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各国における文書の保存義務に関する法規制

1.日本

(1) 法令上保存義務のある文書及びその保存期間

会社が保存すべき文書及びその保存期間については 各種法令によって定められており、主な例としては、以下の表のとおりのものがあります。

(2) 保存方法
会社における文書の保存については、電子帳簿保存法やe-文書法によって、電磁的方法での保存が認められている場合があります。

電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿を対象としたもので、総勘定元帳や仕訳帳等の会計帳簿について、一定の要件の下で電磁的方法での保存を認めています。

また、e-文書法は、民間事業者等が保存すべき文書について広く対象としたものであり、国税関係の帳簿等も適用対象に含まれるほか、会社法等各種法令に基づき保存義務のある文書についても、その多くが、同法によって電磁的方法での保存が認められています。もっとも、e-文書法は、電磁的保存の方法の具体的な要件等については、各府省の省令に委ねているため、電磁的方法での保存にあたっては、当該文書の保存義務の根拠となる法令や関連する省令等の定めに適合していなければなりません。

2.タイ

(1) 会社の会計帳簿等の保存について

会計法(Accounting Act)では、会計責任者は、会計帳簿および会計帳簿への記入に使用した裏付け書類を、決算日から5年以上保存しなければならないと定めています(会計法14条)。

他方で、同条は、歳入局の判断により、5年以上7年以下の範囲で、会計帳簿等の保存期間の延長が命じられる場合があるとも規定しています。また、歳入局との間で税務関係の紛争が生じる場合も考えられるところ、国の租税債権の消滅時効は10年となっています(民商法193/31条)。

これらのことも踏まえると、会計帳簿等については、最大10年間保存しておくという運用が考えられます。

(2) 労務関係の文書の保存について

使用者は従業員の雇用が終了してからも、雇用関係終了日から2年以上は従業員名簿を保管しておかなければなりません。また、賃金、時間外労働手当、休日労働手当、休日時間外労働手当の支払に関する台帳についても、支払いがあった日から2年以上保管することが求められます(労働者保護法115条1項)。

なお、労務関係についても従業員との間で何らかの紛争が生じることが考えられます。この点、民事上の請求については、消滅時効が原則として10年となっています(民商法193/30条)。

そのため、労務関係の文書についても、証拠を保全しておく観点から、最大10年間保存しておくという運用が考えられます。

3.マレーシア

会社は、株主総会に関し、①株主総会以外で行われた、株主によるすべての決議(書面による決議を含む。)、②株主総会、➂会社法344条に従い会社に提供された事項(会社の単独社員が株主総会において、会社が決定しかつ承諾したものとする旨決定した場合において会社に提供すべき当該決定事項の詳細)を記した書面を記録し、保管する必要があります(会社法341条⑴(a)~(c))。これらの文書については、決議がなされた日又は株主総会の開催日から起算して7年間保管する必要があります(同条⑵)。

また、上記文書のほか、会社は、定款、株主名簿、会計帳簿、取締役会決議書・議事録等を記録・保管する必要があります(同47条⑴)。

なお、マレーシアにおいては、これらの会社運営に関する文書については、会社秘書役にて保管されることが一般的です。

4.ミャンマー

(1) 法令上の文書の保存に関する規定

2019年10月に施行された「Tax Administration Law」により定められています。保存すべき書類については、「sales and purchase invoices, costing documents, bookings, diaries, purchase orders, delivery notes, bank statements, con -tracts, and other documents which relate to an element of a transaction」と規定されています。保存期間については、取引が行われた日から7年間。7年を超える場合は、その記録が関連する課税期間の課税期限満了まで。と定められています。

(2) 実務上の留意点

近時、ミャンマーにおいては税務調査が増加しています。その際、紙ベースによる証憑のチェックが行われるため、税務調査が来るまでは7年を超えていたとしても、文書を保管していた方が実務上安全と解されます。

