわたって現地に派遣される場合は労災保険に特別加入することができます。

坂井さん:特別加入という制度があるのですね。特別加入すると、どんな場合に補償されるのでしょうか。

みらい:国内の労働者の場合と同様に、仕事中や通勤中のケガに労災保険が使えることになります。休日の観光中のケガなどは対象外です。

坂井さん:補償範囲は国内の場合と同じということですね。補償の内容や手続きの流れも教えてください。海外だと治療費が高額になることもあるかもしれないので心配です。

みらい:基本的には国内と同様です。病院において受けた治療について、必要な治療であれば無料で受けることができます。なお保険料については、特別加入を行う方の所得水準に合わせて、給付基礎日額を選択して申請することになります。この給付基礎日額とは、労災保険の給付額を算定する基礎となるものです。例えば、休業した際に支給される休業(補償)給付は給付基礎日額を基礎として支給されます。また、保険給付の請求手続きは基本的に国内の場合と同様に派遣元の事業主を通じて行います。その際に、業務災害の発生状況などに関する資料として派遣先の事業主の証明書を添付する必要があり、これらの書類が外国語で書かれている場合は、日本語に翻訳したものが必要になります。

坂井さん:保険の内容や請求についてもあらかじめ理解しておくと、何かあった時も安心ですね。日本での申請となるため、ケガをした場合は本社へ報告するよう従業員に伝えておきます。今後は国内の従業員にも海外での経験を積んでもらいたいと考えており、海外出張も増えそうです。海外出張者も労災保険の適用には特別加入が必要でしょうか。

みらい:海外出張者に関しては特別加入の制度ではなく、国内の事業場の労災保険により給付を受けられます。海外出張者とは、単に労働の提供の場が海外にあるに過ぎず、国内の事業場に所属し、その事業場の使用者の指揮に従って勤務する人のことです。例えば商談や打ち合わせ、市場調査や視察、現地での突発的なトラブル対処やアフターサービスの一環として現地へ赴く場合のほか、技術習得等のための場合も海外出張の例として挙げられます。

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 みらいコンサルティンググループ
ミライ コンサルティング グループ みらいコンサルティンググループ
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みらいコンサルティング(旧中央青山PwCコンサルティング)は、グループに監査法人、税理士法人、社会保険労務士法人、各種事業会社を持つ総勢約300名の総合コンサルティングファーム。国内には東京本社のほか10都市に支社を展開。海外には中国(北京・上海・深セン)、シンガポール、タイ(バンコク)、ベトナム(ホーチミン・ハノイ)、マレーシア(クアラルンプール)に子会社を設立、現地にて日系企業の海外展開におけるビジネスコンサルティングを提供している。

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