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大阪の不動産に熱視線万博やカジノ、民泊経営で移住も

大阪の不動産物件が香港の投資家から注目を集めている。2025年大阪・関西万博や30年に開業を目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)などによる経済効果が期待されているためで、特に利回りの高い民泊用物件が人気だ。移住を視野に入れ、民泊経営で「経営・管理」の在留資格を取得しようとする投資家もいる。【菅原真央、蘇子善】

FMIのマンション「ザ・ピーク・通天閣」(中央の黒い建物)。通天閣のすぐそばに位置する=6月、大阪(NNA撮影)

大阪の観光名所、通天閣の目と鼻の先に、モダンな10階建てマンションがある。建物に面した幹線道路の堺筋を歩くのは、半数ほどが外国人観光客だ。入り口には「特区民泊施設」と書かれた張り紙があり、ごみ捨て場や問い合わせ窓口の案内に中国語が併記されている。
特区民泊は国家戦略特区のうち大阪府や大阪市、東京都大田区など指定された地域で旅館業法の適用が除外される制度。外国語を用いた案内など、外国人旅客の滞在に適した施設を提供することが要件になっている。
「ザ・ピーク・通天閣」は世界各地で不動産投資を手がける香港の至匯投資集団(FMインベストメント、FMI)が開発した。24年2月に完成したばかりの新築物件だが、同社が管理する21部屋は既に売り切れた。オーナーは香港人が約6割。立地などに魅力を感じ、物件を見ずに完成前に購入を決めた人がほとんどだという。
オーナーは民泊経営者となり、ブッキングドットコム、エアビーアンドビーなどの仲介サイトやFMIのアプリを通じて予約を受け付け、宿泊料収入を得る。鍵の受け渡しは暗証番号付きキーボックスを通じて行われ、チェックインからチェックアウトまで非対面で完結する。宿泊者からの問い合わせ対応や部屋の清掃も管理会社が担うため、オーナーがすることはほとんどない。
宿泊料は1泊1部屋1万5,000~2万円程度。キッチンや洗濯機などホテルにない設備もそろっており、長期滞在にも向いている。現地の担当者は「ホテルより広い部屋を求める人や、グループで泊まりたい人に選ばれているようだ」と説明した。

ザ・ピーク・通天閣の一室。家電や家具が一通りそろっており、長期滞在も可能だ=6月、大阪(NNA撮影)

■英国より近い移住先
香港の九龍地区にある尖沙咀の高級ホテルの宴会場では6月下旬、FMIによる大阪の不動産投資セミナーが開かれた。大型スクリーンでは万博やカジノなど大阪の最新トピックが紹介され、参加した40~50代の夫婦ら約5組が真剣に耳を傾けていた。FMIが大阪で開発したマンションや一戸建て住宅群は13カ所。うち8カ所は売り切れている。
日本移住を検討する投資家に向け、経営・管理の在留資格の取得方法も紹介された。不動産を数軒購入するだけでは対象にならないが、民泊を経営して事業の適正性、安定性、継続性などを示せれば資格が認められる可能性が高いという。

ホテルで行われた大阪不動産投資セミナー。担当者は大阪に投資するメリットを説明した=6月、尖沙咀(NNA撮影)

FMIの日本不動産購入者は現在、投資目的が70%、民泊経営による在留資格の取得を含む居住目的が30%程度となっている。李丹翔(アマス・リー)最高経営責任者(CEO)は「数年前は英国海外市民旅券(BNOパスポート)を持つ香港人のための特別査証(ビザ)制度を利用して英国に移住する人が増えたが、日本の在留資格があれば、そこまで遠くに移住する必要はない。日本なら、香港の家族に会いにすぐに帰ってくることもできる」と指摘した。

FMIの李丹翔CEO。17年に民泊新法が成立したのをきっかけに大阪での物件開発を開始した=6月、湾仔(NNA撮影)

李氏によると、東京ほどホテルが多くないことも、大阪で民泊経営を選択する投資家が多い理由の一つだ。香港での賃貸経営による利回りが2~3%なのに対し、大阪は4%程度で、単価が高い民泊経営であれば5~6%も望める。大阪は日本人にとっても人気の旅行先であり、海外からのインバウンド客だけではなく国内旅行者も多いとして「新型コロナウイルス禍のような状況が再び起こったとしても、半分以上の稼働率は保てる」と自信を示した。
もちろん、大阪の地価が上がることによるキャピタルゲイン(売却益)を狙う投資家もいる。円安環境に加え、香港に比べて低い不動産価格や金利、税負担が投資家の購入意欲を押し上げているようだ。
■日系も香港の投資家に期待
一方、賃貸需要の強さでは、東京の不動産も安定した人気がある。明豊エンタープライズ(東京都目黒区)は、5月に香港で初めて仲介業者と共同で販売活動を行い、投資家や投資会社との商談を行った。
販売するのは東京で展開する5億~7億円前後の1棟投資用賃貸マンションブランド「エルファーロ」。既に22年8月~23年7月に10棟、23年8月~24年5月に7棟が香港の投資家に購入されている。内田千博執行役員は「円安を背景に、利回りの低い香港に比べ、都心部でも利回りが3%を超える物件がある東京が非常に魅力的に映っているようだ」と感触を語った。
同社は投資用マンションを年間50~60棟開発し、うち最大4割を海外向けに販売することを目標に掲げている。メインターゲットは香港、台北、シンガポールだ。
香港市場については「富裕層が多く、大口の顧客がいる。投資のロットとしては10億円以下が小さいと判断され、複数棟で50億~100億円またはそれ以上を求められることもある」と説明。今後は香港のデベロッパーと組んで開発を進めることも検討し、賃貸需要の強い城南・城西地区を中心に開発を進めていく方針だ。