5.メキシコ

⑴ 法令上の文書の保存期間に関する規定

文書の保存義務については、商法にその規定があります。

メキシコの商法上、会社も商人に該当するところ、商人は、権利と義務を生じさせる契約、合意、もしくは約束が記録された手紙、電報、電磁的記録、またはその他の文書の原本を最低10年間保管する義務があります(商法46条、47条)。電磁的記録で保存する場合、原本の保存または提示の目的のためには、情報が最初に最終的な形で生成された時点から完全かつ変更されておらず、その後の参照のためにアクセス可能であることが要求され(商法48条)、経済省が定める電磁的記録の保存のために遵守すべき要件を定めた公式メキシコ規格に従わなければなりません(商法49条)。

⑵ 会社解散後の文書保存義務

会社解散後について、清算人となった者は、会社の帳簿および書類を清算結了の日から10年間保管しなければなりません。清算人は、会社の帳簿や書類を、紙媒体で保管するか、電子・光学的、その他の技術で保管するかを選択することが可能です(会社法245条2段落)。

6.バングラデシュ

(1) 法令上の文書の保存期間に関する規定

1994年会社法181条では、財務諸表の保管を義務付けており、12 年間保存することとしています。その他、同法89条にて、取締役会議事録の保管を義務づけていますが、その保存期間については特に定めていません。実務においては、7~12 年間保存すべきであるとされています。また、年次会計報告についても、同様に、保存期間は規定されていませんが、実務では、7~12 年間保存することが推奨されています。

会社法では、文書の保存形式について、記録を電子媒体と紙媒体のどちらで保存するかについては規定していません。

会社法以外にも、2012年付加価値税及び補足税法では、発注および販売明細書、納税証明書、通関書類、その他の財務記録などの詳細な記録を 5 年間保存することを義務付けています。

2006年バングラデシュ労働法及び2019年EPZ労働法では、労働者名簿や安全記録簿の保管について定めていますが、保存期間については特に定めていません。

7.フィリピン

(1) 文書の保存義務

フィリピンの法律は、企業に対して文書の保存義務を課しています。以下は、保存義務がある文書の一例です。

(2) 電子での書類の保存

会社法によって保存が義務付けられている文書は、保存方法が指定されていないため、基本的には電子で保存することができます。他方で、公証人によるノータライズが必要な定款等の書類は、その性質上ハードコピーを作成する必要があります。また、会計帳簿も基本的には電子で保存することができます。

(3) 保存規定に違反した場合の罰則

保存規定に違反した場合、フィリピンの法律では罰則規定が設けられています。たとえば、会社法では、会社が記録を適切に保存していなかった場合、10万PHPから40万PHPの罰金が科されます。

8.ベトナム

(1) 保存が義務付けられている企業文書の種類

現行企業法には、会社の種類に応じて、以下の文書を保存することが規定されています。

i) 会社の定款、内部管理規定、株主・出資者名簿。
ii) 知的財産権の証明書、製品・商品・サービスの品質登録証明書、その他の許認可証および証明書。
iii) 会社の資産所有を証明する文書。
iv) 社員総会、株主総会、取締役会の会合の議決権、議決権調査簿、議事録。会社の決定または決議書類。
v) 有価証券の募集または上場のための目論見書。
vi) 監査役会の報告書、検査当局および監査組織の判断。
vii) 会計帳簿、会計記録、年次財務諸表。

また、現行の会計規則では、前項vii)で示された文書の種類についても詳細に記載されており(政令No. 174/2016/ND-CP第8条参照)、これによると、上記vii)の文書に加え、会社は、予算明細書、および契約、利益の資本化に関する決定、資金や資本書類の受領と使用など経理業務に関連するその他の文書も保存しなければならないとされています。

また、労働災害が発生した場合、会社は、政令No. 39/2016/ND-CPに基づき、労働災害調査記録、検死または傷害検査記録などの労働災害に関する文書を保存しなければなりません。

さらに、会社が行う事業内容や運営活動の種類によっては、特別の文書保存に関する法的義務が生じる場合があります。例えば、信用機関に分類される会社は、信用機関法(法律No. 32/2024/QH15)に規定される信用記録に関する文書も保管しなければなりません。また別の例として、取引商品の原産地証明書(C/O)を申請する企業は、政令No. 31/2018/ND-CPに基づき、申請書類およびその目的に関連する適切な補助文書も保管する必要があります。

(2) 文書保存に関するその他の重要事項

文書を保管する場所については、会社が自由に決定することができます。現行の法令では、電子形式での文書の保管については、e-VATインボイスを除き、特に規定はありません。したがって、e-VATインボイス以外の文書については、会社は、電子文書として保存するかどうかを選択することが可能であると解されています。

