タイの首都バンコクの街中で、地場Hセム・モーターの電動バイクに乗ったバイクタクシー運転手や配達員の姿を見かける機会が増えた。2021年に開始したバッテリー交換式の電動バイクレンタルサービスは、契約者数が約4,000人に到達。配車・食事宅配大手「グラブ」などのドライバーに利用され、電動バイクレンタル業界で首位に立つ。5年でレンタル契約者数を10万人に増やす目標を掲げ、個人向け販売も強化する。【Sangkawin Apiwut】
グラブなどのドライバーが利用するレンタルサービス。バッテリー交換はものの3分で完了する=14日、タイ・バンコク(NNA撮影)
Hセムは、40年に渡り農機の販売などを手がける地場フア・ヘン・リー・グループが16年10月に設立した。電動ゴルフカート、電動・ガソリン三輪車、電動バイク、電動多目的車の製造販売を行っている。中部アユタヤ県プラナコンシーに工場を持つ。
電動バイクのレンタルサービスは、グラブや食事宅配「ラインマン・ウォンナイ」といったプラットフォームに登録するドライバーが主な利用者だ。契約者数は右肩上がりに増えて約4,000人となり、累計では約1万人に上る。Hセムの23年の売上高では同サービスが約6割を占め、事業の柱となっている。
■レンタル料、月2万円以下
Hセムのワンチャイ最高経営責任者(CEO)は「ユーザー目線に立ってレンタル料金を可能な限り安価に設定したことで、電動バイクレンタル業界で1位の座を得た」と話す。
レンタル用電動バイクは4モデルあり、フル充電で走行可能な距離は最大120~140キロメートル。重さ約10キログラムのバッテリーが2個付属され、自宅で充電することも可能だ。だが、1回のフル充電に3~4時間、電気代も10バーツ(約42円)ほどかかるため、交換を好むユーザーがほとんどだという。
専用のバッテリー交換所は現在、バンコク首都圏の銀行、給油所、スーパーマーケットなどで61カ所を運営している。61カ所に、各11個のバッテリーを収納したキャビネットを計113台配置。専用アプリやカードを使えば、3分でバッテリーを交換できる仕組みだ。
レンタルプランは(1)バッテリー交換回数無制限のA(2)月60回までバッテリー交換が可能なB(3)月240回までバッテリー交換が可能なC——の3種類ある。レンタル期間は最短7日間、最長365日。ワンチャイ氏によると、ドライバーのバッテリー交換回数は「1日平均3回」となっている。
平均のバッテリー交換回数(1日3回で月90回程度)を十分にまかなえるプランCの料金は、デポジット込みの初月が4,600バーツから。2カ月目以降は3,600バーツからとなる。最も高価なプランAも初月が4,990バーツから、2カ月目以降が3,990バーツからと、日本円にすると基本的に月2万円以下でレンタルできる計算だ。
■CO2とコスト削減
二酸化炭素(CO2)排出量を削減できることから、導入に興味を示す企業が増えているようだ。
ワンチャイ氏はさらに「ガソリンバイクに比べて移動費を月3,500バーツ削減できる」と説明する。メンテナンスもHセムが行うため、複数の企業が「コスト削減効果がある」と判断。畜産大手タイフーズ・グループなどと既に、一定台数のレンタル契約を結んでいる。
Hセムは累計3,000トンのCO2排出削減に貢献。これは、33万9,000本の樹木が1年間で吸収するCO2に相当する量だという。
■フランチャイズで交換所拡充
Hセムは今年、「ムーブEV X」のブランド名でバッテリー交換所のフランチャイズ展開を進める。増加するバッテリー交換式電動バイクの需要に対応するためには、交換所の増設が不可欠であるためだ。
設備の設置とメンテナンス、運営をHセムが担う。加盟モデルは、企業・個人が(1)設置予算と場所を提供(2)設置予算を提供(3)場所を提供——の3ケースで展開。(2)と(3)をそれぞれ提供可能な企業・個人をマッチングすることで、臨機応変に設置を進める。
Hセムがバッテリー交換数に応じて市場価格よりも高い値段の電気代を支払うことで、投資する企業・個人が利益を得られる形となる。初期投資費用は70万~240万バーツと高額だが、Hセムは「最短1年10カ月で初期投資費用を回収し、月1万3,000~3万バーツの利益が得られるようになる」と説明。投資回収にかかる期間は交換数によって変動するが、最悪のケースでも4年で回収が完了すると試算する。
契約期間は5年。5年を過ぎると、設備の権利は自動的に加盟企業・個人へと移行するが、契約更新も可能とする。
カフェなどのショップオーナー、住宅、給油所、商業ビルなどをターゲットとして、年内にキャビネット60台分の設置を目標に掲げた。自社でも20台分設置し、計80台分を追加する。80台分の設置費用(加盟企業・個人の投資額含む)は1億2,000万バーツを見込む。
ワンチャイCEOは「電動バイクは環境にやさしい交通手段だ」として、バッテリー交換所への投資者を募る=14日、タイ・バンコク(NNA撮影)
■年内に6000台へ
電動バイクレンタルの契約者数は年内に6,000人、5年で10万人とする目標を掲げる。需要は右肩上がりで増加するとみているが、課題となるのはバッテリー交換所の増設だ。レンタルする電動バイクだけが増えて交換所が不足する事態が起きないよう、生産・供給台数と交換所の増設数のバランスを保っていくことが重要だとみている。