明豊エンタープライズが手がける1棟投資用賃貸マンションブランド「エルファーロ」のイメージ(同社提供)
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特区民泊は国家戦略特区のうち大阪府や大阪市、東京都大田区など指定された地域で旅館業法の適用が除外される制度。外国語を用いた案内など、外国人旅客の滞在に適した施設を提供することが要件になっている。
「ザ・ピーク・通天閣」は世界各地で不動産投資を手がける香港の至匯投資集団(FMインベストメント、FMI)が開発した。24年2月に完成したばかりの新築物件だが、同社が管理する21部屋は既に売り切れた。オーナーは香港人が約6割。立地などに魅力を感じ、物件を見ずに完成前に購入を決めた人がほとんどだという。
オーナーは民泊経営者となり、ブッキングドットコム、エアビーアンドビーなどの仲介サイトやFMIのアプリを通じて予約を受け付け、宿泊料収入を得る。鍵の受け渡しは暗証番号付きキーボックスを通じて行われ、チェックインからチェックアウトまで非対面で完結する。宿泊者からの問い合わせ対応や部屋の清掃も管理会社が担うため、オーナーがすることはほとんどない。
宿泊料は1泊1部屋1万5,000~2万円程度。キッチンや洗濯機などホテルにない設備もそろっており、長期滞在にも向いている。現地の担当者は「ホテルより広い部屋を求める人や、グループで泊まりたい人に選ばれているようだ」と説明した。
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■英国より近い移住先
香港の九龍地区にある尖沙咀の高級ホテルの宴会場では6月下旬、FMIによる大阪の不動産投資セミナーが開かれた。大型スクリーンでは万博やカジノなど大阪の最新トピックが紹介され、参加した40~50代の夫婦ら約5組が真剣に耳を傾けていた。FMIが大阪で開発したマンションや一戸建て住宅群は13カ所。うち8カ所は売り切れている。
日本移住を検討する投資家に向け、経営・管理の在留資格の取得方法も紹介された。不動産を数軒購入するだけでは対象にならないが、民泊を経営して事業の適正性、安定性、継続性などを示せれば資格が認められる可能性が高いという。
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FMIの日本不動産購入者は現在、投資目的が70%、民泊経営による在留資格の取得を含む居住目的が30%程度となっている。李丹翔(アマス・リー)最高経営責任者(CEO)は「数年前は英国海外市民旅券(BNOパスポート)を持つ香港人のための特別査証(ビザ)制度を利用して英国に移住する人が増えたが、日本の在留資格があれば、そこまで遠くに移住する必要はない。日本なら、香港の家族に会いにすぐに帰ってくることもできる」と指摘した。
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李氏によると、東京ほどホテルが多くないことも、大阪で民泊経営を選択する投資家が多い理由の一つだ。香港での賃貸経営による利回りが2~3%なのに対し、大阪は4%程度で、単価が高い民泊経営であれば5~6%も望める。大阪は日本人にとっても人気の旅行先であり、海外からのインバウンド客だけではなく国内旅行者も多いとして「新型コロナウイルス禍のような状況が再び起こったとしても、半分以上の稼働率は保てる」と自信を示した。
もちろん、大阪の地価が上がることによるキャピタルゲイン(売却益)を狙う投資家もいる。円安環境に加え、香港に比べて低い不動産価格や金利、税負担が投資家の購入意欲を押し上げているようだ。
■日系も香港の投資家に期待
一方、賃貸需要の強さでは、東京の不動産も安定した人気がある。明豊エンタープライズ(東京都目黒区)は、5月に香港で初めて仲介業者と共同で販売活動を行い、投資家や投資会社との商談を行った。
販売するのは東京で展開する5億~7億円前後の1棟投資用賃貸マンションブランド「エルファーロ」。既に22年8月~23年7月に10棟、23年8月~24年5月に7棟が香港の投資家に購入されている。内田千博執行役員は「円安を背景に、利回りの低い香港に比べ、都心部でも利回りが3%を超える物件がある東京が非常に魅力的に映っているようだ」と感触を語った。
同社は投資用マンションを年間50~60棟開発し、うち最大4割を海外向けに販売することを目標に掲げている。メインターゲットは香港、台北、シンガポールだ。
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