文書の保存期間には、永久保存と一定期間保存の2種類があります。一定期間保存の文書について、保存期間は、法令により年単位で決定されますが、対応する業務が完了してから70年を上回ることはありません。各種文書に適用される保存期間の詳細は、通達10/2022/TT-BNVに添付された別表や専門規則に規定されています。

9.インド

⑴ 会社法に基づく文書の保存義務について

インド会社法及び会社の下位規範である複数の規則において、以下の文書について保存義務が定められています。文書の種類、保存期間などについて把握しておくことが重要です。これらの文書は基本的に会社登記所に登録された登録事務所において保管しなければなりません。

⑵ 保管方法
上記の文書は、原本だけでなく電磁的記録により保存することも認められています。もっとも、紛争が生じた場合等は、紙の原本があることが望ましいので原本を保存しておくことが望ましいといえます。

10.アラブ首長国連邦(ドバイ)

会社の企業活動に関連して作成される文書の保管について、会社法(2021年連邦令第32号)では、会計帳簿を該当事業期末から5年間、本店で保管しなければならないと規定するのみです(第26条第2項)。商業取引法(2022年連邦令第50号)では、商人はその事業取引に関して発した交信・電報及び請求書の謄本並びに受領した交信・請求書及びその他の書類を発行または受領から最低5年間、商業帳簿及びその証拠書類をその完了から最低5年間、保管しなければならないとしています(第29条第1項・第2項)。

税手続法(2017年連邦令第7号)施行規則(2023年内閣令第74号)は、保管すべき会計記録の詳細を規定していて、貸借対照表、収益計算書、給与支払簿、固定資産管理簿、期末在庫表、を含む税法等で要求される支払・売買等の事業に関する記録、及び事業上のやりとり、請求書、免許、契約、並びに事業決定や計算の根拠を含む会計記録の根拠資料について(第2条)、課税事業者は当該課税期間後の5年間、非課税事業者は資料が作成された暦年末から5年間、ただし、土地登記に関連する資料については作成された暦年末から7年間、保管するものとしています(第3条第1項)。これらの期間は、課税当局との紛争があるときや税務調査中である等の場合には更に4年間延長されます(第3条第2項)。法人事業税法(2022年連邦令第47号)第56条では、課税事業者は税申告書類及びその証拠書類並びに課税対象所得を把握させる書類の全てを、非課税事業者は免税の地位を証明する記録の全てを、該当課税期間後7年間保管しなければならないとします。付加価値税法施行規則(2017年内閣令第52条)では、付加価値税法(2017年連邦令第8号)が保管を規定する文書の保管期間・方法等は税手続法施行規則の規定によるとしていますが、不動産に関する文書については15年と定めています(第71条2項)。

以上の通り、法令によって保管する書類の範囲や期間が異なる他、フリーゾーンで設立された会社については会社法の適用が除外される(第5条1項)等、会社の設立形態によっては適用される法令が異なり、また、事業内容に応じて適用を受けるその他の業法によって異なる文書保管期間の定めがある場合がありますので、留意が必要です。

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1.日本

(1) 法令上保存義務のある文書及びその保存期間 会社が保存すべき文書及びその保存期間については 各種法令によって定められており、主な例としては、以下の表のとおりのものがあります。 (2) 保存方法 会社における文書の保存については、電子帳簿保存法やe-文書法によって、電磁的方法での保存が認められている場合があります。 電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿を対象としたもので、総勘定元帳や仕訳帳等の会計帳簿について、一定の要件の下で電磁的方法での保存を認めています。 また、e-文書法は、民間事業者等が保存すべき文書について広く対象としたものであり、国税関係の帳簿等も適用対象に含まれるほか、会社法等各種法令に基づき保存義務のある文書についても、その多くが、同法によって電磁的方法での保存が認められています。もっとも、e-文書法は、電磁的保存の方法の具体的な要件等については、各府省の省令に委ねているため、電磁的方法での保存にあたっては、当該文書の保存義務の根拠となる法令や関連する省令等の定めに適合していなければなりません。

