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日系、HV中心に巻き返しへ「モーターエキスポ2023」開幕

タイの首都バンコク近郊で30日、自動車展示・販売会「第40回タイ国際モーターエキスポ2023」が開幕した。タイでは中国勢を中心にバッテリー式電気自動車(BEV)が自動車市場を席巻するなか、日系各社は自社が培ってきた技術を搭載したモデルを訴求し、新型のハイブリッド車(HV)やピックアップトラックでシェアを奪い返す意気込みを見せた。

タイの首都バンコク近郊で自動車展示・販売会「第40回タイ国際モーターエキスポ2023」が開幕した=29日(NNA撮影)

タイ国トヨタ自動車(TMT)が集計しているタイの新車販売台数では2019~22年通年の日本車のシェアは85%以上を誇っていたが、23年1~9月の実績では79%にまで減った。運輸省陸運局の新車登録台数のデータでは、今年1~10月に登録されたBEVは5万7,623台。登録台数全体では1割ほどに過ぎないとはいえ、このうち82%を中国系が占め、テスラやドイツの高級車メーカーなど欧米系が17%を占める。日系のシェアは、1%に満たない。タイ国内でのBEV販売の増加が一時的なブームにとどまるのか、市場を大きく変化させる「地殻変動」になるのか。在タイ日系メーカーは、変化する市場にあって自社の技術とモデルを訴求した。
TMTの山下典昭社長は「カーボンニュートラル(炭素中立)に向けて、全ての技術を投入していく」とあいさつ。同社はタイでハイブリッド車(HV)の第1弾となるセダン「カムリ」を09年に投入し、17万台以上のHVを販売した。今後も「ハイブリッド車を中心に二酸化炭素(CO2)削減に貢献していく」方針という。TMTは27日に新興国向け戦略車「IMV」シリーズのピックアップトラック「ハイラックスチャンプ」を発表。山下氏は「単なる新車の発売ではなく、タイの消費者とともに歩むモデルを投入した」とし、「手ごろな価格でカスタマイズできる」点をアピールしていくと説明した。毎月1,500台の販売を目標に掲げている。山下氏はピックアップトラック「ハイラックスREVO(レボ)」のBEV版について「(バンコク東郊サムットプラカン県の)サムロン工場の既存ラインで少量生産を開始している」と説明。初のBEV版ピックアップになることで、来年2月からは東部のパタヤで実証実験を開始するとした。

トヨタは27日に発表したピックアップ「ハイラックスチャンプ」を中心に展示した=29日、タイ・バンコク近郊(NNA撮影)

ホンダオートモービル(タイランド)は、同社のハイブリッドシステム「e:HEV」を搭載したモデルを前面に押し出した。会場では、セダンの「アコード」や「シティ」、スポーツタイプ多目的車(SUV)「CR—V」といったロングセラーモデルの新型を展示。同社の川坂英生社長は「タイではハイブリッド車の需要が根付いている」とし、一層の掘り起こしを進めていく考えを示した。ホンダは東部プラチンブリ県の工場で年内にもEVの生産を開始するとしているが、生産台数など詳細についてはコメントを控えた。タイでは24年から新たなEV普及策「EV3.5」が実施される見通しだが、この点について川坂氏は「ホンダにとってどのようなメリットがあるかを踏まえ、検討していく」と話した。

ホンダは同社のハイブリッドシステム「e:HEV」を搭載したモデルを前面に押し出した=29日、タイ・バンコク近郊(NNA撮影)

■日産は「e—POWER」に手応え
タイ日産自動車(NMT)は独自のハイブリッド技術「e—POWER(イーパワー)」を搭載したSUV「キックス」や「TERRA」を中心に展示した。「イーパワー」は充電器を使用せずに100%電気で走行が可能。日産自動車アジアパシフィックの關口勲社長は「イーパワーはガソリン車よりも燃費が良く、渋滞時の燃費を抑えることができるなど特に街乗りに向いている」とし、「バンコクやマニラなど渋滞がひどいアジアの都市で人気がある」と説明した。タイでは「キックスe—POWER」を20年8月に発売し、毎月500台前後が売れているという。発売当初は新技術に対する消費者の反応は薄かったものの、近年はEVが増えて消費者の理解度が高まっていることで、今後の販売増に期待を寄せているという。
同社は「キックスe—POWER」や「TERRA」、「アルメーラ」などをタイで生産している。BEVでは日本で生産した「リーフ」を販売しているが、輸入関税が20%かかることで価格競争力を発揮できていない実情があるという。
■いすゞと三菱自はピックアップ訴求
タイでシェア2位のいすゞは、10月に発売したピックアップトラック「D—MAX」と、乗用ピックアップ(PPV)「MU—X」を合計15モデル展示。価格は65万~126万4,000バーツ(約276万~537万円)になる。トリペッチいすゞセールスの波多隆社長は「D—MAXの新型を発売したことで、タイでトップのピックアップトラックのブランドとしての地位をより強固にした」とコメントした。
ミツビシ・モーターズ・タイランド(MMTh)は、ピックアップ「トライトン」の新モデル「アスリート」を発表。同モデルはタイで来年3月に発売予定となる。会場では「ダブルキャブウルトラ4WD AT」など発売済みを含む「トライトン」の全21モデルを展示した。会場では展示を「仕事」「趣味」「ライフスタイル」に分け、「トライトン」をはじめとする三菱自動車の各モデルが生活のさまざまな場面で活躍できることを発信した。12月にMMThの社長に就任する稲葉亮一エグゼクティブ・バイスプレジデントは「トライトンのフルラインアップが出そろった。ここからピックアップ市場に刺激を与えていきたい」とコメント。タイ国内の1トンピックアップ市場は、今年1~10月の販売数が前年同期比26%減と低迷が続いているが、新モデルの投入でシェア拡大を目指す考えだ。
第40回タイ国際モーターエキスポ2023は、12月11日までバンコク北郊ノンタブリ県の展示会場「インパクト」で開催されている。自動車メーカー40社、バイクメーカー23社が出展。イベント主催者は、期間中の成約台数が昨年の約3万7,000件を上回ると予想している。

