ミャンマー最南端の町コータウン(タニンダーリ地域)を経由した、最大都市ヤンゴンとタイ南部ラノーン県との貿易がきょう28日に始まる。両国を結ぶ主要陸路が紛争などで寸断されたことを受けた動きだ。タイとの貿易の停滞が長期化すればミャンマーの各産業や市民の生活が脅かされる。迂回(うかい)路を開拓する動きが急ピッチで進もうとしている。
ヤンゴン港の一つであるミャンマー工業港(MIP)=25日、ミャンマー(NNA)
ミャンマー商業省によると、同日にトウモロコシを積んだ貨物船がヤンゴン港を出発。コータウンを経由してラノーン港で積み荷を降ろした後、タイからの輸入品を積んでヤンゴン港に戻ることになっている。同ルートの活発化に向け、輸出入業者からの相談に応じているという。
同省は4月中旬、タイとの国境貿易でコータウンを経由した海路での貨物輸送を許可すると通達した。「迅速かつ円滑な貿易の流れを確保するため」だと理由を説明していた。
ラノーン港では、載貨重量トン数(DWT)が1万2,000トンまでの船が寄港できる。コータウンとラノーンは川を挟んで向かい合っているが、これまでは小規模な漁港での魚介類の取引が多かった。
ミャンマー・コータウンとの貿易が盛んなラノーン県の漁港=タイ(NNA)
■国境地域の紛争
ミャンマー最南端を経由した国境貿易の振興は、同国側の国境地域での紛争激化でやむなく始まったものだ。メソト(タイ北西部ターク県)と隣接するミャンマー東部カイン(カレン)州ミャワディでは、4月までに少数民族武装勢力のカレン民族同盟(KNU)などが国軍に対して攻勢に出た。事態が緊迫化する中でタイ政府高官は同月、メソトを視察していた。
一時はカレン勢力側がミャワディ市内の国軍基地を占拠したが、空爆などを恐れて一時撤退した。だが近隣地域では、武力衝突が続いていることに加えて雨期に突入したことで、トラックによる輸送が困難になっている。ミャワディとメソトは、両国の国境貿易の主要玄関口の一つになっている。
ミャンマーでは、国軍によるクーデターが勃発してから3年以上が経過。民政復帰を求めて国軍に抵抗する武装組織が各地で誕生し、国境に追いやられていた少数民族武装勢力による民族紛争も再燃した。ミャンマー国内には約20の少数民族武装勢力が存在し、このうち3勢力は昨年10月、北東部シャン州北部で国軍への一斉攻撃「作戦1027」を開始。以降は国軍の劣勢が目立っている。
ミャンマー商業省が発表している公式統計で、4月1日~6月14日の約2カ月半の対タイ国境貿易は、輸出額が前年同期比53.1%減の5億600万米ドル(約811億円)、輸入額が77.5%減の1億100万米ドルとそろって大きく落ち込んだ。
6カ所あるゲート別では、往来の多かったミャワディやパイプラインを通じた天然ガス輸出が計上されるティーキー経由が大幅なマイナスとなった一方、コータウンなどでは取引が活発化しつつある。
■タイに依存
ミャンマー経済はタイへの依存度が元々大きく、ヤンゴン市民からは「タイ製品がなければ生活が成り立たない」という声が上がる。商業施設内の店舗にはタイから調達した国際ブランドのスポーツ用品や化粧品が並ぶ。食品や家電、飼料、建材など、あらゆる商品がタイとの貿易に支えられている。
ヤンゴンの日本食レストランの経営者は、「食材はほぼタイから輸入している」と話した。サプライヤーへの支払いは米ドルを基準とした現地通貨チャット建て。軍政下でチャット安が進む中、調達コストがかさんでいることが大きな課題だという。
別の飲食店関係者は、「陸路による調達ルートなくして商売は成り立たない」と語る。ただ、正規ルートでの輸入に対する制限は強まっているが、「非正規」に入手できる食材も少なくない。各勢力が複数の検問所を設置しているが、トラック輸送が完全にできなくなったわけではなく、雨期の調達難も毎年の恒例行事だという。
タイとの国境貿易で迂回路が発展するかどうかは未知数だ。トウモロコシを同国に無関税で輸出できるのが2~8月に限定されているなど、季節的な要因にも取扱貨物量は左右される。ミャンマー軍政が輸出拡大を狙う農産品のうち、主力のコメは両国が輸出国として競合する構図となっている。
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同省は4月中旬、タイとの国境貿易でコータウンを経由した海路での貨物輸送を許可すると通達した。「迅速かつ円滑な貿易の流れを確保するため」だと理由を説明していた。
ラノーン港では、載貨重量トン数(DWT)が1万2,000トンまでの船が寄港できる。コータウンとラノーンは川を挟んで向かい合っているが、これまでは小規模な漁港での魚介類の取引が多かった。
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■国境地域の紛争
ミャンマー最南端を経由した国境貿易の振興は、同国側の国境地域での紛争激化でやむなく始まったものだ。メソト(タイ北西部ターク県)と隣接するミャンマー東部カイン(カレン)州ミャワディでは、4月までに少数民族武装勢力のカレン民族同盟(KNU)などが国軍に対して攻勢に出た。事態が緊迫化する中でタイ政府高官は同月、メソトを視察していた。
一時はカレン勢力側がミャワディ市内の国軍基地を占拠したが、空爆などを恐れて一時撤退した。だが近隣地域では、武力衝突が続いていることに加えて雨期に突入したことで、トラックによる輸送が困難になっている。ミャワディとメソトは、両国の国境貿易の主要玄関口の一つになっている。
ミャンマーでは、国軍によるクーデターが勃発してから3年以上が経過。民政復帰を求めて国軍に抵抗する武装組織が各地で誕生し、国境に追いやられていた少数民族武装勢力による民族紛争も再燃した。ミャンマー国内には約20の少数民族武装勢力が存在し、このうち3勢力は昨年10月、北東部シャン州北部で国軍への一斉攻撃「作戦1027」を開始。以降は国軍の劣勢が目立っている。
ミャンマー商業省が発表している公式統計で、4月1日~6月14日の約2カ月半の対タイ国境貿易は、輸出額が前年同期比53.1%減の5億600万米ドル(約811億円)、輸入額が77.5%減の1億100万米ドルとそろって大きく落ち込んだ。
6カ所あるゲート別では、往来の多かったミャワディやパイプラインを通じた天然ガス輸出が計上されるティーキー経由が大幅なマイナスとなった一方、コータウンなどでは取引が活発化しつつある。
■タイに依存
ミャンマー経済はタイへの依存度が元々大きく、ヤンゴン市民からは「タイ製品がなければ生活が成り立たない」という声が上がる。商業施設内の店舗にはタイから調達した国際ブランドのスポーツ用品や化粧品が並ぶ。食品や家電、飼料、建材など、あらゆる商品がタイとの貿易に支えられている。
ヤンゴンの日本食レストランの経営者は、「食材はほぼタイから輸入している」と話した。サプライヤーへの支払いは米ドルを基準とした現地通貨チャット建て。軍政下でチャット安が進む中、調達コストがかさんでいることが大きな課題だという。
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ミャンマー・ラオス・カンボジア情報
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ビジネス全般人事労務