2.タイ

(1) 会社の会計帳簿等の保存について 会計法(Accounting Act)では、会計責任者は、会計帳簿および会計帳簿への記入に使用した裏付け書類を、決算日から5年以上保存しなければならないと定めています(会計法14条)。 他方で、同条は、歳入局の判断により、5年以上7年以下の範囲で、会計帳簿等の保存期間の延長が命じられる場合があるとも規定しています。また、歳入局との間で税務関係の紛争が生じる場合も考えられるところ、国の租税債権の消滅時効は10年となっています(民商法193/31条)。 これらのことも踏まえると、会計帳簿等については、最大10年間保存しておくという運用が考えられます。 (2) 労務関係の文書の保存について 使用者は従業員の雇用が終了してからも、雇用関係終了日から2年以上は従業員名簿を保管しておかなければなりません。また、賃金、時間外労働手当、休日労働手当、休日時間外労働手当の支払に関する台帳についても、支払いがあった日から2年以上保管することが求められます(労働者保護法115条1項)。 なお、労務関係についても従業員との間で何らかの紛争が生じることが考えられます。この点、民事上の請求については、消滅時効が原則として10年となっています(民商法193/30条)。 そのため、労務関係の文書についても、証拠を保全しておく観点から、最大10年間保存しておくという運用が考えられます。

3.マレーシア

会社は、株主総会に関し、①株主総会以外で行われた、株主によるすべての決議(書面による決議を含む。)、②株主総会、➂会社法344条に従い会社に提供された事項(会社の単独社員が株主総会において、会社が決定しかつ承諾したものとする旨決定した場合において会社に提供すべき当該決定事項の詳細)を記した書面を記録し、保管する必要があります(会社法341条⑴(a)~(c))。これらの文書については、決議がなされた日又は株主総会の開催日から起算して7年間保管する必要があります(同条⑵)。 また、上記文書のほか、会社は、定款、株主名簿、会計帳簿、取締役会決議書・議事録等を記録・保管する必要があります(同47条⑴)。 なお、マレーシアにおいては、これらの会社運営に関する文書については、会社秘書役にて保管されることが一般的です。

4.ミャンマー

(1) 法令上の文書の保存に関する規定 2019年10月に施行された「Tax Administration Law」により定められています。保存すべき書類については、「sales and purchase invoices, costing documents, bookings, diaries, purchase orders, delivery notes, bank statements, con -tracts, and other documents which relate to an element of a transaction」と規定されています。保存期間については、取引が行われた日から7年間。7年を超える場合は、その記録が関連する課税期間の課税期限満了まで。と定められています。 (2) 実務上の留意点 近時、ミャンマーにおいては税務調査が増加しています。その際、紙ベースによる証憑のチェックが行われるため、税務調査が来るまでは7年を超えていたとしても、文書を保管していた方が実務上安全と解されます。

5.メキシコ

⑴ 法令上の文書の保存期間に関する規定 文書の保存義務については、商法にその規定があります。 メキシコの商法上、会社も商人に該当するところ、商人は、権利と義務を生じさせる契約、合意、もしくは約束が記録された手紙、電報、電磁的記録、またはその他の文書の原本を最低10年間保管する義務があります(商法46条、47条)。電磁的記録で保存する場合、原本の保存または提示の目的のためには、情報が最初に最終的な形で生成された時点から完全かつ変更されておらず、その後の参照のためにアクセス可能であることが要求され(商法48条)、経済省が定める電磁的記録の保存のために遵守すべき要件を定めた公式メキシコ規格に従わなければなりません(商法49条)。 ⑵ 会社解散後の文書保存義務 会社解散後について、清算人となった者は、会社の帳簿および書類を清算結了の日から10年間保管しなければなりません。清算人は、会社の帳簿や書類を、紙媒体で保管するか、電子・光学的、その他の技術で保管するかを選択することが可能です(会社法245条2段落)。