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TMTの山下典昭社長は「カーボンニュートラル(炭素中立)に向けて、全ての技術を投入していく」とあいさつ。同社はタイでハイブリッド車(HV)の第1弾となるセダン「カムリ」を09年に投入し、17万台以上のHVを販売した。今後も「ハイブリッド車を中心に二酸化炭素(CO2)削減に貢献していく」方針という。TMTは27日に新興国向け戦略車「IMV」シリーズのピックアップトラック「ハイラックスチャンプ」を発表。山下氏は「単なる新車の発売ではなく、タイの消費者とともに歩むモデルを投入した」とし、「手ごろな価格でカスタマイズできる」点をアピールしていくと説明した。毎月1,500台の販売を目標に掲げている。山下氏はピックアップトラック「ハイラックスREVO(レボ)」のBEV版について「(バンコク東郊サムットプラカン県の)サムロン工場の既存ラインで少量生産を開始している」と説明。初のBEV版ピックアップになることで、来年2月からは東部のパタヤで実証実験を開始するとした。[caption id="attachment_16933" align="aligncenter" width="620"]トヨタは27日に発表したピックアップ「ハイラックスチャンプ」を中心に展示した=29日、タイ・バンコク近郊(NNA撮影)[/caption]
ホンダオートモービル(タイランド)は、同社のハイブリッドシステム「e:HEV」を搭載したモデルを前面に押し出した。会場では、セダンの「アコード」や「シティ」、スポーツタイプ多目的車(SUV)「CR—V」といったロングセラーモデルの新型を展示。同社の川坂英生社長は「タイではハイブリッド車の需要が根付いている」とし、一層の掘り起こしを進めていく考えを示した。ホンダは東部プラチンブリ県の工場で年内にもEVの生産を開始するとしているが、生産台数など詳細についてはコメントを控えた。タイでは24年から新たなEV普及策「EV3.5」が実施される見通しだが、この点について川坂氏は「ホンダにとってどのようなメリットがあるかを踏まえ、検討していく」と話した。
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■日産は「e—POWER」に手応え
タイ日産自動車(NMT)は独自のハイブリッド技術「e—POWER(イーパワー)」を搭載したSUV「キックス」や「TERRA」を中心に展示した。「イーパワー」は充電器を使用せずに100%電気で走行が可能。日産自動車アジアパシフィックの關口勲社長は「イーパワーはガソリン車よりも燃費が良く、渋滞時の燃費を抑えることができるなど特に街乗りに向いている」とし、「バンコクやマニラなど渋滞がひどいアジアの都市で人気がある」と説明した。タイでは「キックスe—POWER」を20年8月に発売し、毎月500台前後が売れているという。発売当初は新技術に対する消費者の反応は薄かったものの、近年はEVが増えて消費者の理解度が高まっていることで、今後の販売増に期待を寄せているという。
同社は「キックスe—POWER」や「TERRA」、「アルメーラ」などをタイで生産している。BEVでは日本で生産した「リーフ」を販売しているが、輸入関税が20%かかることで価格競争力を発揮できていない実情があるという。
■いすゞと三菱自はピックアップ訴求
タイでシェア2位のいすゞは、10月に発売したピックアップトラック「D—MAX」と、乗用ピックアップ(PPV)「MU—X」を合計15モデル展示。価格は65万~126万4,000バーツ(約276万~537万円)になる。トリペッチいすゞセールスの波多隆社長は「D—MAXの新型を発売したことで、タイでトップのピックアップトラックのブランドとしての地位をより強固にした」とコメントした。
ミツビシ・モーターズ・タイランド(MMTh)は、ピックアップ「トライトン」の新モデル「アスリート」を発表。同モデルはタイで来年3月に発売予定となる。会場では「ダブルキャブウルトラ4WD AT」など発売済みを含む「トライトン」の全21モデルを展示した。会場では展示を「仕事」「趣味」「ライフスタイル」に分け、「トライトン」をはじめとする三菱自動車の各モデルが生活のさまざまな場面で活躍できることを発信した。12月にMMThの社長に就任する稲葉亮一エグゼクティブ・バイスプレジデントは「トライトンのフルラインアップが出そろった。ここからピックアップ市場に刺激を与えていきたい」とコメント。タイ国内の1トンピックアップ市場は、今年1~10月の販売数が前年同期比26%減と低迷が続いているが、新モデルの投入でシェア拡大を目指す考えだ。
第40回タイ国際モーターエキスポ2023は、12月11日までバンコク北郊ノンタブリ県の展示会場「インパクト」で開催されている。自動車メーカー40社、バイクメーカー23社が出展。イベント主催者は、期間中の成約台数が昨年の約3万7,000件を上回ると予想している。
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