ベトナム政府が計画策定を進める南北高速鉄道(首都ハノイ—南部ホーチミン市)について、同鉄道常設運営委員会委員長のチャン・ホン・ハー副首相は、設計速度を時速350キロメートルとして政府案を取りまとめるよう指示した。ハー氏は今月開いた委員会で、共産党政治局が今年2月に発出した結論を基に「南北高速鉄道は世界の開発トレンドと整合性を取る必要がある」と述べ、時速350キロを前提に詳細な投資額を算定するよう求めた。
ベトナム政府が先進国入りの命運をかける南北高速鉄道は、設計速度を時速350キロメートルとする方向が強まっている(政府公式サイトから)
南北高速鉄道については運輸省が先月、政府に投資計画案を提出したが、最高時速については、350キロにして貨客兼用か旅客専用とする2つの選択肢と、貨客兼用を前提に最高時速を200~250キロに抑える選択肢の計3案を示した。政府や国会の一部には時速を200キロ超にして建設・運営費を抑制すべきだとの意見があったためで、政府上層部の政治判断に委ねていた。
首相府が4日に公表した政府官房通知502号(502/TB—VPCP)によると、ハー副首相は運輸省からの投資計画提出を受けて今月開いた南北高速鉄道運営委員会で、設計速度は350キロとし、「国の南北を接続する中軸の役割を果たす」ことと同時に、「既存の鉄道の効果的な開発」を念頭に置くことを指示した。
運輸省が投資計画案で示した時速350キロ案の2つの選択肢のうち、第1案は南北高速鉄道を旅客専用として建設する一方、現在の南北統一鉄道(ハノイ—ホーチミン市)を貨物、観光、近距離旅客輸送用に改良する内容だった。第1案の総投資額は673億2,000万米ドル(約9兆9,046億円)で、南北高速鉄道を貨客兼用とし、貨物用の改良工事を加える場合の投資額より43億7,000万米ドル低く抑えられる。ハー氏は南北高速鉄道を旅客専用にし、南北統一鉄道と併用する案が有力と判断している可能性が高い。
世界の開発トレンドと整合性の取れた開発を求めたのは、隣国の中国が高速鉄道の設計速度を時速350キロで整備したことと関連があるとみられる。ハー氏は運営委員会で、橋とトンネルを取り入れることでできるだけ直線のルートを確保すること、洪水時の排水能力を確保することなども指示した。
■外資との官民連携方式で
ハー副首相は運営委員会で、政府の最終案の早期策定と共産党政治局、国会での最終承認に向けて、関連省庁に新たな指示を出した。
建設事業については、高速鉄道技術を持つ外国企業との官民連携(PPP)事業として海外民間資金を活用し、外資からの技術移転を念頭に進める。開発当初は外資企業や国際金融機関などの資金と技術で建設を進めながら、高速鉄道を運営できる自前のエンジニア・幹部の育成を前もって進め、最終的には自国で技術を吸収・確立して鉄道産業の発展につなげる狙いだ。
1990年代後半以降、日本やドイツなどの企業から高速鉄道の技術指導を受け、最終的に自国の技術として高速鉄道網を張り巡らせた中国が実行した考え方だ。
運輸省に対しては、南北高速鉄道の建設を機に、日本などが東南アジアで普及を目指す鉄道を中心にした都市開発(TOD)モデルを導入するため、建設省や天然資源・環境省と検討を進めるよう求めた。南北双方の起点となるハノイとホーチミン市の駅の場所については、既存の交通網との接続性や都市開発計画に照らし合わせて再検討する。
■技術移転念頭に
商工省に対しては、運輸省と協力して鉄道産業と機械・製造・冶金(やきん)など関連裾野産業を育成する政策を取りまとめることを指示した。
ハー氏は同省に対して、総投資額を再度精査し、工事の実行段階で投資額が跳ね上がる事態を回避するよう求めた。
ベトナム政府は南北高速鉄道の整備資金として、これまでに日本政府に対して円借款などの資金支援を要請してきた。世界で最先端の技術とされる「新幹線」方式の採用を前提に、今後両国政府間で協議が本格化する見通しだ。このほか、中国などもベトナムの高速鉄道事業に関心を示している。
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首相府が4日に公表した政府官房通知502号(502/TB—VPCP)によると、ハー副首相は運輸省からの投資計画提出を受けて今月開いた南北高速鉄道運営委員会で、設計速度は350キロとし、「国の南北を接続する中軸の役割を果たす」ことと同時に、「既存の鉄道の効果的な開発」を念頭に置くことを指示した。
運輸省が投資計画案で示した時速350キロ案の2つの選択肢のうち、第1案は南北高速鉄道を旅客専用として建設する一方、現在の南北統一鉄道(ハノイ—ホーチミン市)を貨物、観光、近距離旅客輸送用に改良する内容だった。第1案の総投資額は673億2,000万米ドル(約9兆9,046億円)で、南北高速鉄道を貨客兼用とし、貨物用の改良工事を加える場合の投資額より43億7,000万米ドル低く抑えられる。ハー氏は南北高速鉄道を旅客専用にし、南北統一鉄道と併用する案が有力と判断している可能性が高い。
世界の開発トレンドと整合性の取れた開発を求めたのは、隣国の中国が高速鉄道の設計速度を時速350キロで整備したことと関連があるとみられる。ハー氏は運営委員会で、橋とトンネルを取り入れることでできるだけ直線のルートを確保すること、洪水時の排水能力を確保することなども指示した。
■外資との官民連携方式で
ハー副首相は運営委員会で、政府の最終案の早期策定と共産党政治局、国会での最終承認に向けて、関連省庁に新たな指示を出した。
建設事業については、高速鉄道技術を持つ外国企業との官民連携(PPP)事業として海外民間資金を活用し、外資からの技術移転を念頭に進める。開発当初は外資企業や国際金融機関などの資金と技術で建設を進めながら、高速鉄道を運営できる自前のエンジニア・幹部の育成を前もって進め、最終的には自国で技術を吸収・確立して鉄道産業の発展につなげる狙いだ。
1990年代後半以降、日本やドイツなどの企業から高速鉄道の技術指導を受け、最終的に自国の技術として高速鉄道網を張り巡らせた中国が実行した考え方だ。
運輸省に対しては、南北高速鉄道の建設を機に、日本などが東南アジアで普及を目指す鉄道を中心にした都市開発(TOD)モデルを導入するため、建設省や天然資源・環境省と検討を進めるよう求めた。南北双方の起点となるハノイとホーチミン市の駅の場所については、既存の交通網との接続性や都市開発計画に照らし合わせて再検討する。
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ベトナム政府は南北高速鉄道の整備資金として、これまでに日本政府に対して円借款などの資金支援を要請してきた。世界で最先端の技術とされる「新幹線」方式の採用を前提に、今後両国政府間で協議が本格化する見通しだ。このほか、中国などもベトナムの高速鉄道事業に関心を示している。"
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