6.バングラデシュ

(1) 法令上の文書の保存期間に関する規定 1994年会社法181条では、財務諸表の保管を義務付けており、12 年間保存することとしています。その他、同法89条にて、取締役会議事録の保管を義務づけていますが、その保存期間については特に定めていません。実務においては、7~12 年間保存すべきであるとされています。また、年次会計報告についても、同様に、保存期間は規定されていませんが、実務では、7~12 年間保存することが推奨されています。 会社法では、文書の保存形式について、記録を電子媒体と紙媒体のどちらで保存するかについては規定していません。 会社法以外にも、2012年付加価値税及び補足税法では、発注および販売明細書、納税証明書、通関書類、その他の財務記録などの詳細な記録を 5 年間保存することを義務付けています。 2006年バングラデシュ労働法及び2019年EPZ労働法では、労働者名簿や安全記録簿の保管について定めていますが、保存期間については特に定めていません。

7.フィリピン

(1) 文書の保存義務 フィリピンの法律は、企業に対して文書の保存義務を課しています。以下は、保存義務がある文書の一例です。 (2) 電子での書類の保存 会社法によって保存が義務付けられている文書は、保存方法が指定されていないため、基本的には電子で保存することができます。他方で、公証人によるノータライズが必要な定款等の書類は、その性質上ハードコピーを作成する必要があります。また、会計帳簿も基本的には電子で保存することができます。 (3) 保存規定に違反した場合の罰則 保存規定に違反した場合、フィリピンの法律では罰則規定が設けられています。たとえば、会社法では、会社が記録を適切に保存していなかった場合、10万PHPから40万PHPの罰金が科されます。

8.ベトナム

(1) 保存が義務付けられている企業文書の種類 現行企業法には、会社の種類に応じて、以下の文書を保存することが規定されています。 i) 会社の定款、内部管理規定、株主・出資者名簿。 ii) 知的財産権の証明書、製品・商品・サービスの品質登録証明書、その他の許認可証および証明書。 iii) 会社の資産所有を証明する文書。 iv) 社員総会、株主総会、取締役会の会合の議決権、議決権調査簿、議事録。会社の決定または決議書類。 v) 有価証券の募集または上場のための目論見書。 vi) 監査役会の報告書、検査当局および監査組織の判断。 vii) 会計帳簿、会計記録、年次財務諸表。 また、現行の会計規則では、前項vii)で示された文書の種類についても詳細に記載されており(政令No. 174/2016/ND-CP第8条参照)、これによると、上記vii)の文書に加え、会社は、予算明細書、および契約、利益の資本化に関する決定、資金や資本書類の受領と使用など経理業務に関連するその他の文書も保存しなければならないとされています。 また、労働災害が発生した場合、会社は、政令No. 39/2016/ND-CPに基づき、労働災害調査記録、検死または傷害検査記録などの労働災害に関する文書を保存しなければなりません。 さらに、会社が行う事業内容や運営活動の種類によっては、特別の文書保存に関する法的義務が生じる場合があります。例えば、信用機関に分類される会社は、信用機関法(法律No. 32/2024/QH15)に規定される信用記録に関する文書も保管しなければなりません。また別の例として、取引商品の原産地証明書(C/O)を申請する企業は、政令No. 31/2018/ND-CPに基づき、申請書類およびその目的に関連する適切な補助文書も保管する必要があります。 (2) 文書保存に関するその他の重要事項 文書を保管する場所については、会社が自由に決定することができます。現行の法令では、電子形式での文書の保管については、e-VATインボイスを除き、特に規定はありません。したがって、e-VATインボイス以外の文書については、会社は、電子文書として保存するかどうかを選択することが可能であると解されています。 文書の保存期間には、永久保存と一定期間保存の2種類があります。一定期間保存の文書について、保存期間は、法令により年単位で決定されますが、対応する業務が完了してから70年を上回ることはありません。各種文書に適用される保存期間の詳細は、通達10/2022/TT-BNVに添付された別表や専門規則に規定されています。

9.インド

⑴ 会社法に基づく文書の保存義務について インド会社法及び会社の下位規範である複数の規則において、以下の文書について保存義務が定められています。文書の種類、保存期間などについて把握しておくことが重要です。これらの文書は基本的に会社登記所に登録された登録事務所において保管しなければなりません。 ⑵ 保管方法 上記の文書は、原本だけでなく電磁的記録により保存することも認められています。もっとも、紛争が生じた場合等は、紙の原本があることが望ましいので原本を保存しておくことが望ましいといえます。

10.アラブ首長国連邦(ドバイ)

