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【新首都】選挙後も継続、開発加速へ大統領府74%完成、「投資に列」

インドネシアで2月14日に行われた大統領選挙で、ジョコ・ウィドド政権の政策継承を掲げるプラボウォ・スビアント国防相の当選がほぼ確実となったことを受け、東カリマンタン州で整備中の新首都「ヌサンタラ」の開発が加速しそうだ。ジョコ氏は同月29日から1日までヌサンタラを視察し、開発プロジェクト第5弾の着工式では「投資家が(投資に向け)列を作っている」と述べた。また大統領府の建設進捗(しんちょく)率は74%になり、8月17日の独立記念式典のヌサンタラでの実施に向けた準備が進んでいる。

ジョコ大統領は、大統領選挙の実施後から投資家が新首都への投資に楽観的になっているとの認識を示している=1日(大統領府提供)

ヌサンタラで昨年9月から始まった官民の開発プロジェクトの第5弾となる今回は、2月29日に国営大手銀行のバンク・マンディリ(マンディリ銀)、バンクネガラインドネシア(BNI)、バンク・ラクヤット・インドネシア(BRI)の3行が、新拠点の建設を開始したほか、3月1日には国営通信テレコム・インドネシア(テルコム)が、包括的なデジタルサービスを提供するオフィス「テルコム・スマート・オフィス」を着工するなどした。
ジョコ大統領はBRIの着工式典で、「多くの投資家が(投資に向け)列を作っている」と述べ、選挙を終えて投資家がよりヌサンタラへの投資に楽観的になっているとの認識を示した。一方で、ヌサンタラのコンセプトは持続可能な都市であり、都市の良好なエコシステムを構築するため、計画に沿ってバランスの取れた開発を進めていく必要があると強調した。
また、ジョコ氏は1日に大統領府の建設現場を視察した。公共事業・国民住宅省居住局によると、進捗率は74%。同局のディアナ局長は、建物の主要部分は完成したと説明した。大統領府は、国章の神鳥「ガルーダ」をモチーフにした建造物で、現在は羽の部分の建材部品を取り付けており、4,650個の部品のうち1,282個が付け終わったという。この作業は3月末までに完了させたいとしている。
ディアナ氏は、8月の独立記念式典をヌサンタラで開催するため、大統領府は6月中に完成させ、供用開始を目指すと述べた。
大統領府を含む政府施設の設備を巡っては、三菱電機ビルソリューションズ(東京都千代田区)のインドネシア合弁会社三菱ジャヤ・エレベーター&エスカレーター(MJEE)が2月末に、エレベーター33台、エスカレーター22台を受注したことを発表。3月から順次搬入する予定だという。

建設が進む大統領府の内部の様子=1日(大統領府提供)

■国営テレビ局、首都移転で本拠地移動
ジョコ氏は各種の着工式に出席したほか、1日に建設労働者向けの集合住宅の一角にある指令センターと同センターに隣接する国営放送TVRIの小スタジオを視察した。指令センターでは、監視カメラ(CCTV)やドローンなどを使ったヌサンタラの監視業務をしており、スマートシティーを支える主要インフラの一つだという。
一方、TVRIについては、公共放送機関の放送実施に関する政令『2005年第11号』で、首都に本拠地を置くことが定められているため、TVRIのイマン社長は「ヌサンタラに本拠地を移さなければならない」と説明した。同政令では国営ラジオRRIも同様の規定があるため、国営テレビ、ラジオ局ともヌサンタラに移転することになるという。

ジョコ大統領が視察したヌサンタラの指令センター=1日(大統領府提供)

■野党党首、新首都開発に前向き
大統領選の公式結果は集計中で、4日午後5時時点で78%が終了している。この時点でプラボウォ氏のペアの得票率は58.83%とリードしている。結果は未確定だが、当選が確実視されていることを受け、新首都開発にも影響を与える動きが政界で出ている。
その一つが、2月21日に農地・都市計画相に就任したアグス・ハリムルティ・ユドヨノ氏による初めてのヌサンタラ訪問だ。アグス氏は、野党民主党の党首で、同党出身者としてはジョコ政権で初入閣し、同月28日からヌサンタラを視察した。
民主党は、2月に実施された大統領選挙では、プラボウォ氏のペアを支持する政党連合に参画していた。ジョコ氏も実質的にプラボウォ氏を支持していたことから、アグス氏の初入閣につながったとみられている。また、プラボウォ氏が次期政権を担う場合に、民主党は連立与党の一角となる見通しだ。
地元メディアによると、アグス氏の新首都建設のスタンスを巡っては、新型コロナウイルスの感染拡大後に開発は適切ではないと指摘したことがあり、本人もそれを認めているという。だが、今回の新首都訪問時の交流サイト(SNS)への投稿で「初めてのヌサンタラ訪問は特別なものだった」とした上で「ヌサンタラが先進的なだけでなく、ビジネスや国際的な活動の中心地として発展するための政府機関が建設されている。この努力が実現すると楽観している」と、前向きなコメントをしている。
農地・都市計画省は、ヌサンタラで開発する土地について、ヌサンタラ首都庁と調整する役割などを担っているといい、アグス氏は自身のSNSに、ジョコ氏の指示を基に開発に必要な土地の確保に注力すると投稿した。