電動バイクは今のところ年間2,000台を生産。交換所の数とバランスをとるため、フル生産はしていない状況だという。コストの60%を占めるバッテリーは外部から調達しているが、来年には自社で組み立てを始める。電気自動車(EV)振興策「EV3.5」の優遇を受けて設備を整備し、年間1万2,580台分のバッテリー組み立て体制を整える。
Hセムは4万9,700~9万5,720バーツの価格帯で電動バイク4モデルの販売も行っている。今年第3四半期(7~9月)には新モデルを発売し、レンタルだけでなく販売にも力を入れていく方針だ。
大学と連携して、ガソリンバイクの電動バイクへの改造も模索中。交換式バッテリー搭載型への改造にかかるコストは1台当たり1万バーツを見込んでおり、改造事業も来年に本格化する計画を掲げている。
Hセムの電動バイク「モビラG」は、レンタルだけでなく個人向けにも販売している=14日、タイ・バンコク(NNA撮影)
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Hセムは、40年に渡り農機の販売などを手がける地場フア・ヘン・リー・グループが16年10月に設立した。電動ゴルフカート、電動・ガソリン三輪車、電動バイク、電動多目的車の製造販売を行っている。中部アユタヤ県プラナコンシーに工場を持つ。
電動バイクのレンタルサービスは、グラブや食事宅配「ラインマン・ウォンナイ」といったプラットフォームに登録するドライバーが主な利用者だ。契約者数は右肩上がりに増えて約4,000人となり、累計では約1万人に上る。Hセムの23年の売上高では同サービスが約6割を占め、事業の柱となっている。
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Hセムのワンチャイ最高経営責任者(CEO)は「ユーザー目線に立ってレンタル料金を可能な限り安価に設定したことで、電動バイクレンタル業界で1位の座を得た」と話す。
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平均のバッテリー交換回数(1日3回で月90回程度)を十分にまかなえるプランCの料金は、デポジット込みの初月が4,600バーツから。2カ月目以降は3,600バーツからとなる。最も高価なプランAも初月が4,990バーツから、2カ月目以降が3,990バーツからと、日本円にすると基本的に月2万円以下でレンタルできる計算だ。
■CO2とコスト削減
二酸化炭素(CO2)排出量を削減できることから、導入に興味を示す企業が増えているようだ。
ワンチャイ氏はさらに「ガソリンバイクに比べて移動費を月3,500バーツ削減できる」と説明する。メンテナンスもHセムが行うため、複数の企業が「コスト削減効果がある」と判断。畜産大手タイフーズ・グループなどと既に、一定台数のレンタル契約を結んでいる。
Hセムは累計3,000トンのCO2排出削減に貢献。これは、33万9,000本の樹木が1年間で吸収するCO2に相当する量だという。
■フランチャイズで交換所拡充
Hセムは今年、「ムーブEV X」のブランド名でバッテリー交換所のフランチャイズ展開を進める。増加するバッテリー交換式電動バイクの需要に対応するためには、交換所の増設が不可欠であるためだ。
設備の設置とメンテナンス、運営をHセムが担う。加盟モデルは、企業・個人が(1)設置予算と場所を提供(2)設置予算を提供(3)場所を提供——の3ケースで展開。(2)と(3)をそれぞれ提供可能な企業・個人をマッチングすることで、臨機応変に設置を進める。
Hセムがバッテリー交換数に応じて市場価格よりも高い値段の電気代を支払うことで、投資する企業・個人が利益を得られる形となる。初期投資費用は70万~240万バーツと高額だが、Hセムは「最短1年10カ月で初期投資費用を回収し、月1万3,000~3万バーツの利益が得られるようになる」と説明。投資回収にかかる期間は交換数によって変動するが、最悪のケースでも4年で回収が完了すると試算する。
契約期間は5年。5年を過ぎると、設備の権利は自動的に加盟企業・個人へと移行するが、契約更新も可能とする。
カフェなどのショップオーナー、住宅、給油所、商業ビルなどをターゲットとして、年内にキャビネット60台分の設置を目標に掲げた。自社でも20台分設置し、計80台分を追加する。80台分の設置費用(加盟企業・個人の投資額含む)は1億2,000万バーツを見込む。
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電動バイクレンタルの契約者数は年内に6,000人、5年で10万人とする目標を掲げる。需要は右肩上がりで増加するとみているが、課題となるのはバッテリー交換所の増設だ。レンタルする電動バイクだけが増えて交換所が不足する事態が起きないよう、生産・供給台数と交換所の増設数のバランスを保っていくことが重要だとみている。
電動バイクは今のところ年間2,000台を生産。交換所の数とバランスをとるため、フル生産はしていない状況だという。コストの60%を占めるバッテリーは外部から調達しているが、来年には自社で組み立てを始める。電気自動車(EV)振興策「EV3.5」の優遇を受けて設備を整備し、年間1万2,580台分のバッテリー組み立て体制を整える。
Hセムは4万9,700~9万5,720バーツの価格帯で電動バイク4モデルの販売も行っている。今年第3四半期(7~9月)には新モデルを発売し、レンタルだけでなく販売にも力を入れていく方針だ。
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