会社の企業活動に関連して作成される文書の保管について、会社法(2021年連邦令第32号)では、会計帳簿を該当事業期末から5年間、本店で保管しなければならないと規定するのみです(第26条第2項)。商業取引法(2022年連邦令第50号)では、商人はその事業取引に関して発した交信・電報及び請求書の謄本並びに受領した交信・請求書及びその他の書類を発行または受領から最低5年間、商業帳簿及びその証拠書類をその完了から最低5年間、保管しなければならないとしています(第29条第1項・第2項)。 税手続法(2017年連邦令第7号)施行規則(2023年内閣令第74号)は、保管すべき会計記録の詳細を規定していて、貸借対照表、収益計算書、給与支払簿、固定資産管理簿、期末在庫表、を含む税法等で要求される支払・売買等の事業に関する記録、及び事業上のやりとり、請求書、免許、契約、並びに事業決定や計算の根拠を含む会計記録の根拠資料について(第2条)、課税事業者は当該課税期間後の5年間、非課税事業者は資料が作成された暦年末から5年間、ただし、土地登記に関連する資料については作成された暦年末から7年間、保管するものとしています(第3条第1項)。これらの期間は、課税当局との紛争があるときや税務調査中である等の場合には更に4年間延長されます(第3条第2項)。法人事業税法(2022年連邦令第47号)第56条では、課税事業者は税申告書類及びその証拠書類並びに課税対象所得を把握させる書類の全てを、非課税事業者は免税の地位を証明する記録の全てを、該当課税期間後7年間保管しなければならないとします。付加価値税法施行規則(2017年内閣令第52条)では、付加価値税法(2017年連邦令第8号)が保管を規定する文書の保管期間・方法等は税手続法施行規則の規定によるとしていますが、不動産に関する文書については15年と定めています(第71条2項)。 以上の通り、法令によって保管する書類の範囲や期間が異なる他、フリーゾーンで設立された会社については会社法の適用が除外される(第5条1項)等、会社の設立形態によっては適用される法令が異なり、また、事業内容に応じて適用を受けるその他の業法によって異なる文書保管期間の定めがある場合がありますので、留意が必要です。" ["post_title"]=> string(60) "各国における文書の保存義務に関する法規制" ["post_excerpt"]=> string(0) "" ["post_status"]=> string(7) "publish" ["comment_status"]=> string(4) "open" ["ping_status"]=> string(4) "open" ["post_password"]=> string(0) "" ["post_name"]=> string(180) "%e5%90%84%e5%9b%bd%e3%81%ab%e3%81%8a%e3%81%91%e3%82%8b%e6%96%87%e6%9b%b8%e3%81%ae%e4%bf%9d%e5%ad%98%e7%be%a9%e5%8b%99%e3%81%ab%e9%96%a2%e3%81%99%e3%82%8b%e6%b3%95%e8%a6%8f%e5%88%b6" ["to_ping"]=> string(0) "" ["pinged"]=> string(0) "" ["post_modified"]=> string(19) "2024-09-13 11:50:11" ["post_modified_gmt"]=> string(19) "2024-09-13 02:50:11" ["post_content_filtered"]=> string(0) "" ["post_parent"]=> int(0) ["guid"]=> string(34) "https://nnaglobalnavi.com/?p=22010" ["menu_order"]=> int(0) ["post_type"]=> string(4) "post" ["post_mime_type"]=> string(0) "" ["comment_count"]=> string(1) "0" ["filter"]=> string(3) "raw" }
 TNY国際法律事務所
ティエヌワイコクサイホウリツジムショ TNY国際法律事務所
世界11か国13拠点で日系企業の進出及び進出後のサポート

世界11か国13拠点(東京、大阪、佐賀、ミャンマー、タイ、マレーシア、メキシコ、エストニア、フィリピン、イスラエル、バングラデシュ、ベトナム、イギリス)で日系企業の進出及び進出後のサポートを行っている。具体的には、法規制調査、会社設立、合弁契約書及び雇用契約書等の各種契約書の作成、M&A、紛争解決、商標登記等の知財等各種法務サービスを提供している。

堤雄史(TNYグループ共同代表・日本国弁護士)、永田貴久(TNYグループ共同代表・日本国弁護士)

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