2月に閣僚に就任したアグス氏(後列左から2人目)は初めてヌサンタラを訪問し、ジョコ大統領(前列右から3人目)や他の閣僚と現地を視察した=2月29日(大統領府提供)
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ヌサンタラで昨年9月から始まった官民の開発プロジェクトの第5弾となる今回は、2月29日に国営大手銀行のバンク・マンディリ(マンディリ銀)、バンクネガラインドネシア(BNI)、バンク・ラクヤット・インドネシア(BRI)の3行が、新拠点の建設を開始したほか、3月1日には国営通信テレコム・インドネシア(テルコム)が、包括的なデジタルサービスを提供するオフィス「テルコム・スマート・オフィス」を着工するなどした。
ジョコ大統領はBRIの着工式典で、「多くの投資家が(投資に向け)列を作っている」と述べ、選挙を終えて投資家がよりヌサンタラへの投資に楽観的になっているとの認識を示した。一方で、ヌサンタラのコンセプトは持続可能な都市であり、都市の良好なエコシステムを構築するため、計画に沿ってバランスの取れた開発を進めていく必要があると強調した。
また、ジョコ氏は1日に大統領府の建設現場を視察した。公共事業・国民住宅省居住局によると、進捗率は74%。同局のディアナ局長は、建物の主要部分は完成したと説明した。大統領府は、国章の神鳥「ガルーダ」をモチーフにした建造物で、現在は羽の部分の建材部品を取り付けており、4,650個の部品のうち1,282個が付け終わったという。この作業は3月末までに完了させたいとしている。
ディアナ氏は、8月の独立記念式典をヌサンタラで開催するため、大統領府は6月中に完成させ、供用開始を目指すと述べた。
大統領府を含む政府施設の設備を巡っては、三菱電機ビルソリューションズ(東京都千代田区)のインドネシア合弁会社三菱ジャヤ・エレベーター&エスカレーター(MJEE)が2月末に、エレベーター33台、エスカレーター22台を受注したことを発表。3月から順次搬入する予定だという。

[caption id="attachment_18739" align="aligncenter" width="620"]建設が進む大統領府の内部の様子=1日(大統領府提供)[/caption]
■国営テレビ局、首都移転で本拠地移動
ジョコ氏は各種の着工式に出席したほか、1日に建設労働者向けの集合住宅の一角にある指令センターと同センターに隣接する国営放送TVRIの小スタジオを視察した。指令センターでは、監視カメラ(CCTV)やドローンなどを使ったヌサンタラの監視業務をしており、スマートシティーを支える主要インフラの一つだという。
一方、TVRIについては、公共放送機関の放送実施に関する政令『2005年第11号』で、首都に本拠地を置くことが定められているため、TVRIのイマン社長は「ヌサンタラに本拠地を移さなければならない」と説明した。同政令では国営ラジオRRIも同様の規定があるため、国営テレビ、ラジオ局ともヌサンタラに移転することになるという。
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■野党党首、新首都開発に前向き
大統領選の公式結果は集計中で、4日午後5時時点で78%が終了している。この時点でプラボウォ氏のペアの得票率は58.83%とリードしている。結果は未確定だが、当選が確実視されていることを受け、新首都開発にも影響を与える動きが政界で出ている。
その一つが、2月21日に農地・都市計画相に就任したアグス・ハリムルティ・ユドヨノ氏による初めてのヌサンタラ訪問だ。アグス氏は、野党民主党の党首で、同党出身者としてはジョコ政権で初入閣し、同月28日からヌサンタラを視察した。
民主党は、2月に実施された大統領選挙では、プラボウォ氏のペアを支持する政党連合に参画していた。ジョコ氏も実質的にプラボウォ氏を支持していたことから、アグス氏の初入閣につながったとみられている。また、プラボウォ氏が次期政権を担う場合に、民主党は連立与党の一角となる見通しだ。
地元メディアによると、アグス氏の新首都建設のスタンスを巡っては、新型コロナウイルスの感染拡大後に開発は適切ではないと指摘したことがあり、本人もそれを認めているという。だが、今回の新首都訪問時の交流サイト(SNS)への投稿で「初めてのヌサンタラ訪問は特別なものだった」とした上で「ヌサンタラが先進的なだけでなく、ビジネスや国際的な活動の中心地として発展するための政府機関が建設されている。この努力が実現すると楽観している」と、前向きなコメントをしている。
農地・都市計画省は、ヌサンタラで開発する土地について、ヌサンタラ首都庁と調整する役割などを担っているといい、アグス氏は自身のSNSに、ジョコ氏の指示を基に開発に必要な土地の確保に注力すると投稿した。
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